衛生管理者 関係法令(有害業務) 問45:有機溶剤中毒予防規則(有機則)・保護具規格
有機溶剤業務における呼吸用保護具に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア有機溶剤業務に従事する労働者に使用させる呼吸用保護具は、有機ガス用防毒マスクに限られており、送気マスク・電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)は使用できない。
- イ有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、吸収缶の使用時間の累積が一定の時間数に達した場合や変色・破損が生じた場合に交換すればよく、作業ごとに交換する必要はない。
- ウ酸素濃度が18%未満の場所では、有機ガス用防毒マスクを使用して有機溶剤業務を行うことができる。
- エ有機溶剤が皮膚から吸収される経路(経皮吸収)がある業種の業務では、不浸透性の保護衣・保護手袋等の装着も事業者が措置すべき義務に含まれる。正答
- オ防毒マスクの選定において、有機ガス用吸収缶の破過時間は気温・湿度に関わらず一定であるため、環境条件を考慮した選定は不要である。
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正しいのはエです。有機則第33条により呼吸用保護具の使用が求められるほか、皮膚から吸収・障害を生じるおそれがある有機溶剤を取り扱う業務では、労働安全衛生規則第594条等に基づき不浸透性の保護衣・保護手袋・保護眼鏡等の使用措置も事業者の義務として求められています。
各誤りの要点: ア→送気マスク・PAPRも使用可能(防毒マスクだけに限られない)。ウ→酸素濃度18%未満の場所では防毒マスクは絶対使用禁止(酸素欠乏で窒息死する危険がある・送気マスクまたは空気呼吸器が必須)。オ→吸収缶の破過時間は気温・湿度・蒸気濃度によって変化するため、環境条件を考慮した選定が必要です。
有機溶剤業務における呼吸用保護具の種類と使用条件:
| 保護具の種類 | 使用可能な条件 | 酸素欠乏場所 |
|---|---|---|
| 有機ガス用防毒マスク | 酸素濃度18%以上・有機溶剤蒸気濃度が許容範囲内 | 使用禁止 |
| 送気マスク(エアラインマスク) | 有機溶剤・酸欠どちらにも適用可 | 使用可 |
| 電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR) | 有機ガス用フィルタ装着・酸素濃度18%以上 | 使用禁止 |
| 空気呼吸器(SCBA)| 危険区域・脱出等の緊急用 | 使用可 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 有機溶剤業務の呼吸用保護具は防毒マスクに限られず、送気マスク・PAPR等も適切な条件のもとで使用できます。適切な種類の選定が重要です。
- イ(誤): 吸収缶の交換は「変色・破損・臭気の感知・累積使用時間超過」等のサインに基づいて行いますが、これは「いつ交換してもよい」という意味ではなく、むしろ定期的な管理が求められます。また、有機溶剤の種類・濃度・環境条件によっては早期交換が必要になる場合があります。
- ウ(誤): 酸素濃度18%未満の場所での防毒マスク使用は禁止です(防毒マスクは酸素を供給しないため。酸欠則は酸素欠乏危険作業に送気マスク・空気呼吸器等を要求)。酸欠環境での防毒マスク使用は窒息死の危険があります。
- エ(正): 有機則第33条(呼吸用保護具)に加え、経皮吸収のある有機溶剤(ジメチルホルムアミド・一部の有機溶剤)取扱い業務では、安衛則第594条等に基づき不浸透性保護衣・保護手袋・保護眼鏡の使用も義務となります。
- オ(誤): 有機ガス用吸収缶の破過時間(有害ガスが缶を突き抜けるまでの時間)は、温度・湿度・有機溶剤の種類・蒸気濃度によって大きく変化します。高温・高湿度では破過時間が短縮されるため、環境条件を考慮した選定・管理が必要です。
【理論的背景】
有機溶剤業務での呼吸用保護具(特に防毒マスク)の管理は、選定ミス・使用ミスが有機溶剤中毒や酸欠事故に直結するため、法規制と実務的な技術知識の両方が求められます。防毒マスクは「フィルタリング式呼吸用保護具」であり、周囲の空気から有害ガスを除去して清浄空気を供給する仕組みです。そのため、除去できる化学物質は吸収缶の種類によって限定されており、酸素濃度が不足する環境では機能しません。
防毒マスクの原理:
- 吸収缶の内部に活性炭・化学吸着剤が充填されており、有機溶剤蒸気を化学的に吸着・除去
- 吸着容量には限界があり、限界を超えると有害ガスが「破過」(突き抜け)する
- 破過時間は物質の種類・濃度・温度・湿度・吸収缶の充填量によって変化
送気マスクとの根本的な違い:
- 防毒マスク: 環境の空気を浄化して使用→酸素欠乏環境では使用不可
- 送気マスク: 遠隔の清浄な空気をホースで供給→酸欠環境でも使用可
- この違い(環境空気を浄化する防毒マスク vs 清浄空気を供給する送気マスク)から、酸欠のおそれがある場所では送気マスク・空気呼吸器等が必須であり、防毒マスクの使用は死亡事故に直結します
【実務・条文構造】
有機則・安衛則の保護具規定の主要内容:
呼吸用保護具(有機則第32条・第33条):
- タンク内部等での送気マスクの使用(有機則第32条)
- 有機ガス用防毒マスク等の使用(有機則第33条。酸素欠乏のおそれがある場所では防毒マスクは不可・送気マスク等を使用)
- 吸収缶の定期交換・管理(有効使用時間の管理・超過前交換)
皮膚・眼への保護具(労働安全衛生規則第594条):
- 不浸透性の保護衣(化学防護服等)
- 不浸透性の保護手袋
- 保護眼鏡(有機溶剤のはね・飛散から眼を保護)
- 対象: 皮膚障害等を生じるおそれがある有機溶剤を直接取り扱う業務(容器への注入・洗浄等)
防毒マスクの選定・使用・管理の実務(基発第0207006号・2005年通達):
- 有害物質の種類に対応した吸収缶の選定
- 吸収缶の有効使用時間の算出(物質・濃度・作業時間・環境条件を考慮)
- 使用前点検(顔面への密着性・吸収缶の状態)
- 使用後の記録・保管(吸収缶は気密容器に保管)
- フィット試験(定量・定性フィット試験)の実施推奨(2022年改正で義務強化)
2022年改正による保護具の強化:
- 化学物質の自律的管理体制の整備に伴い、リスクアセスメントに基づく保護具の選定・使用が強化
- フィット試験の義務化(一定条件を満たす場合)
- 化学物質管理者による保護具管理規程の作成義務
【試験での位置づけ】
保護具問題の最頻出は「防毒マスクの酸欠場所使用禁止(絶対禁止・最重要)」「経皮吸収がある業務での保護衣・手袋等も義務」「吸収缶の破過時間は環境条件依存(固定値ではない)」の3点です。「酸素濃度18%未満では防毒マスクは使えない」というルールは死亡事故防止の核心であり、試験でも最高頻度で出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 送気マスク・PAPRを有機溶剤業務に使用する場面は、例えば防毒マスクの吸収缶の種類が対応する有機溶剤の蒸気濃度が非常に高い場合・タンク内作業(酸欠リスクがある)・作業時間が長く吸収缶の頻繁交換が困難な場合等です。実務では防毒マスクと送気マスクを場面で使い分けます。
- イ: 吸収缶の有効使用時間は、製造者が物質・濃度・作業条件ごとに試験データを基に算出します。しかし実際の作業では複数の有機溶剤が混在することが多く、混合溶剤環境では個別物質の破過時間よりも早く性能が低下する場合があります。
- ウ: 酸欠事故はタンク内・坑内・地下室等の閉鎖空間で特に多発します。有機溶剤業務中に酸欠が発生するのは、有機溶剤の蒸発で酸素が排除される・有機溶剤が錆や腐食を引き起こして酸素を消費する等のメカニズムによります。防毒マスクは酸素を補給する機能を持たないため、酸欠環境での死亡事故が繰り返されています。
- エ: 経皮吸収の観点から特に注意が必要な有機溶剤はジメチルホルムアミド(DMF)です。DMFは皮膚からの吸収が速く、手袋なしでの取扱いで肝障害が生じた事例が報告されています。
【根拠法令】有機溶剤中毒予防規則第32条(送気マスクの使用)・第33条(呼吸用保護具の使用)、労働安全衛生規則第594条(皮膚障害等防止用の保護具:不浸透性保護衣・保護手袋等)。※防毒マスクは酸素を供給しないため酸欠のおそれがある場所では使用不可(送気マスク・空気呼吸器等を使用)
【補足】酸素濃度18%未満では防毒マスク絶対禁止(送気マスク等を使用)。経皮吸収業務では保護衣・手袋も義務。吸収缶の破過時間は温湿度・濃度で変化。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則第32条(送気マスクの使用)・第33条(呼吸用保護具の使用)、労働安全衛生規則第594条(皮膚障害等防止用の保護具:不浸透性の保護衣・保護手袋・保護眼鏡等)、防毒マスク・防じんマスク等の選択、使用等について(基発0525第3号等)。※防毒マスクは酸素を供給しないため、酸素欠乏のおそれがある場所では使用できず、送気マスク・空気呼吸器等を用いる(酸欠則の趣旨)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。