問題
有機溶剤各種の特異的な健康影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正しいのはイです。モデルSDSはクロロホルムを、単回ばく露で「区分3(麻酔作用)」、反復ばく露で「区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)」としており、作業者に肝炎の進展・黄疸がみられたとの記述を挙げています。
各選択肢の誤りの要点:ア→n-ヘキサンの反復ばく露の標的は神経系(末梢神経障害)で、肝障害ではない。ウ→トルエンの反復ばく露の標的は中枢神経系と腎臓で、「肝・腎毒性が中心」は誤り。エ→二硫化炭素の反復ばく露の標的は中枢神経系・心血管系・腎臓。オ→メタノールの反復ばく露の標的は中枢神経系・視覚器で、失明の記述もある。
モデルSDSの特定標的臓器毒性(反復ばく露)の分類:
| 物質 | 反復ばく露の分類 | 主な記述 |
|---|---|---|
| n-ヘキサン | 区分1(神経系) | 多発性ニューロパチー(末梢神経障害) |
| トルエン | 区分1(中枢神経系、腎臓) | 疲労・記憶力障害・集中困難など |
| クロロホルム | 区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓) | 肝炎・黄疸・肝腫大 |
| 二硫化炭素 | 区分1(中枢神経系、心血管系、腎臓) | 多発性神経障害・視神経障害・動脈硬化・虚血性心疾患など |
| メタノール | 区分1(中枢神経系、視覚器) | 眼の障害・失明 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): n-ヘキサンは反復ばく露で区分1(神経系)。洗浄剤に含まれるn-ヘキサンへのばく露で多発性ニューロパチーが発症した職業ばく露研究が挙げられています。
- ウ(誤): トルエンの反復ばく露の分類は中枢神経系と腎臓です。印刷労働者の疲労・記憶力障害・集中困難などが根拠で、「肝・腎毒性が中心」ではありません。
- イ(正): 上表のとおり、クロロホルムは肝臓・腎臓が標的臓器に含まれ、作業者の肝炎・黄疸の報告があります。
- エ(誤): 二硫化炭素の反復ばく露は中枢神経系・心血管系・腎臓です。気道への影響は単回ばく露の区分3(気道刺激性)にとどまります。
- オ(誤): メタノールの反復ばく露は中枢神経系・視覚器で、職業ばく露による失明の記述があります。
【理論的背景】
有機溶剤は、単回の高濃度ばく露ではどれも麻酔作用(中枢神経抑制)を示しやすい一方、反復ばく露で障害されやすい臓器は物質ごとに異なります。モデルSDSの「特定標的臓器毒性(反復ばく露)」の欄は、その違いを確認するのに役立ちます。
n-ヘキサン:
- 代謝物の2,5-ヘキサンジオンは「ヒトでの既知の神経毒性物質」で、多発性ニューロパチーを誘発することが報告されています。
- 影響の重篤度は運動・感覚神経伝導速度の低下から重度の四肢麻痺までと幅広く、n-ヘキサン誘発性の疑いのあるニューロパチー患者の83.3%がばく露中止後12か月以内に完全に回復したとの報告があります。
クロロホルム:
- 1〜6か月間ばく露された作業者で肝炎の進展、黄疸、悪心、嘔吐などの症状、製剤工場の作業者で肝腫大・肝炎・脂肪肝がみられたとの記述があります。
- 動物試験では肝臓(肝細胞の腫大、変性、脂肪化など)や腎臓(近位尿細管の変性、壊死など)への影響が報告されています。
二硫化炭素:
- ヒトで多発性神経障害、視神経障害、大脳のアテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋梗塞、糸球体硬化などの報告があります。
メタノール:
- 低濃度の長期ばく露の顕著な症状は広範な眼に対する障害とされ、職業上のばく露による慢性毒性として失明の記述があります。単回ばく露でも区分1(中枢神経系、視覚器、全身毒性)です。
トルエン:
- 印刷労働者で疲労、記憶力障害、集中困難、情緒不安定などの神経衰弱性症状が多いとの疫学調査があり、高濃度ばく露では脳の萎縮や白質の変化も報告されています。腎臓への影響は嗜癖による吸入などの症例が根拠です。
【実務・条文構造】
有機溶剤中毒予防規則(有機則)の区分(第1条第1項第3号〜第5号):
- 第1種有機溶剤等: 令別表第6の2第28号(1・2-ジクロルエチレン)又は第38号(二硫化炭素)とその混合物
- 第2種有機溶剤等: 同表第1号〜第47号のうち所定の物(トルエン 第37号・ノルマルヘキサン 第39号・メタノール 第42号など)とその混合物
- 第3種有機溶剤等: 上記以外(ガソリン・石油ナフサ等 第48号〜)
区分の表示(第25条第2項): 第1種 赤・第2種 黄・第3種 青
クロロホルムは、現行の令別表第6の2(有機溶剤)の一覧には掲げられていません。有機則の第1種〜第3種のどれかに当たる物として扱わないよう注意が必要です。
【試験での位置づけ】
有機溶剤各論では「n-ヘキサン=末梢神経障害」「二硫化炭素=神経・心血管系(動脈硬化)など多臓器」「メタノール=視神経障害(失明)」「クロロホルム=肝・腎」「トルエン=中枢神経」が繰り返し問われます。アのように標的臓器を入れ替えた選択肢が典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: n-ヘキサンの単回ばく露は区分3(麻酔作用、気道刺激性)です。慢性の末梢神経障害と急性の麻酔作用を分けて覚えます。
- ウ: トルエンの単回ばく露は区分1(中枢神経系)・区分3(気道刺激性、麻酔作用)です。急性・慢性とも中枢神経系が中心です。
- イ: クロロホルムは単回ばく露でも区分1(呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓)とされています。
- エ: 二硫化炭素は有機則の第1種有機溶剤等に当たる物質(令別表第6の2第38号)です。単回ばく露は区分1(中枢神経系、心臓)・区分3(気道刺激性、麻酔作用)です。
- オ: メタノールの急性症状として、モデルSDSは「失明することがあり、場合によっては死に至る」と記載しています。
【根拠】厚生労働省 職場のあんぜんサイト モデルSDS(n-ヘキサン・トルエン・クロロホルム・二硫化炭素・メタノール)、有機溶剤中毒予防規則 第1条・第25条(https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-21-1-0.htm)、労働安全衛生法施行令 別表第6の2(https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-1/hor1-1-7-1-8.html)。
【補足】イ(正): クロロホルム=麻酔作用+肝臓・腎臓(作業者の肝炎・黄疸)。ア(誤): n-ヘキサン=末梢神経障害。ウ(誤): トルエン=中枢神経系中心。エ(誤): CS₂=中枢神経系・心血管系・腎臓。オ(誤): メタノール=中枢神経系・視覚器(失明)。
- 有機溶剤中毒予防規則第1条e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法施行令e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省 職場のあんぜんサイト モデルSDS(n-ヘキサン 110-54-3/トルエン 108-88-3/クロロホルム 67-66-3/二硫化炭素 75-15-0/メタノール 67-56-1)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/{CAS}.html、有機溶剤中毒予防規則第1条・第25条、労働安全衛生法施行令別表第6の2。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

