社労士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

社労士 社会保険一般常識 問1|社会保険適用拡大

問題

社労士 | 社会保険一般常識 | 令和9年度(2027年度)試験対応・数値確認日 2026-10-01

短時間労働者に対する社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点で施行されている制度を前提とすること。

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答え合わせ

正解は イ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はイ(正しい記述)です。

短時間労働者が新たに社会保険の被保険者となった場合、保険料は使用者と被保険者が折半で負担します。また、国民年金の第3号被保険者(専業主婦・被扶養配偶者)だった方は、厚生年金保険の第2号被保険者に変更となります。これにより、将来の老齢厚生年金・障害厚生年金の権利が生まれます(イは正しい記述)。

アは「①〜④の4要件のみ」と書いていますが、実際は①週20時間以上、②月額8.8万円以上、③2か月超の雇用見込み、④51人以上事業所、⑤学生でないの5要件が必要です(年金機構公式)。アは「③2か月超の雇用見込み」が欠落しており誤り。エ・ウ・オは改正内容の時期を誤っており(賃金要件の撤廃は2026年10月施行ではなく、公布から3年以内の政令で定める日。企業規模要件は10年かけて段階的に縮小・撤廃)、試験基準日(4/10)時点ではいずれも未施行です。

令和8年度試験(基準日2026年4月10日)で出題対象となる適用要件は5つです(健保法第3条第1項第9号・厚年法第12条)。

1. 週所定労働時間20時間以上

2. 賃金月額8.8万円以上(年収約106万円相当)

3. 2か月を超える雇用見込み

4. 使用事業所の被保険者数51人以上(特定適用事業所)

5. 学生でないこと

ポイントは、①「2か月超の雇用見込み」要件の存在(アで欠落。2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えて使用されることが見込まれない者は健保法第3条第1項第2号ロで適用除外)、②51人以上要件は2024年10月施行で基準日時点では有効、③令和7年法律第74号による「賃金要件撤廃」は未施行(公布から3年以内の政令で定める日)のため出題対象外、の3点です。

各選択肢の正誤判定:

  • ア(誤): 「①〜④の4要件のみ」としている点が誤り。「2か月超の雇用見込み」が欠落しており要件の数が一つ足りない。正しくは5要件。
  • エ(誤): 「2026年10月1日に施行された」が誤り。賃金要件の撤廃は令和7年法律第74号で定められたが、施行は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」(厚労省)とされ、基準日時点の制度では月額8.8万円以上の要件は存続している。
  • ウ(誤): 「2024年10月に51人以上へ引下げ」は正しいが、「2026年10月にすべての事業所で規模要件が撤廃」が誤り。企業規模要件は10年かけて段階的に縮小・撤廃される(厚労省)もので、2026年10月一括撤廃ではない。
  • イ(正): 保険料の労使折半(健保法第161条・厚年法第82条)、第3号被保険者から第2号被保険者への変更(国年法第7条)は、いずれも現行制度の正確な記述。基準日時点で施行済みの制度として唯一正しい。
  • オ(誤): 賃金要件の撤廃は2026年10月施行ではなく、基準日時点で未施行。さらに「すべての問題が法制度上解消される」という断定も不正確で、賃金要件が撤廃されても週20時間以上の労働時間要件は残るため、就業調整インセンティブは完全には消えない。

正答イの再確認: 折半負担と第3号→第2号への切替は、適用拡大の効果として最も基本的かつ確定的な制度内容。試験基準日に関係なく正しい記述として成立する。

【制度趣旨と適用拡大の立法経緯】

短時間労働者への社会保険適用拡大は、平成24年(2012年)年金機能強化法(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)により導入され、平成28年(2016年)10月から段階的に施行された。立法趣旨は大きく3点ある。

1. 「労働者性に応じた保険適用」原則の徹底: 正規・非正規の格差是正と「働き方に中立な制度」の実現

2. 第3号被保険者(無業の被扶養配偶者)の段階的縮小: 専業主婦モデルからの脱却と就労促進

3. 厚生年金財政の支え手拡大: 加入者拡大による財政基盤強化

この趣旨に照らせば、適用拡大の本質は「短時間労働者も労働者である以上、保険料を負担し、その分将来の給付(老齢厚生年金・傷病手当金・出産手当金等)を受ける権利を持つべき」という原則の徹底にある。社一の論述・選択肢では、この趣旨を踏まえた制度理解が問われる。

【適用拡大の段階的スケジュール(年表で整理)】

施行時期企業規模要件賃金要件令和8年度試験での扱い(基準日4月10日)
2016年10月501人以上8.8万円以上—
2017年4月500人以下も労使合意で任意適用8.8万円以上—
2022年10月101人以上8.8万円以上—
2024年10月51人以上8.8万円以上出題対象
公布(2025年)から3年以内の政令で定める日—撤廃(全国の最低賃金の水準を見極めて判断)対象外(基準日時点で未施行)
10年かけて段階的に縮小・撤廃—対象外(基準日時点で未施行)

【関連他法令との接続】

社一の出題は単独制度ではなく、関連法令との連動で問われやすい。

  • 国民年金法第7条: 第1号・第2号・第3号の区分。適用拡大により第3号→第2号への移行が発生する設計。
  • 健康保険法第3条第1項第9号: 短時間労働者の適用除外の要件。厚年法第12条と並列規定。
  • 税法(所得税法第83条・第83条の2=配偶者控除・配偶者特別控除): 税の「壁」と社保の「106万円・130万円の壁」が二重に絡む構造。税の基準額は税制改正で見直されるため、受験年度の所得税法で確認する。
  • 雇用保険法: 週20時間という労働時間の基準は、雇用保険の適用除外(雇保法第6条第1号:1週間の所定労働時間が20時間未満の者)とも共通する。

特に「税の壁」と「社保の壁(106万・130万)」を混同させる問題が頻出するため、「税」と「社保」は別系統の制度で、それぞれ独立した基準額があると整理する必要がある。

【社労士試験で頻出する論点パターン】

過去問・予想問題を分析すると、適用拡大では以下のパターンが繰り返される。

1. 要件の数を誤らせる: 4要件と書く誤肢(アのパターン)・6要件と書く誤肢

2. 施行時期と基準日のズレ: 「2026年10月施行済」など施行時期を誤る誤肢(エ・オのパターン)

3. 被保険者種別変更の混同: 第3号→第1号と誤らせる、保険料負担を全額自己負担と書く誤肢

4. 規模要件の数値: 51人/101人/501人を入れ替える誤肢

5. 学生要件の例外: 通信制・夜間学生は適用対象であることを問う

【実務での落とし穴】

  • 「2か月超の雇用見込み」の判定: 適用除外になるのは「2月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの」に限られる(健保法第3条第1項第2号ロ)。当初2か月以内の契約でも、更新等により定めた期間を超えて使用されることが見込まれる場合は当初から被保険者となる。実務では契約書の更新条項と運用実態の両面確認が必要。
  • 賃金月額8.8万円の算定範囲: 残業代・賞与・通勤手当・精皆勤手当は除外される。基本給+役職手当等の固定的賃金で判定するため、見かけの年収と異なる場合がある。
  • 企業規模カウント: 同一法人の被保険者総数で判定。支店単位ではなく法人単位である点に注意。
  • 資格取得日: 被保険者の資格は、適用事業所に使用されるに至った日または適用除外に該当しなくなった日に取得する(健保法第35条)。企業規模要件の引下げで新たに特定適用事業所となった場合も、その日に要件を満たしている短時間労働者はその日から被保険者となる。

【簡易計算例:106万円の壁を超える月の手取り影響】

賃金月額9.0万円(基準日時点・51人以上事業所・週20時間勤務)の短時間労働者が新規加入した場合の月次負担の目安(40歳未満・介護保険料なし)。実際の保険料は賃金額ではなく標準報酬月額に料率を掛けて計算するため、ここでは賃金額で簡略化した概算とし、健康保険料率は仮に10.0%とする(協会けんぽの料率は都道府県ごと・年度ごとに異なる)。

  • 厚生年金保険料: 9.0万円 × 18.30% × 1/2 ≒ 8,235円(本人負担)
  • 健康保険料: 9.0万円 × 10.0%(仮定) × 1/2 ≒ 4,500円(本人負担)
  • 本人負担合計: 約12,700円/月
  • 年間: 約15.2万円の手取り減

ただし、将来の老齢厚生年金(報酬比例部分)が加入年数に応じて加算され、傷病手当金・出産手当金等の短期給付も受給可能となる。社労士相談では、この短期的負担と長期的給付のバランス、配偶者の税控除との総合判定が求められる。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第12条(適用除外・短時間労働者)・健康保険法第3条第1項第9号(短時間労働者の適用除外)、厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」(確認日2026-09-30・出典: 厚労省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html) 施行日注記: 本問は「法令基準日(2026年4月10日)時点で施行されている制度」を前提。令和7年法律第74号による賃金要件(月額8.8万円)の撤廃は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断」、企業規模要件は「10年かけて段階的に縮小・撤廃」(厚労省)で、いずれも試験基準日時点で未施行。選択肢エ・オの「2026年10月1日に施行された」は誤り。 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。