特定賃貸借契約とは何かを賃貸住宅管理業法2条4項の定義から解説。サブリース・マスターリースとの違い、締結前の重要事項説明(30条・施行規則45条の14項目)と締結時書面(31条)の比較、誇大広告・不当勧誘の禁止、借地借家法32条との関係を条文と国交省ガイドラインで整理します。
目次
結論:特定賃貸借契約とは、賃貸住宅管理業法2条4項が定める「借主がその賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として結ぶ賃貸借契約」で、一般にマスターリース契約と呼ばれるものです。これを結んで転貸する事業者が特定転貸事業者(サブリース業者)で、法第3章(28条〜36条)の誇大広告・不当勧誘の禁止、締結前の重要事項説明(30条)、締結時の書面交付(31条)などの規制を受けます。
賃管士試験では、定義の除外(密接な関係者)、30条と31条の違い、28条・29条の主体に勧誘者が含まれることが繰り返し問われます。合格ナビの賃管士問題のうち、サブリース規制(特定賃貸借契約)を扱う論点別問題は30問です(2026-10-02 集計。自社で作成した問題の数で、本試験の出題数ではありません)。
条文の出典は e-Gov 法令検索です(2026-10-02 時点の現行条文):賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律・同法施行規則・借地借家法。
| 用語 | 根拠 | 中身 |
|---|---|---|
| 特定賃貸借契約 | 法2条4項 | 転貸事業を営む目的で結ぶ賃貸住宅の賃貸借(オーナーとサブリース業者の契約) |
| 特定転貸事業者 | 法2条5項 | 特定賃貸借契約で借りた住宅を第三者に転貸する事業を営む者 |
| 勧誘者 | 法28条 | 特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結の勧誘を行わせる者 |
| 締結前の書面と説明 | 法30条・規則45条 | 契約を結ぶまでに、14項目を書面で交付して説明 |
| 締結時の書面 | 法31条・規則47条 | 契約を結んだら遅滞なく、契約内容の書面を交付 |
特定賃貸借契約とは(賃貸住宅管理業法2条4項の定義)
2条4項は、特定賃貸借契約を次のように定めています。
「賃貸住宅の賃貸借契約(賃借人が人的関係、資本関係その他の関係において賃貸人と密接な関係を有する者として国土交通省令で定める者であるものを除く。)であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるもの」(賃貸住宅管理業法2条4項)
ポイントは3つです。
- 賃貸住宅の賃貸借であること:事務所・倉庫などの事業用建物は対象外です(「賃貸住宅」は2条1項で人の居住の用に供する家屋等と定義)
- 転貸事業の目的があること:借主が自分で住むための契約は、普通の賃貸借契約であって特定賃貸借契約ではありません
- 密接な関係者が借主の場合は除く:括弧書きの除外は「賃借人」の属性で判断します
除外される「密接な関係を有する者」は施行規則2条が定めています。
| 賃貸人(オーナー) | 特定賃貸借契約から除かれる賃借人の例 |
|---|---|
| 個人 | 賃貸人の親族/賃貸人又はその親族が役員である法人(1号) |
| 会社 | 賃貸人の親会社・子会社・関連会社など(2号) |
| 登録投資法人・特定目的会社・組合・特例事業者・信託の受託者 | 資産運用会社や業務執行者などの関係会社(3号〜7号) |
特定賃貸借契約に基づいて借りた住宅を第三者に転貸する事業を営む者が特定転貸事業者です(2条5項)。賃貸住宅管理業の登録(3条1項)は、賃貸人から委託を受けて管理業務を行う事業(2条2項)についての制度で、サブリース規制とは別の仕組みです。
特定賃貸借契約とサブリース・マスターリースの違い
結論から言うと、特定賃貸借契約は「マスターリース契約」の法律上の名前です。国土交通省のサブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン(令和5年3月31日改正)は、特定転貸事業者を「サブリース業者」、特定賃貸借契約を「マスターリース契約」と言い換えて説明しています。
| 呼び方 | 当事者 | 法律上の扱い |
|---|---|---|
| マスターリース契約(=特定賃貸借契約) | オーナー(賃貸人)とサブリース業者(賃借人) | 業法第3章の規制対象 |
| 転貸借契約(サブリース契約と呼ばれることもある) | サブリース業者(転貸人)と入居者(転借人) | 特定賃貸借契約ではない |
| サブリース(方式) | 上の2つの契約を組み合わせた事業の仕組み全体 | 法律上の定義語ではない |
「サブリース」は事業の仕組み全体、または業者と入居者の転貸借を指して使われる言葉で、法律の定義語ではありません。試験で「特定賃貸借契約」と書かれていたら、オーナーとサブリース業者の間の契約だと読み替えてください。
サブリース新法とは(賃貸住宅管理業法 第3章・施行日)
いわゆる「サブリース新法」は、賃貸住宅管理業法の第3章「特定賃貸借契約の適正化のための措置等」(28条〜36条)を指して使われることが多い言葉です。
第3章の施行日:令和2年12月15日。最終確認日:2026-10-02。出典:e-Gov 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行令 附則。
ガイドラインの「1.趣旨」は、サブリース業者が家賃が将来変更される可能性や、賃貸人からの解約には正当事由が必要なことなどを明らかにしないまま勧誘し、家賃減額や契約解除をめぐるトラブルが起きていたことを、規制の背景として挙げています。
| 条文 | 内容 | 違反の主な罰則(法42条〜44条) |
|---|---|---|
| 28条 | 誇大広告等の禁止(特定転貸事業者・勧誘者) | 30万円以下の罰金(44条10号) |
| 29条 | 不当な勧誘等の禁止(特定転貸事業者・勧誘者) | 1号違反は6月以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金又は併科(42条2号) |
| 30条 | 締結前の書面交付と説明 | 50万円以下の罰金(43条) |
| 31条 | 締結時の書面交付 | 50万円以下の罰金(43条) |
| 32条 | 業務・財産の状況を記載した書類の閲覧 | 30万円以下の罰金(44条11号) |
| 33条・34条 | 国土交通大臣の指示・業務停止命令(公表あり) | 指示違反は30万円以下の罰金(44条12号)、命令違反は42条3号 |
| 35条・36条 | 何人も大臣に申出できる/報告徴収・立入検査 | 36条違反は30万円以下の罰金(44条13号) |
罰則の金額:上表のとおり。最終確認日:2026-10-02。出典:e-Gov 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 42条〜45条。
法人の従業者などが違反したときは、行為者のほか法人にも罰金刑が科されます(45条の両罰規定)。
特定賃貸借契約の重要事項説明(30条・施行規則45条)
特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を結ぼうとするときは、相手方となろうとする者に対し、契約を締結するまでに、省令で定める事項について書面を交付して説明しなければなりません(30条1項)。相手方の承諾を得れば、書面の交付に代えて電磁的方法で提供できます(30条2項)。
説明する事項は施行規則45条の14項目です。
| 号 | 説明事項 |
|---|---|
| 1 | 特定転貸事業者の商号・名称又は氏名及び住所 |
| 2 | 対象となる賃貸住宅 |
| 3 | 相手方に支払う家賃の額・支払期日・支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項 |
| 4 | 特定転貸事業者が行う維持保全の実施方法 |
| 5 | 維持保全に要する費用の分担 |
| 6 | 相手方に対する維持保全の実施状況の報告 |
| 7 | 損害賠償額の予定又は違約金 |
| 8 | 責任及び免責 |
| 9 | 契約期間 |
| 10 | 転借人の資格その他の転貸の条件 |
| 11 | 転借人に対する4号の事項の周知 |
| 12 | 契約の更新及び解除 |
| 13 | 契約終了時の特定転貸事業者の権利義務の承継 |
| 14 | 借地借家法その他特定賃貸借契約に係る法令に関する事項の概要 |
説明が不要な相手方(施行規則44条)
30条1項の括弧書きにより、専門的知識と経験を有する次の8者には説明は不要です:特定転貸事業者/賃貸住宅管理業者/宅地建物取引業者/特定目的会社/組合/賃貸住宅に係る信託の受託者/独立行政法人都市再生機構/地方住宅供給公社。
説明の時期と説明者(ガイドライン)
条文上の期限は「締結するまでに」です。ガイドライン6.(3)は、説明から契約締結までに「1週間程度の十分な期間をおくことが望ましい」としています。説明者の資格は法律上の定めがなく、ガイドライン6.(2)は賃貸不動産経営管理士など専門的な知識と経験を持つ人による説明が望ましいとしています。
締結前の書面(30条)と締結時の書面(31条)の違い
試験で最も取り違えやすいのがこの2つです。
| 比較 | 30条(締結前) | 31条(締結時) |
|---|---|---|
| いつ | 締結するまでに | 締結したとき、遅滞なく |
| 何を | 書面を交付して説明 | 書面を交付(説明の義務は条文にない) |
| 相手 | 相手方となろうとする者(規則44条の8者を除く) | 契約の相手方(除外の括弧書きはない) |
| 記載事項 | 規則45条の14項目 | 31条1項1号〜6号+規則47条の7項目 |
| 電磁的方法 | 承諾を得て可(30条2項) | 30条2項を準用(31条2項) |
| 違反の罰則 | 50万円以下の罰金(43条) | 50万円以下の罰金(43条) |
31条1項が直接挙げる記載事項は、対象の賃貸住宅、家賃その他賃貸の条件、維持保全の実施方法、契約期間、転借人の資格その他の転貸の条件、契約の更新又は解除の定めがあるときはその内容です。規則47条は、特定転貸事業者の商号等、維持保全費用の分担、実施状況の報告、損害賠償額の予定・違約金の定めがあるときはその内容、責任・免責の定めがあるときはその内容、転借人への周知、終了時の権利義務の承継を加えています。
誇大広告・不当勧誘の禁止(28条・29条)
28条:誇大広告等の禁止
特定転貸事業者と勧誘者(あわせて「特定転貸事業者等」)は、特定賃貸借契約の条件について広告をするとき、省令で定める事項について「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」をしてはなりません。対象事項は施行規則42条の4つです。
- 家賃の額・支払期日・支払方法等の賃貸の条件とその変更
- 維持保全の実施方法
- 維持保全に要する費用の分担
- 特定賃貸借契約の解除
ガイドライン4.(3)は、広告で「家賃保証」「空室保証」などと表示する場合、その文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがあるときはその旨と、借地借家法32条により減額されることがある旨を表示するよう求めています。「○年間借り上げ保証」と表示する場合も、期間中に業者から解約する可能性や、オーナーからの解約には借地借家法28条の正当事由が必要なことを表示するよう求めています。
29条:不当な勧誘等の禁止
- 1号:勧誘に際し、又は解除を妨げるため、相手方の判断に影響を及ぼす重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
- 2号:省令で定める行為(施行規則43条)=威迫する行為/迷惑を覚えさせるような時間の電話・訪問による勧誘/深夜・長時間の勧誘など私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させる行為/締結・更新しない意思(勧誘を受けたくない意思を含む)を示した相手への執ような勧誘
規則43条の4つの行為に「断定的判断の提供」は挙がっていません。選択肢で見かけたら、条文の列挙と照らして判断してください。
借地借家法との関係(家賃減額・解約)
特定賃貸借契約は建物の賃貸借なので、借地借家法の建物賃貸借の規定がかかわります。試験で問われるのは主に次の2条です。
「建物の借賃が…不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」(借地借家法32条1項)
- 32条1項:借主であるサブリース業者も「当事者」として減額を請求できます。ただし書で効力が認められるのは「増額しない旨」の特約だけです
- 28条:賃貸人(オーナー)からの更新拒絶の通知や解約の申入れには、正当の事由が必要です
ガイドライン6.(3)は、サブリース業者が32条1項の減額請求権を行使しようとする場合、行使の前に、減額しようとする家賃の額と設定根拠などを書面の交付等をしたうえで賃貸人に説明する必要があるとしています。
試験での問われ方(ひっかけの型)
| ひっかけの型 | 正しい理解 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借主が親族・関係会社でも特定賃貸借契約 | 密接な関係者が借主なら除外 | 法2条4項・規則2条 |
| 28条・29条は特定転貸事業者だけが対象 | 勧誘者も対象 | 法28条・29条 |
| 28条は口頭の勧誘も規制 | 28条は広告をするときの表示の規制 | 法28条 |
| 重説は締結後でもよい | 締結するまでに | 法30条1項 |
| 宅建業者のオーナーにも重説が必要 | 規則44条の8者には不要 | 規則44条 |
| 31条書面は求めがあれば交付 | 締結したら求めの有無にかかわらず遅滞なく交付 | 法31条1項 |
| 不増額特約があれば減額請求もできない | 32条1項ただし書は増額しない特約だけ | 借地借家法32条1項 |
賃貸住宅管理業法の全体像(登録・業務管理者・管理受託契約)は賃貸住宅管理業法 完全攻略で、科目全体の学習順は賃管士 完全合格ガイドで確認できます。
※ 本サイトは一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会とは関係がありません。問題はすべて合格ナビが条文をもとに作成した論点別問題です。
よくある質問
Q特定賃貸借契約と普通の賃貸借契約の違いは何ですか?
特定賃貸借契約も賃貸住宅の賃貸借契約の一種ですが、借主が「その住宅を第三者に転貸する事業を営むこと」を目的として結ぶものに限られます(賃貸住宅管理業法2条4項)。自分が住むために借りる契約や、借主が貸主の親族・関係会社など省令で定める密接な関係者である契約は、特定賃貸借契約に当たりません。
Q特定賃貸借契約の重要事項説明は誰が行わなければなりませんか?
法律上、説明者の資格の定めはありません。国土交通省のガイドラインは、賃貸不動産経営管理士など専門的な知識と経験を持つ人が説明することが望ましいとしています。説明の義務を負うのは特定転貸事業者(サブリース業者)です(30条1項)。
Qオーナーが宅地建物取引業者の場合も重要事項説明は必要ですか?
不要です。30条1項は専門的知識と経験を有する者として省令で定める者を説明の相手方から除いており、施行規則44条は特定転貸事業者・賃貸住宅管理業者・宅地建物取引業者・特定目的会社・組合・信託の受託者・都市再生機構・地方住宅供給公社の8つを挙げています。
Q「家賃保証」と広告することは禁止されていますか?
言葉そのものを禁じる条文はありません。ただし28条は家賃などについて著しく事実に相違する表示や著しく有利だと誤認させる表示を禁じており、国土交通省のガイドラインは「家賃保証」等の文言のすぐ近くに、家賃の見直しがあることや借地借家法32条により減額されることがある旨を表示するよう求めています。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

