衛生管理者 関係法令(有害業務) 問21:酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)
酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)に定める酸素欠乏危険場所に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア酸素欠乏危険場所としては、長期間密閉されたタンク・反応塔・サイロ等が例示されるが、下水道・マンホール等は一般的な作業場所であり酸素欠乏危険場所には含まれない。
- イ農業用サイロや麦等の穀物を長時間貯蔵する設備は、穀物の呼吸による酸素消費で酸欠状態になるおそれがあるため、酸素欠乏危険場所に該当する場合がある。正答
- ウ第1種酸素欠乏危険作業とは、酸素欠乏症と硫化水素中毒の両方のリスクがある場所での作業をいい、第2種はそのうち酸欠症のみのリスクがある作業のことをいう。
- エ酸素欠乏危険場所における作業開始前の酸素濃度測定の記録は、測定実施後1年間保存しなければならない。
- オ酸素欠乏危険場所での作業に際し、換気が適切に行われている場合には、空気呼吸器や送気マスク等の保護具の備え付けは不要である。
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正しいのはイです。農業用サイロや穀物貯蔵設備は、貯蔵物の微生物による発酵・穀物自身の呼吸等により酸素が消費され、密閉された空間内で酸欠状態になるおそれがあります。このため酸素欠乏危険場所に該当する場合があります(酸欠則別表・酸欠則第2条)。
各誤りの要点: ア→下水道・マンホールは酸素欠乏危険場所に含まれます(有機物の腐敗・硫化水素発生により特に危険)。ウ→第1種・第2種の説明が逆です。第1種=酸欠症のみのリスク、第2種=酸欠症+硫化水素中毒の両方のリスクです。エ→酸素濃度測定の記録保存は3年間(1年は誤り)。オ→換気が適切に行われている場合でも、万一のために保護具(空気呼吸器・送気マスク等)は必ず備え付けておく義務があります。
主な酸素欠乏危険場所(酸欠則別表の例):
| 危険場所の種類 | 酸欠・硫化水素の原因 | 区分 |
|---|---|---|
| 長期密閉タンク・反応塔 | 酸素の消費(錆・酸化反応等) | 第1種 |
| 農業用サイロ・穀物貯蔵設備 | 発酵・呼吸による酸素消費 | 第1種 |
| 下水道・マンホール・汚水槽 | 有機物腐敗による硫化水素発生+酸欠 | 第2種 |
| 地下・坑内(湧水のある場所) | 地層からの炭酸ガス溶出等 | 第1種 |
| 炭酸ガス使用の貯蔵庫 | CO₂による酸素置換 | 第1種 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 下水道・マンホール・浄化槽等は第2種酸素欠乏危険場所(酸欠+硫化水素中毒の両リスク)に該当します。一般的な作業場所だからといって酸欠危険場所から除外されるわけではありません。
- イ(正): 農業用サイロや穀物貯蔵設備は、酸欠則別表に酸素欠乏危険場所として掲げられています。農作物・飼料の呼吸・発酵により酸素が消費され、CO₂濃度が上昇して酸欠状態になるリスクがあります。
- ウ(誤): 第1種と第2種の定義が逆です。第1種=酸素欠乏症のみのリスク・第2種=酸欠症+硫化水素中毒の両方のリスクです(酸欠則第2条第3〜4号)。
- エ(誤): 作業前の酸素濃度測定記録は3年間保存(酸欠則第3条第3項)。1年では不足です。
- オ(誤): 換気を実施している場合でも、緊急時(換気設備の故障・停止等)への対応として、空気呼吸器・送気マスク等の保護具を常備する義務があります(酸欠則第5条の2)。「換気していれば保護具不要」とはなりません。
【理論的背景】
酸素欠乏危険場所の多様性は、酸欠が生じるメカニズムの多様さに由来します。主なメカニズムは以下の通りです:
1. 酸化反応による酸素消費: 金属の錆・コンクリートの養生(炭酸ガスとの反応)等で酸素が消費される。特に長期間密閉された金属製タンク・配管内部で発生しやすい。
2. 生物的酸素消費(呼吸・発酵): 穀物・果実等の呼吸、腐敗有機物(下水・汚泥)の分解で酸素が消費され、CO₂が蓄積する。農業用サイロや飼料貯蔵設備が典型例。
3. 地層ガスの置換: 地下には自然に存在する炭酸ガス(CO₂)・メタン(CH₄)等が地層から湧出して酸素を置換することがある。
4. 溶存ガスの放出: 湧水が多い坑内・地下では、炭酸ガスが水に溶解して持ち込まれ、気温上昇等で放出されて酸欠状態になる。
5. 硫化水素の発生(第2種の原因): 嫌気性細菌が有機物(硫黄含有タンパク質等)を分解してH₂Sを生成。下水道・畜舎地下・腐敗物を含むタンク等が典型。
【実務・条文構造】
酸素欠乏危険場所の指定と作業管理:
酸欠則別表の主要な危険場所:
1. ケーブル等の暗きょ・マンホール(電気設備・通信ケーブルの収納場所・腐敗有機物あり)→第2種の可能性
2. 長期密閉の金属製設備内部(タンク・ボイラー・反応塔・船倉等)→第1種
3. 農業用サイロ・飼料・くん蒸終了後の飼料倉庫→第1種
4. 下水道・マンホール・浄化槽・汚水槽→第2種(酸欠+硫化水素)
5. 河川・海底の堆積物がある場所での海中作業→状況による
酸素欠乏危険場所での主な安全措置(酸欠則):
- 作業前の酸素・硫化水素濃度の測定(第3条)・記録3年保存
- 換気による安全濃度の確保(第5条): O₂18%以上・H₂S 10ppm以下
- 保護具の備え付け義務(第5条の2): 空気呼吸器・送気マスク等(換気実施中も備え付けが必要)
- 監視人の配置(第8条): 作業中に外部で常時監視する者を配置
- 作業主任者の選任(第11条): 区分に応じた技能講習修了者
- 特別教育の実施(第12条): 就業前に1回
なぜ換気中も保護具を備え付けるか(酸欠則第5条の2の趣旨):
換気設備は機械的装置であり、電源断・ファン故障・ダクト詰まり等で突然停止することがあります。また作業中に作業者の動きにより換気が偏る場合もあります。保護具は「換気が正常な状況での使用」ではなく、「換気失敗・緊急事態への備え」として常備が必要です。
【試験での位置づけ】
酸欠危険場所問題の頻出は「下水道・マンホールは第2種危険場所(酸欠+硫化水素)」「農業用サイロ・穀物倉庫は第1種危険場所(穀物の呼吸・発酵による酸欠)」「第1種=酸欠のみ・第2種=酸欠+硫化水素(逆を問う引っかけに注意)」「測定記録3年保存」「換気中も保護具の備え付けは必要(免除されない)」の5点です。ウのような第1種・第2種の定義の逆転は試験の典型的な引っかけです。「第2種が上位(酸欠+硫化水素の両方に対応)」という包含関係の方向性を正しく覚えてください。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 下水道・マンホールの作業が「第2種酸素欠乏危険作業」として特に危険視される理由は、硫化水素(H₂S)の急性毒性の高さです。硫化水素は低濃度(10ppm)でも粘膜刺激・中毒症状が現れ、高濃度(700ppm以上)では即死の危険があります。また硫化水素は卵の腐ったような独特の臭気がありますが、高濃度では嗅覚が麻痺して感知できなくなる「嗅覚麻痺」が起きるため、臭いで判断することは危険です。
- イ: 農業用サイロ(トウモロコシ・麦・大豆等の貯蔵)での酸欠事故は日本でも発生しています。収穫直後の穀物は呼吸が活発であり、特に高温・高湿度の場合に酸素消費が速くなります。また発酵飼料(サイレージ)は嫌気的発酵を利用するため、密閉環境でCO₂が高濃度になります。サイロ内への入庫前には必ず換気と酸素濃度確認が必要です。
- ウ: 第1種・第2種の定義を「酸欠のみ=1種・酸欠+硫化水素=2種」と正確に覚えるための記憶法: 「2種は2つのリスク(酸欠+硫化水素)を持つ、より危険な作業」と覚える。技能講習の種別(第1種・第2種)も同じ対応関係であり、第2種技能講習の修了者は第1種作業もカバーできる(包含関係)。
- エ: 測定記録の3年保存は酸欠則第3条第3項の規定です。「1年」という誤りは、一般的な業務記録(1年保存等)との混同から来る引っかけです。酸欠則の記録保存は3年間と確実に覚えてください。
- オ: 空気呼吸器・送気マスクの備え付けは、万一の緊急事態(作業者が倒れた場合の救出)にも対応するためです。酸欠環境での救出作業に防じん・防毒マスクは使えず、空気を供給できる呼吸用保護具が必須です。備え付けのない状態で事故が発生した場合、救出者も被災(連鎖死亡)するリスクが高まります。
【根拠法令】酸素欠乏症等防止規則 第2条第3〜4号(第1種・第2種の定義:第1種=酸欠のみ・第2種=酸欠+硫化水素)・酸欠則別表(農業用サイロ・下水道等の酸素欠乏危険場所一覧)・第3条(作業前測定・記録3年保存)・第5条の2(保護具の備え付け義務:換気実施中でも必要)
【補足】農業用サイロは酸欠危険場所(穀物の呼吸・発酵による酸欠)。下水道・マンホールは第2種(酸欠+硫化水素)。第1種=酸欠のみ・第2種=酸欠+硫化水素(逆でない)。測定記録3年保存・換気中も保護具備え付けは必要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)第2条・酸欠則別表(酸素欠乏危険場所の定義)・第3条(測定・記録3年保存)・第5条(換気)・第5条の2(保護具の備え付け義務)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。