登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問49:主な医薬品とその作用(鼻に用いる薬・漢方処方製剤)
鼻の疾患(鼻炎・副鼻腔炎・蓄膿症等)に用いられる漢方処方製剤の証(適する患者の状態)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)は比較的体力があり、濃い鼻汁(黄色・膿性)・鼻詰まり・熱感がある副鼻腔炎(蓄膿症)に用いられ、肺熱(熱邪による上部の炎症)を清する処方である。
- イ葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)は比較的体力があり、鼻詰まり・鼻水・頭痛を伴う鼻炎・副鼻腔炎に用いられ、葛根湯に川芎・辛夷(シンイ)を加えた処方である。
- ウ荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は比較的体力がなく、皮膚が浅黒く、手足の冷えや貧血傾向があり、蓄膿症(副鼻腔炎)・慢性鼻炎・慢性扁桃炎等に用いられる。正答
- エ辛夷清肺湯はカンゾウを含まないが、葛根湯加川芎辛夷はカンゾウを含む(葛根湯由来)ため、同時に服用する場合にはカンゾウの偽アルドステロン症のリスクに注意が必要である。
- オ荊芥連翹湯にはカンゾウが含まれており、カンゾウを含む他の薬(かぜ薬・胃腸薬・漢方薬等)と同時に服用する際には、グリチルリチン酸の過剰摂取による偽アルドステロン症のリスクを考慮する必要がある。
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正答はウです。
荊芥連翹湯の証として「比較的体力がなく」という記述が誤りです。荊芥連翹湯は比較的体力があり、皮膚が浅黒く、手足の冷えや貧血傾向があり(これは正しい)、蓄膿症・慢性鼻炎・慢性扁桃炎に用いられます。
鼻の漢方3処方の体力レベルを整理すると:
- 辛夷清肺湯→体力あり(実証)・熱感・膿性鼻汁
- 葛根湯加川芎辛夷→体力あり(実証)・鼻詰まり・頭痛
- 荊芥連翹湯→体力あり(実証よりやや下だが、「体力がない虚証」ではない)
「比較的体力がなく」は当帰芍薬散・加味逍遙散等の虚証処方に使う表現で、荊芥連翹湯の証として「体力なし」とするのは誤りです。
鼻疾患の漢方3処方 比較まとめ:
| 処方名 | 虚実(体力) | 主な特徴/証 | カンゾウ |
|---|---|---|---|
| 辛夷清肺湯 | 実証(体力あり) | 膿性・黄色い濃い鼻汁・鼻詰まり・熱感・副鼻腔炎 | 含まない |
| 葛根湯加川芎辛夷 | 実証(比較的体力あり) | 鼻詰まり・鼻水・頭痛・頸部のこわばり | 含む(葛根湯由来) |
| 荊芥連翹湯 | 実証〜中間(体力あり) | 皮膚が浅黒い・手足の冷え・貧血傾向・慢性鼻炎・蓄膿症・慢性扁桃炎 | 含む |
各選択肢の解説:
- ア(正): 辛夷清肺湯は副鼻腔炎(蓄膿症)の代表的な漢方薬で、「膿性の濃い鼻汁・鼻詰まり・熱感」という「肺熱(上焦の熱邪)」の証に適します。比較的体力がある実証の患者向けです。辛夷(シンイ: モクレン科の花蕾)・石膏・麦門冬等が主構成生薬です。
- イ(正): 葛根湯加川芎辛夷は葛根湯(葛根・麻黄・桂枝・芍薬・甘草・生姜・大棗の7味)に川芎(せんきゅう: 頭部の血行改善)と辛夷(シンイ: 鼻詰まり改善)を加えた処方です。鼻症状に頭痛・肩こりを伴う場合に有効です。
- ウ(誤・正答): 荊芥連翹湯は「比較的体力があり(実証〜中間)」とされており、「比較的体力がなく」という虚証の表現は誤りです。皮膚が浅黒い・手足の冷え・貧血傾向(これらは証として正しい)の組み合わせが特徴です。慢性化した鼻・咽喉の炎症(慢性副鼻腔炎・慢性扁桃炎・中耳炎)に適します。
- エ(正): 辛夷清肺湯は石膏・知母・麦門冬・山梔子・黄芩・枇杷葉・辛夷・百合・升麻で構成され、カンゾウを含みません。葛根湯加川芎辛夷には葛根湯由来のカンゾウが含まれるため、両処方の同時使用は原則不要ですが、仮に使用する場合はカンゾウ過剰のリスクはありません(辛夷清肺湯にカンゾウなし)。
- オ(正): 荊芥連翹湯はカンゾウを含む処方です(構成生薬に甘草あり)。カンゾウ含有薬の重複使用で偽アルドステロン症(低K血症・浮腫・高血圧)のリスクが増大します。複数の漢方薬・かぜ薬を同時使用している顧客への確認が重要です。
【辛夷清肺湯の構成生薬と「肺熱」概念の現代的解釈】
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)の構成生薬(9味):
| 生薬 | 役割 |
|---|---|
| 辛夷(シンイ)| モクレン科コブシ等の花蕾。鼻詰まり・鼻通開通(宣肺通竅) |
| 石膏(セッコウ) | 硫酸カルシウム水和物。清熱(熱を冷ます)・鎮炎 |
| 知母(チモ) | ユリ科植物の根茎。清熱・滋陰(粘膜の乾燥を潤す) |
| 麦門冬(バクモンドウ) | ユリ科植物の根の膨大部。滋陰・潤肺(肺・気道を潤す) |
| 山梔子(サンシシ) | アカネ科クチナシの果実。清熱・解毒・鎮静 |
| 黄芩(オウゴン) | シソ科コガネバナの根。清熱燥湿・抗炎症 |
| 枇杷葉(ビワヨウ) | バラ科ビワの葉。清肺(肺の熱を冷ます)・止咳 |
| 百合(ビャクゴウ) | ユリ科植物の鱗茎。潤肺・滋陰 |
| 升麻(ショウマ) | キンポウゲ科植物の根茎。解熱・解毒・引経(上部への薬力誘導) |
「肺熱」とは漢方の病態概念で、上気道(鼻・咽喉・気管支)に熱邪が滞り、炎症・膿・熱感・充血を生じた状態を指します。現代医学的には細菌性副鼻腔炎・急性上気道炎の「化膿性炎症期」に相当します。
石膏・知母・黄芩・山梔子の組み合わせが「清熱(熱邪を冷ます)」の中核を担い、麦門冬・百合が「滋陰(乾燥した粘膜を潤す)」を担って、炎症を抑制しながら粘膜の修復を支援します。
【荊芥連翹湯の生薬構成と「血熱」の概念】
荊芥連翹湯の構成生薬(17〜18味・処方により異なる)の主要薬:
| 生薬グループ | 代表生薬 | 作用 |
|---|---|---|
| 解表・清熱 | 荊芥(けいがい)・連翹(れんぎょう)・防風 | 表邪解散・清熱解毒 |
| 清熱瀉火 | 黄芩・黄連・黄柏(おうばく) | 強い清熱・消炎 |
| 活血 | 川芎・当帰・芍薬 | 血行改善・瘀血解消 |
| 解毒 | 桔梗(ききょう)・甘草 | 排膿・解毒・調和 |
| 滋陰 | 地黄(じおう) | 血虚・陰虚(津液不足)補正 |
「皮膚が浅黒く・手足の冷え・貧血傾向」という荊芥連翹湯の特徴的な証は、漢方の「血熱(けつねつ)」と「瘀血(おけつ)」が共存する病態を反映しています。体の内部に熱が籠もりながら、末梢の血流は悪い(手足の冷え)という複雑な状態に対応する多味の処方です。
慢性副鼻腔炎・慢性扁桃炎等の「慢性・持続性の炎症」に有効とされ、単なる清熱(一時的な熱取り)ではなく、体質改善を含む長期的なアプローチに適します。
【シンイ(辛夷)の生薬学と作用機序】
シンイ(辛夷)はモクレン科植物(コブシ Magnolia kobus・タムシバ M. salicifolia・ハクモクレン M. heptapeta 等)の花蕾を乾燥させた生薬です。
主要成分:
- マグノロール(Magnolol)・ホノキオール(Honokiol): 抗炎症・抗菌
- コクロウリン(Coclaurine)・サリカリン(Salicarine)等のアルカロイド
- シネオール・オイゲノール等の精油成分: 鼻腔粘膜への刺激・血管収縮(鼻通り改善)
現代薬理学的な作用:
1. 鼻腔粘膜の血管収縮(充血解消・鼻詰まり改善)
2. 鼻粘膜の線毛運動促進(粘液・膿の排出促進)
3. 抗炎症(COX阻害・サイトカイン産生抑制)
「シンイ(辛夷)」は葛根湯加川芎辛夷・辛夷清肺湯の両方に含まれる鼻疾患漢方の「要(かなめ)」の生薬です。
【鼻疾患漢方の選択実務と受診勧奨】
登録販売者が鼻の漢方を選択する際の参考フロー:
```
鼻症状の性質は?
├── 急性・発熱・頭痛あり → 葛根湯加川芎辛夷(かぜ初期〜鼻炎)
├── 膿性・黄色い鼻汁・熱感・体力あり → 辛夷清肺湯(副鼻腔炎・蓄膿症)
└── 慢性・繰り返す・皮膚浅黒い・体力あり → 荊芥連翹湯(慢性副鼻腔炎・慢性炎症)
```
受診勧奨が必要な場合:
- 片側のみの鼻詰まり(鼻腔腫瘍等)
- 血性鼻汁(鼻腔内出血・腫瘍)
- 38℃以上の発熱を伴う頭痛・顔面痛(急性副鼻腔炎の重症化・頭蓋内合併症)
- 漢方処方を2〜4週間使用して改善なし
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第8節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第8節「鼻に用いる薬(漢方処方製剤)」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。