登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問51:主な医薬品とその作用(生薬製剤・漢方の生薬)
生薬の基原(植物・動物種と薬用部位)と主な作用に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アサイコ(柴胡)はセリ科植物ミシマサイコ等の根を基原とし、抗炎症・解熱・鎮痛・精神安定作用を持ち、小柴胡湯・柴胡桂枝湯等の漢方処方の中心的生薬として用いられる。
- イボウフウ(防風)はセリ科植物ボウフウの根・根茎を基原とし、発汗・解熱・鎮痛・抗炎症作用を持ち、かぜ薬(九味檳榔湯等)や皮膚疾患の漢方処方(消風散等)に配合される。
- ウサンザシ(山査子)はバラ科植物サンザシの果実を基原とし、健胃・消化促進・脂肪の消化助成作用があるとされ、食欲不振・消化不良の改善を目的として用いられる。
- エブクリョウ(茯苓)はサルノコシカケ科のマツホドの菌核を基原とし、利水・健胃・鎮静作用を持ち、多くの漢方処方(六君子湯・当帰芍薬散等)に配合される。
- オロクジョウ(鹿茸)はシカ科動物のオスの幼角(角の硬化前・毛が生えた柔らかい角)を基原とし、疲労回復・強壮・造血作用が期待されるが、強心作用があるため心臓に疾患がある人への使用は禁忌とされている。正答
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正答はオです。
ロクジョウ(鹿茸)は「強心作用があるため心臓疾患がある人への使用は禁忌」という記述が誤りです。ロクジョウは手引きで「強壮・血行促進・強精(性機能の亢進)」を目的とする滋養強壮薬の生薬とされ、「心臓疾患がある人への禁忌(強心作用)」が主要な注意点として手引きに明記されているわけではありません。強心作用を主体とする生薬はセンソ(蟾酥)やゴオウ(牛黄)です。ロクジョウと強心の組み合わせが誤りの核心です。
ア(サイコ:セリ科・根・抗炎症)、イ(ボウフウ:セリ科・根根茎・解熱)、ウ(サンザシ:バラ科・果実・健胃)、エ(ブクリョウ:サルノコシカケ科・菌核・利水)はすべて正しい記述です。
暗記ポイント: ロクジョウ→「シカ科・雄鹿の幼角・強壮/血行促進/強精」。強心はセンソ・ゴオウ。
登録販売者試験頻出生薬の基原・作用まとめ:
| 生薬名 | 基原(植物/動物・科名) | 薬用部位 | 主な作用 |
|---|---|---|---|
| サイコ(柴胡) | セリ科ミシマサイコ等 | 根 | 抗炎症・解熱・鎮痛・精神安定 |
| ボウフウ(防風) | セリ科ボウフウ等 | 根・根茎 | 発汗・解熱・鎮痛・抗炎症 |
| サンザシ(山査子) | バラ科サンザシ等 | 果実 | 健胃・消化促進(脂肪分解助成) |
| ブクリョウ(茯苓) | サルノコシカケ科(担子菌類)マツホド | 菌核 | 利水・健胃・鎮静 |
| ロクジョウ(鹿茸) | シカ科(Cervidae)動物 | 雄鹿の幼角 | 強壮・血行促進・強精(性機能亢進) |
各選択肢の解説:
- ア(正): サイコ(柴胡)の基原はセリ科植物ミシマサイコ(Bupleurum falcatum)の根です。サイコサポニン等の成分が抗炎症・解熱・精神安定(抗うつ様作用)を示します。小柴胡湯・柴胡桂枝湯・補中益気湯等多くの漢方処方に欠かせない中心的生薬です。
- イ(正): ボウフウ(防風)はセリ科植物 Saposhnikovia divaricata(防風)の根・根茎が基原です。クロモン類・多糖体を含み、発汗促進・解熱・鎮痛・抗炎症作用を持ちます。「防風通聖散」の名称にも「防風」が含まれており、消風散・清上防風湯等皮膚疾患の漢方にも配合されます。
- ウ(正): サンザシ(山査子)はバラ科植物サンザシ(Crataegus cuneata 等)の果実が基原です。リンゴ酸・クエン酸等の有機酸と消化酵素様成分(リパーゼ等)を含み、食欲不振・消化不良・脂質の多い食事後の消化促進に用いられます。
- エ(正): ブクリョウ(茯苓)はサルノコシカケ科の菌類マツホド(Wolfiporia cocos)の菌核(地中に存在するスクレロチウム)です。β-パキマン(β-グルカン多糖体)が主成分で、利水(余分な水分排泄)・健胃・鎮静作用を持ちます。六君子湯・当帰芍薬散・猪苓湯等、非常に多くの漢方処方に配合されます。
- オ(誤・正答): ロクジョウ(鹿茸)はシカ科動物(マンシュウアカジカ等)の雄鹿の幼角(毛の生えた柔らかい角)が基原で、手引きでは「強壮・血行促進・強精(性機能の亢進)」が主な目的とされます。強心作用が主体の生薬はセンソ(蟾酥・ヒキガエルの毒腺分泌物)やゴオウ(牛黄・ウシの胆嚢結石)です。ロクジョウに「強心作用があるため心臓疾患の禁忌」という記述は誤りです。
【サイコサポニンの薬理と小柴胡湯の使用上の注意】
サイコ(柴胡)の主成分サイコサポニン(a、b、c、d型)はトリテルペン系サポニンで以下の薬理作用が報告されています:
1. 抗炎症: 副腎皮質ホルモン(コルチゾール)分泌促進による間接的な抗炎症・免疫調整
2. 解熱: IL-1β等の発熱性サイトカイン産生抑制
3. 抗線維化: 肝星細胞の活性化抑制→肝線維化・肝硬変への進行を抑制
4. 抗うつ様・精神安定: セロトニン系への影響(モノアミン代謝改善)
小柴胡湯と間質性肺炎の問題:
小柴胡湯(サイコ・ハンゲ・オウゴン・ニンジン・タイソウ・カンゾウ・ショウキョウ)は慢性肝炎への適応があったため1990年代に日本で大量処方されましたが、間質性肺炎(過敏性肺臓炎)の副作用が多発しました(死亡例を含む)。現在は:
- 「インターフェロン製剤との併用禁忌」
- 「肝機能障害がある患者への慎重投与」
- 「定期的な肺機能・胸部X線の確認」
が警告として記載されています。この事例は「漢方薬は自然だから安全」という過信が引き起こした問題として、登録販売者が認識すべき重要な歴史的事例です。
【ブクリョウ(茯苓)の菌類生薬としての特性】
ブクリョウはマツホド(Wolfiporia cocos:旧名Poria cocos)という担子菌類(キノコの仲間)の菌核です。菌核とはキノコが栄養を蓄えた硬い塊で、アカマツ・クロマツ等の根に寄生して地中に形成されます。
主要成分と作用:
| 成分 | 作用 |
|---|---|
| β-パキマン(β-1,3-グルカン多糖体) | 免疫調整・抗腫瘍(マクロファージ活性化)・利水 |
| パキミン酸・エブリコ酸等(テルペノイド) | 抗炎症・抗菌 |
| タンパク質結合多糖体 | 免疫賦活 |
「利水」とは余分な体内の水分(「痰湿(たんしつ)」)を排出する作用で、現代医学的には利尿促進・消化管での水分吸収調整に相当します。
ブクリョウが配合される代表的漢方処方:
- 六君子湯(胃腸虚弱・食欲不振)
- 当帰芍薬散(婦人科・浮腫)
- 猪苓湯(泌尿器・排尿困難)
- 五苓散(浮腫・二日酔い・めまい)
- 半夏白朮天麻湯(めまい・頭痛)
【ロクジョウ(鹿茸)と強壮系動物性生薬の正確な整理】
補足: 厚労省手引き第3章では、ロクジョウはシカ科(Cervidae)の Cervus nippon Temminck(マンシュウアカジカ等)の雄鹿の幼角を基原とし、「強壮、血行促進、強精(性機能の亢進)等」を期待して用いられるとされます。設問オの「強心作用があるため心臓疾患に禁忌」という主要注意点は手引きには記載されておらず、強心作用を主体とするのはセンソ・ゴオウであるため、オが誤り(=正答)です。
動物性強壮生薬の正確な基原・主作用比較:
| 生薬名 | 基原動物 | 科 | 薬用部位 | 主作用 |
|---|---|---|---|---|
| ロクジョウ(鹿茸) | マンシュウアカジカ等シカ類 | シカ科 | 雄鹿の幼角 | 強壮・血行促進・強精 |
| ゴオウ(牛黄) | ウシ | ウシ科 | 胆嚢結石 | 強心・解熱・鎮静・解毒 |
| センソ(蟾酥) | シナヒキガエル等 | ヒキガエル科 | 毒腺分泌物乾燥品 | 強心(微量・注意)・局所麻酔 |
| ハンピ(反鼻) | マムシ | クサリヘビ科 | 皮を除いた全体 | 疲労回復・強壮 |
| コウカ(紅花)※植物 | (ベニバナ) | キク科 | 管状花 | 活血・通経 |
センソ(蟾酥)の強心作用の機序:
センソには強心配糖体類似成分(ブファジエノリド類)が含まれており、心筋のNa⁺-K⁺-ATPase(ジギタリスと同じ標的)を阻害することで心筋収縮力を増強します。「少量では強心、過量では毒」という特性があり、口に含んだだけでも舌のしびれが生じることから、「口中に含ませない(含有する心臓疾患薬は口に入れない)」の使用上の注意が重要です。
この知識から、「強心作用のある生薬=センソ・ゴオウ」「ロクジョウ≠強心」という整理が試験問題でも重要です。
【サンザシとクラタエグス(西洋山査子)の比較:生薬の地域差】
日本で用いられるサンザシ(Crataegus cuneata: カンサンザシ)と、欧州で広く使用されるセイヨウサンザシ(Crataegus monogyna・Crataegus laevigata: クラタエグス)は同属異種です。
セイヨウサンザシ(クラタエグス)の成分・作用:
- オリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)・フラボノイド(ビテキシン等)
- 作用: 冠動脈拡張・心筋への酸素供給改善・末梢血管拡張・血圧降下
- 欧州(ドイツ)では心機能低下の補助療法として医薬品承認(Hv E7: クラタエグス)
日本の「サンザシ」(漢方処方・健胃薬)は消化促進が主目的で、欧州のクラタエグス(心臓薬)とは用途が異なります。同じ「山査子」でも国・用途によって使い方が大きく異なる点が、生薬の国際的な比較で重要な知識です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答オは妥当(一意)。一次ソース(手引き・武田/ウチダ和漢薬等)で、ロクジョウ=シカ科 Cervidae 雄鹿の幼角、作用は「強壮・血行促進・強精」で確認→「強心作用があるため心臓疾患に禁忌」は誤りで正答オ成立。強心主体はセンソ・ゴオウ。サイコ=セリ科ミシマサイコの根、ボウフウ=セリ科の根/根茎、サンザシ=バラ科の果実(健胃)、ブクリョウ=サルノコシカケ科マツホドの菌核(利水)はいずれも手引き準拠で正。standard表・本文のロクジョウ作用「造血」「ウシ科?要確認」を手引き準拠(シカ科・強壮/血行促進/強精)に補正。 -->
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節・第17節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第17節「滋養強壮保健薬(生薬製剤)」および第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。