衛生管理者 関係法令(有害業務) 問35:酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)
酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)における作業主任者に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア第2種酸素欠乏危険作業に当たる場所での作業には、「酸素欠乏危険作業主任者技能講習」を修了した者を作業主任者として選任すれば足り、「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」の修了者を選任する義務はない。
- イ第1種酸素欠乏危険作業の作業主任者は、作業開始前に当該場所の酸素濃度を測定し、酸素濃度が18%以上であることを確認しなければ作業を開始させることができない。
- ウ酸素欠乏危険作業は、作業主任者の選任だけで足り、作業者全員に対する特別教育の実施は義務付けられていない。
- エ第1種酸素欠乏危険作業を行う場合、作業主任者は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」の修了者でなければ選任できない。
- オ作業主任者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させるときは、常時作業の状況を監視し、異常を認めたときは直ちに作業を中止させ、労働者を安全な場所に退避させなければならない。正答
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正しいのはオです。酸欠則第11条の通り、作業主任者は酸素欠乏危険作業に労働者を従事させるときは常時作業の状況を監視し、異常を認めたときは直ちに作業を中止させ、労働者を安全な場所に退避させなければなりません。
各誤りの要点: ア→第2種酸素欠乏危険作業の作業主任者は「酸素欠乏危険作業主任者技能講習」修了者では不足であり、「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」修了者の選任が義務です。イ→「18%以上であれば作業開始できる」という記述が誤りで、正確には「18%未満の場合は作業中断・換気または保護具着用が必要」という規定があります(18%以上の確認は必要ですが、確認すれば即座に開始できるとは限りません)。ウ→酸素欠乏危険作業者への特別教育は義務(酸欠則第12条)であり、作業主任者の選任だけでは足りません。エ→第1種作業の作業主任者は「酸素欠乏危険作業主任者技能講習」修了者で足ります(「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」は第2種に必要)。
第1種・第2種酸素欠乏危険作業と作業主任者の資格要件:
| 作業区分 | 対象となる場所 | 危険の内容 | 作業主任者に必要な技能講習 |
|---|---|---|---|
| 第1種酸素欠乏危険作業 | 酸欠のみのリスク(タンク内・土中・汚水槽等) | 酸素濃度18%未満による窒息 | 酸素欠乏危険作業主任者技能講習 |
| 第2種酸素欠乏危険作業 | 酸欠+硫化水素中毒のリスク(下水道・汚泥槽・し尿処理場等) | 酸欠に加え硫化水素10ppm超による中毒 | 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習(上位資格) |
第2種作業の作業主任者は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」修了者のみが対象(第1種用の講習修了者は不可)。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 第2種危険作業の作業主任者は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」修了者でなければなりません(安衛令第6条第22号・酸欠則第11条)。第1種用の技能講習修了者を第2種作業の主任者に選任することは違反です。
- イ(誤): 作業前の酸素濃度確認(18%未満かどうか)は必要ですが、「18%以上なら即座に作業開始できる」という保証ではありません。換気の継続・保護具の準備・連絡体制の確保等、酸欠則が求める複数の措置が必要です。イの記述は「18%以上の確認だけで足りる」と読める点が不正確です。
- ウ(誤): 酸欠則第12条の通り、酸素欠乏危険作業に従事する労働者全員(作業主任者本人を除く全作業員)に対して特別教育を実施する義務があります。
- エ(誤): 第1種酸素欠乏危険作業の作業主任者は「酸素欠乏危険作業主任者技能講習」修了者で足ります。「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」は第2種作業の作業主任者に必要です(ただし上位資格なので第1種にも使用可)。
- オ(正): 酸欠則第11条の通り、常時監視・異常時の即時中止・退避命令は作業主任者の法定職務です。
【理論的背景】
酸素欠乏症は「酸素濃度が18%未満の空気を呼吸することで生じる健康障害」です。通常の空気中酸素濃度は約20.9%ですが、タンク内・密閉空間・地下坑道等ではさまざまな要因(有機物の腐敗・微生物の代謝・金属の酸化・ガスの置換等)により酸素濃度が急低下します。酸素濃度が低下するにつれ症状が急速に進行し、16〜12%で頭痛・めまい、14%以下で判断力低下、10%以下で意識喪失・死亡のリスクが高まります。特に危険なのは「本人が気づかないうちに意識を失う」という特性で、救助に駆けつけた者が二次被害(連鎖死亡)を受けるケースも多発しています。
第2種酸素欠乏危険作業が硫化水素も対象とする理由:
下水道・汚泥槽・し尿処理施設・畜産廃水槽等では、有機物の嫌気性分解により硫化水素(H₂S)が発生すると同時に、酸素が消費されて酸欠状態になります。酸欠と硫化水素中毒が複合して発生する特殊な危険があり、どちらか一方の対策だけでは不十分です。このため第2種作業の作業主任者には、酸欠対策に加えて硫化水素の測定・管理方法も習得した上位資格(酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習)が必要とされています。
【実務・条文構造】
酸欠則による危険作業の管理体系:
作業主任者の選任(安衛法第14条・安衛令第6条・酸欠則第11条):
- 第1種酸素欠乏危険作業: 酸素欠乏危険作業主任者技能講習修了者
- 第2種酸素欠乏危険作業: 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習修了者(上位資格)
- 「上位資格(第2種用)は第1種作業の主任者としても使用可」という関係
作業主任者の職務(酸欠則第11条):
- 当該作業の方法を決定し、作業を直接指揮
- 当該作業に従事する労働者が酸欠状態等にならないよう監視
- 作業開始前の酸素濃度(第2種は硫化水素濃度も)の測定
- 作業中の濃度変化の監視(異常気象・急激な温度変化等に注意)
- 異常発生時の即時作業中止・労働者退避の命令
- 保護具等の点検・適切な使用の確保
特別教育(酸欠則第12条):
- 対象: 酸素欠乏危険作業に従事するすべての労働者(作業主任者を除く)
- 内容: 酸欠の原因・症状・危険区域での行動・保護具の使用法・緊急時の対応
- 記録: 特別教育実施記録の3年間保存
連絡・退避体制(酸欠則第13条・第14条):
- 外部との連絡体制の確保(入坑者リスト・通信設備)
- 異常時の退避・救出の手順の事前周知
- 救出時は必ず保護具(空気呼吸器等)を着用してから入場(連鎖死亡防止)
【試験での位置づけ】
酸欠則の作業主任者問題は「第1種=酸欠のみ・第2種=酸欠+硫化水素(二重の危険)」「第2種作業主任者=酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習(第1種用では不足)」「特別教育=全作業員に義務(作業主任者の選任だけでは不足)」「作業主任者の職務=常時監視・異常時の即時中止・退避命令」の4点が頻出です。アのような「第2種作業に第1種用の技能講習修了者でよい」という誤りは、2種類の技能講習の適用範囲を正確に把握していないと判断できない問題です。また特別教育の義務(ウの誤り)も繰り返し問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」は「酸素欠乏危険作業主任者技能講習」の上位資格であり、前者の修了者は第1種・第2種の両方の作業主任者として選任できます。しかし後者(第1種用)の修了者を第2種作業の主任者に選任することは法令違反です。企業として両種の作業を行う場合、「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」修了者を育成しておくことで第1種・第2種の両方に対応できます。
- イ: 「18%以上の確認」は必要条件の一つですが十分条件ではありません。実際の作業管理では、酸素濃度が18%以上であることを確認した後も、換気の継続・濃度の定期的再測定(作業中も測定継続が推奨)・保護具の準備(万一の急変に備えて)・外部との連絡体制確保等の複数の措置が必要です。酸欠事故の多くは「最初は測定したが作業中に急変した」「短時間だからと測定を省略した」というパターンで発生しています。
- ウ: 特別教育の内容(酸欠則第12条)は「酸欠の原因と症状」「酸欠危険場所での行動要領」「事故時の救急処置」「保護具の使用方法」等です。特別教育は作業者が「なぜ危険か・どう行動すべきか」を理解することを目的としており、作業主任者から「口頭で説明する」だけでは法令上の「特別教育実施」にはなりません。記録(実施日・内容・参加者リスト)の作成・保存(3年間)も義務です。
- エ: 第1種作業(酸欠のみリスク)と第2種作業(酸欠+硫化水素リスク)の区別は、「その場所で硫化水素が発生する可能性があるかどうか」で判断します。現場が第1種か第2種かの判断を誤り、第1種作業主任者を第2種作業現場に選任した場合は法令違反となり、事故発生時の責任問題にも直結します。事前のリスク評価(その場所の発生ガスの種類)が重要です。
- オ: 「常時監視」という規定は、作業主任者が作業中に現場を離れてはならないことを意味します。実務では、入坑者全員の安全を確認できる位置に作業主任者が常駐し、携帯型ガス検知器(酸素・硫化水素等の複合センサー)でリアルタイムの濃度変化を把握します。異常時の「直ちに中止・退避」は、酸欠状態では意識喪失が数分以内に起こりうるため、わずかな遅れが致命的になる可能性があり、「直ちに」という迅速性が生死を分けます。
【根拠法令】酸素欠乏症等防止規則 第2条(第1種・第2種の定義)・第11条(作業主任者の職務:常時監視・異常時の即時中止・退避命令・測定)・第12条(特別教育:作業に従事する全労働者に義務・記録3年保存)、労働安全衛生令 第6条第21号・第22号(作業主任者の選任義務)、労働安全衛生規則 第83条(酸素欠乏危険作業主任者技能講習の種別:第1種=酸欠のみ・第2種=酸欠・硫化水素)
【補足】第2種作業主任者=酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習修了者(第1種用では不可)。特別教育=全作業員に義務(主任者選任だけでは不足)。第1種・第2種の区別は「硫化水素発生リスクの有無」。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)第2条(第1種・第2種の定義)・第11条(作業主任者の職務:監視・退避命令等)・第12条(特別教育:作業者全員に義務)・安衛令第6条第21号・第22号(作業主任者の選任義務)・安衛則第83条(酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の種別)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。