衛生管理者 関係法令(有害業務) 問39:電離放射線障害防止規則(電離則)
電離放射線障害防止規則(電離則)における放射線業務従事者の被ばく線量の測定および記録に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア放射線業務従事者に対する外部被ばくの測定は、放射線測定器(フィルムバッジ・熱ルミネセンス線量計・ガラス線量計等)を使用して実施するが、1か月以内ごとに1回実施すれば足り、線量の多少にかかわらず追加の測定は不要である。
- イ放射線業務従事者が放射性物質を誤って体内に取り込んだ(内部被ばく)と疑われる場合、事業者はただちに事後的な医療機関への受診を促すだけでよく、内部被ばく線量の測定記録を作成する義務はない。
- ウ放射線業務従事者の被ばく線量の記録は、その測定を行った日から5年間保存しなければならない。
- エ放射線業務従事者が管理区域において1か月間で実効線量1ミリシーベルトを超えたと計算された場合(外部被ばく)、事業者は当該月の測定に加えて3か月ごとの測定も実施しなければならない。
- オ放射線業務従事者の被ばく線量(外部被ばく・内部被ばく)の記録は、当該記録を作成した日から30年間保存しなければならない。ただし、記録を5年間保存した後に厚生労働大臣に引き渡した場合は、以後の保存義務が免除される。正答
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正しいのはオです。電離則第11条の通り、放射線業務従事者の被ばく線量の記録は30年間保存しなければならない。ただし、記録を5年間保存した後に厚生労働大臣に引き渡した場合は、以後の保存義務が免除されます。30年という長期保存は放射線被ばくによる発がんの潜伏期間(数十年に及ぶ場合がある)に対応するためです。
各誤りの要点: ア→放射線量が多い場合(1か月に1mSvを超えるリスクがある場合等)は「3か月ごと」ではなく「1か月ごと」の測定が義務であり、状況に応じた追加測定の義務もあります。イ→内部被ばくの測定記録の作成義務はあります(電離則第9条)。ウ→保存期間は5年ではなく30年です。エ→「1か月間で1mSvを超えた場合に3か月ごと測定」という内容は逆であり、1mSv超過は高リスクを意味し、より厳格な(1か月ごとの)測定が継続されます。
電離則の被ばく測定・記録の要点:
| 項目 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 外部被ばく測定の頻度 | 原則1か月以内ごとに1回(ただし3か月ごとに測定できる条件あり) | 電離則第8条 |
| 3か月ごと測定が可能な条件 | 当該管理区域で受ける線量が3か月につき1.3mSv以下の場合のみ | 電離則第8条第2項 |
| 内部被ばく測定 | 放射性物質を取り扱う場合(空気中の放射性物質濃度測定等)・測定義務あり | 電離則第9条 |
| 測定記録の保存期間 | 30年間(または5年保存後に厚生労働大臣へ引渡し) | 電離則第11条 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 「1か月以内ごとに1回で線量の多少にかかわらず追加測定不要」は誤りです。電離則では「3か月につき実効線量が1.3mSvを超えるおそれがない場合のみ3か月ごとに測定可」という緩和条件があり、逆に線量が高い・高いリスクが見込まれる場合は1か月ごとの測定が必要です。
- イ(誤): 内部被ばく(放射性物質の誤取込みが疑われる場合)の測定および記録作成義務は電離則第9条・第11条に定められています。記録なしでは被ばく線量の管理・健康追跡が不可能です。
- ウ(誤): 保存期間は5年ではなく30年です(電離則第11条)。5年は一般的な健康診断記録等の保存期間と混同しやすい引っかけです。
- エ(誤): 「1か月で1mSvを超えたら3か月ごと測定に切り替える」という内容は誤りです。1mSvを超えた場合は被ばく量が多いことを意味し、引き続き1か月ごとの厳格な測定が必要です(3か月ごとに緩和されるのは線量が十分に低い場合のみ)。
- オ(正): 被ばく線量記録の30年保存と「5年保存後に厚生労働大臣へ引渡すことによる保存義務の免除」はともに電離則第11条に明記された正しい内容です。
【理論的背景】
放射線被ばくによる健康影響(特に確率的影響:がん・白血病)の潜伏期間は被ばく量・被ばくの種類によって異なりますが、数年〜数十年に及ぶ場合があります。広島・長崎の原爆被爆者のがん発症追跡研究(寿命調査:Life Span Study)では、被ばくから50年以上経過後もがんリスクの増加が確認されており、長期間のフォローアップが不可欠であることが示されています。このような「長潜伏期の健康影響」に対応するため、電離則は被ばく記録を30年間保存する義務を設けています。
30年保存の実務的意義:
放射線業務従事者が将来がんを発症した際、「それが職業被ばくによるものか・私的生活上の自然放射線・喫煙等によるものか」を判断するためには、過去の被ばく記録が不可欠です。労働災害補償・労災認定(放射線業務起因のがん)の手続きでは、被ばく線量の積算記録が重要な証拠となります。このため事業場の廃止・倒産時の記録引継ぎ(厚生労働大臣への引渡し)も義務化されています。
【実務・条文構造】
電離則の被ばく線量測定・記録の詳細(電離則第8条〜第11条):
外部被ばくの測定(電離則第8条):
- 個人線量計(フィルムバッジ・熱ルミネセンス線量計TLD・ガラス線量計・半導体線量計等)を使用
- 測定頻度: 原則1か月以内ごとに1回
- 緩和条件(3か月ごとへの変更が可能な場合):
- 3か月につき受ける実効線量が1.3mSv以下と見込まれる場合
- 眼の水晶体・皮膚の等価線量も同様の基準で判断
- 測定部位: 体幹部(胸・腹部)に装着するのが基本。眼・手・足等の線量が高い場合は別途測定
内部被ばくの測定(電離則第9条):
- 対象: 放射性物質を取り扱う業務に従事する者(吸入摂取・経口摂取・皮膚からの吸収のリスクがある場合)
- 方法: 空気中の放射性物質濃度測定(ダストサンプラー等)・ホールボディカウンタ(内部被ばくの直接測定)・バイオアッセイ(尿・血液中の放射性物質量測定)
- 頻度: 1か月以内ごとに1回(外部被ばく測定と同様の緩和条件あり)
測定記録の管理(電離則第11条):
- 記録事項: 測定年月日・測定部位・実効線量・眼の水晶体等価線量・皮膚等価線量等
- 保存期間: 30年間(または5年間保存後に厚生労働大臣が指定する機関(現: 公益財団法人放射線影響協会等)に引渡した場合は以後の保存義務免除)
- 事業場廃止時: 記録を厚生労働大臣に引渡す義務
- 労働者への記録提供: 放射線業務従事者が自身の被ばく線量記録の写しを求めた場合、事業者は提供する義務がある
電離則の測定・記録と健康診断の連携:
- 外部・内部被ばく線量の測定記録は、定期健康診断(電離則第56条)の結果と照合して健康管理を行うための基礎データ
- 年間線量が一定の基準(概ね5mSv超)を超えた場合は、医師の意見聴取・就業上の措置を検討
【試験での位置づけ】
電離則の被ばく記録保存問題では「保存期間=30年間(5年や10年と誤らせる引っかけが頻出)」「5年保存後に厚生労働大臣への引渡しで以後の保存義務免除」「外部被ばく測定は原則1か月ごと(3か月ごとへの緩和は線量が十分低い場合のみ)」の3点が頻出です。ウのような「5年保存」という誤りは、一般の健康診断記録(5年)と放射線業務の被ばく記録(30年)の混同から生じます。電離則の30年保存は特化則の特別管理物質と同じ「長潜伏期の健康影響に対応した長期保存」という観点で覚えるとよいでしょう(石綿はさらに長い40年保存)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 個人線量計(フィルムバッジ等)は「積算線量計」であり、一定期間(1か月など)の積算被ばく量を測定します。測定期間終了後に線量計を回収・読み取り(現像・読み出し)を行います。放射線管理専門機関(日本アイソトープ協会等)が読み取りサービスを提供しており、多くの事業場はこれを利用して被ばく管理を行っています。フィルムバッジは最も歴史が長く、一種の「証拠記録」としての信頼性が高い反面、リアルタイム表示ができないという限界があります。リアルタイム表示が必要な場合は電子式個人線量計(ポケット線量計・アラーム線量計)を追加で使用します。
- イ: 内部被ばくの測定は外部被ばくより技術的に複雑です。ホールボディカウンタ(全身カウンタ)は身体から放出されるγ線を外部検出器で測定する方法で、内部被ばくの全量を比較的精度よく測定できます。しかしβ線を主に放出する核種(トリチウム・炭素14等)はホールボディカウンタでは測定できないため、バイオアッセイ(尿中トリチウム濃度の測定等)が必要です。内部被ばく測定の複雑さが、「内部被ばく=記録不要」という誤解につながる可能性がありますが、法令上は明確に記録義務があります。
- ウ: 5年保存と30年保存の区別は電離則の試験において重要な論点です。5年保存は一般的な労働安全衛生記録(定期健康診断記録等)の標準的な保存期間ですが、電離則の被ばく記録(30年)・特化則の特別管理物質の作業環境測定記録(30年)は「発がん性・長潜伏期」を根拠に長期保存が義務付けられています。なお石綿(石綿則)の作業環境測定記録・健康診断個人票は、さらに長い40年保存とされています。
- エ: 「1mSv超過で3か月ごとに変更」という逆の理解は実務的に危険です。線量が増えれば増えるほど、より頻繁な測定(1か月ごと)が必要です。「3か月ごとへの緩和は線量が十分に低い(3か月につき1.3mSv以下)場合のみ」という正しい方向の理解が重要です。
- オ: 「厚生労働大臣への引渡しによる保存義務の免除」制度は、事業廃止・倒産時に記録が散逸することを防ぐための制度です。現在は厚生労働大臣の指定する機関(放射線影響協会・放射線医学総合研究所等の関係機関)が長期記録の保管を担っています。この制度により、労働者は就労先が廃業した後も、その後の労災認定手続き等で過去の被ばく記録にアクセスできます。
【根拠法令】電離放射線障害防止規則 第8条(外部被ばくの測定:1か月以内ごとに1回が原則・3か月ごとへの緩和は線量が十分に低い場合のみ)・第9条(内部被ばくの測定義務)・第11条(被ばく線量の記録:30年保存・または5年保存後に厚生労働大臣指定機関への引渡しで保存義務免除)
【補足】被ばく記録=30年保存(5年ではない・特化則特別管理物質の30年と同じ長潜伏期対応/石綿はさらに長い40年)。外部被ばく測定=原則1か月ごと(3か月ごとに緩和できるのは線量が十分低い場合のみ)。内部被ばく測定記録の作成義務あり。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 電離放射線障害防止規則(電離則)第8条(外部被ばくの測定:1か月ごとまたは3か月ごと)・第9条(内部被ばくの測定)・第11条(測定記録の保存:30年間・または5年後に厚生労働大臣に引渡した場合は免除)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。