問題
みずむし・たむし(皮膚糸状菌症)に用いる外用抗真菌薬の成分に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はア(正しいもの)です。
テルビナフィン塩酸塩はアリルアミン系の抗真菌薬で、真菌の細胞膜成分エルゴステロールの生合成経路(スクアレンエポキシダーゼ)を阻害して、殺菌的に白癬菌を死滅させます。
各選択肢の誤りポイント:
- イ(誤):イミダゾール系はエルゴステロール合成阻害(ペプチドグリカンは細菌の話で真菌には無関係)
- ウ(誤):トルナフタートはイミダゾール系ではない(チオカルバメート系)
- エ(誤):症状が消えても菌は残る→治療を続ける必要がある
- オ(誤):爪白癬は外用薬のみでは完治しにくい→医師受診推奨
ゴロ:「テルビナフィン=アリルアミン系でスクアレンをブロック」
外用抗真菌薬の作用機序別分類:
| 分類 | 代表成分 | 作用ターゲット | 作用の性質 |
|---|---|---|---|
| イミダゾール系 | クロトリマゾール・ミコナゾール硝酸塩・エコナゾール等 | CYP51(ラノステロール14α-脱メチル化酵素)阻害→エルゴステロール合成阻害 | 主に静菌的 |
| アリルアミン系 | テルビナフィン塩酸塩 | スクアレンエポキシダーゼ阻害→エルゴステロール合成阻害(上流) | 殺菌的 |
| チオカルバメート系 | トルナフタート | スクアレンエポキシダーゼ阻害(テルビナフィンと同酵素) | 主に静菌的 |
| ポリエン系 | ナイスタチン | エルゴステロールに直接結合→細胞膜穿孔 | 殺菌的(皮膚外用では少用) |
各選択肢の解説:
- イ(誤): イミダゾール系抗真菌薬(クロトリマゾール・ミコナゾール等)は真菌の細胞膜成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。ペプチドグリカンは細菌の細胞壁成分であり、真菌はペプチドグリカンを持ちません(真菌の細胞壁はキチン・グルカン)。イミダゾール系は抗菌薬(抗生物質)ではなく抗真菌薬です。
- ア(正): テルビナフィン塩酸塩は、真菌の細胞膜成分であるエルゴステロールの生合成を妨げる抗真菌成分です(生合成経路の上流にあるスクアレンエポキシダーゼを阻害)。これによりスクアレンが蓄積し、エルゴステロールが欠乏して細胞膜機能障害を起こし、真菌を死滅させます(殺菌的)。手引き(令和8年4月版)でもテルビナフィンは「皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げ、その増殖を抑える」とされ、本肢の趣旨と整合します。
- ウ(誤): トルナフタートはイミダゾール系ではありません(化学的にはチオカルバミン酸系に分類され、エルゴステロール合成に関わる酵素を阻害しますが効果は緩和とされます)。「CYP51(ラノステロール14α-脱メチル化酵素)の選択的阻害」はイミダゾール系・トリアゾール系の機序であり、トルナフタートをイミダゾール系の一種とする記述は誤りです。手引きでもイミダゾール系成分(オキシコナゾール・クロトリマゾール・ミコナゾール等)とトルナフタートは別の成分として扱われます。
- エ(誤): 白癬菌(皮膚糸状菌)感染では、症状(かゆみ・紅斑・水疱)が消えても角質層の深部に菌糸・胞子が残存していることがあります。症状消失後も4〜8週間は継続使用することが必要で、早期中止は再発の原因になります。
- オ(誤): 爪白癬(爪甲白癬)は爪甲という血管のない硬い組織に菌が定着するため、外用薬が菌に届きにくく、外用のみでの完治は極めて困難です。内服抗真菌薬(テルビナフィン・イトラコナゾール等処方薬)が治療の主体で、医師による診察・処方が必要です。市販の外用薬では対応困難であることを明確に伝え、受診勧奨が必要です。
【白癬の病態・皮膚糸状菌の種類と各抗真菌薬の作用機序の深掘り】
白癬(水虫・たむし)の病態:
白癬(Tinea)は皮膚糸状菌(Dermatophyte)による感染症で、主要病原菌:
- Trichophyton rubrum(赤毛白癬菌):足白癬・爪白癬の主因(日本で最多)
- Trichophyton mentagrophytes(石膏状白癬菌):足白癬・体部白癬
- Microsporum canis(犬小胞子菌):頭部・体部白癬(小児に多い)
- Epidermophyton floccosum:陰部・体部白癬
感染経路と感染部位:
- 足白癬(みずむし):床・マット・バスマット→足底・趾間
- 爪白癬:足白癬から拡大・爪甲に侵入
- 体部白癬(たむし):直接接触・動物からの感染
- 股部白癬(いんきんたむし):免疫低下・多汗・密着衣服
エルゴステロール生合成経路と各阻害薬の作用点:
真菌のエルゴステロール生合成経路(コレステロール生合成の真菌版):
アセチルCoA → ... → スクアレン
↓ スクアレンエポキシダーゼ(ここを阻害: テルビナフィン・トルナフタート)
スクアレンエポキシド(2,3-オキシドスクアレン)
↓ ラノステロール合成酵素
ラノステロール
↓ ラノステロール14α-脱メチル化酵素(CYP51)(ここを阻害: イミダゾール系・トリアゾール系)
エルゴステロール(真菌細胞膜の必須構成成分)
エルゴステロールはヒトのコレステロールに相当する真菌固有の細胞膜ステロールで、この阻害が選択毒性の根拠(ヒト細胞はコレステロール依存でエルゴステロールを持たない)。
テルビナフィン(アリルアミン系)の選択性と殺菌機序の詳細:
テルビナフィンのスクアレンエポキシダーゼ(Squalene epoxidase: SE)阻害の特徴:
- ヒトSEより真菌SEへの選択的結合(IC₅₀: 真菌SEに対して30〜100倍強い親和性)
- スクアレンの蓄積による二重の殺菌機序:
1. エルゴステロール欠乏→細胞膜機能障害
2. スクアレン自体の細胞毒性(疎水性液体が細胞内に蓄積→膜破壊)
殺菌性(Fungicidal)であることの臨床的意義:
- イミダゾール系(静菌性・Fungistatic)と異なり菌を直接殺す
- 爪白癬に対してもテルビナフィン内服は有効性が高い(ただし外用は爪への浸透が課題)
イミダゾール系 vs トリアゾール系(CYP51阻害薬の比較):
| 分類 | 代表薬(外用) | CYP51選択性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| イミダゾール系 | クロトリマゾール・ミコナゾール | 中程度 | 皮膚外用に広く使用。ヒトCYP阻害も一部あり |
| トリアゾール系 | フルコナゾール・イトラコナゾール(内服) | 高い | 内服薬・全身投与で爪・深在性真菌症に有効 |
外用イミダゾール系の局所使用では全身性副作用は少ないですが、大量・広範囲・長期使用や粘膜からの吸収では全身移行が起こりえます。
爪白癬の難治性の理由と受診勧奨の根拠:
爪甲(ケラチン硬タンパク)の特性:
- 無血管・ケラチン密度が高い→外用薬の浸透が極めて困難
- 爪甲の成長速度:手の爪3mm/月・足の爪1.5mm/月→罹患爪が全部生え変わるのに手6〜12ヶ月・足12〜18ヶ月
- 浸透性の高い特殊製剤(エフィナコナゾール外用液・アモロルフィン爪用ラッカー等)でも完治率は限られる
爪白癬の治療成功率(参考):
- 内服テルビナフィン(12週間):完治率約70〜80%(複数のRCTデータ)
- 外用のみ:完治率はかなり低く、軽症初期を除き単独での根治は困難
登録販売者の対応:
- 爪白癬が疑われる(爪が白く濁る・厚くなる・もろくなる)場合は医師(皮膚科)への受診を必ず勧奨
- 市販の外用薬は「すでに医師の診断を受けた足白癬・体部白癬の治療」に適用(爪白癬には不適)
- 糖尿病・免疫低下状態では白癬が悪化しやすいため特に早期受診を強調
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章Ⅹ-5)「抗真菌作用を有する配合成分」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。

