衛生管理者 関係法令(有害業務) 問27:石綿障害予防規則(石綿則)・大気汚染防止法
建築物の解体・改修等に伴う石綿対策に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア建築物の解体・改修工事を行う前に、施工業者(元請業者)は石綿含有建材の使用有無について事前調査を実施しなければならない。この事前調査は石綿則第3条に基づく義務である。
- イ石綿含有建材の解体・除去作業を行う場合、作業開始の14日前までに所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない(一定規模以上の工事)。
- ウ事前調査の結果、石綿含有建材がないことが確認された場合でも、解体工事中に石綿含有建材が発見された場合には、直ちに作業を中断し、石綿除去の手順に切り替えなければならない。
- エ建築物の解体・改修作業において石綿等を使用している場合、作業場の外部に石綿等の粉じんが漏洩しないよう隔離の措置を講じなければならない。作業場の隔離が完了するまでは解体・除去作業を開始できない。
- オ石綿含有建材の「封じ込め」または「囲い込み」の作業は、石綿の除去作業に比べて安全であり、石綿作業主任者の選任は不要である。正答
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誤りはオです。石綿の「封じ込め(飛散防止材の塗布等)」または「囲い込み(ボードで覆う等)」の作業でも、石綿等の繊維が飛散するリスクがあるため、石綿作業主任者の選任が義務付けられています(石綿則第19条)。「封じ込め・囲い込みは安全だから作業主任者不要」という記述が誤りです。
石綿則の規制対象は石綿含有建材の「除去」だけでなく、「封じ込め・囲い込み・取扱い・試験研究のための製造」等のすべての石綿関連作業を含みます。封じ込め作業中でも石綿繊維の飛散が起こりうるため、専門的な管理(作業主任者による指揮)が必要です。
石綿則の主要な解体・改修時の規制:
| 規制事項 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 事前調査義務 | 解体・改修前に石綿含有の有無を調査 | 石綿則第3条 |
| 届出義務 | 一定規模以上の解体等は作業開始14日前に所轄の労働基準監督署長へ届出 | 石綿則第5条 |
| 隔離措置 | 石綿含有建材の解体・除去時は隔離が完了するまで作業不可 | 石綿則第15条の2 |
| 作業主任者の選任 | 除去・封じ込め・囲い込みを含むすべての石綿作業に必要 | 石綿則第19条 |
| 特殊健診・記録 | 6か月ごとに1回・記録(個人票)は40年保存 | 石綿則第40条・第41条 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 石綿則第3条に基づく事前調査義務(2022年改正で強化)。元請業者が実施義務を負います。
- イ(正): 一定規模以上の解体作業は、石綿則第5条に基づいて作業開始14日前までに所轄の労働基準監督署長へ届け出が必要です。
- ウ(正): 解体作業中に予期せず石綿含有建材が発見された場合は、作業を中断して石綿除去の手順(作業主任者選任・隔離措置等)に切り替えることが必要です。
- エ(正): 石綿則第15条の2の通り、石綿含有建材の解体・除去作業では、隔離の措置が完了するまで解体・除去作業を開始してはなりません。
- オ(誤): 封じ込め・囲い込み作業でも石綿作業主任者の選任が必要(石綿則第19条)。「封じ込め・囲い込みは安全だから不要」は誤りです。
【理論的背景】
石綿含有建材の「除去」「封じ込め」「囲い込み」はいずれも「石綿等を含む建材を管理する」ための工法です。それぞれの特徴と石綿飛散リスク:
1. 除去(完全撤去): 石綿含有建材を物理的に取り除く。撤去中に繊維が大量に飛散するリスクが最も高い。
2. 封じ込め(固化・飛散防止処理): 石綿含有建材の表面に飛散防止材を塗布・含浸させて繊維の飛散を抑制する。処理中は粒子の発生あり。将来的に建材が劣化した場合の再飛散リスクが残る。
3. 囲い込み(覆い囲う): 石綿含有建材をボード・カバー等で覆い、繊維の飛散を防ぐ。施工中に石綿への接触・繊維飛散のリスクがある。将来の囲い込み材の劣化・損傷で再飛散リスクが生じる。
いずれの工法でも「石綿含有建材を触ること」「石綿含有建材が露出していること」による繊維飛散リスクがあるため、石綿作業主任者による専門的な指揮が必要です。
事前調査制度の強化(2022年の石綿則改正・大気汚染防止法改正):
2022年の改正で、建築物の解体・改修前の事前調査が厳格化されました。
- 一定規模以上の工事: 事前調査の結果を都道府県等へ報告する義務が追加
- 事前調査実施者の要件: 有資格者(建築物石綿含有建材調査者等)への限定が段階的に義務化
- 目視調査: 設計図書・材料表だけでなく実際に現地で目視確認することが基本
【実務・条文構造】
石綿作業主任者の選任が必要な作業(石綿則第19条):
- 石綿等の取り扱い(製造・使用等)
- 石綿等の試験研究のための製造・取扱い
- 建築物・工作物・船舶の石綿等を含む部分の解体・除去・封じ込め・囲い込み
※「封じ込め・囲い込み」が明示的に含まれている点が重要
石綿除去工事の手順(石綿則第15条の2等):
1. 事前調査・計画立案(石綿含有部位・量・状態の確認)
2. 作業主任者の選任
3. 隔離措置の実施(足場設置・ビニールシートによる区画・負圧管理)
4. 隔離の完全性の確認(目視・気流測定等)
5. 作業員の保護具着用(RS3等の高性能防じんマスク・防護服等)
6. 石綿含有建材の除去・袋詰め・密封
7. 隔離区域の清掃(HEPAフィルター付き掃除機・水拭き等)
8. 作業完了の確認(クリアランス空気測定等)
9. 廃棄物(石綿廃棄物:特別管理産業廃棄物)の適正処理
【試験での位置づけ】
石綿則の解体・改修問題では「事前調査義務・届出義務(14日前)・隔離措置(隔離完了まで作業不可)・作業主任者は封じ込め・囲い込みも対象」の4点が頻出です。オのような「封じ込め・囲い込みは安全で作業主任者不要」という誤りは、石綿則の適用範囲(すべての石綿関連作業)を「除去のみ」と誤解させる典型的な引っかけです。石綿則は「石綿等を直接触ることのある作業全般」を対象としており、工法の種類(除去・封じ込め・囲い込み)で適用除外にはなりません。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 2022年の改正で、事前調査の実施者に一定の資格要件(建築物石綿含有建材調査者等の有資格者)が義務化され、目視調査の実施も明確化されました。事前調査の精度向上により、工事中の予期せぬ石綿発見(作業中断・コスト増大)を減少させる効果が期待されています。
- イ: 届出先が「労働基準監督署長」(地域単位の労働基準監督機関)である点は重要です。石綿解体工事は「建設業の事業者(元請)」が施工し、労働者への健康影響と一般公衆への大気中石綿飛散の両面での管理が必要です。大気汚染防止法の届出(都道府県等への届出)と、石綿則の届出(労働基準監督署長への届出)は別々の手続きであり、並行して実施することが必要です。
- ウ: 工事中の石綿含有建材の予期せぬ発見は、古い建物の解体工事で特に発生しやすい問題です。設計図書・目視調査では検出できなかった石綿含有建材(ボード内部の断熱材・配管の保温材等)が解体時に発見されることがあります。この場合の迅速な対応(作業中断・安全措置・届出等)が重要です。
- エ: 負圧管理(隔離区域内を外部より低い気圧に保つ)は石綿除去工事の核心的な技術です。隔離区域の空気が外部に漏れないように負圧を維持することで、石綿繊維の外部への拡散を防ぎます。負圧維持の確認には差圧計を使用し、一定の負圧(例: -5Pa以上)が維持されていることを連続的にモニタリングします。
- オ: 「封じ込め」工法は、石綿含有建材が健全な状態(剥落・劣化がない)の場合に採用されることが多く、短期的には除去より安全に見えますが、長期的には建材の劣化・損傷による再飛散リスクが生じます。そのため「封じ込め」後も定期的な状態確認(モニタリング)が推奨されており、再飛散のリスクが生じた場合は再処理・除去が必要になります。
【根拠法令】石綿障害予防規則 第3条(解体・改修前の事前調査義務)・第5条(届出:作業開始14日前・所轄の労働基準監督署長へ)・第15条の2(隔離措置:完了するまで解体等の作業不可)・第19条(石綿作業主任者の選任:除去・封じ込め・囲い込みを含むすべての石綿作業が対象)
【補足】封じ込め・囲い込み作業も石綿作業主任者の選任が必要(「除去のみが対象」は誤り)。解体前の事前調査・14日前届出・隔離措置(完了まで作業開始不可)はすべて義務。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 石綿障害予防規則(石綿則)第3条(事前調査)・第5条(届出:14日前)・第15条の2(隔離措置)・第19条(石綿作業主任者:封じ込め・囲い込みも対象)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。