結論:民法R2改正(令和2年4月1日施行)の賃貸借4大急所は①敷金(622条の2)②原状回復(621条)③個人根保証(465条の2)④賃貸人地位移転(605条の2)。「改正前は判例・慣行で処理→改正後は条文に明文化」という構造を理解することが賃管士試験の民法対策の核心です。
令和2年(2020年)4月1日、120年ぶりの大改正となる「民法の一部を改正する法律」が施行されました。これを債権法改正(または平成29年改正民法)と呼びます。賃管士試験では、改正された条文を中心に出題される傾向が強く、「改正前はどうだったか・改正後はどう変わったか」の比較整理が得点の鍵です。
協議会非提携・独自作成:本記事は民法の条文・法務省公表資料をもとに合格ナビが独自に作成しています。本サイトは一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会と一切関係ありません。
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1. 改正民法の全体像(賃貸借関連)
| 条文 | 内容 | 新設/改正 |
|---|---|---|
| 民法621条 | 原状回復義務(通常損耗除外の明文化) | 改正 |
| 民法622条の2 | 敷金の定義・返還義務・充当 | 新設 |
| 民法465条の2 | 個人根保証の極度額規制 | 改正 |
| 民法605条の2 | 賃貸人の地位の移転 | 新設 |
| 民法607条の2 | 賃借人の修繕権 | 新設 |
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2. 敷金(民法622条の2)
条文の全文(抜粋)
民法622条の2第1項:「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。」
改正のポイント(試験頻出4点)
ポイント1:敷金の定義の明文化
「いかなる名目によるかを問わず」という文言が重要です。「保証金」「礼金(担保目的)」等の名目であっても、賃料等の債務を担保する目的で交付する金銭は「敷金」として民法622条の2が適用されます。
ポイント2:返還義務の発生タイミング
敷金返還義務が発生するのは賃貸借が終了し、かつ、賃借物の返還を受けたときです。つまり明渡しと同時ではなく、明渡し後に返還義務が生じます。「引越し当日に返してほしい」という主張は認められません。
ポイント3:充当の制限(賃借人からの充当請求は不可)
敷金を賃料に充当できるのは賃貸人のみです(第2項)。賃借人から「敷金を未払賃料に充当してください」と請求することはできません。試験では「賃借人からの充当請求の可否」が問われます。
ポイント4:改正前との対比
改正前の民法には敷金の定義・返還義務の明文規定がなく、判例(最高裁昭和48年2月2日判決等)と商慣習で運用されていました。改正後は条文で明確化されました。
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3. 原状回復義務(民法621条)
条文の全文(抜粋)
民法621条:「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」
改正のポイント(試験頻出3点)
ポイント1:通常損耗・経年変化は原状回復の対象外
括弧書きで「通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と明文化されました。改正前は判例で認められていた内容が条文に格上げされました。
ポイント2:賃借人の責めに帰すことができない損傷は除外
ただし書きにより、天災・老朽化など賃借人の責任によらない損傷は原状回復の対象外です。
ポイント3:国土交通省ガイドラインとの関係
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルの未然防止のためのガイドライン(令和5年更新版)」は改正民法621条の趣旨に沿って原状回復の判断基準を具体化しています。試験でもガイドラインの内容が参照されます。
VolatileBox(ガイドライン):最終確認日:2026-06-10。出典:国土交通省 原状回復ガイドライン(令和5年更新版)。
原状回復の具体的基準(ガイドライン参照)
| 損耗の種類 | 負担者 | 例 |
|---|---|---|
| 通常損耗・経年変化 | 賃貸人(オーナー) | 壁紙の自然な変色・畳の経年劣化 |
| 賃借人の故意・過失 | 賃借人 | ペットによる傷・タバコのヤニ汚れ・釘穴(大) |
| 特約で取り決めた場合 | 特約に従う | 鍵交換費用・ハウスクリーニング費用 |
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4. 個人根保証の極度額規制(民法465条の2)
条文の全文(抜粋)
民法465条の2第1項:「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でない物(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものおよび保証債務について約定された違約金または損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。」
同条第2項:「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。」
改正のポイント(試験超頻出)
ポイント1:極度額の書面明記が必須
個人を保証人とする賃貸借の連帯保証(根保証)では、保証契約書に極度額(保証の上限金額)を書面で定めなければ無効です。口頭の取り決めは無効です。
ポイント2:賃貸借への直接影響
賃貸借契約における個人連帯保証は「根保証」に当たります。よって改正後の賃貸借では「連帯保証人欄に極度額を記載すること」が標準的な契約書の要件になりました。
ポイント3:「保証の上限がないと無効」の意味
改正前は賃貸借の保証に上限額の定めがなくても有効でした(保証人が青天井の責任を負う可能性)。改正後は上限の記載なしには保証自体が無効となります。
ポイント4:法人保証は対象外
極度額規制の対象は個人保証人のみです。法人が保証人となる場合は適用されません。試験では「法人保証には極度額規制が適用されるか」という引っ掛け問題が出ます。
改正前後の比較表
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 個人根保証の極度額 | 定めなくても有効 | 書面明記なしで無効 |
| 法人根保証 | 規定なし | 適用なし(個人のみ) |
| 書面の要否 | 口頭でも有効な場合あり | 書面必須 |
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5. 賃貸人地位の移転(民法605条の2)
条文の全文(抜粋)
民法605条の2第1項:「前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。」
改正のポイント(試験頻出3点)
ポイント1:賃借人の承諾は不要
賃貸している不動産が売買等で所有権移転した場合、賃借人の承諾なく賃貸人の地位が新所有者(譲受人)に移転します。「承諾が必要か不要か」は頻出の引っ掛けです。
ポイント2:敷金も自動的に移転する
旧所有者が受け取っていた敷金は、原則として新所有者に引き継がれます(第4項)。旧オーナーから新オーナーへの敷金の引渡しは当事者間の問題であり、賃借人は新オーナーに対して敷金の返還を請求できます。
ポイント3:合意による地位の留保も可能
旧所有者(賃貸人)と新所有者(譲受人)が合意することで、賃貸人の地位を旧所有者に留保することもできます(第2項)。ただし賃借人はどちらに賃料を払えばよいかを知る権利があるため、賃借人への通知が重要です。
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6. 修繕権(民法607条の2)
条文の全文(抜粋)
民法607条の2:「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。二 急迫の事情があるとき。」
ポイント
改正前から判例・慣習上認められていた「賃借人の修繕権」が条文に明文化されました。急迫の事情(水漏れ・台風被害等)がある場合は賃貸人への通知・相当期間の経過を待たずに修繕できます。
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7. 試験対策:民法改正の頻出問題パターン
パターン1:敷金の返還タイミング
「賃貸借終了と同時に敷金を返還しなければならないか?」→ 誤り。賃貸借終了しかつ物件の返還を受けたときが返還義務の発生時点(明渡し後)。
パターン2:通常損耗の原状回復義務
「通常損耗は原状回復義務に含まれるか?」→ 含まれない(民法621条の括弧書きで明文化)。ただし特約で賃借人負担とすることは可能(ただし特約の有効性は明確・認識・利益の明白な提供という条件あり)。
パターン3:個人根保証の極度額
「極度額の定めがない個人根保証は有効か?」→ 無効(民法465条の2第2項)。
パターン4:賃貸人地位移転の賃借人の承諾
「賃貸不動産が売却されると賃借人の承諾なく賃貸人が変わるか?」→ 変わる(民法605条の2第1項)。
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まとめ
| 条文 | 改正の核心 | 試験で問われるポイント |
|---|---|---|
| 622条の2(敷金) | 定義・返還タイミング・充当制限の明文化 | 返還は明渡し後・賃借人からの充当請求は不可 |
| 621条(原状回復) | 通常損耗除外の明文化 | 通常損耗は賃貸人負担・賃借人故意過失は賃借人負担 |
| 465条の2(根保証) | 個人根保証に極度額の書面記載義務 | 極度額なし→無効・法人には不適用 |
| 605条の2(地位移転) | 賃貸人地位移転の要件と敷金の移転 | 賃借人の承諾不要・敷金も移転 |
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※ 協議会非提携・独自作成。本記事は民法の条文・法務省公表資料をもとに合格ナビが独自に作成しています。出典:e-Gov 民法・法務省 民法改正・国土交通省 原状回復ガイドライン。最終確認日:2026-06-10。