問題
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」における原状回復の費用負担に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はアです。
結露を放置したことで生じたカビは、建物構造が原因で結露が生じていても、入居者がそれを放置して対処しなかったことが損害拡大の原因です。入居者は善管注意義務(民法400条)を負っており、換気・清掃・カビ対策を怠った場合の損害は賃借人負担とするのがガイドラインの考え方です。
エは誤りです。ベランダ清掃の懈怠による腐食は善管注意義務違反であり、賃借人負担です。
イは誤りです。ガイドラインは、経過年数を超えた設備等でも、賃借人が故意・過失で使用できない状態にした場合には、元の状態に戻すための費用(工事費や人件費等)が賃借人の負担となることがあるとしています。
ウは誤りです。タバコのヤニは通常損耗を超え、善管注意義務違反として賃借人負担です。
オは誤りです。ガイドラインに法的拘束力はありません。
ガイドライン別表1の負担区分(主要部位の整理):
| 部位・損耗の種類 | 賃貸人負担 | 賃借人負担 |
|---|---|---|
| 日常的な使用による壁紙の変色 | ○ | — |
| タバコのヤニによる変色・臭気 | — | ○(善管注意義務違反) |
| 結露を放置したカビ | 建物構造起因部分 | 放置した部分○ |
| ベランダ清掃懈怠による腐食 | — | ○(善管注意義務違反) |
| 通常の生活による傷・へこみ | ○(家具設置等) | — |
| 引っ掻き傷・ペット傷 | — | ○(善管注意義務違反) |
経過年数と残存価値の考え方(ポイント):
ガイドラインはクロスについて6年で残存価値1円となるような負担割合を算定するとしています(別表2)。ただし、経過年数を超えた設備等でも、賃借人が故意・過失で使用できない状態にした場合には、工事費や人件費等が賃借人の負担となることがあるとしています(例: クロスに故意に行った落書きを消すための費用)。「残存価値1円=一切請求できない」は誤解です。
各選択肢の解説:
- ア(正): 結露自体は建物構造の問題でも、入居者が放置して損害を拡大させた部分は善管注意義務違反(民法400条)として賃借人負担。
- エ(誤): ベランダ清掃の懈怠は善管注意義務違反。入居者の管理義務(換気・清掃・ゴミ出し等)の履行が求められる。
- イ(誤): 経過年数を超えていても、工事費や人件費等が賃借人負担となることがある(ガイドライン第1章Ⅱ3(2)①)。
- ウ(誤): 喫煙等により居室全体のクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合は、通常の使用による損耗を超えるものとして、居室全体のクリーニング・張替費用を賃借人負担とするのが妥当とされる(別表1・別表2)。
- オ(誤): ガイドラインは裁判の判決・調停における基準として参照されるが、法律ではないため強制力はない。ただし特約の有効性は最終的に裁判で判断される。
【ガイドラインの深層——法的位置づけ・判例との関係・特約の有効性3要件・実務への応用】
ガイドラインの法的位置づけ:
国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年)は法規範ではなく、行政指導の指針として位置づけられます。ただし、民法第621条(原状回復義務の明文化・R2改正)がガイドラインの考え方を立法的に追認したため、実質的な規範力は改正後に大幅に高まりました。裁判実務では調停・和解の基準として広く参照されており、ガイドラインを大きく逸脱した特約は消費者契約法・民法上の観点から無効とされる可能性があります。
民法R2改正(2020年4月施行)と原状回復の明文化:
| 改正前 | 改正後(民法621条) |
|---|---|
| 判例・ガイドラインで解釈 | 「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化については、賃借人はその原状回復義務を負わない」と明文化 |
改正民法は「通常損耗・経年変化は賃借人負担なし」を条文化し、ガイドラインの解釈を法的に固定しました。
結露・カビの問題の深層(アが正答の理由):
結露は①建物の断熱性能・換気設備の問題(構造起因)と②入居者の換気不足・清掃懈怠(行動起因)が複合して発生します。ガイドラインは「建物構造上避けられない結露は賃貸人負担」「入居者が換気を怠って生じたカビは賃借人負担」と区分します。実務上は因果関係の特定が難しく、以下の判断が必要です:
- 換気扇が正常に機能していたか(設備側の問題)
- 入居者が換気扇を使用していたか(行動記録の確認)
- 退去立会時のカビ発生箇所・範囲・深刻度
判断が困難な場合は専門業者による調査報告書の取得が推奨されます。
経過年数による減価計算の仕組み(クロスを例に):
ガイドラインはクロスについて6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定して賃借人の負担割合を算定するとしています。入居6年を超えた賃借人が引っ掻き傷をつけた場合:
```
経過年数による負担割合: 6年経過で最低値(1円)まで下がる
ただし: 経過年数を超えた設備等でも、故意・過失で使用できない状態にした場合は、
本来の状態に戻すための工事費や人件費等が賃借人負担となることがある
```
張替えの範囲も重要です。ガイドライン(別表2)は、クロスは㎡単位が望ましいが、賃借人が毀損させた箇所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむを得ないとしています。部屋全体の張替えを賃借人の義務とすると、原状回復以上の利益を賃貸人が得ることになり妥当でないとされています。
タバコのヤニの負担区分(判例・ガイドライン):
ガイドラインは、喫煙等によりクロス等が変色したり臭いが付着している場合は通常の使用による汚損を超えると判断されることが多いとし(別表1)、喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とするのが妥当としています(別表2)。クロスの張替費用は経過年数(6年で残存価値1円)を考慮して負担割合を算定します。賃貸物件での喫煙等が禁じられている場合は、用法違反にも当たると考えられています。
特約による負担転嫁の要件(国交省ガイドライン)と最高裁判例:
ガイドラインは、賃借人に特別の負担を課す特約の要件として次の3つを示しています:
1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3. 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
また、最判平成17年12月16日は、通常損耗について賃借人に原状回復義務を負わせるには、少なくとも補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が契約書の条項自体に具体的に明記されているか、口頭で説明され賃借人がその旨を明確に認識し合意の内容としたと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要としています。「全室クロス張替え費用は賃借人負担」のように範囲が過大な特約は、これらの要件を満たさないとして効力が否定されるおそれがあります。
- 民法第400条・第621条e-Govで原文を読む
- 消費者契約法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年)/民法第621条・第400条(善管注意義務) 確認日: 2026-06-10 出典: 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

