第3章 主な医薬品とその作用79主な医薬品とその作用(成分群の共通注意・横断テーマ)

登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問79:主な医薬品とその作用(成分群の共通注意・横断テーマ)

抗コリン成分を含む一般用医薬品の使用上の注意に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 抗コリン成分は副交感神経のムスカリン受容体を遮断するため、瞳孔括約筋が収縮して縮瞳を引き起こし、閉塞隅角緑内障の患者では眼圧が低下する。
  • 抗コリン成分が膀胱の排尿筋(排尿収縮筋)を刺激することで排尿が促進されるため、前立腺肥大の患者には特に適している。
  • 抗コリン成分は口腔内の唾液分泌を抑制するため口渇を引き起こすことがあり、これは涙液分泌量を調べるシルマー試験によって測定される症状である。
  • 抗コリン成分による副作用(口渇・散瞳・排尿困難)は、副交感神経のムスカリン受容体(M₁〜M₃)の遮断によって生じるため、緑内障・排尿困難がある人は使用前に医師・薬剤師等に相談すべきである。正答
  • メチルスコポラミン・ブチルスコポラミンを有効成分とする胃腸鎮痛鎮痙薬は抗コリン成分であるが、抗コリン作用が強く出ることはないため、閉塞隅角緑内障の人でも追加相談なく使用できる。
正答:抗コリン成分による副作用(口渇・散瞳・排尿困難)は、副交感神経のムスカリン受容体(M₁〜M₃)の遮断によって生じるため、緑内障・排尿困難がある人は使用前に医師・薬剤師等に相談すべきである。

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正答はエです。

抗コリン成分は副交感神経のムスカリン受容体を遮断(ブロック)します。その結果、次の3つの副作用が横断的に生じます。

  • 口渇:唾液腺のM₃受容体が遮断され、唾液が出なくなる
  • 散瞳・眼圧上昇:瞳孔括約筋が弛緩して散瞳→閉塞隅角緑内障では眼圧が急上昇
  • 排尿困難:膀胱の排尿筋の収縮が抑制される→尿が出しにくくなる

そのため「緑内障・排尿困難がある人は使用前に相談」が正しい注意事項です。アは縮瞳でなく散瞳、イは排尿促進でなく排尿困難、オは緑内障患者でも相談が必要、がそれぞれ誤りです。

標準試験対策の基準レベル

抗コリン成分の主な種類と含有する医薬品カテゴリ:

| 抗コリン成分 | 代表的な含有カテゴリ |

|---|---|

| スコポラミン臭化水素酸塩 | かぜ薬(鼻汁・くしゃみ抑制)、乗り物酔い薬 |

| メチルスコポラミン臭化物 | 胃腸鎮痛鎮痙薬 |

| ブチルスコポラミン臭化物 | 胃腸鎮痛鎮痙薬 |

| ジサイクロミン塩酸塩 | 胃腸鎮痛鎮痙薬 |

| ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 抗ヒスタミン薬(抗コリン作用を併有) |

| クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 抗ヒスタミン薬(抗コリン作用を併有) |

| トリヘキシフェニジル塩酸塩 | 中枢性抗コリン(一部OTC) |

各選択肢の解説:

  • ア(誤): 抗コリン成分は瞳孔括約筋(縮瞳に働く副交感神経支配)を遮断するため、瞳孔は拡大(散瞳)します。散瞳により隅角が閉塞されやすい閉塞隅角緑内障では、房水の排出が障害されて眼圧が上昇します。「縮瞳・眼圧低下」は逆です。
  • イ(誤): 抗コリン成分は膀胱の排尿筋(壁平滑筋・M₃受容体)の収縮を抑制するため、排尿が困難になります。前立腺肥大で既に排尿困難がある人では特に悪化しやすいため禁忌・要相談です。
  • ウ(誤): 口渇の記述自体は正しいですが、シルマー試験は涙液分泌量の検査(眼科的検査)であり、唾液分泌の試験ではありません。記述が不正確なため誤りです。
  • エ(正): 抗コリン成分は副交感神経のムスカリン受容体を広く遮断するため、眼(散瞳・眼圧上昇)・口(唾液抑制→口渇)・膀胱(排尿筋弛緩→排尿困難)に共通の副作用が出ます。緑内障・排尿困難がある人は使用前に医師等へ相談が必要です。
  • オ(誤): ブチルスコポラミン等の胃腸鎮痙薬は典型的な抗コリン成分であり、眼圧上昇・排尿困難・口渇の副作用があります。閉塞隅角緑内障の人は使用前に必ず医師・薬剤師に相談が必要です。「追加相談なく使用できる」は誤りです。
上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【抗コリン成分の薬理機序と受容体サブタイプ別の臓器影響】

ムスカリン受容体のサブタイプと臓器ごとの役割:

| 受容体サブタイプ | 主な分布部位 | 遮断による影響 |

|---|---|---|

| M₁ | 神経節、胃壁細胞 | 胃酸分泌抑制、神経伝達抑制 |

| M₂ | 心筋(洞結節) | 心拍数増加(迷走神経抑制) |

| M₃ | 平滑筋(膀胱・腸・気管支)、外分泌腺(唾液腺・汗腺・涙腺) | 平滑筋弛緩、分泌抑制 |

| M₄ | 中枢神経(線条体) | 錐体外路系調整 |

一般用医薬品に含まれる抗コリン成分は主にM₃受容体を介して末梢性の副作用を生じさせます。

臓器別の詳細な副作用機序:

(1)眼(散瞳・眼圧上昇):

  • 瞳孔括約筋はM₃受容体を介した副交感神経支配で収縮(縮瞳)します。
  • 抗コリン成分による遮断→瞳孔散大筋(交感神経支配)の相対優位→散瞳
  • 閉塞隅角緑内障では、散瞳により虹彩根部が隅角(房水の排出口)を物理的に閉塞→房水の流出障害→眼圧の急激な上昇(急性緑内障発作)を引き起こす危険があります。
  • 開放隅角緑内障では隅角閉塞のリスクは低いが、眼圧に影響しうるため慎重投与が必要です。

(2)口腔(口渇):

  • 大唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)および小唾液腺はM₃受容体を介して唾液分泌が促進されています。
  • 抗コリン成分による遮断→唾液の漿液性成分(水分の多い唾液)の分泌が著明に減少→口渇感
  • 口渇が強い場合、虫歯・歯周病・口腔カンジダ症のリスクが高まります(唾液の自浄・殺菌作用の低下)。

(3)膀胱・尿道(排尿困難):

  • 排尿時は排尿筋(膀胱壁の平滑筋)がM₃受容体を介して収縮し、内尿道括約筋が弛緩することで尿が押し出されます。
  • 抗コリン成分による遮断→排尿筋の収縮抑制→尿の押し出し力が低下→排尿困難・尿閉
  • 前立腺肥大(良性前立腺過形成)の患者では、すでに尿道が圧迫・狭窄されているため、排尿筋の収縮力低下が加わると尿閉(急性尿閉)に至るリスクが高く、使用禁忌に準じる対応が必要です。

(4)その他の抗コリン性副作用:

  • 汗腺の分泌抑制→体温上昇(高温環境下での使用は特に注意)
  • 心拍数増加(M₂遮断による迷走神経抑制)
  • 腸の蠕動運動抑制→便秘
  • 気管支平滑筋弛緩(少量では有益だが過剰では痰の粘稠化)

抗コリン成分が含まれる主な一般用医薬品カテゴリと登録販売者の実務対応:

| カテゴリ | 代表成分 | 確認すべき禁忌・要相談 |

|---|---|---|

| かぜ薬(鼻汁・くしゃみ抑制) | スコポラミン臭化水素酸塩 | 緑内障・排尿困難・心臓病(頻脈)・高齢者 |

| 乗り物酔い防止薬 | スコポラミン臭化水素酸塩 | 同上 |

| 胃腸鎮痛鎮痙薬 | ブチルスコポラミン・メチルスコポラミン | 緑内障・排尿困難(前立腺肥大) |

| 内服アレルギー薬・かぜ薬 | 第1世代抗ヒスタミン(クロルフェニラミン等)の抗コリン作用 | 緑内障・排尿困難・高齢者(転倒リスク) |

| 睡眠補助薬 | ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗コリン作用あり) | 緑内障・排尿困難・高齢者 |

登録販売者として販売前に確認すべき事項:

1. 緑内障の診断を受けているか(特に閉塞隅角型)

2. 前立腺肥大・排尿困難の既往があるか

3. 高齢者(口渇・転倒・せん妄リスク増大)であるか

4. 他に抗コリン作用を持つ薬(三環系抗うつ薬・抗精神病薬等)を服用していないか(抗コリン負荷の加算)

上記のいずれかに該当する場合は販売を控え、医師・薬剤師への相談を勧めます。これらは「してはいけないこと」または「相談すること」として添付文書に記載されており、登録販売者が確認義務を負う重要事項です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 主な医薬品の副作用・成分の使用上の注意(抗コリン成分の共通注意 各節横断) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

関連論点

抗コリン成分の共通注意(緑内障・排尿困難・口渇頻出度A

第3章 主な医薬品とその作用の他の問題

1
主な医薬品とその作用(かぜ薬・解熱鎮痛薬)
2
主な医薬品とその作用(アレルギー薬・抗ヒスタミン薬)
3
主な医薬品とその作用(漢方処方・生薬)
4
主な医薬品とその作用(かぜ薬)
5
主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
6
主な医薬品とその作用(胃腸薬・制酸薬)

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