社労士 社会保険一般常識 問4:社会保険に関する一般常識(社一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金(DB)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア確定給付企業年金(DB)は、あらかじめ給付額が決まっている企業年金であり、将来の給付に必要な費用(積立金)の運用リスクは従業員(加入者)が負担する。積立不足が生じた場合は事業主が追加拠出する義務はない。
- イ企業型確定拠出年金(企業型DC)では、事業主が掛け金を拠出するが、「マッチング拠出」の仕組みにより、加入者である従業員も掛け金を上乗せして拠出することができる。マッチング拠出における加入者掛金は事業主掛金の額を超えて拠出することもでき、加入者の判断で柔軟に上乗せ額を決められる。
- ウ個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象者は、令和8年度時点では60歳未満の国民年金第1号・第2号・第3号被保険者に限定されており、65歳未満への拡大は予定されていない。
- エ確定拠出年金(企業型・個人型共通)は、加入者が自ら運用商品を選択するため、将来受け取れる年金額は運用結果により変動する。積み立てた資産は原則60歳まで引き出すことができない(中途引き出し禁止)。正答
- オ確定給付企業年金(DB)は、規約型(生命保険会社・信託銀行等に資産を委託する方式)と基金型(企業年金基金を設立する方式)の2つの類型があり、いずれも設立には厚生労働大臣の承認が必要である。
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正答はエ(正しい記述)です。
確定拠出年金(DC)では、加入者が自ら運用商品(投資信託・定期預金等)を選択し、運用結果によって将来受け取れる年金額が変わります(確定給付年金=DBと対比される最重要ポイント)。また、老後保障を目的とした制度であるため、積み立てた資産は原則60歳まで引き出せません(確定拠出年金法第34条・ただし障害等の特例あり)。この「自己運用・中途引き出し禁止」がエの正しい記述です。
アは誤りで、DBの運用リスクは事業主が負担し、積立不足が生じた場合は事業主が追加拠出義務を負います。イは前半(マッチング拠出により加入者も上乗せ拠出可)は正しいですが、後半の「加入者掛金は事業主掛金を超えて拠出できる」は誤りで、マッチング拠出の加入者掛金は事業主掛金の額を超えてはならない(確定拠出年金法第23条の2)という上限規制があります。ウは誤りで、iDeCoの加入上限は現在65歳未満に拡大されています。
DB(確定給付)とDC(確定拠出)の本質的な違い:
| 比較軸 | DB(確定給付企業年金) | DC(確定拠出年金) |
|---|---|---|
| 給付額 | あらかじめ決まっている(勤続年数・給与等で計算) | 運用結果によって変動する |
| 運用リスク | 事業主が負担(積立不足→事業主追加拠出義務) | 加入者(個人)が負担 |
| 積立資産の所有 | 事業主・基金が管理 | 加入者個人の「持ち分口座」 |
| 転職時 | 脱退一時金・他社DBへの移換(制限あり) | ポータビリティあり(iDeCoへの移換・持ち運び可) |
企業型DC・個人型DC(iDeCo)の概要(選択肢の正誤に関係する部分):
| 区分 | 企業型DC | iDeCo(個人型DC) |
|---|---|---|
| 掛け金の拠出者 | 事業主(マッチング拠出で加入者も可) | 加入者個人 |
| マッチング拠出の上限 | 加入者掛け金≦事業主掛け金かつ合計で拠出限度額以内 | — |
| 加入対象 | 60歳未満の厚生年金被保険者(企業が導入した場合) | 65歳未満の国年第1・2・3号被保険者(令和4年拡大) |
| 中途引き出し | 原則不可(60歳まで) | 原則不可(60歳まで) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): DBの運用リスクは事業主が負担。積立不足時の追加拠出義務が事業主にある(確定給付企業年金法第51条・財政計算義務)。
- イ(誤): マッチング拠出の仕組み(加入者も掛け金を上乗せ可)の前半は正確だが、後半の「加入者掛金は事業主掛金の額を超えて拠出することもできる」は誤り。確定拠出年金法第23条の2第2項により、マッチング拠出における加入者掛金は事業主掛金の額を超えてはならない(加入者≦事業主、かつ事業主+加入者の合計が拠出限度額以内)。社労士試験頻出の上限ルール。なお、令和4年(2022年)10月改正で企業型DC加入者のiDeCo同時加入は原則可能になったが、マッチング拠出を選択している加入者は引き続きiDeCo同時加入不可(マッチング拠出を停止しないとiDeCoには加入できない)という制約は維持されている(混同注意ポイント)。
- ウ(誤): iDeCoの加入上限は令和4年(2022年)5月から65歳未満に拡大(国民年金の任意加入者・国年第2号の60〜64歳が新たに対象)。「60歳未満に限定・65歳未満拡大は予定なし」は誤り。
- エ(正): 自己運用・将来の年金額が運用結果によって変動・原則60歳まで引き出し不可(確定拠出年金法第34条)はいずれも正確。
- オ(誤): 規約型は事業主が規約について厚生労働大臣の承認を受ける(DB法第3条)、基金型は企業年金基金の設立について厚生労働大臣の認可を受ける(DB法第12条)と用語が異なる。「いずれも厚生労働大臣の承認が必要」は誤りで、基金型の正しい行政行為は認可である。よってオは誤り肢であり、「正しいもの」を問う本問の正答はエ。
【企業年金制度の全体像と歴史的経緯】
日本の企業年金は、公的年金(国民年金・厚生年金)の「上乗せ」として機能する「3階建て年金」の3階部分です。歴史的には以下の変遷をたどりました:
1. 適格退職年金(1962〜2012年): 法人税法上の優遇措置を受ける年金。2012年3月に廃止・既存分のDB/DCへの移行完了
2. 厚生年金基金(1966年〜): 厚生年金の「代行部分」(基礎的な老齢厚生年金を国の代わりに支払う)+上乗せ部分の組み合わせ。AIJ投資顧問事件(2012年)等を受け、2014年以降は財政悪化基金の解散・新設禁止(一部存続)
3. 確定給付企業年金(DB)(2002年〜): 厚年基金の問題を解決する「代行なし・純粋上乗せ型」企業年金
4. 確定拠出年金(DC)(2001年〜): 米国の401(k)型をモデルにしたポータブルな個人勘定型
【iDeCoの加入対象拡大と令和6年改正(拠出限度額の見直し)】
iDeCoの加入対象の変遷:
- 2002年創設時: 自営業者(第1号被保険者)のみ
- 2017年1月: 企業年金加入の会社員・公務員・専業主婦(第3号)まで全国民が加入可能に
- 2022年5月: 加入上限が60歳未満→65歳未満に拡大(国民年金の任意加入者・厚生年金の60〜64歳加入者が新たに対象)
- 令和8年(2026年)12月1日施行予定: 拠出限度額の大幅引上げ(第2号被保険者 月23,000円/20,000円 → 月62,000円等)および加入可能年齢の70歳未満への拡大。令和8年度試験基準日(2026-04-10)時点では未施行のため、出題は現行(拠出限度額・65歳未満)を前提。
拠出限度額(令和8年度試験基準日2026-04-10時点・現行値):
| 区分 | 月額限度額 |
|---|---|
| 第1号被保険者(自営業者等) | 68,000円(国民年金基金との合算) |
| 第2号被保険者・企業年金なし | 23,000円 |
| 第2号被保険者・企業型DCのみ加入 | 20,000円(企業型DC掛金との合算は55,000円以内) |
| 第2号被保険者・DB等加入 | 12,000円(2024年12月以降は計算式変更で実質拡大) |
| 第3号被保険者 | 23,000円 |
【DC・DBの年金受取方法と税制優遇】
確定拠出年金の税制優遇は「EET型」(拠出時非課税・運用時非課税・給付時課税)で、3段階の税メリットがあります:
| フェーズ | 税制の扱い |
|---|---|
| 拠出時 | 掛け金が所得控除(個人拠出分は全額社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除) |
| 運用時 | 運用益が非課税(通常の証券口座では約20.315%の課税あり) |
| 給付時 | 一時金受取は退職所得控除・年金受取は公的年金等控除の適用 |
この税制優遇により、長期運用でのメリットが大きく、老後資産形成の手段として2024年頃からNISAと並んで「iDeCo+NISA」の組み合わせが一般的な個人資産形成の定番になっています。
【社労士の業務との接続(DCコンサルタント・継続教育)】
社労士は「確定拠出年金に関する継続教育(DC専門家資格)」を取得することで、企業へのDC制度の導入支援・加入者への投資教育・給付手続き・運用商品の選択サポート等の業務が可能になります。2021年の確定拠出年金法改正で「投資教育の充実義務」が事業主に課され、この分野での社労士の役割が拡大しています。
DB(確定給付)の企業年金管理でも社労士は活躍します:
- 年金規程の作成・変更
- 積立金の財政計算(アクチュアリーとの連携)
- 受給権者管理・裁定業務
- 制度終了(解散・他制度への移換)時の手続き
「DB→DC移行」は近年多くの企業で進んでいます(リスク・コストを事業主から従業員へ移転)。このトレンドは社一の頻出論点として、制度比較・移行手続きの問題が出題される可能性があります。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser・品質ゲート編集分の再検証): 品質ゲート(content-quality-officer)が選択肢イ後半に追加した「マッチング拠出選択者はiDeCo同時加入不可」は事実として正しい記述だった(一次ソース:国民年金基金連合会・厚労省資料/令和4年10月改正後も「マッチング拠出を利用していないこと」が企業型DC加入者のiDeCo加入条件として維持。複数二次ソース:楽天証券・りそな銀行・JPX東証マネ部・ソニー生命で同一見解)。品質ゲートの「同時加入解禁」は事実誤認(混同元:「企業型DC加入者のiDeCo同時加入解禁」と「マッチング拠出選択者のiDeCo同時加入不可」を取り違え)。このまま配信すると、(a)選択肢イが「正しい記述」となり正答エと2肢競合・設問破綻、(b)受験生に誤った法知識を配信、というYMYL重大事故になる。legal-reviser権限で再修正:イ後半を「加入者掛金は事業主掛金を超えて拠出することもできる」に置換し、確定拠出年金法第23条の2第2項(加入者掛金≦事業主掛金の上限規制)違反として誤り肢化。これにより正答エで一意化、かつ社労士頻出論点(マッチング拠出の上限ルール)を試す良問に再構成。standard解説のイ解説に正しい理由(上限規制違反)と混同注意ポイント(マッチング拠出選択者のiDeCo同時加入不可は事実)を併記。beginner解説のイ言及も整合修正。出典に確定拠出年金法第23条の2追記。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 確定拠出年金法第3条・第4条・第19条・第20条・第23条の2(企業型DCのマッチング拠出・加入者掛金は事業主掛金を超えない)・第62条(個人型・iDeCo加入対象)・第34条(中途引き出し禁止)、確定給付企業年金法第3条(規約型の規約承認)・第12条(基金型基金の設立認可) <!-- 監修確定 2026-06-07:(1)iDeCo加入上限は令和4年5月から65歳未満(厚生年金被保険者・国民年金任意加入者)に拡大済 → ウは誤り(既に拡大済)。(2)iDeCo拠出限度額の引上げ(第2号 月23,000円→62,000円等)は令和8年12月1日施行のため令和8年度試験基準日(2026-04-10)時点では未施行=現行限度額で出題。(3)確定給付企業年金法上、規約型は「規約の承認」(第3条)、基金型は「基金設立の認可」(第12条)と用語が異なるため、選択肢オの「いずれも承認」表現は厳密には不正確だが、本問は「正しいもの」を1つ選ぶ問題でエが正答。オの不正確さは本問の正誤判定には影響しない(補足情報として解説に明記)。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。