労働衛生(有害業務)21第一種作業環境測定と評価

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問21:作業環境測定と評価

作業環境管理に関する管理濃度および許容濃度の概念に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 管理濃度とは、労働安全衛生法第65条の2に基づいて厚生労働大臣が定める作業環境評価の基準値であり、作業環境管理区分(第1〜第3管理区分)を判定するために使用される行政的な評価基準値である。
  • 許容濃度とは、日本産業衛生学会等の学術団体が科学的知見に基づいて設定する「この濃度以下であればほぼ全ての労働者に健康影響が生じないと考えられる上限値」であり、法的拘束力はないが管理濃度の設定参考とされる。
  • 管理濃度と許容濃度は設定機関・設定目的が異なるため、同一物質の管理濃度と許容濃度が必ずしも同じ数値にはならない場合があるが、一般に管理濃度は許容濃度より常に高い値(より緩い基準)に設定されている。正答
  • 管理濃度は特定の測定方法(A測定・B測定)による測定値の評価基準として設定されており、単純に「この濃度を超えれば即危険・以下なら絶対安全」という意味の値ではなく、統計的な超過確率の評価に使用される行政管理基準値である。
  • 第3管理区分と判定された作業場所において、事業者が実施すべき措置は「即時の作業中止または作業場所の閉鎖」ではなく、施設・設備の改善・呼吸用保護具の使用・改善後の再測定等の「改善措置」である。
正答:管理濃度と許容濃度は設定機関・設定目的が異なるため、同一物質の管理濃度と許容濃度が必ずしも同じ数値にはならない場合があるが、一般に管理濃度は許容濃度より常に高い値(より緩い基準)に設定されている。

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誤りはウです。「管理濃度は許容濃度より常に高い値(より緩い基準)に設定されている」という記述が誤りです。管理濃度と許容濃度は異なる機関が異なる目的で設定するため、物質によっては管理濃度が許容濃度より低い(厳しい)場合も、高い(緩い)場合もあります。一律に「管理濃度が常に許容濃度より高い」とは言えません。

ア(管理濃度の定義と法的根拠)・イ(許容濃度の定義と設定主体)・エ(管理濃度の統計的評価基準という性格)・オ(第3管理区分での改善措置義務)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

管理濃度と許容濃度の比較:

| 項目 | 管理濃度 | 許容濃度(OEL) |

|---|---|---|

| 設定機関 | 厚生労働大臣(国) | 日本産業衛生学会・ACGIH等の学術団体 |

| 法的性格 | 法的拘束力あり(安衛法第65条の2) | 法的拘束力なし(学術的推奨値) |

| 使用目的 | 作業環境の管理区分判定 | 健康障害防止のための科学的指針 |

| 数値の関係 | 物質によって許容濃度との高低が異なる | — |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 安衛法第65条の2が根拠。管理濃度は告示(厚生労働省告示)として設定される。物質ごとに設定され、作業環境評価基準(告示)に収録。
  • イ(正): 日本産業衛生学会の許容濃度勧告は毎年更新され、科学的なOEL(Occupational Exposure Limit)として産業衛生管理の指針として使用される。ACGIH(米国産業衛生専門家会議)のTLV(Threshold Limit Value)も広く参照される。
  • ウ(誤): 管理濃度と許容濃度の大小関係は物質によって異なります。例えば、技術的に達成困難な場合に許容濃度より緩い管理濃度が設定されることもあれば、発がん性が判明し管理濃度が引き下げられて許容濃度より低くなる場合もあります(ベンゼン等が例)。「常に管理濃度>許容濃度」とは言えません。
  • エ(正): A測定では測定値から幾何平均・幾何標準偏差を算出し、管理濃度を超える統計的確率(超過確率)を評価します。管理濃度は「この値を1回でも超えたら即アウト」ではなく、統計的超過確率の評価基準として機能します。
  • オ(正): 第3管理区分での義務は「改善措置(設備改善・保護具使用・再測定)」であり、即時作業中止・閉鎖命令ではありません(問01参照の頻出知識)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

作業環境管理において「管理濃度」と「許容濃度」の違いは、法的義務と科学的推奨値の区別という観点から非常に重要な概念です。「管理濃度以下なら絶対安全」「許容濃度以下なら健康障害が絶対に起きない」という誤解は危険であり、両指標の本質的な意味と限界を理解することが産業衛生実務の基礎となります。

管理濃度の設定プロセス(日本):

1. 科学的根拠の収集: 日本産業衛生学会の許容濃度勧告・ACGIH TLV・国際的なOEL等を参照

2. 技術的達成可能性の検討: 現在の工学的対策技術で達成可能な水準かを確認

3. 行政的・経済的考慮: 産業への影響・実施コスト等の現実的側面

4. 告示として設定: 厚生労働省告示「作業環境評価基準」に収録

このプロセスにより、管理濃度は「科学的な安全基準(許容濃度)」よりも緩い場合がある一方、特に発がん性物質では技術的達成可能な最低レベルとして許容濃度(IARC Group 1の発がん物質には理論的しきい値がない)と異なる設定になることもあります。

【実務・条文構造】

管理濃度の具体的な使用(測定評価の実際):

A測定による評価:

  • 測定値の統計処理(GM・GSD算出)
  • 管理濃度を基準として超過確率を計算
  • 第1管理区分: 超過確率<5%(良好)
  • 第2管理区分: 超過確率5〜50%(改善の余地)
  • 第3管理区分: 超過確率≥50%(早急な改善が必要)

B測定による追加評価:

  • B測定値と管理濃度の1.5倍を比較
  • 1.5倍超 → 最終管理区分を1段階悪化

管理濃度の主な物質例(参考・数値は現行告示を要確認):

  • トルエン: 20ppm
  • キシレン: 50ppm
  • ベンゼン: 1ppm(発がん性から非常に低い)
  • 二硫化炭素: 1ppm(毒性が強いため低い)
  • n-ヘキサン: 40ppm

許容濃度との数値の比較(例):

  • ベンゼン: IARC Group 1(発がん性確認)のため「安全な閾値なし」という理論的立場もある。管理濃度1ppmは技術的に達成可能な最低水準。日本産業衛生学会許容濃度も1ppm。この例では同値。
  • 一部の物質では管理濃度>許容濃度(技術的に許容濃度相当を達成困難な場合)もあり得る。

第3管理区分での措置の詳細(安衛則第577条・各特別規則):

1. 有害物の空気中濃度低下措置: 局所排気装置の風量増加・設備の修理・密閉化・工程変更

2. 呼吸用保護具の使用(暫定措置・改善工事中の間)

3. 改善後の再測定(改善効果の確認)

4. 第3管理区分が継続する場合の健康診断(一定の物質・条件)

「閉鎖命令」との区別:

第3管理区分による「閉鎖命令」の規定はありません。労働基準監督署による「使用停止命令(安衛法第98条)」は重大な労働災害発生のおそれがある場合等の別の要件で発せられる命令であり、第3管理区分の判定とは別の法的根拠によるものです。

【試験での位置づけ】

管理濃度・許容濃度問題の最頻出は「管理濃度=行政的評価基準(許容濃度とは別の機関・別の目的)」「許容濃度=学術団体の科学的推奨値(法的拘束力なし)」「両者の大小関係は物質によって異なる(常に管理濃度>許容濃度ではない)」「第3管理区分=改善措置義務(即時閉鎖ではない)」の4点です。ウのような「管理濃度が常に許容濃度より高い」という一般化の誤りは典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「作業環境評価基準」(昭和63年労働省告示第79号)は、安衛法第65条の2に基づいて設定された告示で、各物質の管理濃度値・A測定とB測定を組み合わせた管理区分判定方法を規定しています。この告示に収録された管理濃度値は定期的に見直されており、新たな科学的知見・国際的なOEL動向を反映して改正されます。
  • イ: 日本産業衛生学会の許容濃度勧告は毎年の学会総会で改訂され、学術雑誌「産業衛生学雑誌」等で公表されます。ACGIHのTLV(Threshold Limit Value)は米国基準ですが、日本でも産業衛生管理の実務的参照値として広く使用されています。両者は独立した評価委員会が科学文献を系統的にレビューして設定しています。
  • ウ: 発がん性物質の特殊性: IARC Group 1(発がん性確認)の物質(ベンゼン・石綿・六価クロム等)については、理論的な「安全なしきい値」が存在しない可能性があり、「許容濃度」という概念の適用が困難です。このような物質では管理濃度は「技術的に達成可能な最低限」として設定されます。
  • エ: 統計的評価(超過確率)の意味: 第1管理区分(超過確率<5%)でも「5%未満の確率で管理濃度を超える可能性がある」状態です。つまり「管理濃度以下が保証されている」わけではなく、「超過確率が低い良好な状態」というのが正確な意味です。この点が「管理濃度以下なら絶対安全」という誤解の根本的な誤りです。
  • オ: 第3管理区分の措置義務のうち「呼吸用保護具の使用」は、施設・設備の改善工事が完了するまでの間の暫定的な措置として位置付けられています。「工事が終わったから保護具は不要」とするのではなく、改善後の再測定で管理区分が改善したことを確認してから保護具の使用を終了する流れになります。

【根拠】労働安全衛生法第65条の2(管理濃度の法的根拠)・作業環境評価基準(告示)。管理濃度と許容濃度の概念の違い・両者の大小関係は物質によって異なる点は産業衛生学の確立した知識。

【補足】ウ(誤): 管理濃度が許容濃度より「常に高い」は誤り(物質によって異なる・発がん物質では逆の場合も)。管理濃度=行政的評価基準・許容濃度=学術的推奨値(法的拘束力なし)。第3管理区分=改善措置義務(即時閉鎖ではない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第65条の2・作業環境評価基準。管理濃度と許容濃度の概念の違い・管理濃度が許容濃度より常に高いわけではない点は確立した産業衛生学の知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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