社労士 労働安全衛生法 問5:労働安全衛生法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
労働安全衛生法における作業主任者制度と特別教育制度に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア作業主任者は、一定の危険・有害業務を行う作業について、労働安全衛生法令で定める資格(技能講習修了・免許取得等)を有する者の中から、使用者が選任しなければならない。
- イ特別教育は、危険・有害業務に就かせる前に使用者が実施しなければならない安全衛生教育であり、作業主任者を選任しなければならない業務と、特別教育を実施しなければならない業務は完全に一致している。正答
- ウ作業主任者を選任した場合、使用者は作業主任者の氏名とその者に行わせる事項を作業場に見やすく掲示する等により、関係労働者に周知させなければならない。
- エ特別教育の実施記録は、3年間保存しなければならない。
- オ作業主任者が選任義務のある業務の例としては、高圧室内作業・エックス線装置を用いた作業・研削と石を用いた作業・乾燥設備作業・採石作業・木造建築物の組立て等作業などが挙げられる。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はイ(誤っている記述)です。
作業主任者の選任が義務付けられる作業と、特別教育を実施しなければならない業務は完全には一致していません。作業主任者が必要な作業(法第14条・施行令第6条)と、特別教育が必要な業務(法第59条第3項・施行令第20条)はそれぞれ別々の条文・別表で定められており、一方のみが義務付けられている業務も存在します。例えばチェーンソーを用いた作業は特別教育の対象ですが、作業主任者の選任は不要です。また逆に、作業主任者は必要でも特別教育の義務はない業務もあります。
アは正しく、作業主任者は技能講習修了者・免許取得者等の有資格者から選任します。ウは正しく、作業主任者の氏名・担当事項を見やすく掲示等で周知義務があります(安衛規則第16条)。エは正しく、特別教育の実施記録は3年間保存義務があります(安衛規則第38条)。オは正しく、施行令第6条に列挙された作業主任者が必要な業務の代表例です。
作業主任者と特別教育の比較(重要):
| 項目 | 作業主任者(第14条) | 特別教育(第59条第3項) |
|---|---|---|
| 目的 | 危険・有害業務の指揮・管理を行う者の選任 | 危険・有害業務に就く前の安全教育の実施 |
| 根拠 | 法第14条・施行令第6条・安衛規則第16条 | 法第59条第3項・施行令第20条・安衛規則第36条 |
| 選任義務者 | 使用者(有資格者の中から選任) | 使用者(自社内外で教育を実施・外部委託可) |
| 対象者 | 作業の指揮監督者(1名以上) | 当該業務に就く全ての労働者 |
| 資格要件 | 技能講習修了・免許等(業務により異なる) | なし(教育受講により就業可) |
| 記録保存 | 規定なし(選任報告書は3年保存) | 3年間(安衛規則第38条) |
| 対象の重複 | 対象作業は別表(施行令第6条・20条の各号) | 両者が重複する業務も、一方のみの業務もある |
作業主任者が必要な業務の代表例(施行令第6条):
- 高圧室内作業、アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置を用いた金属の溶接・溶断、木造建築物の組立て等、石綿等が使用されている建築物等の解体等、採石作業、はい作業(倉庫内の積み重ね等)、型わく支保工の組立て等、足場の組立て等、特定化学物質を製造・取り扱う作業など
特別教育が必要な業務の代表例(施行令第20条・安衛規則第36条):
- チェーンソーを用いた伐木等の業務、小型ボイラーの取扱い、アーク溶接等の業務、フォークリフトの運転(最大荷重1t未満)、クレーン・デリックの運転(つり上げ荷重5t未満)、高圧・特別高圧電気取扱の業務など
両制度が重複する業務例: 石綿等が使用されている建築物の解体等は、作業主任者の選任が必要(令第6条第23号)かつ特別教育も必要(令第20条第9号)。一方、チェーンソーの伐木作業は特別教育のみ(作業主任者不要)。
【二制度の立法ロジックと「知識の層」の違い】
作業主任者制度と特別教育制度は、危険・有害作業に対する「安全管理の層」を異なる水準で担保するために設計されています。
- 特別教育: 当該業務に就く全ての労働者に対して、最低限の安全知識・操作技術を付与する教育(インプット側の安全)。「知らずに触れること」を防ぐ最初の防壁。
- 作業主任者: 作業の管理・指揮を行う責任者を特定し、その者に一定の専門知識・経験(技能講習・免許)を要求する制度(アウトプット側の安全管理)。「作業の組織的管理」を担保する第二の防壁。
この二層構造は、単に「教えた(特別教育)」だけでなく「管理する者を決めた(作業主任者)」という組織的責任の設計です。社労士試験でこの二制度の「完全一致ではない」点が問われる理由は、実務上も「作業主任者を選任すれば特別教育は免除されるか」という混同が多いためです(免除されない。両方必要な業務は両方実施する)。
【技能講習と特別教育の資格体系との関係】
安衛法上の技能・教育体系は次の3層に整理できます:
1. 免許 (国家試験合格・知事免許): 最上位。大型クレーン・ボイラー技士・電気工事士等。特定の高危険業務に必要。
2. 技能講習 (都道府県労働局長登録機関での講習・修了試験): 中位。作業主任者の選任要件として最も多く使われる。フォークリフト(1t以上)・玉掛け(1t以上)・車両系建設機械等。
3. 特別教育 (使用者が自社または外部委託で実施・修了試験不要): 最下位。チェーンソー・小型クレーン(5t未満)・フォークリフト(1t未満)・アーク溶接等。
試験論点として「フォークリフトの最大荷重1t未満は特別教育、1t以上は技能講習(フォークリフト運転技能講習)」という境界値は頻出の暗記事項です。
【作業主任者の選任後の義務(安衛規則第16条・第17条)】
作業主任者を選任した後の使用者の義務:
1. 氏名・職務の周知 (第16条): 作業主任者の氏名とその者に行わせる事項を、作業場の見やすい場所に掲示する等の方法で関係労働者に周知。
2. 職務の遂行 (第17条): 作業主任者は①作業の直接指揮 ②器具・工具の点検と不良品の除去 ③保護具の着用確認 ④作業方法の決定と指揮 等を行う義務がある。
作業主任者は「選任されたから終わり」ではなく、実際に職務を遂行する義務があります。名ばかり選任(作業現場に不在・実際に指揮していない)は安衛法違反として行政指導・是正勧告の対象となります。
【特別教育のカリキュラム・記録保存と社労士の実務関与】
特別教育は使用者が実施する義務を負いますが、外部の登録機関に委託することも可能です(委託した場合は記録を取得して3年間保存)。社労士が顧問先企業で確認すべき実務ポイント:
1. 新規採用者・配置転換者が危険業務に就く前に特別教育を受けているか(記録で確認)
2. 作業主任者が技能講習修了証・免許を持っているか(コピー保管)
3. 両方が義務付けられる業務で、一方しか実施していないケースの是正
4. 外部業者(製造ラインへの委託労働者等)に対する安全教育の責任分担(派遣の場合は派遣先が特別教育義務)
特に近年、スポット派遣や短期雇用が増える中で「入社初日から危険業務に就かせた」という労働災害事例が増加しており、特別教育の実施確認は社労士の安全衛生コンサルティング業務の重要領域となっています。
根拠: 労働安全衛生法第14条(作業主任者)・第59条第3項(特別教育)、同法施行令第6条・第20条、労働安全衛生規則第16条・第17条・第36条・第38条(特別教育の記録3年保存)。確認日2026-06-08(監修)/法令基準日2026-04-10。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第14条(作業主任者)、第59条第3項(特別教育)、労働安全衛生規則第16条(作業主任者の選任・周知)、同規則第38条(特別教育の記録3年保存)、労働安全衛生法施行令第6条(作業主任者が必要な作業)・第20条(特別教育が必要な業務) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 結果=正答イ維持・修正なし。施行令第6条(作業主任者の選任対象)と施行令第20条(特別教育の対象)は完全には一致せず、チェーンソー伐木作業のように特別教育のみ・作業主任者選任不要の例が存在=イが誤り肢として成立。アは安衛法第14条のとおり正しく、ウは安衛則第18条の周知義務、エは安衛則第38条の特別教育記録3年保存、オは施行令第6条各号の例示として正しい。参照: 安衛法第14条/第59条第3項、安衛則第16条/第18条/第38条/第40条、施行令第6条/第20条。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。