第3章 主な医薬品とその作用143主な医薬品とその作用(成分群の横断・配合目的)

登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問143:主な医薬品とその作用(成分群の横断・配合目的)

一般用医薬品に用いられる殺菌消毒成分の作用機序に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • エタノール(消毒用アルコール)は酸化作用によって細菌の細胞膜リン脂質を酸化・破壊して殺菌するため、芽胞を形成する細菌(ウエルシュ菌等)にも有効である。
  • ヨウ素系成分(ポビドンヨードなど)はタンパク変性・酸化作用によって細菌・真菌・ウイルスに広く有効であるが、甲状腺に障害を持つ人への使用や妊婦への使用には注意が必要である。正答
  • クレゾール石鹸液は石鹸と混合したクレゾールであり、芽胞を含む多くの微生物(結核菌・HIV等)に対して優れた殺菌効果を持ち、皮膚への直接塗布にも用いられる。
  • 塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸)は陰イオン界面活性剤であり、細菌の細胞膜を破壊して殺菌するが、陽イオン界面活性剤(石鹸)と混合すると殺菌効果が増強される。
  • オキシドール(過酸化水素水)は創傷に適用すると分解されて酸素を発生し、その酸化力で殺菌作用を示すが、作用の持続性が高く組織深部まで浸透するため、深い傷の内部の殺菌に最も適している。
正答:ヨウ素系成分(ポビドンヨードなど)はタンパク変性・酸化作用によって細菌・真菌・ウイルスに広く有効であるが、甲状腺に障害を持つ人への使用や妊婦への使用には注意が必要である。

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正答はイです。

ポビドンヨードは細菌・真菌・ウイルスに幅広く効き、甲状腺疾患・妊婦への注意が必要です(イが正しい)。

主な殺菌消毒成分の機序を分類して覚えましょう。

| 機序 | 代表成分 | 芽胞への有効性 |

|---|---|---|

| タンパク変性・酸化 | ポビドンヨード、ヨードチンキ | 有効(広域) |

| タンパク変性 | エタノール | 芽胞には無効 |

| 酸化(酸素発生) | オキシドール(過酸化水素水) | 芽胞には弱い |

| 細胞膜障害 | 塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸) | 芽胞・結核菌に無効 |

| 細胞膜障害 | クレゾール石鹸液 | 結核菌に有効・芽胞は無効 |

塩化ベンザルコニウムは陽イオン(カチオン)界面活性剤であり、普通の石鹸(陰イオン)と混合すると効果が落ちます(エが誤り)。

標準試験対策の基準レベル

殺菌消毒成分の機序分類と適用範囲の横断整理:

| 成分 | 機序 | 有効な微生物 | 芽胞 | 注意事項 |

|---|---|---|---|---|

| ポビドンヨード | タンパク変性・酸化(活性ヨードによる) | 細菌・真菌・ウイルス・結核菌 | 有効 | 甲状腺疾患・妊婦・ヨウ素アレルギーに注意 |

| ヨードチンキ | タンパク変性・酸化 | 細菌・真菌 | 有効 | 粘膜・創傷に刺激が強い・傷口への使用は不適 |

| エタノール(70%前後) | タンパク変性・脂質溶解(細胞膜溶解) | 細菌・真菌・ウイルス(一部)・結核菌 | 無効 | 可燃性。引火に注意。粘膜への使用不可 |

| 塩化ベンザルコニウム | 細胞膜障害(陽イオン界面活性→細胞膜破壊) | グラム陽性菌・一部グラム陰性菌 | 無効・結核菌にも無効 | 石鹸(陰イオン)と混合→効果減弱。眼・粘膜にも使用可 |

| クレゾール石鹸液 | タンパク変性・細胞膜障害 | 細菌・結核菌 | 無効 | 原液は皮膚刺激強。希釈使用。HIV・HBVには不活性 |

| オキシドール(過酸化水素水) | 酸化(活性酸素発生)。作用の持続性が乏しく組織への浸透性も低い | 一般細菌・化膿菌 | 弱い | 深い傷・閉鎖部位への使用不適(ガス塞栓リスク)。効果は短時間・表層的 |

各選択肢の解説:

  • ア(誤): エタノールの主な機序はタンパク変性(タンパク質の変性・凝固)と脂質溶解(細胞膜の破壊)です。酸化作用は主機序ではありません。また、芽胞を形成する細菌(クロストリジウム属・バシラス属等)の芽胞はエタノールに対して抵抗性を示し、エタノールは芽胞に有効ではありません。
  • イ(正): ポビドンヨードのヨード(I₂)はタンパク変性と酸化の両機序で幅広い微生物に作用し、ウイルスにも有効です。ヨウ素は甲状腺に取り込まれるため、甲状腺疾患患者や妊婦(胎児の甲状腺に影響)への使用は注意が必要です。
  • ウ(誤): クレゾール石鹸液は結核菌には有効ですが、芽胞には無効です。また、HIV・HBV等のウイルスには不活性化効果が低いとされています。さらに原液のクレゾール石鹸液は皮膚刺激性が強く、希釈して使用するのが一般的で、皮膚への直接原液塗布は想定されません。
  • エ(誤): 塩化ベンザルコニウム(逆性石鹸)は陽イオン(カチオン)界面活性剤です。陰イオン界面活性剤(普通の石鹸)と混合すると電荷が中和されて殺菌効果が減弱します(増強ではありません)。
  • オ(誤): オキシドール(過酸化水素水)が酸素を発生して酸化力で殺菌し、泡で創を洗浄する点までは正しいのですが、手引きでは過酸化水素水は「作用の持続性が乏しく、組織への浸透性も低い」とされています。血液・組織中のカタラーゼにより速やかに分解されるため効果は短時間で表層的であり、「作用の持続性が高く組織深部まで浸透して深い傷の内部の殺菌に最も適している」という記述は誤りです。むしろ深い傷・閉鎖した創傷への使用は酸素ガスの蓄積(組織内気腫・ガス塞栓)のリスクがあるため適しません。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【殺菌消毒成分の機序を分子レベルで理解する横断整理】

機序別の詳細な分類:

1. タンパク変性機序

エタノール(特に60〜80%濃度)は:

  • 細菌のタンパク質・酵素を変性凝固させる(タンパクの疎水性部分が露出し凝集)
  • 細胞膜リン脂質の脂質層を溶解・崩壊させる
  • 最適濃度は70%前後(純アルコール100%では細菌表面のタンパクが急速凝固し、内部への浸透が不十分になるため殺菌効果が低下する)

ヨードチンキの非ポビドン型は:

  • 活性ヨウ素(I₂)が直接タンパクのチロシン残基・ヒスチジン残基を酸化変性させる
  • 核酸(DNAのグアニン・シトシン等)も酸化して複製障害をもたらす
  • 刺激性が高いため、現在は刺激の少ないポビドンヨードへの移行が進んでいる

2. ヨウ素の酸化機序とポビドンヨード

ポビドンヨードはポリビニルピロリドン(PVP)とヨウ素の複合体で、ゆっくりとヨウ素(I₂)を放出します。

PVP-I → PVP + I₂(活性ヨウ素として遊離)

I₂ + H₂O → HI + HOI(次亜ヨウ素酸)

HOI(次亜ヨウ素酸)が主な殺菌活性体で:

  • 細菌のタンパク質・核酸を酸化変性
  • 細胞膜の機能を破壊
  • 広範な微生物(細菌・真菌・ウイルス・芽胞・マイコバクテリウム)に有効

ポビドンヨード使用上の注意(機序に基づく理解):

  • 甲状腺疾患: 遊離ヨウ素が皮膚・粘膜から吸収されて甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモン産生に影響(バセドウ病・橋本病等の既往に注意)
  • 妊婦: ヨウ素が胎盤を通過して胎児の甲状腺機能を抑制する可能性。特に大量・長期使用は避ける
  • アレルギー: ヨウ素アレルギー(甲殻類アレルギー等)の既往がある場合は使用前に確認

3. 界面活性剤による細胞膜破壊

塩化ベンザルコニウム(BKC)の機序:

  • 陽イオン(カチオン)界面活性剤として、陰性荷電を持つ細菌の細胞膜(リン脂質の頭部は陰性)に静電的に吸着
  • 疎水性末端(長鎖アルキル基)が膜脂質層に挿入→膜の不均一化→透過性亢進
  • 細胞内酵素の不活性化・イオン勾配の崩壊→細菌死

重要な限界:

  • グラム陰性菌の外膜(リポ多糖、LPS)は陰性荷電が強固なため、一部のグラム陰性菌(緑膿菌等)に耐性が出やすい
  • 芽胞・結核菌(蝋様の細胞壁)には無効
  • 石鹸(陰イオン界面活性剤)との混合: 陽イオン・陰イオンが中和されてミセル形成→殺菌活性基の濃度低下→効果減弱

4. 酸化機序(過酸化水素)

オキシドール(3%過酸化水素水):

H₂O₂ → 2H₂O + O₂(活性酸素→酸化→殺菌)

  • 傷口の酵素(カタラーゼ・ペルオキシダーゼ)によって分解が促進→泡立ち(創洗浄効果)
  • 嫌気性菌(ガス壊疽菌等)の酸素不耐性を利用した殺菌に有効
  • 深い閉鎖創への大量使用は酸素ガス蓄積→組織内気腫(ガス塞栓)のリスクがある
  • 正常組織(カタラーゼ豊富)では速やかに分解されるため効果が短時間

殺菌消毒成分の選択指針(登録販売者の実務):

| 場面 | 推奨成分 | 避けるべき成分・理由 |

|---|---|---|

| 切り傷・擦り傷の消毒 | ポビドンヨード・塩化ベンザルコニウム | ヨードチンキ(刺激強・傷に不適)・高濃度アルコール(刺激強) |

| 手指の消毒 | エタノール・塩化ベンザルコニウム | オキシドール(皮膚への連続使用は不適) |

| 口腔・咽頭の消毒 | ポビドンヨード希釈液(うがい) | エタノール(口腔粘膜には使用不可) |

| 甲状腺疾患・妊婦の創傷 | 塩化ベンザルコニウム・エタノール | ポビドンヨード(ヨウ素の甲状腺移行リスク) |

| 器具・環境の消毒 | クレゾール石鹸液希釈・アルコール | 皮膚には原液クレゾールを使用しない |

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 きず口等の殺菌消毒成分・作用機序 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

殺菌消毒成分の作用機序横断(タンパク変性・酸化・膜障害と適用範囲頻出度A

第3章 主な医薬品とその作用の他の問題

1
主な医薬品とその作用(かぜ薬・解熱鎮痛薬)
2
主な医薬品とその作用(アレルギー薬・抗ヒスタミン薬)
3
主な医薬品とその作用(漢方処方・生薬)
4
主な医薬品とその作用(かぜ薬)
5
主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
6
主な医薬品とその作用(胃腸薬・制酸薬)

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