問題
高気圧業務(潜函作業・潜水作業等)に関連する健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
誤りはエです。酸素は分圧が高くなると中枢神経系の毒性(けいれん等)を起こします(MSDマニュアル)。純酸素を呼吸すると酸素分圧は周囲の圧力と同じになるため、深く潜るほど酸素分圧が上がります。高圧則第15条(第27条で潜水業務に準用)は、酸素分圧を18kPa以上160kPa以下に収めるよう求めており、「純酸素なら水深の制限なく安全」という記述は誤りです。
ア(減圧症の機序)・イ(窒素酔いは水深30m超で出現)・ウ(再圧治療)・オ(高気圧業務の健康診断)は正しい内容です。
高気圧業務に関連する主な健康障害(MSDマニュアル):
| 障害 | 原因 | 主な症状・特徴 |
|---|---|---|
| 減圧症 | 急速な減圧で、血液や組織に溶けていたガス(主に窒素)が気泡化 | 痛み・神経症状。重症例は致死的。根本的治療は再圧治療 |
| 窒素酔い | 水深30m超で圧縮空気を呼吸したときの窒素分圧上昇による麻酔様作用 | アルコール酔いに似た症状 |
| 酸素中毒(中枢神経) | 酸素分圧の上昇(空気呼吸では約57m相当、酸素濃度の高い混合ガスではより浅い深さ) | 感覚異常・けいれん・めまい等 |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 急速な減圧(浮上、潜函からの退出等)で、それまで血液や組織に溶けていたガスが血管内で気泡を形成する。
- イ(正): 水深30m超で圧縮空気を呼吸すると、窒素分圧の上昇が麻酔様作用を及ぼしうる。
- ウ(正): 減圧症の根本的な治療は再圧治療(recompression therapy)。
- エ(誤): 純酸素では酸素分圧が周囲の圧力と等しくなり、深さとともに上昇する。高圧則第15条は酸素分圧の上限を160kPa(気こう室での減圧時は220kPa)と定め、第27条で潜水業務にも準用している。
- オ(正): 高圧則第38条は、雇入れ・配置替えの際と6月以内ごとに1回、既往歴・高気圧業務歴、四肢の運動機能、鼓膜及び聴力、肺活量などの健康診断を定め、医師が必要と認めた者には心電図検査・関節部のエックス線直接撮影による検査なども追加する。
【理論的背景】
減圧症の理解にはヘンリーの法則が基礎になります。MSDマニュアルによると、ヘンリーの法則は「液体に溶けるガスの量は、そのガスの分圧に正比例する」というもので、潜降して圧力が高くなるほど、血液や組織に溶ける不活性ガス(窒素、ヘリウム等)の量が増えます。浮上して周囲の圧力が下がると、ガスの気泡(主に窒素)が形成されることがあり、気泡はどの組織にも生じて局所の症状を起こしたり、血流で離れた臓器に運ばれたりします。急速な減圧(潜水からの浮上、潜函や高圧室からの退出、高所への移動など)が減圧症の引き金で、症状は痛み・神経症状などで、重症例は致死的です。根本的な治療は再圧治療です。
窒素酔いは、水深30m超で圧縮空気を呼吸したとき、窒素分圧の上昇が亜酸化窒素に似た麻酔様作用を及ぼすもので、アルコール酔いに似た症状(知的・神経筋の能力低下、行動や性格の変化)を起こします。
酸素も分圧が高くなると中枢神経系の毒性を起こし、MSDマニュアルでは酸素分圧が1.3〜1.4気圧(ATA)を超えると起こるとされ、空気呼吸では約57m相当、酸素濃度を高めた混合ガスではより浅い深さで起こります。症状は感覚異常、けいれん、めまい、悪心、視野狭窄などで、約10%に全身けいれんや失神があり、水中では溺水につながります。純酸素ではこの分圧に達する深さがさらに浅くなります。
【実務・条文構造】
高気圧作業安全衛生規則(高圧則)の主な規定:
- 第10条: 高圧室内作業については、高圧室内作業主任者免許を受けた者のうちから、作業室ごとに高圧室内作業主任者を選任する。
- 第12条: 潜水士免許を受けた者でなければ、潜水業務につかせてはならない(潜水士は作業主任者ではなく、就業の資格)。
- 第12条の2: 高圧室内業務を行うときは、あらかじめ作業計画(送気する気体の成分組成、最高の圧力、加圧及び減圧の速度、減圧を停止する圧力と時間等)を定め、関係労働者に周知する。第27条により、水深10m以上の場所における潜水業務にも準用される。
- 第15条: 作業室・気こう室の気体の分圧を、酸素18kPa以上160kPa以下(気こう室で減圧を行う場合は220kPa以下)、窒素400kPa以下、炭酸ガス0.5kPa以下に収める。第27条で潜水業務にも準用される。
- 第38条: 高気圧業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、配置替えの際及び6月以内ごとに1回、①既往歴及び高気圧業務歴の調査、②関節・腰・下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査、③四肢の運動機能の検査、④鼓膜及び聴力の検査、⑤血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査、⑥肺活量の測定を行う。医師が必要と認めた者には、作業条件調査、肺換気機能検査、心電図検査、関節部のエックス線直接撮影による検査を追加する。
【試験での位置づけ】
この論点では、①減圧症=急速な減圧による溶存ガス(主に窒素)の気泡化、治療は再圧治療、②窒素酔い=水深30m超、③酸素も高分圧で中枢神経毒性(けいれん)を起こすため、純酸素なら安全とはいえない、④高圧則の酸素分圧の範囲(18〜160kPa)、⑤高圧室内作業主任者は免許、潜水業務は潜水士免許、の5点を押さえます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 減圧症は潜水だけでなく、潜函(ケーソン)や高圧室からの退出時にも起こります。高圧室内業務の作業計画では、加圧・減圧の速度や減圧を停止する圧力・時間を定めます(第12条の2)。
- イ: 窒素酔いは窒素分圧の上昇によるものです。高圧則第15条は窒素分圧の上限(400kPa)も定めています。
- ウ: 再圧治療は、気泡が原因の障害に対する根本的な治療とされています。高圧則は再圧室の操作の業務を特別の教育の対象としています(第11条第1項第5号)。
- エ: 酸素分圧の下限(18kPa)と上限(160kPa)の両方が定められている点に注意します。酸素が少なすぎても多すぎても健康障害の原因になります。
- オ: 第38条の定期健康診断は6月以内ごとに1回です。関節部のエックス線直接撮影は、医師が必要と認めた者に追加する項目です。
【根拠】高気圧作業安全衛生規則 第10条・第11条・第12条・第12条の2・第15条・第27条・第38条、MSD Manual Professional Version「Decompression Sickness」「Gas Toxicity During Diving」。
【補足】エ(誤): 酸素も高分圧で中枢神経毒性(けいれん等)を起こす。高圧則は酸素分圧を18〜160kPaに収めるよう定め、潜水業務にも準用。純酸素なら水深の制限なく安全とはいえない。減圧症=急速減圧で溶存ガスが気泡化→根本的治療は再圧治療。窒素酔い=水深30m超。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 高気圧作業安全衛生規則(高圧則)第10条・第12条・第12条の2・第15条・第27条・第38条、MSD Manual Professional Version「Decompression Sickness」「Gas Toxicity During Diving」(https://www.msdmanuals.com/professional/injuries-poisoning/injury-during-diving-or-work-in-compressed-air/)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

