労働衛生(有害業務)19第一種作業環境測定と評価

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問19:作業環境測定と評価

作業環境測定のA測定における評価方法に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • A測定は、単位作業場所のランダムに選んだ測定点・測定時刻で実施し、測定値の分布から作業場所全体の有害物質濃度を統計的に評価する方法である。
  • A測定の評価では、測定値の対数正規分布を仮定し、幾何平均値(GM)と幾何標準偏差(GSD)を算出して、管理濃度を超える確率(超過確率)を推計する。
  • A測定のみで管理区分が決定される場合(B測定を実施しない業務等)、第1管理区分は管理濃度超過確率がおおよそ5%未満、第2管理区分は5%以上50%未満、第3管理区分は50%以上に対応する。
  • A測定の測定点数は、単位作業場所の広さに関わらず最低2点以上あれば足り、測定点が2点の場合でも統計的な評価(幾何平均値・幾何標準偏差の計算)が完全に行えるため、測定精度に問題はない。正答
  • A測定の測定時刻は、有害物質の発生状況が通常の状態(代表的な作業が行われているとき)を反映するよう、測定時刻を適切に選定する必要がある。
正答:A測定の測定点数は、単位作業場所の広さに関わらず最低2点以上あれば足り、測定点が2点の場合でも統計的な評価(幾何平均値・幾何標準偏差の計算)が完全に行えるため、測定精度に問題はない。

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誤りはエです。A測定の測定点数は「最低2点で十分」ではなく、作業環境測定基準により単位作業場所を6m以下のグリッドに区切り、その交点(最低5点以上)で測定することが求められます。測定点が2点では統計的な精度(幾何平均値・幾何標準偏差の信頼性)が大幅に低下し、適切な管理区分の判定ができません。「測定点が2点でも問題ない」という記述は誤りです。

ア(A測定のランダム測定)・イ(対数正規分布の仮定・GM・GSD算出)・ウ(管理区分の超過確率対応)・オ(代表的な作業状況での測定)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): A測定の本質は「単位作業場所全体の代表的な濃度レベルの把握」です。ランダムに選んだ複数の測定点・測定時刻(有害物発生状況が変動する作業の場合)で測定し、その統計値で全体を評価します。
  • イ(正): 作業環境中の有害物質濃度は対数正規分布(lognormal distribution)に従うことが多いため、幾何平均(GM=測定値の対数の算術平均の指数)と幾何標準偏差(GSD=測定値の対数の標準偏差の指数)を用います。これにより管理濃度超過確率を推計します。
  • ウ(正): 管理区分と超過確率の対応(A測定のみで判定する場合): 第1管理区分(超過確率<5%)・第2管理区分(5〜50%)・第3管理区分(≥50%)。数字が大きい管理区分ほど状況が悪い点(第1が最良・第3が最悪)に注意。
  • エ(誤): 作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)では、A測定の測定点は「単位作業場所の床面を6m以下のグリッドに区切り、各グリッドの中心点を測定点とする」かつ「最低5点以上」を原則としています。2点では統計的な精度が著しく不十分です(GSDの計算には少なくとも3〜5点以上が必要)。
  • オ(正): A測定は「通常の状態の作業を代表する測定」であるため、作業が休止中・異常な高負荷状態等での測定は避け、代表的な作業が行われているときに測定します。これにより測定値が実態を適切に反映します。

A測定の測定点設定の原則(作業環境測定基準):

  • 単位作業場所を等間隔のグリッドで区切る(最大6m×6mグリッド)
  • 各グリッドの中心点(格子点)を測定点とする
  • 最低5点以上(測定点数が5点未満では統計精度が不十分)
  • 特に有害物の発生量が多い場所をカバーするよう設定
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

A測定の設計思想は「作業場所全体の濃度分布を統計的に把握する」ことにあります。作業環境中の有害物質濃度は場所・時刻によって変動するため、単一点の測定では全体像を把握できません。複数の測定点・時刻でのデータを収集し、統計的な手法で「管理濃度を超える可能性がどの程度か」を評価することで、科学的根拠のある作業環境管理が可能となります。

対数正規分布を仮定する理由:

  • 実測データ: 作業環境中の化学物質濃度は「正規分布(ベル型)」ではなく「対数正規分布(log-normal)」に従うことが多い
  • 対数正規分布の特性: 左右非対称(右裾が長い)・値が0以下にならない(濃度は非負)・稀に非常に高い値が出る(ピーク濃度)という実測データの特徴と一致
  • 統計量: 幾何平均(GM)は対数正規分布の「中心的傾向」・幾何標準偏差(GSD)は「ばらつき」を表す

測定点数と統計的精度の関係:

  • GSDの計算: 分散の推定には(n-1)の自由度が必要→n=2では自由度1のみ→信頼区間が非常に広い→管理区分の判定精度が著しく低下
  • 最低5点という基準: 実用上の精度確保のための最小ラインとして設定
  • 点数が多いほど推定精度は向上(10点・20点と増やすことが望ましい)
  • 測定点数が少ない場合の代替評価法(等価評価法等)もあるが、通常は5点以上が基本

【実務・条文構造】

単位作業場所の概念と設定(作業環境測定法・作業環境測定基準):

単位作業場所の定義:

  • 同一の有害因子に曝露される可能性がある作業環境の一つの管理単位
  • 通常は一つの部屋・フロアの一区画等が単位作業場所として設定される
  • 発生源の配置・換気条件・作業者の行動範囲等を考慮して区切る

A測定の実施手順:

1. 単位作業場所の設定: 有害因子の種類・発生源・作業範囲を確認

2. 測定点の設定: 6m以下のグリッドの格子点(最低5点以上)

3. 測定時刻の設定: 通常の代表的な作業が行われている時間帯にランダムに配置

4. サンプリング・分析: 捕集管・吸光光度法・GC分析等で各測定点の濃度を測定

5. 統計処理: GM・GSDを算出→管理濃度超過確率の計算→管理区分の判定

6. 記録・報告: 測定結果・評価結果を記録し3年間保存

B測定との組み合わせによる最終管理区分の決定:

  • A測定の暫定区分がでた後、B測定値(管理濃度の1.5倍との比較)により最終区分が決定
  • B測定が管理濃度の1.5倍を超える場合: 暫定区分から1段階悪化(第1→第2・第2→第3)
  • B測定が管理濃度の1.5倍以下の場合: 暫定区分がそのまま最終区分

第3管理区分での義務(安衛則第577条等):

  • 直ちに有害物の濃度を低下させる措置(局所排気装置の増強・発生源の密閉化等)
  • 措置が完了するまでの間: 呼吸用保護具の使用(有効なもの・フィット確認済み)
  • 改善後の再測定(改善の効果確認)
  • 管理区分3の事業場での医師による健康診断(一定の場合)

【試験での位置づけ】

A測定問題の最頻出は「A測定の定義(単位作業場所全体の平均的濃度把握)」「対数正規分布の仮定・GM・GSD」「管理区分と超過確率の対応(第1<5%・第2=5〜50%・第3≥50%)」「測定点数の基準(最低5点・6mグリッド)」「B測定との組み合わせで最終区分が決まる」の5点です。エのような「2点で十分」という測定点数の過小評価は、測定精度の根拠(統計的精度)を否定した典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: A測定の「ランダム」な測定点・時刻の選定は、「発生源の真上で高濃度が出そうなときに測る」という偏った測定を避けるためです。ランダム選定により測定結果が客観的な代表値として機能します。ただし完全ランダムではなく、単位作業場所全体をカバーするグリッド設定の中での系統的ランダムサンプリングです。
  • イ: 幾何平均(GM)は「10の(log値の平均乗)」として計算されます。例: 測定値が5, 10, 20ppmの場合、log(5)=0.699・log(10)=1.000・log(20)=1.301→平均=1.000→GM=10^1.000=10ppm。これは算術平均(11.7ppm)より低い値となります(対数正規分布では幾何平均<算術平均)。
  • ウ: 超過確率5%という基準は「100回測定したとき5回以下しか管理濃度を超えない」という状態が第1管理区分(良好な管理状態)の目安です。50%以上が第3管理区分(半数以上の状況で管理濃度を超えている可能性がある)であり、この区分では即座の改善措置が必要です。
  • エ: 実際の作業環境測定では5点が最低ラインですが、広い作業場・複雑な発生源配置では10〜20点以上を測定することも多く、測定精度が向上します。作業環境測定士(資格者)がグリッド設定・測定点数の決定・統計処理を担当することで、科学的な評価が保証されます。
  • オ: 「通常の状態」の確認は重要です。測定時に意図的に換気を強化したり、有害物の発生量が少ない閑散期に測定したりすることは「通常の状態」ではなく、真の作業環境を過小評価した測定となります。産業医・衛生管理者が測定の実施状況を監督することが重要です。

【根拠】作業環境測定法・作業環境測定基準(告示)・作業環境評価基準(告示)。A測定の測定点数(最低5点・6mグリッド)・対数正規分布の仮定・管理区分と超過確率の対応は測定基準・評価基準に規定。

【補足】エ(誤): A測定の測定点は最低5点・6m以下グリッドの格子点(2点では統計精度が不十分)。管理区分: 第1(超過確率<5%)・第2(5〜50%)・第3(≥50%)。対数正規分布→GM・GSDを用いて評価。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 作業環境測定法・作業環境測定基準(告示)・作業環境評価基準(告示)。A測定の測定点数の最低基準(5点以上・6m格子以上)は作業環境測定基準に規定。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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