問題
高温環境における熱中症の予防管理およびWBGT(湿球黒球温度)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
誤りはオです。厚生労働省の「職場における熱中症防止のためのガイドライン」は、水分及び塩分の作業前後の摂取と作業中の定期的な摂取を指導するよう求め、塩分を摂取するときは0.1〜0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク等を20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度摂取することが望ましいとしています。また、筋肉の「こむら返り」(熱痙攣)は発汗に伴う塩分(ナトリウム等)の欠乏により生じるとしています。塩分を含まない水だけが最も効果的という記述は誤りです。
ア(WBGTの屋外の算出式)・イ(熱射病)・ウ(WBGT基準値と作業強度・暑熱順化)・エ(重篤時の冷却と搬送)は正しい内容です。
熱中症の症状と分類(ガイドライン表2より):
| 分類 | 症状 | 従来の呼び方 |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | めまい・生あくび・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗 | 立ちくらみは「熱失神」、筋肉の「こむら返り」は「熱痙攣」(発汗に伴う塩分の欠乏により生じる) |
| Ⅱ度 | 頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、集中力や判断力の低下 | 「熱疲労」 |
| Ⅲ度・Ⅳ度 | 意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温 | 「熱射病」「重度の日射病」 |
WBGT(湿球黒球温度)の算出式(環境省):
- 屋外: WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
- 屋内: WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 屋外の算出式のとおり。WBGTの湿球温度は、水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測する自然湿球温度(NWB)である。
- イ(正): 熱射病は、体温40℃超と精神状態の変化(意識障害)を特徴とし、死亡に至ることがある(MSDマニュアル)。
- ウ(正): ガイドライン表1-1では、作業強度が高いほど、また暑熱非順化者ほどWBGT基準値が低い(例: 中程度代謝率で順化者28℃・非順化者26℃)。
- エ(正): 熱射病の治療は迅速な冷却が中心で、頸部・腋窩・鼠径部への冷却パックは冷却を補う方法とされる(MSDマニュアル)。ガイドラインも、症状に応じて救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせることを求めている。
- オ(誤): ガイドラインは水分とあわせて塩分の摂取を求めている。熱痙攣は発汗に伴う塩分の欠乏で生じる。
【理論的背景】
WBGT(湿球黒球温度)は、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数です(ガイドライン)。環境省の解説では、1954年にアメリカのYaglouとMinardが提案し、1982年にISOにより国際基準として位置づけられたとされています。WBGTは黒球温度・湿球温度・乾球温度から算出します。
- 黒球温度: 黒色に塗装された薄い銅板の球(直径約15cm)の中心に温度計を入れて観測する。直射日光にさらされた状態での球の中の平衡温度で、弱風時の日なたの体感温度と良い相関がある。
- 湿球温度(自然湿球温度): 水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測する。空気が乾いているほど乾球温度との差が大きくなり、皮膚の汗が蒸発するときに感じる涼しさの度合いを表す。
- 乾球温度: 通常の温度計で気温を観測する。
熱射病について、MSDマニュアルは、全身性の炎症反応を伴い多臓器の機能不全を起こして死亡しうる高体温で、体温40℃超と精神状態の変化を特徴とし、発汗はあることもないこともあるとしています。治療は迅速な冷却・輸液・臓器障害への支持療法で、過冷却を避けるため体温が約39℃になったら冷却を止めるとされています。
【実務・条文構造】
WBGT基準値(ガイドライン表1-1。JIS Z 8504附属書Aを基に作成):
| 区分 | 身体作業強度(代謝率レベル)の例 | 暑熱順化者 | 暑熱非順化者 |
|---|---|---|---|
| 0 安静 | 安静、楽な座位 | 33℃ | 32℃ |
| 1 低代謝率 | 軽い手作業、通常の乗り物の運転等 | 30℃ | 29℃ |
| 2 中程度代謝率 | くぎ打ち、草むしり、軽量な荷車を押す等 | 28℃ | 26℃ |
| 3 高代謝率 | 重量物の運搬、ショベル作業等 | 26℃ | 23℃ |
| 4 極高代謝率 | 激しくシャベルを使う、階段を昇る等 | 25℃ | 20℃ |
- 暑熱順化者とは、評価期間の少なくとも1週間以前から同様の全労働期間、高温作業条件にばく露された人をいう(表の注2)。
- 実測したWBGT値に着衣補正を行い、基準値を超えている又は超えるおそれがある場合は、WBGT値の低減、身体作業強度の低い作業への変更等の対策を実施するよう努める。
- 基準値を超えたときの休憩時間の目安(暑熱順化者): 1℃程度超過で1時間当たり15分以上、2℃程度で30分以上、3℃程度で45分以上、それ以上は作業中止が望ましい(表の注3)。
- 水分及び塩分: 作業前後と作業中の定期的な摂取を指導し、塩分は0.1〜0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク等を20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度(摂り過ぎに注意)。
- 異常時: 熱中症が疑われる者は必ず一旦作業から離し、涼しい場所で身体を冷やし、水分及び塩分の摂取等を行わせ、症状に応じて救急隊を要請し、又は医師の診察を受けさせる。
【試験での位置づけ】
この論点では、①WBGTの算出式(屋外0.7湿球+0.2黒球+0.1乾球、屋内0.7湿球+0.3黒球)、②WBGT基準値は作業強度が高いほど・暑熱非順化者ほど低い、③熱中症の分類(Ⅰ度〜Ⅲ度・Ⅳ度)、④水分と塩分をあわせて摂取、⑤重篤時は冷却しながら救急要請、の5点を押さえます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 屋内の式には乾球温度が入りません。黒球温度は日射や輻射熱の影響を反映します。
- イ: 熱射病では発汗があることもないこともあり、「汗が出ているから熱射病ではない」とはいえません。
- エ: 頸部・腋窩・鼠径部への冷却パックは、それだけでは冷却方法として十分でないとされ、他の冷却と組み合わせます(MSDマニュアル)。
- オ: ガイドラインは塩分の「摂り過ぎに注意すること」も求めています。高血圧などで塩分の摂取が制限される人は、主治医、産業医等に相談させることとされています。
【根拠】厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」、環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)の詳細」、MSD Manual Professional Version「Heatstroke」。
【補足】オ(誤): ガイドラインは水分とあわせて塩分の摂取を求め、熱痙攣は発汗に伴う塩分の欠乏で生じるとしている。屋外WBGT=0.7×湿球+0.2×黒球+0.1×乾球、屋内=0.7×湿球+0.3×黒球。WBGT基準値は作業強度が高いほど・非順化者ほど低い。熱射病=体温40℃超と意識障害(発汗の有無は問わない)。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001676141.pdf)表1-1・表2、環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)の詳細」(https://www.wbgt.env.go.jp/doc_observation.php)、MSD Manual Professional Version「Heatstroke」(https://www.msdmanuals.com/professional/injuries-poisoning/heat-illness/heatstroke)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

