社労士 社会保険一般常識 問5:社会保険に関する一般常識(社一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
社会保険労務士法に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア社会保険労務士の業務は第1号業務・第2号業務・第3号業務の3種類に分類される。第1号業務は行政機関等に提出する申請書類・届出書類・報告書等の作成および提出代行であり、他人の求めに応じ報酬を得て行うことは社会保険労務士の独占業務とされている。
- イ社会保険労務士として業務を行うためには、社会保険労務士試験に合格し、一定の実務経験(2年以上)を有することが必要であり、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録することで業務を開始できる。
- ウ「特定社会保険労務士」は、紛争解決手続代理業務(あっせん手続代理等)を行うことができる。特定社会保険労務士は、社会保険労務士として登録した後、所定の特別研修(グループ研修・ゼミナール・試験)を修了することで付記登録を受けられる。
- エ社会保険労務士の第3号業務(コンサルティング業務)は、労務管理・社会保険に関する相談・指導であり、社会保険労務士でない者が報酬を得て行うことも法律上認められている。ただし、業として継続的に行う場合は社会保険労務士資格が必要である。正答
- オ社会保険労務士法人は、社会保険労務士が2名以上で設立することができ、特定社会保険労務士が社員に含まれる場合は特定社会保険労務士法人として紛争解決手続代理業務も行える。
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正答はエ(誤っている記述)です。
第3号業務(労務管理・社会保険に関する相談・指導・コンサルティング)は、社会保険労務士でない者が行うことも法律上認められています——この点は正しいです。しかし「業として継続的に行う場合は社会保険労務士資格が必要」という後半の記述が誤りです。第3号業務は社会保険労務士の独占業務ではなく、誰でも(無資格者でも)報酬を得て業として行うことが認められています(第27条の適用を受けない)。
これに対して第1号業務・第2号業務は独占業務であり、社会保険労務士でない者が報酬を得て行うことは禁止されています(社労士法第27条)。ア・イ・ウ・オはいずれも正しい記述です。
社会保険労務士の3種類の業務(最重要の整理):
| 業務区分 | 内容 | 独占業務か |
|---|---|---|
| 第1号業務 | 行政機関等への申請書類・届出書類・報告書の作成・提出代行(労働保険・社会保険の申請、労働保険の年度更新等) | 独占業務(社労士でない者は報酬を得て行えない) |
| 第2号業務 | 申請書等に関する帳簿書類の作成(賃金台帳・労働者名簿・就業規則等) | 独占業務(同上) |
| 第3号業務 | 労務管理・社会保険に関する相談・指導(コンサルティング・アドバイザリー) | 非独占業務(誰でも行える) |
選択肢エの誤りの核心:
- 「業として継続的に行う場合は社会保険労務士資格が必要」→ 誤り
- 第3号業務は独占業務でないため、無資格者が業として継続的に行っても社労士法第27条違反にはならない
- ただし第1号・第2号業務を行う場合は社労士資格が必須(社労士法第27条が適用)
社会保険労務士の登録要件(イの根拠):
1. 社会保険労務士試験合格(合格率6〜7%程度の難関試験)
2. 実務経験2年以上または指定機関での実務研修修了(約6か月)
3. 全国社会保険労務士会連合会の社会保険労務士名簿への登録
特定社会保険労務士(ウの根拠):
- 社会保険労務士として登録した後、特別研修修了+試験合格で付記登録
- 取り扱える紛争: 都道府県労働局のあっせん・社会保険審査官への不服申立て代理等(ただし裁判所への訴訟代理は不可・弁護士の独占)
- 代理できる紛争の上限額: 原則120万円以下
社会保険労務士法人(オの根拠):
- 2名以上の社会保険労務士で設立可能
- 特定社会保険労務士が社員に含まれる場合、法人として紛争解決手続代理業務が可能
【社会保険労務士制度の成立と「専門家の独占業務」の意義】
社会保険労務士法は1968年(昭和43年)に制定されました。労働・社会保険関係の法令が複雑化・多様化するなか、企業の適正な労務管理と労働者の権利保護を支える「労働・社会保険の専門家」として国家資格が整備された経緯があります。
独占業務制度の意義は「専門知識のない者が社会保険・労働保険の申請書類を誤作成し、事業主・労働者に不利益が生じることを防ぐ」点にあります。特に社会保険の申請ミス(資格取得届の誤記・育児休業給付の申請漏れ等)は、本人の年金権・保険給付に直接影響するため、専門家による正確な事務処理が求められます。
【第1号・第2号業務の具体例と隣接士業との境界】
第1号業務の具体例(社労士の独占業務):
- 労働保険の成立届・年度更新(労働保険徴収法)
- 雇用保険の被保険者資格取得・喪失届(雇用保険法)
- 健康保険・厚生年金の資格取得・喪失届(健保法・厚年法)
- 育児休業給付金・傷病手当金の支給申請
- 就業規則の行政機関(労働基準監督署)への届出
第2号業務の具体例(独占業務):
- 賃金台帳・労働者名簿の作成
- タイムカードに基づく労働時間管理台帳の作成
- 36協定届の書類作成
隣接士業との境界:
- 弁護士: 訴訟代理は弁護士独占。特定社会保険労務士は都道府県労働局レベルまで(120万円以下のあっせん)
- 税理士: 労働保険・社会保険の手続きは社労士独占(税理士は不可・ただし顧問先の給与計算に付随して事実上行う慣行がある)
- 行政書士: 許認可申請は行政書士領域だが、労働保険・社会保険の申請は社労士領域(ただし両資格を保有するダブルライセンスも多い)
【第3号業務(コンサルティング)の非独占性と「人事コンサルタント」との競合】
第3号業務が非独占である結果、「人事コンサルタント」「労務管理士(民間資格)」「HRコンサルタント」等の無資格者も報酬を得てコンサルティングを提供できます。競合するプレイヤーは多く、社労士が第3号業務の価値を示すには「第1号・第2号業務との一体提供」「法的根拠・条文を示した精緻なアドバイス」「リスク管理(就業規則の法令違反チェック等)」で差別化することが求められます。
【社会保険労務士の懲戒処分(社一頻出)】
社労士法第25条の2以下に懲戒の規定があります:
- 戒告: 最も軽い処分
- 2年以内の業務停止: 一定期間の業務禁止
- 失格処分: 登録抹消(最も重い処分)
懲戒権者は厚生労働大臣(社労士法第25条の2以下)。職業倫理の観点からも社一科目で出題されることがあります。
【AI・テクノロジーと社会保険労務士の将来】
労働保険・社会保険の申請手続き(第1号業務)はe-Gov電子申請や各種クラウド人事サービスの普及により、AIやシステムが代替できる部分が拡大しています。「2025年問題(税理士・社労士業務の自動化)」として議論されています。
一方、第3号業務(コンサルティング)・紛争解決代理業務(特定社労士)・複雑な給付申請支援(傷病手当金・障害年金等)は人間の判断・対人援助が不可欠で、社労士が価値を発揮し続ける領域です。社労士試験の「社一」科目で社労士法が出題されるのは「自分の職業の法的根拠を正確に理解する」という職業倫理的な意味合いもあります。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser):本問は条文ベースで要確認フラグなし。社労士法第27条(独占業務)の解釈と第3号業務の非独占性は正確に整理済。advanced解説中の懲戒権者を「都道府県知事」→「厚生労働大臣」(社労士法第25条以下)に是正。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 社会保険労務士法第2条(業務)・第2条の2(特定社会保険労務士)・第3条(資格)・第14条の2(登録)・第25条の9(社会保険労務士法人)・第27条(業務の禁止) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。