衛生管理者 関係法令(有害業務) 問8:有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤中毒予防規則(有機則)における局所排気装置に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア有機則に定める局所排気装置のフードは、囲い式フードと外付け式フードの2種類に限られ、レシーバー式フードは有機則の対象外である。
- イ外付け式フードは、有害物質の発生源を完全に囲わないため、囲い式フードよりも必要とされる制御風速(排気の気流速度)が低くなる。
- ウ囲い式フードを設けた局所排気装置の排風機は、空気清浄装置の前(上流側)に設置しなければならない。
- エ局所排気装置の性能を維持するため、ダクトの途中で分岐を設けることは許されていない。
- オ局所排気装置を設置した事業者は、局所排気装置が有機則に定める制御風速を満たしていることを確認するため、1年以内ごとに1回、定期自主検査を実施しなければならない。正答
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正しいのはオです。局所排気装置は1年以内ごとに1回の定期自主検査が義務付けられています(有機則第20条)。これは特化則・粉じん則でも共通のルールです。
各誤りの要点: ア→有機則にはレシーバー式フードも認められています(囲い式・外付け式・レシーバー式の3種類が存在)。イ→逆で誤り。外付け式フードは有害物質を囲わないため、囲い式よりも高い制御風速が必要です(有機則別表第4)。ウ→排風機は空気清浄装置の後(下流側)に設置します(清浄化された空気を排出するため)。エ→ダクトの分岐は設計上認められており、「許されていない」は誤りです。
局所排気装置のフード種類と制御風速の比較:
| フードの種類 | 構造の特徴 | 必要な制御風速 |
|---|---|---|
| 囲い式(グローブボックス型等) | 有害物質の発生源を完全に囲む | 低い(0.4m/s等) |
| 外付け式(側方吸引型等) | 発生源の側方・上方に設置 | 高い(0.5〜1.0m/s等) |
| レシーバー式(吹き出しに対して受け取る型) | 上昇気流・吹き出しを利用 | 対象に応じて設定 |
制御風速の原則: 発生源を「囲む度合い」が低いほど、飛散した有害蒸気を捕集するために必要な気流速度(制御風速)は高くなります。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 有機則第16条別表第4には囲い式・外付け式のほかレシーバー式も含まれており、3種類が対象です。
- イ(誤): 外付け式は発生源を囲まないため、囲い式に比べてより高い制御風速が必要です(囲い式0.4m/s≦、外付け側方1.0m/s・上方0.5m/s等)。
- ウ(誤): 排風機は、粉じん・有害物質が排風機の羽根や電動機を損傷・汚染しないよう、空気清浄装置(スクラバー・フィルター等)で有害物を除去した後(下流側)に設置するのが正しい配置です。
- エ(誤): ダクトの分岐は実務上広く用いられており、有機則・特化則等において明文で禁止されていません。設計上適切に行われる分岐は認められています。
- オ(正): 有機則第20条の通り、局所排気装置は1年以内ごとに1回の定期自主検査が義務付けられています。この記録は3年間保存します。
【理論的背景】
局所排気装置は、有害物質が発生する地点(発生源)の近傍に設置したフードで有害物質を含む空気を吸引・捕集し、ダクトを通して作業場外に排出する装置です。「発生源制御」という考え方に基づいており、作業場全体の換気(全体換気)よりも少ないエネルギーで効率的に有害物質を除去できます。局所排気装置の設計では「制御風速」の確保が核心であり、フードの種類・位置・形状によって必要な風速が異なります。
フードの種類と制御風速の根拠:
囲い式は発生源を物理的に囲むため、囲いの内部で有害蒸気が高濃度になっても、フードの開口部から吸引する風速(面速度)が一定以上あれば有害物質の逸散を防げます。外付け式は発生源を囲わないため、フードから離れた発生源まで「引き込む」のに十分な気流が必要です。制御風速は発生源からフードまでの距離が離れるほど急速に低下(逆二乗則に近い減衰)するため、外付け式では高い風速が必要になります。
【実務・条文構造】
局所排気装置の設置要件(有機則第16条・別表第4):
- 囲い式: 制御風速 0.4m/s(有機溶剤ガス基準)
- 外付け式(側方): 1.0m/s
- 外付け式(下方): 1.0m/s
- 外付け式(上方): 1.2m/s
(注: 特化則・有機則で対象物質・フード形状に応じた詳細な基準が別表に示されている)
局所排気装置の構成要素(有機則・特化則に共通):
1. フード(発生源に最も近い吸引口)
2. ダクト(空気を輸送する管路)
3. 空気清浄装置(スクラバー・吸着剤・フィルター等で有害物を除去)
4. 排風機(ファン・モーター)
5. 排気口(屋外への排出口)
※排風機は空気清浄装置の後(下流側)に配置するのが原則(清浄空気を排出するため腐食・摩耗を防止)
定期自主検査の実施事項(有機則第20条・特化則第30条の2):
- フードの損傷・詰まり・変形の有無
- ダクトの腐食・詰まり・接続部の漏洩の有無
- 空気清浄装置の有害物除去性能の確認
- 排風機の回転数・騒音・振動の確認
- 制御風速の測定(所定の風速を確保しているか)
- 記録保存: 3年間
【試験での位置づけ】
局所排気装置問題の頻出は「排風機の位置(空気清浄装置の後・下流側)」「外付け式は囲い式より制御風速が高い(逆を問う引っかけに注意)」「定期自主検査は1年以内ごとに1回・記録3年保存」の3点です。ウのような「排風機を空気清浄装置の前(上流側)に設置」という誤りは、局所排気装置の構造順序の理解が問われる典型的な問題です。制御風速の数値(囲い式0.4m/s・外付け側方1.0m/s等)は有機則別表第4の基準値として覚えておくと確実です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: レシーバー式フードは、溶融金属等で上昇気流が常に発生する工程(鋳造工場等)や、グラインダー等で回転体から有害物が一方向に吹き飛ぶ場合に使用します。発生源自体が気流を生み出すため、その気流を「受け取る(receive)」ように配置します。囲い式・外付け式が排気により吸引するのに対し、レシーバー式は発生源の勢いを活用する点が異なります。
- イ: 制御風速の高低は「捕集効率」と「エネルギーコスト・騒音」のトレードオフです。外付け式は制御風速を上げる必要がある分、排風機の電力消費・騒音が大きくなります。このため可能な限り囲い式(完全囲い・グローブボックス等)を採用し、やむを得ない場合に外付け式を採用するのが設計原則です。
- ウ: 排風機を空気清浄装置の前に設置した場合、排風機の羽根やケーシングに有害物質(腐食性のある溶剤蒸気・粉じん等)が直接当たり、腐食・摩耗・目詰まりが生じます。清浄空気を排出することで排風機の寿命延長・メンテナンスコスト低減が図られます。この順序は試験でも実務でも基本中の基本として押さえる必要があります。
- エ: ダクトの分岐は複数の発生源を1台の排風機でカバーする場合に必要な設計です。ただし分岐すると各フードへの風量・制御風速が変化するため、設計時に各分岐の圧力損失バランスを計算して必要な制御風速を確保する必要があります。分岐の存在自体は禁止されておらず、適切な設計・検証が求められます。
- オ: 定期自主検査の記録には、検査実施者の氏名・日時・検査結果(良否判定)・補修措置の内容等を記載します。この記録は労働基準監督署の監督・立入検査の際に提示することが求められる重要な書類です。
【根拠法令】有機溶剤中毒予防規則 第16条・別表第4(局所排気装置の種類と制御風速)・第20条(定期自主検査:1年以内ごとに1回・記録3年保存)
【補足】外付け式フードは囲い式より制御風速が高い(逆でない)。排風機は空気清浄装置の後(下流側)に設置。定期自主検査は1年以内ごとに1回・記録3年保存。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)第16条(局所排気装置の要件)・第20条(定期自主検査)、特化則第29条・30条等。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。