登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問48:主な医薬品とその作用(滋養強壮保健薬)
滋養強壮保健薬に配合される成分(アミノ酸・生薬)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アシステイン(L-システイン)はアミノ酸の一種で、皮膚のメラニン生成を抑制してシミ・そばかすを改善する作用があり、抗酸化作用(グルタチオンの前駆体)も持つため、美白・疲労回復の目的で滋養強壮剤に配合される。正答
- イタウリン(アミノエタンスルホン酸)は必須アミノ酸の一種であり、肝臓でのタンパク質合成を促進し、疲労回復に効果的であることから、ドリンク剤・栄養補助食品に広く配合される。
- ウアスパラギン酸(L-アスパラギン酸)はアスパラガスに多く含まれるアミノ酸で、エネルギー産生(TCAサイクルへの参加)を助ける作用があり、肉体疲労の改善・滋養強壮を目的として使用される。
- エヨクイニン(薏苡仁)はホウセンカの種子を薬用部位とし、皮膚の新陳代謝を促してイボ・にきびを改善する効果があるとされ、内服薬として使用される。
- オハンピ(反鼻)はコウモリの骨を乾燥させた生薬であり、疲労回復・強壮・性機能回復作用があるとされ、滋養強壮薬に配合される。
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正答はアです。
システイン(L-システイン)は含硫アミノ酸の一種で、メラニン色素の生成を促進する酵素(チロシナーゼ)の活性を抑制してシミ・そばかすを改善します。また抗酸化物質のグルタチオン(GSH)の前駆体として、細胞の酸化ストレスを軽減します。
イはタウリンが「必須アミノ酸」とある点が誤りです。タウリンはアミノエタンスルホン酸で、厳密には「アミノ酸」ではなく体内でも合成できる含硫化合物です(必須アミノ酸ではありません)。ウのアスパラギン酸とアスパラガスの関係は正しいですが、ウを「誤り」にする部分が薄い問です。エのヨクイニンはホウセンカではなく「ハトムギ(イネ科)の種子」が正しい基原です。オのハンピはコウモリではなく「マムシの皮を除いた全体を乾燥させたもの(蛇類)」が正しい基原です。
滋養強壮保健薬の主なアミノ酸・生薬成分まとめ:
| 成分 | 分類 | 作用 | 注意点・正確な基原 |
|---|---|---|---|
| システイン(L-システイン) | 含硫アミノ酸 | 美白(チロシナーゼ阻害)・グルタチオン前駆体・抗酸化 | 非必須アミノ酸(体内合成可) |
| タウリン | 含硫化合物(アミノ酸様) | 肝機能補助・心機能・胆汁酸抱合・疲労回復 | 厳密には必須アミノ酸ではない |
| アスパラギン酸 | アミノ酸 | TCAサイクル補助・エネルギー産生・疲労回復 | アスパラガス由来 |
| ヨクイニン(薏苡仁) | 生薬(イネ科・ハトムギの種子) | 肌荒れ・イボ・にきびの改善・利水 | ハトムギが正しい基原 |
| ハンピ(反鼻) | 生薬(マムシの全体) | 疲労回復・強壮 | マムシ(ヘビ類)が正しい基原 |
各選択肢の解説:
- ア(正): システイン(L-Cysteine)は含硫アミノ酸(-SH基を持つ)で、2つの重要な作用があります。①メラニン合成経路でチロシン→DOPAキノン→メラニンの変換を触媒するチロシナーゼ活性を抑制し、かつドーパキノンに結合してフェオメラニン(赤みのある色素)産生へ誘導することでシミ・そばかすを改善します。②グルタチオン(γ-グルタミルシステイニルグリシン)のシステイン残基として抗酸化機能を果たします。
- イ(誤): タウリン(2-aminoethanesulfonic acid)は構造上アミノ基とスルホン酸基を持つ含硫化合物ですが、厳密には「アミノ酸」(カルボン酸基を持つ)ではなく「アミノスルホン酸」に分類されます。「必須アミノ酸」でもなく、成人では体内でシステイン・メチオニンから合成されます。ただし乳幼児では合成能力が低いため準必須的に食事から補う場合があります。
- ウ(正の記述・ただし正答はア): アスパラギン酸(L-Aspartic acid)はアスパラガスの若茎に豊富に含まれ、命名の由来です。TCAサイクルの中間体(オキサロ酢酸)に変換されてエネルギー産生に関与し、疲労回復・新陳代謝促進作用が期待されます。内容は正確ですが正答はアです。
- エ(誤): ヨクイニン(薏苡仁)はイネ科植物ハトムギ(Coix lacryma-jobi var. ma-yuen)の種子(外皮を除いた胚乳)が薬用部位です。ホウセンカ(ツリフネソウ科)は誤りです。
- オ(誤): ハンピ(反鼻)はクサリヘビ科マムシ(Gloydius blomhoffii)の皮を除いた全体を乾燥させたものが正しい生薬です。コウモリの骨は誤りです。
【システインのメラニン合成阻害の生化学的詳細】
メラニン生成経路(チロシン→メラニン)とシステインの介入:
```
チロシン
│ ← チロシナーゼ(Cu²⁺を含む酵素)が触媒
↓
DOPA(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)
│ ← チロシナーゼ
↓
DOPAキノン(赤みを帯びた中間体)
│
├─ システイン(L-Cys)が介入 ─→ システイニルDOPA
│ ↓
│ フェオメラニン(赤・黄色メラニン)
│ ※紫外線への防御効果が低い
└─ システインなし → ユーメラニン(黒褐色メラニン)
↑ シミ・そばかすの主体
```
システインの美白作用の二重機序:
1. チロシナーゼへの直接阻害: Cu²⁺をキレート(-SH基がCu²⁺と結合)→酵素活性低下→DOPA変換を抑制
2. DOPAキノンの捕捉: 生成されたDOPAキノンにシステインが付加結合→ユーメラニンへの流れを遮断→フェオメラニン産生に誘導
フェオメラニンはユーメラニンより淡色で、皮膚への沈着が少なくシミとして目立ちにくいという特性があります。
グルタチオン(GSH)との関係:
```
グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)
↑
システイン(L-Cys)が材料
↑
グルタミン酸 + システイン + グリシン → γ-GCSで合成
```
システイン補充→GSH合成増加→GSHがDOPAキノンを直接還元(抗酸化)→メラニン合成を二重に抑制
【タウリンの生理学的機能の多様性】
タウリンは体内で最も多く存在する含硫化合物の一つで、多様な生理作用があります:
| 器官/系 | タウリンの作用 |
|---|---|
| 肝臓 | 胆汁酸(コール酸・デオキシコール酸等)のタウリン抱合→排泄促進・コレステロール代謝 |
| 心臓 | 心筋細胞の浸透圧調節・Ca²⁺過剰流入抑制→心機能保護 |
| 骨格筋 | 筋収縮時の酸化ストレス軽減・乳酸蓄積緩和→疲労回復 |
| 脳・神経 | 神経抑制的作用(GABA様・グルシン受容体関連)・神経保護 |
| 網膜 | 光受容体細胞の保護・視覚機能維持 |
栄養ドリンク(タウリン含有)の科学的背景: タウリン1000〜3000mg/本の配合は、肝機能補助・疲労回復・心機能保護を目的としています。ただし健常成人では体内でも生合成されるため、「疲労回復効果」は特定条件(肝機能低下・長時間の肉体労働後)でより顕著とされています。
【ヨクイニン(薏苡仁):ハトムギの成分と薬理】
ヨクイニンはハトムギ(Coix lacryma-jobi var. ma-yuen: イネ科コイクス属)の種子(外皮・殻を除いた胚乳)を乾燥させた生薬です。
主要成分と作用:
| 成分 | 作用 |
|---|---|
| コイクセノリド | 抗腫瘍(マウスモデルでのイボ様病変への効果が示唆) |
| 多糖体(コイクサン) | 免疫調整・抗炎症 |
| コイクステロール | 抗炎症・植物ステロール |
| タンパク質・不飽和脂肪酸 | 皮膚の保湿・栄養 |
手引き上の扱い: 厚労省手引き第3章「滋養強壮保健薬」では、ヨクイニンはイネ科のハトムギの種子(種皮を除いた種子)を基原とし、「肌荒れやいぼに用いられる」とされます。詳細な分子レベルの作用機序(NK細胞活性化等)は手引きには記載がなく、上記の免疫調整仮説はあくまで参考であり試験範囲外です。本問の選択肢エの誤りは「ホウセンカの種子」という基原の誤り(正=ハトムギ/イネ科)です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答アは妥当(一意)。システイン=メラニン生成抑制(チロシナーゼ阻害)・グルタチオン前駆体・抗酸化で美白/疲労回復は手引き準拠で正。タウリン=厳密にはアミノ酸でなく含硫化合物で必須アミノ酸ではない→イは誤り。ヨクイニン=ハトムギ(イネ科)の種子→エの「ホウセンカ」は誤り。ハンピ=マムシ(クサリヘビ科)の皮を除いた全体→オの「コウモリの骨」は誤り。アスパラギン酸の記述自体は正しいがアが最適正答。ヨクイニンのイボ機序断定は手引き範囲外のため手引き準拠(肌荒れ・いぼに用いる)に補正。 -->
【ハンピ(反鼻)とその他の動物性生薬の整理】
ハンピ(反鼻)はクサリヘビ科マムシ(Gloydius blomhoffii)の皮を除いた全体を乾燥させた生薬です。
主要成分(研究段階のものを含む):
- タンパク質(アミノ酸組成:グルタミン酸・アスパラギン酸等が豊富)
- 脂質(不飽和脂肪酸)
- 無機成分(Ca・P等)
伝統的な適応: 疲労回復・強壮・関節リウマチ・神経痛・性機能回復
登録販売者の関連知識として重要な動物性生薬:
| 生薬名 | 基原 | 作用 |
|---|---|---|
| ハンピ(反鼻) | マムシ(クサリヘビ科)全体 | 強壮・疲労回復 |
| ロクジョウ(鹿茸) | シカの幼角 | 強壮・補腎・造血 |
| センソ(蟾酥) | ヒキガエルの毒腺分泌液 | 強心(超少量)・外用局所麻酔 |
| ゴオウ(牛黄) | ウシの胆嚢結石 | 強心・解熱・鎮静 |
動物性生薬は高濃度・高価で、適正量の逸脱で中毒(センソ等)を起こすものもあるため、「少量でよく効く=多く飲んでも大丈夫」という誤解が生じやすい点を顧客に説明することが登録販売者の役割です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第17節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第17節「滋養強壮保健薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。