衛生管理者 関係法令(有害業務) 問20:じん肺法・粉じん障害防止規則(粉じん則)
じん肺法および粉じん障害防止規則(粉じん則)における健康管理に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アじん肺管理区分管理2と決定された労働者については、事業者は直ちに当該労働者を粉じん作業以外の業務に配置転換しなければならない。
- イじん肺管理区分の決定は、じん肺健康診断の結果に基づいて産業医が行う行政的判断である。
- ウじん肺法に基づくじん肺健康診断には、「定期じん肺健康診断」と「定期外じん肺健康診断」があり、粉じん作業に常時従事する労働者の定期健康診断の頻度は、じん肺管理区分に関係なく3年以内ごとに1回である。
- エじん肺管理区分管理4と決定された労働者については、事業者は療養のための必要な措置を講じなければならず、当該労働者は療養を要する状態とされる。正答
- オ粉じん作業に新たに就いた労働者(粉じん作業歴のない者)には、就業前のじん肺健康診断の実施は義務付けられていない。
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正しいのはエです。じん肺管理区分管理4と決定された労働者は「著しいじん肺の所見があり、かつ合併症にかかっている者」であり、療養を要する状態です(じん肺法第4条第4号)。事業者は療養のための必要な措置(就業の禁止・医療機関への受診勧奨等)を講じなければなりません。
各誤りの要点: ア→管理2の場合は業務転換の義務はありません(管理3ロで転換義務が発生)。イ→じん肺管理区分の決定は産業医ではなく都道府県労働局長が行う行政的決定です。ウ→じん肺定期健康診断の頻度はじん肺管理区分によって異なります(管理2・管理3イ:3年以内ごと→管理3ロ:1年以内ごと等)。オ→粉じん作業に新たに就く労働者には雇入れ時・配置替え時のじん肺健康診断(就業前健診)が義務付けられています(じん肺法第7条)。
じん肺管理区分と事業者の措置義務:
| 管理区分 | じん肺の状態 | 事業者の主な措置 | 定期健診の頻度 |
|---|---|---|---|
| 管理1 | じん肺の所見なし | 現状維持(通常業務可) | 3年以内ごと |
| 管理2 | 第1型・肺機能正常 | 健康管理・経過観察 | 3年以内ごと |
| 管理3イ | 第2型または肺機能軽度障害 | 作業転換等の配慮 | 3年以内ごと |
| 管理3ロ | 第3型・第4型または肺機能中程度以上障害 | 業務転換義務・健診頻度増加 | 1年以内ごと |
| 管理4 | 著しいじん肺+合併症 | 療養措置義務 | 療養中 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 管理2は配置転換義務が発生しません。業務転換の義務が生じるのは管理3ロです(じん肺法第20条の3)。
- イ(誤): じん肺管理区分の決定は都道府県労働局長が行う行政的決定です(じん肺法第4条)。産業医が行うものではありません。
- ウ(誤): 定期じん肺健康診断の頻度はじん肺管理区分によって異なります。管理2・管理3イは3年以内ごと・管理3ロは1年以内ごとが義務です(一律3年以内ごとではない)。
- エ(正): 管理4は「著しいじん肺の所見があって、かつ合併症にかかっているもの(療養を要するもの)」であり、事業者は療養のための措置を講じなければなりません(じん肺法第12条)。
- オ(誤): じん肺法第7条の通り、常時粉じん作業に従事する労働者を雇い入れる場合(または粉じん作業に配置する場合)には、就業前のじん肺健康診断(雇入れ時・配置替え時健診)が義務付けられています。
【理論的背景】
じん肺(pneumoconiosis)は、粉じん(無機性・鉱物性の微細粒子)の長期吸入により肺組織に不可逆的な線維化変化(線維増殖性変化)が生じる疾患の総称です。代表的なものに珪肺(遊離けい酸含有粉じんによる)・石綿肺・溶接工肺・炭鉱夫肺等があります。じん肺は一度発症すると現在の医療では治癒が不可能(不可逆的・進行性)であり、離職後も病状が悪化し続けることがあります(「進行性珪肺症」)。
じん肺管理区分の決定プロセス(じん肺法第4条〜第6条):
1. じん肺健康診断の実施(事業者の義務)
2. 健康診断結果(胸部エックス線写真・肺機能検査等)を都道府県労働局長に申出
3. 都道府県労働局長が専門の医師(じん肺診査医)の意見を聴いて管理区分を決定
4. 決定結果を事業者・労働者に通知
なぜ都道府県労働局長が決定するか:
じん肺管理区分は「行政的な福祉・就業規制の判断」であり、産業医や主治医の医学的判断だけでなく、行政機関が社会的・法的な基準に照らして決定する仕組みです。この行政決定により、不服申立・審査請求等の手続きが保障されています。
【実務・条文構造】
じん肺健康診断の種類(じん肺法第7条〜第9条):
- 雇入れ時健康診断: 常時粉じん作業に就かせる際(新規雇入れ・配置替え時)に実施
- 定期健康診断: じん肺管理区分に応じた頻度で実施
- 管理1・2: 3年以内ごとに1回
- 管理3イ: 3年以内ごとに1回
- 管理3ロ: 1年以内ごとに1回
- 管理4: 療養中(定期健診の頻度規定は別途)
- 定期外健康診断: 常時粉じん作業以外の業務に転換した者(じん肺所見がある場合・管理3ロの者等)に実施
- 離職時健康診断: 粉じん作業に3年以上従事後に離職する者(管理2以上の者等)
管理区分に応じた事業者の義務(じん肺法第20条・第20条の3・第12条):
- 管理2: 転換義務はないが健康管理・経過観察が必要
- 管理3イ: 業務転換の努力義務(義務ではなく努力義務)・健診の継続
- 管理3ロ: 業務転換義務(粉じん作業から粉じん作業以外への転換)・1年以内ごとの健診
- 管理4: 療養措置義務(就業禁止・療養のための必要な措置)
合併症(じん肺法第2条):
- じん肺に合併する可能性のある指定疾病: 肺結核・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺がん(石綿肺の場合)
- 合併症は管理4の判定要件にもなる(著しいじん肺+合併症)
【試験での位置づけ】
じん肺法問題の頻出は「管理区分の内容(特に管理4=療養・管理3ロ=業務転換義務)」「管理区分の決定は都道府県労働局長(産業医・主治医ではない)」「定期健診の頻度(管理区分によって異なる・一律3年ではない)」「雇入れ時健診は義務」の4点です。アのような「管理2で業務転換義務」という誤りは管理区分の義務の段階(2→3イ→3ロ→4と段階的に強化)を理解していないと引っかかる問題です。管理3ロで初めて転換「義務」が生じること、管理4で「療養義務」が生じることを正確に区別してください。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 管理2の労働者は「じん肺の所見はあるが、現時点での肺機能障害が軽微」な状態です。この段階では業務転換を強制することが健康保護として必ずしも必要ではなく、定期的な経過観察と健康管理で対応します。業務転換義務が発生するのは管理3ロ(より進行した状態)からです。
- イ: じん肺管理区分の行政決定に不服がある場合、労働者・事業者は「産業医学的判定委員会」への申請・審査請求等の手続きを取ることができます(じん肺法第15条・第16条)。行政決定であることで、法的な救済手続きが保障されています。
- ウ: 定期健診の頻度が管理区分によって異なる理由は「病状の進行度に応じた合理的な管理」のためです。病状が安定している軽度の段階(管理2・3イ)では3年に1回で十分と判断され、より進行した状態(管理3ロ)では毎年の健診が必要です。管理1(所見なし)でも3年ごとの健診が必要な点も押さえておきましょう(粉じん作業に従事し続けている間は所見なしでも継続が必要)。
- エ: 管理4の「合併症」として重要なのは肺結核(じん肺患者は免疫機能の低下等から結核に罹患しやすい)と肺がん(石綿肺では特に重要)です。じん肺法では合併症の診断・治療も支援対象としており、労災保険との連携で療養補償が受けられます。
- オ: 雇入れ時・配置替え時のじん肺健康診断(就業前健診)は、労働者が粉じん作業を始める前の「ベースライン(基準値)」を把握するために重要です。就業前のじん肺所見の有無・既往歴等を記録しておくことで、就業後の変化(粉じん作業による影響か否か)の判断に役立ちます。また就業前から既にじん肺所見がある者については、より厳格な健康管理が必要です。
【根拠法令】じん肺法 第4条(管理区分の決定:都道府県労働局長が行う行政的決定)・第7条(雇入れ時・配置替え時のじん肺健康診断)・第8条(定期じん肺健康診断の頻度:管理区分により3年・1年等)・第12条(管理4:療養を要する状態・事業者の療養措置義務)・第20条の3(管理3ロ:業務転換義務)
【補足】じん肺管理区分の決定は都道府県労働局長(産業医が行うものではない)。管理3ロで業務転換義務・管理4で療養措置義務が発生。定期健診の頻度は管理区分によって異なる(一律3年ではない)。雇入れ時・配置替え時の就業前健診も義務。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: じん肺法第4条(管理区分の決定:都道府県労働局長が行う)・第7条〜第8条(定期じん肺健康診断の頻度)・第12条(管理4:療養)・第20条(管理2・3の措置)、粉じん則第26条。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。