衛生管理者 関係法令(有害業務) 問44:労働安全衛生法令(安衛法第56条・安衛令第17条・別表第3第1号・特化則)
特定化学物質障害予防規則(特化則)における第1類物質(製造許可物質)の製造許可に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア第1類物質を製造しようとする事業者は、製造しようとする設備ごとに厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
- イ第1類物質を製造する設備は、密閉式の構造でなければならず、この密閉式の設備の要件は厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない。
- ウジクロロベンジジンおよびその塩、アルファ-ナフチルアミンおよびその塩は、いずれも特化則の第1類物質(製造許可が必要な物質)に該当する。
- エ第1類物質の製造許可は、製造しようとする設備に係る申請書を所轄都道府県労働局長に提出することで取得できる。正答
- オ第1類物質を製造または取り扱う作業については、特定化学物質作業主任者を選任する義務がある。
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誤りはエです。第1類物質の製造許可は都道府県労働局長ではなく厚生労働大臣に申請します(安衛法第56条第1項)。
製造禁止物質の試験研究許可も厚生労働大臣への許可が必要であり、第1類物質の製造許可も同様です。都道府県労働局長は別の手続き(届出・申請等)で関与しますが、製造許可の主体は厚生労働大臣です。
各正しい記述の確認: ア→設備ごとに大臣許可が必要(一括許可はできない)。イ→密閉式構造の要件あり。ウ→ジクロロベンジジンとアルファ-ナフチルアミンはいずれも第1類物質に該当。オ→第1類・第2類物質を取り扱う作業には作業主任者の選任が必要。
特化則第1類物質(製造許可が必要)の一覧(安衛令別表第3第1号・全7物質):
| 物質名 | 主な健康影響 |
|---|---|
| ジクロルベンジジンおよびその塩 | 膀胱がん |
| アルファ-ナフチルアミンおよびその塩 | 膀胱がん |
| 塩素化ビフェニル(別名PCB) | 肝障害・発がん性 |
| オルト-トリジンおよびその塩 | 膀胱がん |
| ジアニシジンおよびその塩 | 膀胱がん |
| ベリリウムおよびその化合物 | 慢性ベリリウム症・肺がん |
| ベンゾトリクロリド | 肺がん・皮膚腐食 |
※安衛令別表第3第1号は、上記7物質に加えて第8号として「これらを一定割合を超えて含有する製剤その他の物」を掲げる(含有製剤を含めて規制対象とする号)。純物質としては7物質。
製造許可制度の核心(各選択肢の正誤と根拠):
- ア(正): 安衛法第56条第1項により「製造しようとする設備ごと」に許可が必要です。設備を変更・追加した場合は再申請が必要です。
- イ(正): 特化則第3条により、第1類物質の製造設備は密閉式構造であることが義務付けられています(作業者の曝露を最小化するため)。
- ウ(正): ジクロロベンジジン・アルファ-ナフチルアミンはいずれも安衛令別表第3第1号に掲載された第1類物質です。ベンジジン(製造禁止物質)と類似した名称ですが第1類物質です。
- エ(誤): 製造許可は「厚生労働大臣」への申請が必要です(安衛法第56条第1項)。都道府県労働局長への申請は誤りです。
- オ(正): 特化則第27条・安衛令第6条第18号により、第1類・第2類物質を製造または取り扱う作業には特定化学物質作業主任者の選任が義務付けられています(第3類は不要)。
【理論的背景】
安衛法第56条の製造許可制度は、発がん性・変異原性等の深刻な健康障害が確認された化学物質(第1類物質)の製造に対して、国(厚生労働大臣)が個別審査・承認を行うことで、不適切な製造・取扱いを未然に防ぐ仕組みです。製造禁止(第55条)との違いは「許可を受ければ製造できる点」であり、適切な設備・管理措置が確保された事業者に限定して製造を認める選択的許可制度です。
製造許可制度の設計根拠:
- 工業的に不可欠な物質(染料中間体・化学合成の原料等)を完全禁止にはできないが、管理なき製造は許さない
- 厚生労働大臣による中央一元管理(都道府県への委任をしない)により、全国的な一貫した基準確保
- 設備ごとの許可により、設備の変更・拡張を大臣の監視下に置く
【実務・条文構造】
安衛法第56条に基づく製造許可の手続き:
1. 申請: 事業者が厚生労働大臣に申請書を提出(設備の図面・密閉構造の説明・安全管理計画等を含む)
2. 審査: 厚生労働省または委任を受けた機関が設備基準適合性を審査
3. 許可証の交付: 許可を受けた設備ごとに許可証が交付される
4. 変更時の再申請: 設備を大幅に変更する場合は再申請が必要
特化則第3条(密閉設備の要件)の概要:
- 製造設備は原則密閉式(作業者が物質に直接接触しない構造)
- やむを得ず密閉できない場合: 局所排気装置の設置・保護具(防毒マスク・保護衣等)の使用が義務化
- 密閉性の定期自主検査(1年以内ごとに1回・記録3年間保存)
第1類物質の作業主任者(特化則第27条)の職務:
1. 作業手順の決定と労働者への指示
2. 保護具の使用状況の監視
3. 設備(密閉式設備・局所排気装置等)の点検・異常報告
4. 第1類物質の漏洩時の緊急措置
第1類・第2類・第3類と製造禁止物質の規制強度の比較:
| 区分 | 根拠 | 製造の可否 | 主任者選任 |
|---|---|---|---|
| 製造禁止 | 安衛法55条・安衛令16条第1項各号 | 原則禁止(試験研究は大臣許可) | N/A |
| 第1類(製造許可) | 安衛法56条・別表第3第1号 | 大臣許可があれば可 | 必要 |
| 第2類(管理物質) | 特化則・安衛令別表第3第2号 | 要件を満たせば可 | 必要 |
| 第3類(漏洩危険) | 特化則・安衛令別表第3第3号 | 要件を満たせば可 | 不要 |
【試験での位置づけ】
第1類物質の問題では「許可権者は厚生労働大臣(都道府県局長ではない)」「設備ごとの許可(一括許可は不可)」「密閉式構造が義務」の3点が頻出です。また「ジクロロベンジジン(第1類)」と「ベンジジン(製造禁止)」の区別は物質名が類似しているため混同しやすく、毎回問われる重要論点です。ベリリウムが第1類物質(製造許可必要)である点も出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「設備ごとの許可」という要件は、製造を行う物理的設備の安全性を国が個別に確認するための仕組みです。同一事業者が複数の製造設備を持つ場合、それぞれについて許可が必要であり、一度の申請で全設備をカバーすることはできません。
- イ: 密閉式構造の義務は、第1類物質が揮発性・粉末状である場合に特に重要です。例えばベンゾトリクロリド(発がん性・皮膚腐食性)は常温で液体で揮発しやすいため、密閉系での取扱いが不可欠です。
- ウ: ジクロロベンジジンとベンジジンの区別は、「ジクロロ置換=第1類・未置換=製造禁止」というパターンです。同様にオルト-トリジンも第1類物質であり、名称が似た製造禁止物質(ベンジジン等)との区別が試験で問われます。
- エ: 許可権者が「厚生労働大臣」である理由は、この制度が全国的に統一された基準で運用される必要があること、及び高度に危険な物質の製造に対する国の直接的な監視責任を確保するためです。都道府県労働局長に権限が委任されていない点が特徴です。
【根拠法令】労働安全衛生法第56条第1項(製造許可・厚生労働大臣許可)、労働安全衛生令第17条・別表第3第1号(第1類物質の列挙)、特定化学物質障害予防規則第3条(密閉設備の義務)・第27条(作業主任者の選任)
【補足】第1類物質の製造許可は「厚生労働大臣」(都道府県局長ではない)。設備ごとに許可が必要。密閉式構造が義務。作業主任者選任は第1類・第2類が必要(第3類は不要)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第56条第1項(製造の許可・厚生労働大臣許可)、労働安全衛生令第17条・別表第3第1号(第1類物質の列挙)、特定化学物質障害予防規則第3条(設備の密閉構造)・第27条(作業主任者の選任)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。