衛生管理者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

衛生管理者 労働衛生(有害業務) 問38|高気圧業務・減圧症・窒素酔い・潜水作業

問題

衛生管理者 | 労働衛生(有害業務) | 第一種

高気圧業務(潜函作業・潜水作業等)に関連する健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

誤りはエです。酸素は分圧が高くなると中枢神経系の毒性(けいれん等)を起こします(MSDマニュアル)。純酸素を呼吸すると酸素分圧は周囲の圧力と同じになるため、深く潜るほど酸素分圧が上がります。高圧則第15条(第27条で潜水業務に準用)は、酸素分圧を18kPa以上160kPa以下に収めるよう求めており、「純酸素なら水深の制限なく安全」という記述は誤りです。

ア(減圧症の機序)・イ(窒素酔いは水深30m超で出現)・ウ(再圧治療)・オ(高気圧業務の健康診断)は正しい内容です。

高気圧業務に関連する主な健康障害(MSDマニュアル):

障害原因主な症状・特徴
減圧症急速な減圧で、血液や組織に溶けていたガス(主に窒素)が気泡化痛み・神経症状。重症例は致死的。根本的治療は再圧治療
窒素酔い水深30m超で圧縮空気を呼吸したときの窒素分圧上昇による麻酔様作用アルコール酔いに似た症状
酸素中毒(中枢神経)酸素分圧の上昇(空気呼吸では約57m相当、酸素濃度の高い混合ガスではより浅い深さ)感覚異常・けいれん・めまい等

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 急速な減圧(浮上、潜函からの退出等)で、それまで血液や組織に溶けていたガスが血管内で気泡を形成する。
  • イ(正): 水深30m超で圧縮空気を呼吸すると、窒素分圧の上昇が麻酔様作用を及ぼしうる。
  • ウ(正): 減圧症の根本的な治療は再圧治療(recompression therapy)。
  • エ(誤): 純酸素では酸素分圧が周囲の圧力と等しくなり、深さとともに上昇する。高圧則第15条は酸素分圧の上限を160kPa(気こう室での減圧時は220kPa)と定め、第27条で潜水業務にも準用している。
  • オ(正): 高圧則第38条は、雇入れ・配置替えの際と6月以内ごとに1回、既往歴・高気圧業務歴、四肢の運動機能、鼓膜及び聴力、肺活量などの健康診断を定め、医師が必要と認めた者には心電図検査・関節部のエックス線直接撮影による検査なども追加する。

【理論的背景】

減圧症の理解にはヘンリーの法則が基礎になります。MSDマニュアルによると、ヘンリーの法則は「液体に溶けるガスの量は、そのガスの分圧に正比例する」というもので、潜降して圧力が高くなるほど、血液や組織に溶ける不活性ガス(窒素、ヘリウム等)の量が増えます。浮上して周囲の圧力が下がると、ガスの気泡(主に窒素)が形成されることがあり、気泡はどの組織にも生じて局所の症状を起こしたり、血流で離れた臓器に運ばれたりします。急速な減圧(潜水からの浮上、潜函や高圧室からの退出、高所への移動など)が減圧症の引き金で、症状は痛み・神経症状などで、重症例は致死的です。根本的な治療は再圧治療です。

窒素酔いは、水深30m超で圧縮空気を呼吸したとき、窒素分圧の上昇が亜酸化窒素に似た麻酔様作用を及ぼすもので、アルコール酔いに似た症状(知的・神経筋の能力低下、行動や性格の変化)を起こします。

酸素も分圧が高くなると中枢神経系の毒性を起こし、MSDマニュアルでは酸素分圧が1.3〜1.4気圧(ATA)を超えると起こるとされ、空気呼吸では約57m相当、酸素濃度を高めた混合ガスではより浅い深さで起こります。症状は感覚異常、けいれん、めまい、悪心、視野狭窄などで、約10%に全身けいれんや失神があり、水中では溺水につながります。純酸素ではこの分圧に達する深さがさらに浅くなります。

【実務・条文構造】

高気圧作業安全衛生規則(高圧則)の主な規定:

  • 第10条: 高圧室内作業については、高圧室内作業主任者免許を受けた者のうちから、作業室ごとに高圧室内作業主任者を選任する。
  • 第12条: 潜水士免許を受けた者でなければ、潜水業務につかせてはならない(潜水士は作業主任者ではなく、就業の資格)。
  • 第12条の2: 高圧室内業務を行うときは、あらかじめ作業計画(送気する気体の成分組成、最高の圧力、加圧及び減圧の速度、減圧を停止する圧力と時間等)を定め、関係労働者に周知する。第27条により、水深10m以上の場所における潜水業務にも準用される。
  • 第15条: 作業室・気こう室の気体の分圧を、酸素18kPa以上160kPa以下(気こう室で減圧を行う場合は220kPa以下)、窒素400kPa以下、炭酸ガス0.5kPa以下に収める。第27条で潜水業務にも準用される。
  • 第38条: 高気圧業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、配置替えの際及び6月以内ごとに1回、①既往歴及び高気圧業務歴の調査、②関節・腰・下肢の痛み、耳鳴り等の自覚症状又は他覚症状の有無の検査、③四肢の運動機能の検査、④鼓膜及び聴力の検査、⑤血圧の測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査、⑥肺活量の測定を行う。医師が必要と認めた者には、作業条件調査、肺換気機能検査、心電図検査、関節部のエックス線直接撮影による検査を追加する。

【試験での位置づけ】

この論点では、①減圧症=急速な減圧による溶存ガス(主に窒素)の気泡化、治療は再圧治療、②窒素酔い=水深30m超、③酸素も高分圧で中枢神経毒性(けいれん)を起こすため、純酸素なら安全とはいえない、④高圧則の酸素分圧の範囲(18〜160kPa)、⑤高圧室内作業主任者は免許、潜水業務は潜水士免許、の5点を押さえます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 減圧症は潜水だけでなく、潜函(ケーソン)や高圧室からの退出時にも起こります。高圧室内業務の作業計画では、加圧・減圧の速度や減圧を停止する圧力・時間を定めます(第12条の2)。
  • イ: 窒素酔いは窒素分圧の上昇によるものです。高圧則第15条は窒素分圧の上限(400kPa)も定めています。
  • ウ: 再圧治療は、気泡が原因の障害に対する根本的な治療とされています。高圧則は再圧室の操作の業務を特別の教育の対象としています(第11条第1項第5号)。
  • エ: 酸素分圧の下限(18kPa)と上限(160kPa)の両方が定められている点に注意します。酸素が少なすぎても多すぎても健康障害の原因になります。
  • オ: 第38条の定期健康診断は6月以内ごとに1回です。関節部のエックス線直接撮影は、医師が必要と認めた者に追加する項目です。

【根拠】高気圧作業安全衛生規則 第10条・第11条・第12条・第12条の2・第15条・第27条・第38条、MSD Manual Professional Version「Decompression Sickness」「Gas Toxicity During Diving」。

【補足】エ(誤): 酸素も高分圧で中枢神経毒性(けいれん等)を起こす。高圧則は酸素分圧を18〜160kPaに収めるよう定め、潜水業務にも準用。純酸素なら水深の制限なく安全とはいえない。減圧症=急速減圧で溶存ガスが気泡化→根本的治療は再圧治療。窒素酔い=水深30m超。

この問題の根拠根拠: 高気圧作業安全衛生規則(高圧則)第10条・第12条・第12条の2・第15条・第27条・第38条、MSD Manual Professional Version「Decompression Sickness」「Gas Toxicity During Diving」(https://www.msdmanuals.com/professional/injuries-poisoning/injury-during-diving-or-work-in-compressed-air/)。
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 高気圧作業安全衛生規則(高圧則)第10条・第12条・第12条の2・第15条・第27条・第38条、MSD Manual Professional Version「Decompression Sickness」「Gas Toxicity During Diving」(https://www.msdmanuals.com/professional/injuries-poisoning/injury-during-diving-or-work-in-compressed-air/)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 高気圧業務・減圧症・窒素酔い・潜水作業
  • 頻出度B

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