問題
図のように,真空中に電極間隔d[m]の平行板電極があり,陰極板上に電子を置いた。陽極板に電圧V[V]を加えたとき,この電子に加わる力F[N]の式として,正しいのは次のうちどれか。 ただし,電子の質量をm[kg],電気素量をe[C]とする。また,電極板の端効果は無視できるものとする。
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答え合わせ
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自信の3択
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解説
平行板電極間の電界の強さは E=V/d [V/m](V:電圧,d:間隔)です。電荷eを持つ粒子に電界Eが作用する力はF=eE [N]です。したがって電子に加わる力の大きさはF=eE=e×(V/d)=(V/d)e [N]です。端効果を無視した平行板電極内の電界は一様なので,電極間のどこに電子があっても同じ大きさの力が働きます。電子は負の電荷なので,力は陽極板に引き寄せられる向きに働きます。力の式に電子の質量mは入りません(mは加速度を求めるときに使う量です)。正答は(1)F=(V/d)eです。
平行板電極中の電子への力の計算です。
【基本公式】
平行板電極(間隔d,電圧V,端効果無視):
電界の強さ:E=V/d [V/m](均一電界)
電束密度:D=ε₀E [C/m²]
電荷q [C]の粒子への力:F=qE [N]
電子の電荷:q=-e(eは電気素量の絶対値)
力の大きさ:|F|=eE=e(V/d)=eV/d [N]
【選択肢の検討(単位で確かめる)】
力の単位は N=J/m=C·V/m です。
(1)(V/d)e:単位はV/m×C=N。E=V/dに電荷eを掛けた式で正答
(2)(V/d²)e:単位はC·V/m²=N/m。dが1回余分で力にならない(誤り)
(3)(V/d²)(m/e):質量mが入り,eで割っている。単位はkg·V/(C·m²)で力にならない(誤り)
(4)(V/d²)em:dが余分なうえ質量mまで掛けている(誤り)
(5)(V²/d)e:電圧が2乗になっており,単位はN·Vで力にならない(誤り)
ただし書きの「電子の質量m」は,力の式には不要なひっかけの条件です。mが必要になるのは加速度a=F/mや速度を求めるときです。
電子は負の電荷(-e)なので,力の向きは電界と逆向き=陽極板へ向かう向きです。大きさは(V/d)eです。
平行板電極中の荷電粒子の運動は電験三種「理論」電磁気学の基礎です。
【運動方程式と軌跡】
m(d²x/dt²)=eV/d (mは電子の質量)
初速ゼロで加速:x(t)=(1/2)(eV/(md))t²
陽極到達時の速度:v=√(2eV/m)(エネルギー保存:eV=(1/2)mv²から)
【電子ボルト(eV)の定義】
1 eV=電子1個が電位差1 Vで得るエネルギー=1.6×10⁻¹⁹ J
V [V]の電位差で加速された電子の運動エネルギー:W=eV [J](または V [eV])
【同じ原理が使われる例】
電気集塵装置(工場・発電所の排煙処理)では,コロナ放電で帯電させた粉じんにF=qEの力を働かせて集じん電極へ引き寄せます。X線管では,管電圧Vで加速された電子が陽極に当たるときの運動エネルギーeVがX線のエネルギーの上限になります。電子ビームを偏向板の間に通す問題(陰極線管の偏向)も,偏向板間の一様電界E=V/dによる力F=eEから出発します。
【数値で確かめる】
V=100 V,d=1 cm=0.01 mとすると,E=V/d=1×10⁴ V/m。
F=(V/d)e=1×10⁴×1.602×10⁻¹⁹≒1.60×10⁻¹⁵ N
加速度:a=F/m=1.60×10⁻¹⁵/(9.109×10⁻³¹)≒1.76×10¹⁵ m/s²
陽極到達時の速さ:v=√(2eV/m)=√(2×1.602×10⁻¹⁹×100/(9.109×10⁻³¹))≒5.93×10⁶ m/s
到達時間:t=√(2d/a)≒3.37×10⁻⁹ s
電子に働く重力mg≒8.9×10⁻³⁰ Nは電界による力の10¹⁴分の1程度なので,電界中の電子の運動では重力を無視してよいことも分かります。
【誤りの選択肢が作られる型】
・dの2乗((2)〜(4)):点電荷の電界E=Q/(4πε₀r²)の「距離の2乗」と混同した形です。平行板電極の電界は一様で,E=V/dと距離に1乗で反比例します。
・質量m((3)(4)):力の式に質量は入りません。F=eE(力)とa=eE/m(加速度)を区別することが要点です。
・Vの2乗((5)):静電エネルギー(1/2)CV²や電力V²/Rの形と混同したものです。
【F=(V/d)eを別の見方で確かめる】
電子が陰極から陽極まで動く間に電界がする仕事は W=F×d です。一方,電位差Vで加速された電荷eが得るエネルギーは W=eV です。F×d=eV から F=eV/d となり,(1)と一致します。この「力×距離=電荷×電位差」の関係は,一様電界の問題で式を検算するのに便利です。
出典と作り方
本問は電気技術者試験センター公表の過去問題を出典明記の上で引用しています。同センターは公式サイトの「よくあるご質問」で、教育目的など試験制度の意義に反しない限り、公表された過去問題を問題集やテキストに使用する際の許諾および使用料は不要としています。 根拠・出典:出典:令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験 理論(一般財団法人 電気技術者試験センター) 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-10-29)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・基準は改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 電気技術者試験センター・経済産業省の公式情報をご確認ください。本サイトは電気技術者試験センターと一切関係ありません。
執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の根拠条文に基づき、段差のある3段階の解説(初心者・標準・上級)を作成しています。


