問題
社会保険労務士法に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエ(誤っている記述)です。
第3号業務(労務管理・社会保険に関する相談・指導・コンサルティング)は、社会保険労務士でない者が行うことも法律上認められています——この点は正しいです。しかし「業として継続的に行う場合は社会保険労務士資格が必要」という後半の記述が誤りです。第3号業務は社会保険労務士の独占業務ではなく、誰でも(無資格者でも)報酬を得て業として行うことが認められています(第27条の適用を受けない)。
これに対して第1号業務・第2号業務は独占業務であり、社会保険労務士でない者が報酬を得て行うことは禁止されています(社労士法第27条)。ア・イ・ウ・オはいずれも正しい記述です。
社会保険労務士の3種類の業務(最重要の整理):
| 業務区分 | 内容 | 独占業務か |
|---|---|---|
| 第1号業務 | 行政機関等への申請書類・届出書類・報告書の作成・提出代行(労働保険・社会保険の申請、労働保険の年度更新等) | 独占業務(社労士でない者は報酬を得て行えない) |
| 第2号業務 | 申請書等に関する帳簿書類の作成(賃金台帳・労働者名簿・就業規則等) | 独占業務(同上) |
| 第3号業務 | 労務管理・社会保険に関する相談・指導(コンサルティング・アドバイザリー) | 非独占業務(誰でも行える) |
選択肢エの誤りの核心:
- 「業として継続的に行う場合は社会保険労務士資格が必要」→ 誤り
- 第3号業務は独占業務でないため、無資格者が業として継続的に行っても社労士法第27条違反にはならない
- ただし第1号・第2号業務を行う場合は社労士資格が必須(社労士法第27条が適用)
社会保険労務士となる資格と登録(イの根拠):
1. 社会保険労務士試験合格等(第3条第1項各号)
2. 労働社会保険諸法令に関する事務に従事した期間が通算2年以上、又は厚生労働大臣がこれと同等以上の経験を有すると認める者(第3条第1項。弁護士となる資格を有する者は同条第2項)
3. 社会保険労務士名簿への登録(第14条の2)
特定社会保険労務士(ウの根拠):
- 社会保険労務士として登録した後、特別研修修了+試験合格で付記登録
- 取り扱える紛争: 個別労働関係紛争のあっせん手続等の代理(裁判所への訴訟代理は不可・弁護士の独占)。なお社会保険審査官への審査請求の代理は特定社労士に限らず社労士の業務(第2条第1項第1号の3)
- 紛争の目的の価額: 民間紛争解決手続(ADR)の代理(第2条第1項第1号の6)は、価額が120万円を超える場合は弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限られる(紛争調整委員会のあっせん等(1号の4)・都道府県労働委員会のあっせん(1号の5)には価額の定めがない)
- 根拠: 第2条第2項(紛争解決手続代理業務試験に合格し、第14条の11の3第1項の付記を受けた社労士に限る)
社会保険労務士法人(オの根拠):
- 社員の人数の下限はなく、社会保険労務士1人でも設立可能(第25条の6)
- 紛争解決手続代理業務は、社員のうちに特定社会保険労務士がある法人に限り、定款で定める範囲で行える(第25条の9第1項第2号・第2項)
【社会保険労務士制度の成立と「専門家の独占業務」の意義】
社会保険労務士法は1968年(昭和43年)に制定されました。労働・社会保険関係の法令が複雑化・多様化するなか、企業の適正な労務管理と労働者の権利保護を支える「労働・社会保険の専門家」として国家資格が整備された経緯があります。
独占業務制度の意義は「専門知識のない者が社会保険・労働保険の申請書類を誤作成し、事業主・労働者に不利益が生じることを防ぐ」点にあります。特に社会保険の申請ミス(資格取得届の誤記・育児休業給付の申請漏れ等)は、本人の年金権・保険給付に直接影響するため、専門家による正確な事務処理が求められます。
【第1号・第2号業務の具体例と隣接士業との境界】
第1号業務の具体例(社労士の独占業務):
- 労働保険の成立届・年度更新(労働保険徴収法)
- 雇用保険の被保険者資格取得・喪失届(雇用保険法)
- 健康保険・厚生年金の資格取得・喪失届(健保法・厚年法)
- 育児休業給付金・傷病手当金の支給申請
- 就業規則・36協定届の行政機関(労働基準監督署)への届出書類の作成・提出
第2号業務の具体例(独占業務):
- 賃金台帳・労働者名簿の作成
- タイムカードに基づく労働時間管理台帳の作成
隣接士業との境界:
- 弁護士: 訴訟代理は弁護士独占。特定社会保険労務士が代理できるのは紛争調整委員会・都道府県労働委員会のあっせん等と、民間紛争解決手続(価額120万円超は弁護士との共同受任が条件)
- 税理士: 1号・2号業務は、社労士・社労士法人でない者が他人の求めに応じ報酬を得て業として行うことはできない。ただし「他の法律に別段の定めがある場合」「政令で定める業務に付随して行う場合」は例外(社労士法第27条ただし書)
- 行政書士: 許認可申請は行政書士領域だが、労働保険・社会保険の申請は社労士領域(ただし両資格を保有するダブルライセンスも多い)
【第3号業務(コンサルティング)の非独占性と「人事コンサルタント」との競合】
第3号業務が非独占である結果、「人事コンサルタント」「労務管理士(民間資格)」「HRコンサルタント」等の無資格者も報酬を得てコンサルティングを提供できます。競合するプレイヤーは多く、社労士が第3号業務の価値を示すには「第1号・第2号業務との一体提供」「法的根拠・条文を示した精緻なアドバイス」「リスク管理(就業規則の法令違反チェック等)」で差別化することが求められます。
【社会保険労務士の懲戒処分(社一頻出)】
社労士法第25条に懲戒の種類の規定があります:
- 戒告: 最も軽い処分
- 1年以内の業務の停止: 一定期間の業務禁止
- 失格処分: 社会保険労務士の資格を失わせる処分(最も重い処分)
懲戒権者は厚生労働大臣(社労士法第25条の2・第25条の3)。職業倫理の観点からも社一科目で出題されることがあります。
【AI・テクノロジーと社会保険労務士の将来】
労働保険・社会保険の申請手続き(第1号業務)はe-Gov電子申請や各種クラウド人事サービスの普及により、システムが代替できる部分が拡大しています。
一方、第3号業務(コンサルティング)・紛争解決代理業務(特定社労士)・複雑な給付申請支援(傷病手当金・障害年金等)は人間の判断・対人援助が不可欠で、社労士が価値を発揮し続ける領域です。社労士試験の「社一」科目で社労士法が出題されるのは「自分の職業の法的根拠を正確に理解する」という職業倫理的な意味合いもあります。
- 社会保険労務士法第27条・第25条・第25条の2e-Govで原文を読む
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律e-Govで原文を読む
- 雇用保険法e-Govで原文を読む
- 健康保険法e-Govで原文を読む
- 厚生年金保険法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 社会保険労務士法第2条(業務)・第3条(資格=試験合格等+事務従事2年以上又は厚生労働大臣が同等以上と認める者)・第14条の2(登録)・第25条(懲戒の種類)・第25条の6(法人の設立・社員数の下限なし)・第25条の9(法人の業務の範囲・紛争解決手続代理業務は特定社労士が社員にいる法人に限る)・第27条(業務の制限) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

