登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問38:主な医薬品とその作用(みずむし・たむし及びいんきんたむし用薬)
みずむし・たむし(皮膚糸状菌症)に用いる外用抗真菌薬の成分に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アクロトリマゾール・ミコナゾール等のイミダゾール系抗真菌薬は、細菌の細胞膜のペプチドグリカン合成を阻害することで抗菌作用を発揮する。
- イテルビナフィン塩酸塩はアリルアミン系抗真菌薬であり、真菌のエルゴステロール生合成を妨げる(スクアレンエポキシダーゼ阻害)ことで殺菌的な抗真菌作用を示す。正答
- ウトルナフタートはイミダゾール系抗真菌薬の一種であり、白癬菌のCYP51(ラノステロール14α-脱メチル化酵素)を選択的に阻害することでエルゴステロール合成を阻害する。
- エみずむし(白癬)の外用薬は、症状(かゆみ・赤み)が消えた時点で使用を中止してよく、菌が残存しても皮膚の自然治癒力が消滅させる。
- オ爪白癬(爪みずむし)は、外用抗真菌薬のみで完治することが多く、市販の外用薬で十分な治療効果が得られる。
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正答はイ(正しいもの)です。
テルビナフィン塩酸塩はアリルアミン系の抗真菌薬で、真菌の細胞膜成分エルゴステロールの生合成経路(スクアレンエポキシダーゼ)を阻害して、殺菌的に白癬菌を死滅させます。
各選択肢の誤りポイント:
- ア(誤):イミダゾール系はエルゴステロール合成阻害(ペプチドグリカンは細菌の話で真菌には無関係)
- ウ(誤):トルナフタートはイミダゾール系ではない(チオカルバメート系)
- エ(誤):症状が消えても菌は残る→治療を続ける必要がある
- オ(誤):爪白癬は外用薬のみでは完治しにくい→医師受診推奨
ゴロ:「テルビナフィン=アリルアミン系でスクアレンをブロック」
外用抗真菌薬の作用機序別分類:
| 分類 | 代表成分 | 作用ターゲット | 作用の性質 |
|---|---|---|---|
| イミダゾール系 | クロトリマゾール・ミコナゾール硝酸塩・エコナゾール等 | CYP51(ラノステロール14α-脱メチル化酵素)阻害→エルゴステロール合成阻害 | 主に静菌的 |
| アリルアミン系 | テルビナフィン塩酸塩 | スクアレンエポキシダーゼ阻害→エルゴステロール合成阻害(上流) | 殺菌的 |
| チオカルバメート系 | トルナフタート | スクアレンエポキシダーゼ阻害(テルビナフィンと同酵素) | 主に静菌的 |
| ポリエン系 | ナイスタチン | エルゴステロールに直接結合→細胞膜穿孔 | 殺菌的(皮膚外用では少用) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): イミダゾール系抗真菌薬(クロトリマゾール・ミコナゾール等)は真菌の細胞膜成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。ペプチドグリカンは細菌の細胞壁成分であり、真菌はペプチドグリカンを持ちません(真菌の細胞壁はキチン・グルカン)。イミダゾール系は抗菌薬(抗生物質)ではなく抗真菌薬です。
- イ(正): テルビナフィン塩酸塩は、真菌の細胞膜成分であるエルゴステロールの生合成を妨げる抗真菌成分です(生合成経路の上流にあるスクアレンエポキシダーゼを阻害)。これによりスクアレンが蓄積し、エルゴステロールが欠乏して細胞膜機能障害を起こし、真菌を死滅させます(殺菌的)。手引き(令和8年4月版)でもテルビナフィンは「皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げ、その増殖を抑える」とされ、本肢の趣旨と整合します。
- ウ(誤): トルナフタートはイミダゾール系ではありません(化学的にはチオカルバミン酸系に分類され、エルゴステロール合成に関わる酵素を阻害しますが効果は緩和とされます)。「CYP51(ラノステロール14α-脱メチル化酵素)の選択的阻害」はイミダゾール系・トリアゾール系の機序であり、トルナフタートをイミダゾール系の一種とする記述は誤りです。手引きでもイミダゾール系成分(オキシコナゾール・クロトリマゾール・ミコナゾール等)とトルナフタートは別の成分として扱われます。
- エ(誤): 白癬菌(皮膚糸状菌)感染では、症状(かゆみ・紅斑・水疱)が消えても角質層の深部に菌糸・胞子が残存していることがあります。症状消失後も4〜8週間は継続使用することが必要で、早期中止は再発の原因になります。
- オ(誤): 爪白癬(爪甲白癬)は爪甲という血管のない硬い組織に菌が定着するため、外用薬が菌に届きにくく、外用のみでの完治は極めて困難です。内服抗真菌薬(テルビナフィン・イトラコナゾール等処方薬)が治療の主体で、医師による診察・処方が必要です。市販の外用薬では対応困難であることを明確に伝え、受診勧奨が必要です。
【白癬の病態・皮膚糸状菌の種類と各抗真菌薬の作用機序の深掘り】
白癬(水虫・たむし)の病態:
白癬(Tinea)は皮膚糸状菌(Dermatophyte)による感染症で、主要病原菌:
- Trichophyton rubrum(赤毛白癬菌):足白癬・爪白癬の主因(日本で最多)
- Trichophyton mentagrophytes(石膏状白癬菌):足白癬・体部白癬
- Microsporum canis(犬小胞子菌):頭部・体部白癬(小児に多い)
- Epidermophyton floccosum:陰部・体部白癬
感染経路と感染部位:
- 足白癬(みずむし):床・マット・バスマット→足底・趾間
- 爪白癬:足白癬から拡大・爪甲に侵入
- 体部白癬(たむし):直接接触・動物からの感染
- 股部白癬(いんきんたむし):免疫低下・多汗・密着衣服
エルゴステロール生合成経路と各阻害薬の作用点:
真菌のエルゴステロール生合成経路(コレステロール生合成の真菌版):
アセチルCoA → ... → スクアレン
↓ スクアレンエポキシダーゼ(ここを阻害: テルビナフィン・トルナフタート)
スクアレンエポキシド(2,3-オキシドスクアレン)
↓ ラノステロール合成酵素
ラノステロール
↓ ラノステロール14α-脱メチル化酵素(CYP51)(ここを阻害: イミダゾール系・トリアゾール系)
エルゴステロール(真菌細胞膜の必須構成成分)
エルゴステロールはヒトのコレステロールに相当する真菌固有の細胞膜ステロールで、この阻害が選択毒性の根拠(ヒト細胞はコレステロール依存でエルゴステロールを持たない)。
テルビナフィン(アリルアミン系)の選択性と殺菌機序の詳細:
テルビナフィンのスクアレンエポキシダーゼ(Squalene epoxidase: SE)阻害の特徴:
- ヒトSEより真菌SEへの選択的結合(IC₅₀: 真菌SEに対して30〜100倍強い親和性)
- スクアレンの蓄積による二重の殺菌機序:
1. エルゴステロール欠乏→細胞膜機能障害
2. スクアレン自体の細胞毒性(疎水性液体が細胞内に蓄積→膜破壊)
殺菌性(Fungicidal)であることの臨床的意義:
- イミダゾール系(静菌性・Fungistatic)と異なり菌を直接殺す
- 爪白癬に対してもテルビナフィン内服は有効性が高い(ただし外用は爪への浸透が課題)
イミダゾール系 vs トリアゾール系(CYP51阻害薬の比較):
| 分類 | 代表薬(外用) | CYP51選択性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| イミダゾール系 | クロトリマゾール・ミコナゾール | 中程度 | 皮膚外用に広く使用。ヒトCYP阻害も一部あり |
| トリアゾール系 | フルコナゾール・イトラコナゾール(内服) | 高い | 内服薬・全身投与で爪・深在性真菌症に有効 |
外用イミダゾール系の局所使用では全身性副作用は少ないですが、大量・広範囲・長期使用や粘膜からの吸収では全身移行が起こりえます。
爪白癬の難治性の理由と受診勧奨の根拠:
爪甲(ケラチン硬タンパク)の特性:
- 無血管・ケラチン密度が高い→外用薬の浸透が極めて困難
- 爪甲の成長速度:手の爪3mm/月・足の爪1.5mm/月→罹患爪が全部生え変わるのに手6〜12ヶ月・足12〜18ヶ月
- 浸透性の高い特殊製剤(エフィナコナゾール外用液・アモロルフィン爪用ラッカー等)でも完治率は限られる
爪白癬の治療成功率(参考):
- 内服テルビナフィン(12週間):完治率約70〜80%(複数のRCTデータ)
- 外用のみ:完治率はかなり低く、軽症初期を除き単独での根治は困難
登録販売者の対応:
- 爪白癬が疑われる(爪が白く濁る・厚くなる・もろくなる)場合は医師(皮膚科)への受診を必ず勧奨
- 市販の外用薬は「すでに医師の診断を受けた足白癬・体部白癬の治療」に適用(爪白癬には不適)
- 糖尿病・免疫低下状態では白癬が悪化しやすいため特に早期受診を強調
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イ(テルビナフィン=エルゴステロール生合成のスクアレンエポキシダーゼ阻害で殺菌的)一意・妥当。一次ソース突合:トルナフタートはチオカルバミン酸系の合成抗真菌薬でイミダゾール系ではなく、エルゴステロール合成に関わる酵素を阻害するが効果は緩和(選択肢ウの「イミダゾール系・CYP51選択的阻害」は誤り)。手引き(令和8年4月版)はテルビナフィンを「皮膚糸状菌の細胞膜成分の産生を妨げる」とし、イミダゾール系成分とトルナフタートを別成分として列挙。イミダゾール系がペプチドグリカン合成阻害(細菌の話)とする選択肢アも誤り、症状消失後も継続使用が必要・爪白癬は外用のみでの完治困難で受診勧奨、も手引きと整合。【粒度調整】解説中の「アリルアミン系」「チオカルバメート系」の系統名強調を手引きの記載粒度(成分名ベース・テルビナフィン=細胞膜成分産生阻害/トルナフタート=イミダゾール系ではない)に沿う表現へ補正。正答・段差性に影響なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第14節「みずむし・たむし及びいんきんたむし用薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。