区分所有法をわかりやすく解説。2026年4月1日施行の改正で、普通決議は「出席者の過半数」、規約変更・共用部分の変更は「定足数+出席者の4分の3」に変わりました。e-Gov の現行条文で決議要件を新旧表にまとめ、マン管試験の法令基準日と計算例も示します。
目次
結論:区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)は、マンションの「専有部分・共用部分・敷地」の持ち方と、区分所有者全員でつくる団体(集会・規約・管理者)のルールを決めた法律です。2026年4月1日施行の改正で、普通決議は「出席した区分所有者及び議決権の各過半数」、規約変更や共用部分の変更などは「区分所有者と議決権の各過半数が出席し、出席者の各4分の3以上」に変わりました。建替え決議は今も全体の5分の4以上ですが、耐震性不足などの建物は4分の3に下がります。令和8年度のマンション管理士試験は、2026年4月1日に施行されている法令で出題されます。
この記事の条文は、すべて e-Gov 法令検索 建物の区分所有等に関する法律 によります(2026-10-02 時点の現行条文)。改正前の文言は、法務省が公表している新旧対照条文によります。
合格ナビのマンション管理士(マン管)の問題360問のうち、小分類が「区分所有法」の問題は28問(すべて「民法・区分所有法」科目)です。管理実務など他科目にも区分所有法の条文を問う問題があります(2026-10-02 集計。当サイトの自作問題の数で、本試験の出題数ではありません)。
区分所有法とは:3つの「持ち物」と3つの「決め方」
区分所有法をわかりやすく言うと、1棟の建物を部屋ごとに分けて持つときの「何を誰が持つか」と「みんなでどう決めるか」の法律です。
| 分け方 | 中身 | 条文 |
|---|---|---|
| 専有部分 | 区分所有権の目的たる建物の部分(各住戸) | 2条1項・3項 |
| 共用部分 | 専有部分以外の建物の部分など。区分所有者全員の共有で、持分は専有部分の床面積の割合(壁その他の区画の内側線で測る)。規約で別の定めもできる | 2条4項・11条・14条 |
| 敷地利用権 | 敷地の共有持分など。原則として専有部分と分けて処分できない(規約で別段の定めがあれば別) | 22条 |
| 団体 | 区分所有者は全員で管理のための団体を構成し、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができる | 3条 |
| 集会 | 管理者が少なくとも毎年1回招集。通知は会日の1週間前まで(規約で伸長可) | 34条・35条 |
| 規約・管理者 | 規約は管理者が保管。管理者は規約に別段の定めがない限り集会の決議で選任・解任 | 25条・33条 |
議決権は、規約に別段の定めがない限り、共用部分の持分の割合(14条)によります(38条)。「1戸1票」は法律の原則ではない点に注意してください。
2026年4月1日施行の改正で変わったこと(新旧対照)
法務省によると、改正法(令和7年法律第47号)は2025年5月23日に成立、5月30日に公布され、区分所有法と被災区分所有法の改正部分は2026年4月1日から施行されています(法務省 区分所有法等の改正について)。中心は「全区分所有者の多数決」から「集会出席者の多数決」への切り替えです。
| 決議 | 改正前(旧条文) | 改正後(現行条文) |
|---|---|---|
| 普通決議(39条1項) | 区分所有者及び議決権の各過半数 | 出席した区分所有者及びその議決権の各過半数 |
| 共用部分の変更(17条1項) | 区分所有者及び議決権の各4分の3以上(区分所有者の定数は規約で過半数まで減らせた) | 区分所有者の過半数・議決権の過半数が出席し、出席者の各4分の3以上(規約で2分の1を超える割合まで下げられる) |
| 規約の設定・変更・廃止(31条1項) | 区分所有者及び議決権の各4分の3以上 | 同じ定足数で、出席者の各4分の3以上(引き下げの定めは無い) |
| 大規模滅失の復旧(61条5項) | 区分所有者及び議決権の各4分の3以上 | 同じ定足数で、出席者の各3分の2以上 |
| 建替え(62条1項・2項) | 区分所有者及び議決権の各5分の4以上 | 5分の4は維持。耐震性不足など2項各号の建物は4分の3 |
| 一棟リノベーション・建物敷地売却・取壊しなど | 区分所有法に規定なし | 64条の5〜64条の8で新設(各5分の4以上) |
| 所在等不明区分所有者 | 規定なし | 裁判で決議の分母から外せる(38条の2) |
もう1つの柱は、所在のわからない区分所有者や管理されていない部屋への対応です。38条の2の除外の裁判のほか、裁判所が管理人を選ぶ所有者不明専有部分管理命令(46条の2)が設けられ、管理人が選任されると、その専有部分の管理・処分の権利は管理人に専属します(46条の3)。
区分所有法の改正の施行日:令和7年法律第47号のうち区分所有法・被災区分所有法の改正部分は2026年4月1日施行。最終確認日:2026-10-02。出典:法務省 区分所有法等の一部を改正する法律について。
決議要件の一覧(改正後・条文つき)
「定足数」は、決議を始めるために出席が要る人数のことです。改正後は、この定足数があるものと無いものを分けて覚えると整理できます。
| 区分 | 要件 | 主な対象 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 普通決議 | 出席した区分所有者及び議決権の各過半数(法律又は規約に別段の定めがない限り) | 共用部分の管理、管理者の選任・解任、57条の訴訟の提起 | 18条1項・25条1項・39条1項・57条2項 |
| 特別決議(定足数あり) | 区分所有者の過半数かつ議決権の過半数が出席し、出席者の各4分の3以上 | 共用部分の変更、規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の成立・解散、58〜60条の訴え | 17条1項・31条1項・47条1項・55条2項・58条2項 |
| 変更の特例 | 上と同じ定足数で、出席者の各3分の2以上 | 共用部分の瑕疵の除去に必要な変更、高齢者・障害者等の移動の負担を軽くする変更 | 17条5項 |
| 復旧 | 上と同じ定足数で、出席者の各3分の2以上 | 建物の価格の2分の1を超える部分の滅失からの共用部分の復旧 | 61条5項 |
| 再生の決議 | 区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上。2項各号の建物は4分の3 | 建替え・建物更新(一棟リノベーション)・取壊し | 62条・64条の5・64条の8 |
| 売却の決議 | 区分所有者・議決権・敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上 | 建物敷地売却・建物取壊し敷地売却 | 64条の6・64条の7 |
区分所有法の決議要件:普通決議は出席者の各過半数、共用部分の変更・規約変更は定足数(区分所有者・議決権の各過半数の出席)+出席者の各4分の3以上、建替え決議は各5分の4以上(62条2項の建物は4分の3)。最終確認日:2026-10-02。出典:e-Gov 法令検索 建物の区分所有等に関する法律。
定足数の「過半数」は、どの条文でも規約で上回る割合を定めることができます。一方、出席者の4分の3を規約で下げられるのは共用部分の変更(17条1項)だけで、規約変更(31条1項)にはその括弧書きがありません。共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときはその専有部分の所有者の承諾(17条2項)、規約変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときはその承諾(31条1項後段)が別に要ります。
計算例:100戸のマンションで規約を変えるには何人の賛成が要るか
設定(当記事の例):区分所有者100人・1人1戸・各戸の床面積は同じ(議決権も人数と同じ割合)。議決権を有しない人はいない。
- ① 定足数:区分所有者の過半数かつ議決権の過半数が出席する必要がある。100人の過半数=51人以上(50人の出席では不足)
- ② 出席が60人(書面・代理人を含む。39条2項)だった場合、規約変更に要る賛成=60 × 3/4 = 45人以上
- ③ 改正前は全体が分母だったので、100 × 3/4 = 75人以上が必要だった
- ④ 同じ60人出席の普通決議なら、60人の過半数=31人以上で可決
検算:45 ÷ 60 = 0.75 でちょうど4分の3、44 ÷ 60 ≒ 0.733 で4分の3に届かないので、45人が最小です。もう1つの確かめ方として、出席者が全員(100人)なら必要数は75人となり、改正前の数字と一致します。改正で変わったのは「欠席者が実質的に反対に数えられなくなった」点だと分かります。
建替え・一棟リノベーション・敷地売却:5分の4と4分の3の特例
建替え決議(62条1項)は、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上です。普通決議や特別決議と違い、分母は「出席者」ではありません。
建物が次のどれかに当たる場合は、5分の4が4分の3になります(62条2項)。基準は法務大臣が定めます。
- ① 地震に対する安全性の基準に適合していない
- ② 火災に対する安全性の基準に適合していない
- ③ 外壁・外装材などが剝離・落下して周辺に危害を生ずるおそれがある
- ④ 給水・排水などの配管設備の劣化で著しく衛生上有害となるおそれがある
- ⑤ 高齢者・障害者等の移動等の円滑化の基準に適合していない
改正で、建替えと同じ多数決で行える再生の手段が区分所有法に加わりました。建物更新決議(64条の5・いわゆる一棟リノベーション)、建物敷地売却決議(64条の6)、建物取壊し敷地売却決議(64条の7)、取壊し決議(64条の8)です。いずれも5分の4以上で、62条2項の特例も準用されます。売却型の2つは、区分所有者・議決権に加えて「敷地利用権の持分の価格」でも5分の4が要ります。なお法務省の改正概要は、政令指定災害による被災の場合を3分の2としています(法務省 改正の概要)。
建替え決議の集会は、招集通知を会日の少なくとも2か月前に出し(62条6項)、会日の少なくとも1か月前までに説明会を開きます(62条8項)。通知には、建替えを必要とする理由や、建替えをしない場合の効用の維持・回復の費用の額と内訳、修繕計画の内容、修繕積立金の額も記します(62条7項)。
管理者・集会の招集・規約の保管
| 論点 | 条文の要点 | 条文 |
|---|---|---|
| 管理者の選任・解任 | 規約に別段の定めがない限り集会の決議。不正な行為などがあれば各区分所有者が裁判所に解任を請求できる | 25条 |
| 管理者の権限 | 共用部分等を保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為をする | 26条1項 |
| 招集 | 少なくとも毎年1回。区分所有者の5分の1以上かつ議決権の5分の1以上で招集を請求でき(規約で減らせる)、2週間以内に4週間以内の日を会日とする通知が出なければ請求者が招集できる | 34条 |
| 招集通知 | 会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項と議案の要領を示す(規約で伸長できる) | 35条1項 |
| 規約の保管 | 管理者が保管。管理者がないときは建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるもの | 33条1項 |
| 書面・電磁的方法による決議 | 区分所有者全員の承諾があればできる。全員の書面等による合意は決議があったものとみなす | 45条 |
共同の利益に反する行為への措置(57〜60条)
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他の共同の利益に反する行為をしてはならず、占有者(賃借人など)にも同じ義務があります(6条1項・3項)。違反への措置は、重さによって決議の要件が変わります。
| 措置 | 集会の決議 | 弁明の機会 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 行為の停止等の請求の訴え | 集会の決議(割合の定めは無く、普通決議) | 規定なし | 57条2項 |
| 専有部分の使用禁止の請求 | 定足数+出席者の各4分の3以上 | 与える | 58条2項・3項 |
| 区分所有権の競売の請求 | 同上(58条2項・3項を準用)。判決確定から6か月を過ぎると競売の申立てはできない | 与える | 59条 |
| 占有者に対する引渡し請求 | 同上(58条2項・3項を準用) | 与える | 60条 |
マン管試験での出方と法令基準日
マンション管理センターの令和8年度受験案内は、「出題に係る法令等は、令和8年4月1日において施行されているもの」としています。改正区分所有法は同じ日に施行されたので、令和8年度試験は改正後の条文で解くことになります。出題範囲の「マンションの管理に関する法令及び実務」には、区分所有法・被災区分所有法・マンションの再生等の円滑化に関する法律・民法などが並んでいます。
令和8年度マンション管理士試験:試験日は2026年11月29日(日)13時開始、50問の4肢択一。出題に係る法令等は2026年4月1日において施行されているもの。合格発表は2027年1月8日(金)。最終確認日:2026-10-02。出典:マンション管理センター 令和8年度 受験案内。
改正前の教材や問題集で学んだ人は、数字を覚え直すより先に「分母が全体か出席者か」「定足数があるか」「規約で下げられるか」の3つの目で決議要件の表を読み直すと、旧の数字との混同を防げます。管理業務主任者(管業)も同じ区分所有法を出題するので、管業向けの整理は管業 区分所有法の攻略にまとめています。
関連記事:マンション管理士 合格ガイド/マン管と管業の違い/建築・設備の攻略
著作権・正確性の方針:本サイトは公益財団法人マンション管理センターと関係ありません。掲載問題は試験問題の転載ではなく、出題範囲を参照した合格ナビ独自の自作問題です。
よくある質問
Q改正後の普通決議は、欠席者が多くても成立しますか?
区分所有法39条1項は、法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者及びその議決権の各過半数で決するとしており、普通決議そのものに出席の最低人数(定足数)は書かれていません。書面や代理人で議決権を行使した人は出席した数に算入されます(39条2項)。規約で別段の定めを置くことはできるので、問題文では「法律の定め」と「規約の定め」のどちらを聞いているかを分けて読みます。
Q規約変更の4分の3は、規約で引き下げられますか?
引き下げられません。31条1項には、共用部分の変更(17条1項)にある「これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合」という括弧書きがありません。一方、定足数(区分所有者の過半数・議決権の過半数)は、どちらの条文でも規約で「上回る割合」を定めることができます。
Q建替え決議にも「出席者の」多数決が使えますか?
使えません。建替え決議(62条1項)は、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上で、出席者ではなく全体が分母です。改正で加わったのは、耐震性や火災に対する安全性などが法務大臣の定める基準に合わない建物で5分の4を4分の3にする特例(62条2項)です。
Q所在がわからない区分所有者は、決議の分母から外せますか?
裁判所の裁判があれば外せます。38条の2は、区分所有者を知ることができず又はその所在を知ることができないとき、他の区分所有者又は管理者の請求により、その人以外で集会の決議ができる旨の裁判をすることができるとし、その人は議決権を有しないと定めています。管理組合が自分で判断して外す仕組みではありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

