労働衛生(有害業務)14第一種職業性疾病(粉じん・石綿)

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問14:職業性疾病(粉じん・石綿)

粉じんによる健康障害(じん肺)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • じん肺は粉じんを吸入することにより肺に生じる疾患であるが、医療的治療(薬物療法)により肺の線維化を元に戻すことができるため、早期発見・早期治療が重要である。
  • 珪肺(珪肺症)は、遊離けい酸(二酸化ケイ素・SiO₂)を含む粉じんの吸入によって引き起こされ、採石・トンネル掘削・陶磁器製造・耐火物製造等の作業に従事した労働者に多く見られる。正答
  • じん肺の進行の速さは吸入する粉じんの種類によって全く変わらず、すべての種類の粉じんが均等に肺線維化を引き起こすため、特定の粉じんを「高危険性粉じん」として管理することに医学的根拠はない。
  • じん肺の確定診断には肺の病理組織検査(生検)が唯一の手段であり、胸部X線写真や呼吸機能検査は補助的な参考にすぎず、診断には使用できない。
  • じん肺に合併する疾患として、じん肺法では結核・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・肺がんの5疾患が定められているが、肺がんの合併症はすべてのじん肺(珪肺・炭鉱夫じん肺等)で認定されている。
正答:珪肺(珪肺症)は、遊離けい酸(二酸化ケイ素・SiO₂)を含む粉じんの吸入によって引き起こされ、採石・トンネル掘削・陶磁器製造・耐火物製造等の作業に従事した労働者に多く見られる。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

正しいのはイです。珪肺(珪肺症)は遊離けい酸(SiO₂)を含む粉じんを長期間吸入することで肺に線維化が生じる疾患であり、採石・トンネル掘削・陶磁器・耐火物製造等の従事者に多く見られます。これは確立した職業医学の事実です。

各誤りの要点: ア→じん肺の肺線維化は現在の医療では元に戻すことができない(不可逆的・進行性)。ウ→遊離けい酸は他の粉じんと比べて特に強い線維化能を持つ高危険性粉じんとして管理される根拠がある。エ→じん肺の診断では胸部X線写真が主要な診断手段であり、肺機能検査も重要。オ→じん肺の合併症は6疾患(肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺がん)であり、「結核性胸膜炎が抜けた5疾患」とするのが誤り。なお原発性肺がんは石綿肺に限らず管理2以上のじん肺で合併症として認定される。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): じん肺の肺線維化は不可逆的であり、現在の医学では元に戻す治療法はありません(進行抑制・症状緩和・合併症治療は行う)。「早期治療で元に戻せる」は誤りです。
  • イ(正): 珪肺の原因として正確に記述されています。遊離けい酸(crystalline silica・石英等)は肺胞マクロファージへの強い毒性を持ち、他の粉じんよりも強力な線維化反応を引き起こします。採石・トンネル掘削(火薬や機械での岩盤破砕)・陶磁器(珪砂の使用)・耐火物製造(SiO₂含有原料)が代表的な曝露作業です。
  • ウ(誤): 粉じんの種類によって線維化能は大きく異なります。遊離けい酸(SiO₂)は「高危険性粉じん」として特に強い線維化能が医学的に確認されており、粉じん則では「特定粉じん」として最も厳しく管理されます。石綿繊維も肺線維化・発がん性の点で特別な管理が必要です。
  • エ(誤): じん肺の診断の主要な手段は胸部X線写真(ILO標準写真との比較による病型分類)です。呼吸機能検査(スパイロメトリー)も病期・肺機能評価に用います。生検が「唯一の手段」というのは誤りです。
  • オ(誤): じん肺の法定合併症は6疾患(じん肺法施行規則第1条)であり、選択肢オの「結核性胸膜炎を欠いた5疾患」という記述が誤りです。また「原発性肺がん」の合併認定はじん肺法施行規則第1条上、特定のじん肺(石綿肺等)に限定されておらず、管理2以上のじん肺と合併した原発性肺がんが対象です(珪肺・炭鉱夫じん肺等も含む)。よってオの後半「すべてのじん肺で認定」はおおむね正しく、誤りの核心は「5疾患」という数の誤りにあります。

じん肺の合併症(じん肺法施行規則第1条の6疾患):

| 合併症 | 概要 |

|---|---|

| 肺結核 | 珪肺・石綿肺等でリスク増大 |

| 結核性胸膜炎 | 肺結核に続発する胸膜の炎症 |

| 続発性気管支炎 | 粉じんによる気道慢性刺激 |

| 続発性気管支拡張症 | 気管支の変形・拡張 |

| 続発性気胸 | 嚢胞・線維化部の破裂 |

| 原発性肺がん | 管理2以上のじん肺で認定(石綿肺に限定されない) |

上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

じん肺は「職業性呼吸器疾患」の中核をなす疾患群であり、その予防・管理のために1960年にじん肺法が制定されました。じん肺法は安衛法とは独立した特別法として、粉じん作業の管理・健康管理・補償の体制を規定しています。近年は新規患者は減少傾向ですが、じん肺は一度発症すると不可逆的であるため、現在も多くの患者が治療を継続しています。

遊離けい酸(Crystalline Silica)の特殊性:

  • 構造: 結晶性二酸化ケイ素(石英・クリストバライト・トリジマイト等の結晶形)
  • 毒性機序: 肺胞マクロファージがSiO₂粒子を貪食→SiO₂が粒子表面の活性酸素・シラノール基によりマクロファージ膜を傷害→マクロファージが死滅・炎症メディエーター放出→線維芽細胞活性化→コラーゲン産生増加→肺線維化(珪肺結節形成)
  • 特徴: 曝露停止後も線維化が進行し続けることがある(他の粉じんより進行性が強い)

非結晶性(アモルファス)シリカは結晶性より毒性が低いため、「シリカ」という名称でも形態によって毒性が大きく異なります。

【実務・条文構造】

じん肺の診断体系(じん肺法第3条〜第5条):

胸部X線による病型分類:

  • じん肺法に基づく健康管理は、胸部X線写真の所見(ILO国際分類に準じた粉じん陰影の程度)による病型分類が基本。
  • 管理区分1〜4に分類され、管理区分4は最も重篤で就業制限・療養が検討される。

管理区分別の就業制限:

  • 管理区分1: じん肺(関連粉じん)作業に就業可。定期健診継続。
  • 管理区分2: 粉じん作業への就業が制限される場合がある。
  • 管理区分3: 粉じん作業への就業制限。健康増進・療養が必要。
  • 管理区分4: 離職・療養。じん肺管理区分の決定は都道府県労働局長。

じん肺健康診断の特徴(じん肺法第7条〜第9条):

  • 就業時健康診断・定期健康診断(1〜3年に1回・管理区分により頻度が異なる)
  • 離職時健康診断
  • 健康診断結果の記録・報告義務

じん肺と原発性肺がんの関連(合併症の認定):

  • じん肺法施行規則第1条は原発性肺がんを合併症の6疾患の一つに掲げており、特定のじん肺(石綿肺等)に限定していない。管理2以上のじん肺と合併した原発性肺がんが対象。
  • 遊離けい酸(シリカ)も国際がん研究機関(IARC)でグループ1(ヒトへの発がん性が確認)に分類され、珪肺患者での肺がんリスク増加が確認されている。石綿(アスベスト)はグループ1かつ悪性中皮腫の原因でもあり、特に発がん性が強い。
  • 原発性肺がんが合併症に追加されたのは2003年のじん肺法施行規則改正(2003年6月施行)で、それ以前は合併症5疾患(肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸)だった経緯がある。

粉じん別の健康影響の比較:

| 粉じんの種類 | 代表的疾患 | 線維化能 | 発がん性 |

|---|---|---|---|

| 遊離けい酸(珪砂・石英)| 珪肺 | 強 | IARC G1(肺がん) |

| 石綿繊維 | 石綿肺・中皮腫・肺がん | 中 | IARC G1 |

| 石炭粉じん | 炭鉱夫じん肺 | 弱〜中 | 低い |

| 金属酸化物(溶接ヒューム) | 溶接工肺 | 弱 | IARC G1(肺がん・2017年)|

【試験での位置づけ】

じん肺問題の最頻出は「じん肺は不可逆的(治療で元に戻せない)」「じん肺法施行規則第1条の合併症6疾患(肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺がん)」「珪肺の原因作業(採石・トンネル掘削・陶磁器・耐火物)」「胸部X線が主要診断手段」の4点です。アのような「薬物療法で元に戻せる」という誤りと、オのような「合併症を5疾患とする(結核性胸膜炎を欠く)」という数の誤りは定番の引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: じん肺の治療の現状(2024年時点): 根本的な治療法はなく、主な医療的管理は①合併症(結核・気胸・呼吸不全)の治療、②呼吸リハビリテーション、③症状緩和(気管支拡張薬等)です。研究段階ではあるが、抗線維化薬(ニンテダニブ等)の適応拡大が研究されています。
  • イ: 採石作業でのシリカ粉じん曝露は、岩盤を切削・破砕する際に岩石(花崗岩・砂岩等)に含まれる石英(SiO₂)が粉砕されて呼吸性粉じんになることが原因です。トンネル掘削では特に発破(爆薬使用)後の粉じん濃度が高く、近年は機械掘削への移行・散水による粉じん抑制が進んでいます。
  • ウ: 「特定粉じん」(粉じん則の用語)は、遊離けい酸含有率7%以上の粉じんを発生させる作業であり、一般粉じんより厳しい管理(除じん機等の設置義務・保護具の着用義務)が課されます。粉じんの組成を知ることが作業環境管理の出発点となります。
  • エ: ILO(国際労働機関)のじん肺X線写真国際分類は、胸部X線所見の形状・大きさ・密度・分布等を標準写真と比較して定量的に評価するシステムです。日本のじん肺健康診断でもこの分類の考え方が取り入れられています。
  • オ: 原発性肺がんの合併症認定: じん肺法施行規則第1条は原発性肺がんを合併症の6疾患の一つとして掲げ、特定のじん肺に限定していません。管理2以上のじん肺と合併した原発性肺がんが認定対象となり、珪肺・石綿肺・炭鉱夫じん肺等を問いません。なお石綿(アスベスト)は肺がんだけでなく悪性中皮腫の原因としても認定されており、特に発がん性が強い点が特徴です。オの誤りの核心は「合併症を5疾患とし結核性胸膜炎を欠く」という数の誤りにあります。

【根拠】じん肺法施行規則第1条(合併症の6疾患=肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺がん)。じん肺法第2条第1項第2号(合併症の委任規定)。医学的事実(じん肺の不可逆性・珪肺の原因作業・胸部X線診断)。

【補足】イ(正): 珪肺=遊離SiO₂吸入(採石・トンネル・陶磁器・耐火物)。じん肺は不可逆的(治療で元に戻せない)。合併症は6疾患(オの「5疾患」は結核性胸膜炎を欠く誤り)。原発性肺がんは石綿肺に限定されず管理2以上のじん肺で認定。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: じん肺法・医学的事実(確立した職業医学)。珪肺の原因作業・じん肺の不可逆性・じん肺合併症のじん肺法上の規定は確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

珪肺・粉じんの種類と肺線維症・管理頻出度A

労働衛生(有害業務)の他の問題

1
作業環境測定と評価
2
職業性疾病
3
職業性疾病(粉じん・石綿)
4
局所排気装置・保護具
5
局所排気装置・保護具
6
有害化学物質の分類と性状

科目別に解いて、衛生管理者に合格

関係法令・労働衛生・労働生理を260問。第一種・第二種対応。各問に根拠法令とAI解説(3レベル)付き。