衛生管理者 関係法令(有害業務) 問12:粉じん障害防止規則(粉じん則)・保護具
粉じん障害防止規則(粉じん則)における呼吸用保護具に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア防じんマスクは、気体(蒸気・ガス)状の有害物に対しても有効であり、有機溶剤蒸気が発生する作業場においても防じんマスクを使用することができる。
- イ同一の防じんマスクは、いかなる作業場でも共用することができ、複数の労働者が交互に使用してよい。
- ウ粉じん作業において局所排気装置やプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難な場合には、有効な防じんマスク等の呼吸用保護具を使用させることで対応しなければならない。正答
- エ防じんマスクの等級のうち、国家検定により最も高い等級(RS3・DS3等)は、溶接ヒュームや石綿(アスベスト)粉じん等のごく細かい粒子に対しても有効であるが、放射性粉じんには使用できない。
- オ粉じん作業を行う際に使用する防じんマスクのフィルターは、破損・汚染がなければ継続的に再使用してよく、フィルターの交換基準は特に規定されていない。
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正しいのはウです。粉じん作業において局所排気装置の設置が著しく困難な場合は、有効な呼吸用保護具(防じんマスク等)を使用させることで対応しなければなりません(粉じん則第27条)。局所排気装置が第一選択の対策であり、それが困難な場合の代替措置として保護具を使用させます。
各誤りの要点: ア→防じんマスクは固体粒子(粉じん)を捕集するフィルター式であり、気体(蒸気・ガス)には効果がありません。有機溶剤蒸気には防毒マスク(活性炭フィルター等)が必要です。イ→個人専用が原則であり、複数人の共用は衛生上・健康管理上問題があります。エ→RS3・DS3は放射性粉じんにも使用できる等級があります(規格上は放射性物質用の区分が存在します)。「放射性粉じんには使用できない」は誤りです。オ→フィルターには寿命・交換基準があり、汚染・破損の有無にかかわらず適切に交換が必要です。
防じんマスクの主な等級と用途:
| 等級 | 性能(粒子捕集効率) | 主な用途 |
|---|---|---|
| DS1・RS1 | 捕集効率80%以上 | 比較的粗い粉じん作業 |
| DS2・RS2 | 捕集効率95%以上 | 一般的な粉じん・溶接ヒューム等 |
| DS3・RS3 | 捕集効率99.9%以上 | 石綿・放射性粉じん・超高危険粉じん |
R型=使い捨て型ではない(フィルター交換型・Reusable)
D型=使い捨て型(Disposable)
数字が大きいほど高性能(高捕集効率)。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 防じんマスクは「粒子状物質(固体粉じん・ミスト等)」を捕集するフィルター式マスクであり、有機溶剤蒸気等の気体は捕集できません。有機溶剤蒸気には活性炭等の吸収缶を使用した防毒マスク(または送気マスク)が必要です。
- イ(誤): 防じんマスクは個人専用が原則です。複数人による共用は感染症リスク・フィルターの汚染管理の問題があり、安衛則第593条でも労働者ごとに専用のものを使用させることが求められています。
- ウ(正): 粉じん則第27条の通り、設置が著しく困難な場合は保護具(防じんマスク等)で代替します。ただし設備対策(局所排気装置等)が第一選択であり、保護具は「最後の手段」として位置づけられています。
- エ(誤): RS3・DS3等の最高等級防じんマスクは放射性粉じんにも使用できます(国家検定の「放射性物質用防じんマスク」等の区分が存在)。「放射性粉じんには使用できない」は誤りです。
- オ(誤): フィルターには捕集効率の低下・破損・汚染等による使用限界があります。使用者は定期的にフィルターの状態を確認し、呼吸抵抗の増大・破損・変色等が認められた場合は交換しなければなりません。
【理論的背景】
粉じん対策の優先順位は「①発生源での制御(密閉化・湿潤化)→②局所排気装置・プッシュプル型換気装置→③全体換気→④呼吸用保護具」という工学的管理の階層(ヒエラルキー)に従います。個人用保護具(防じんマスク等)は最後の手段であり、工学的対策が困難な場合や短期間の作業・補修時等に限って使用を義務付けるという位置づけです。
防じんマスクの種類と性能の考え方:
防じんマスクの性能は「粒子の大きさ(粒径)」「粒子の種類(オイルミスト耐性の有無)」「捕集効率(粒子をどれだけ除去できるか)」で規定されます。日本の国家検定(検定規格は厚生労働省告示)では、粒子捕集効率80%(DS1/RS1)・95%(DS2/RS2)・99.9%(DS3/RS3)の3等級と、オイルミスト耐性の有無(N型・R型・P型に相当)を組み合わせた規格となっています。最も危険な粉じん(石綿・放射性粉じん)にはRS3・DS3が使用されます。
防じんマスクと防毒マスクの根本的な違い:
- 防じんマスク: フィルター(繊維状・多孔質素材)で粒子を機械的に捕集。気体は通過する。
- 防毒マスク: 活性炭等の吸収缶で有機溶剤蒸気・ハロゲンガス等を吸着・化学反応により除去。粒子除去能力は低い。
- 送気マスク・空気呼吸器: ボンベや圧縮空気管から清浄空気を供給。粒子・気体の両方に対応可能(酸欠環境でも使用可能)。
【実務・条文構造】
粉じん作業での呼吸用保護具(粉じん則第27条〜第28条):
- 保護具使用義務の発動条件: 局所排気装置・プッシュプル型換気装置の設置が著しく困難な場合、または第27条ただし書きに定める特定の短期間作業等
- 適切な保護具の選択基準: 粉じんの種類・粒径・作業の性質に応じた等級・型式の選択
- 管理義務(安衛則第593条): 各労働者に専用のものを使用させること・清潔な状態で保存・定期的な点検・フィルター交換
防じんマスクのフィルター管理(実務上の基準):
- フィルターの交換タイミング: ①呼吸抵抗が増大した場合(フィルターが目詰まり)②捕集効率が基準値以下になった場合(破損・変形)③清潔さを保てない場合(汚染等)
- 使い捨て型(D型): 1日または1作業終了ごとに廃棄
- 使い捨てでない型(R型): フィルターの交換時期を使用者・管理者が判断
石綿作業での保護具選択(石綿則):
- 石綿等の除去作業: RS3またはDS3の防じんマスクが必要(最高等級を使用することが義務)
- フードウエア(電動ファン付き呼吸用保護具: PAPR)の使用も推奨される
【試験での位置づけ】
呼吸用保護具問題の頻出は「防じんマスクは気体(蒸気)には効果がない(防毒マスクとの違い)」「局所排気装置が困難な場合に呼吸用保護具を使用(保護具は最後の手段)」「個人専用使用が原則(共用不可)」の3点です。アのような「防じんマスクで有機溶剤蒸気を防護できる」という誤りは、防じんマスクと防毒マスクの機能を混同させる典型的な引っかけです。用途別の正しいマスクの選択(粒子→防じん・蒸気→防毒・酸欠→送気・空気呼吸器)を表形式で整理して覚えると効果的です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 実際の作業場では「溶接ヒューム(金属酸化物の固体粒子)と溶接ガス(NOx・CO等の気体)が同時に発生する」場合があります。この場合は防じん機能と防毒機能の両方を持つ「防じん機能付き防毒マスク」または送気マスクが必要です。単純に防じんマスクのみ、または防毒マスクのみでは不十分な場合があるため、作業環境の実態把握が保護具選択の前提となります。
- イ: 防じんマスクの共用は感染症(結核等の飛沫感染)のリスクのほか、フィルターの汚染状態が個人によって異なるため、適切な管理が困難になるという問題があります。また面体(フェイスシール)部分は個人の顔の形・サイズに合わせたフィットチェック(シールチェック)が必要であり、他人の面体を使用すると密着性が損なわれ保護効果が低下します。
- ウ: 「局所排気装置の設置が著しく困難な場合」の典型例は、①屋外・移動式の作業(建設現場での石綿解体等)②作業場の構造上の制約③短期間・頻度の低い作業等です。これらの場合でも防じんマスクは「次善の策」であり、できる限り工学的対策を優先することが安衛法の趣旨です。
- エ: 放射性粉じん用の防じんマスク(国家検定RS3等相当)は、原子力・放射線施設での微細な放射性物質粒子の吸入を防止するために使用されます。ただし放射性物質の種類・濃度・作業内容によっては、より高性能な電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)や送気マスクが必要になることもあります。
- オ: フィルターの交換はコスト・手間がかかるため、使用者が「まだ使える」と判断して使い続けることが実務上の問題として指摘されています。事業者は交換基準を明確に定め、定期的な交換を徹底する管理体制を構築する必要があります。使用済みフィルター(特に石綿等の有害粉じんを含むもの)の廃棄も法規制に従って適切に行う必要があります。
【根拠法令】粉じん障害防止規則 第27条(保護具:呼吸用保護具の使用義務)・第28条(保護具の種類・等級)、安衛則第593条(呼吸用保護具の管理:個人専用・清潔保存・点検等)
【補足】防じんマスクは気体(蒸気・ガス)には効果なし(防毒マスクとの違いを明確に)。局所排気装置困難時に保護具で代替(保護具は最後の手段)。個人専用使用が原則。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 粉じん障害防止規則(粉じん則)第27条(保護具:呼吸用保護具の使用義務)・第28条、安衛則第593条(呼吸用保護具の管理)、防じんマスクの規格(国家検定)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。