労働一般常識6労務管理その他労働に関する一般常識(労一)

社労士 労働一般常識 問6:労務管理その他労働に関する一般常識(労一)

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

  • 事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント(性的な言動)に起因する問題に関し、雇用管理上必要な措置を講じる義務を負う。この措置義務は、当該事業主の雇用する労働者だけでなく、取引先・顧客・就職活動中の学生等からの言動についても対象となる。正答
  • 事業主は、女性労働者が婚姻・妊娠・出産等を理由として、退職の勧奨・降格・不利益な配置転換等の不利益取扱いをしてはならない。この禁止規定は、女性労働者が管理職(課長相当以上)に昇進した後も適用される。
  • 男女雇用機会均等法に規定される「間接差別」とは、性別を理由とした直接的な差別ではないが、外形上は性別に関係のない措置であっても、実質的に一方の性の構成員に対して不利益をもたらすものをいう。間接差別として禁止される措置の例として「募集・採用の際に合理的理由なく身長・体重・体力を要件とすること」が挙げられる。
  • 妊娠・出産等を理由とするハラスメント(マタニティハラスメント)の防止措置義務は、女性の上司・同僚からの言動(優越的な関係ではない場合も含む)も対象となる。マタハラは職制上の優越性がなくても「業務を妨害するような言動」が繰り返された場合に対象となる。
  • 男女雇用機会均等法の均等取扱い義務(募集・採用・配置・昇進・教育訓練・福利厚生・定年・解雇等)は、性別を理由とした差別のみを禁止する。婚姻・妊娠・出産等を理由とした差別的取扱いは、別途同法の他条項(第9条)で禁止されており、均等取扱い義務(第5・6条)の直接の適用対象ではない。
正答:事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント(性的な言動)に起因する問題に関し、雇用管理上必要な措置を講じる義務を負う。この措置義務は、当該事業主の雇用する労働者だけでなく、取引先・顧客・就職活動中の学生等からの言動についても対象となる。

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正答はア(誤っている記述)です。

アは「取引先・顧客・就職活動中の学生等からの言動についても措置義務の対象」と述べています。セクシュアルハラスメントの措置義務(均等法第11条)は、事業主が自社の労働者に対して職場でのセクハラから守る義務であり、対象となる「セクハラ」の加害者は顧客・取引先等の社外の人間でも含まれます。しかし、「就職活動中の学生等からの言動」について措置義務を負うという記述は不正確です。

事業主のセクハラ措置義務は「自社の労働者が職場でセクハラを受けないようにする」ことが目的であり、就活生は「労働者」ではありません(採用内定前の段階)。なお2020年改正で「自社の労働者が他社でセクハラを受けた場合の協力義務」は追加されましたが、就活生まで全般的に対象化された規定はありません。

標準試験対策の基準レベル

セクシュアルハラスメント(SH)の措置義務(法第11条)の整理:

| 項目 | 内容 |

|---|---|

| 義務の主体 | 事業主(使用者) |

| 保護される対象 | 事業主に雇用される労働者(正社員・パート・派遣等すべて) |

| 加害者の範囲 | 上司・同僚・部下・取引先・顧客等(社外の者も含む) |

| 措置義務の内容 | ①方針の明確化・周知 ②相談窓口の設置 ③適切な事後対応 ④プライバシー保護 ⑤不利益取扱いの禁止 |

| 就活生への適用 | 法第11条の「労働者」に就活生は含まれない(別途、厚労省指針での努力義務的推奨はあるが法的措置義務は異なる) |

2020年(令和2年)改正の主なポイント(アの背景):

  • 「顧客等からのSH(カスタマーハラスメント)」への対応: 事業主が自社の労働者が顧客等からSHを受けた場合の対応を盛り込む(措置義務の外部拡張)
  • 「自社の労働者が他社でSHを受けた場合」の他社との協力義務: 事業主間での連携・協力が努力義務化
  • 就活生については独立した措置義務規定はない(アの「就職活動中の学生等からの言動」が誤りの核心)

間接差別の3類型(法第7条・施行規則第2条・ウの根拠):

男女均等法が禁止する間接差別は、施行規則第2条で3類型に限定列挙:

1. 募集・採用の際に合理的理由なく身長・体重・体力を要件とすること(ウに記載・正しい)

2. コース別雇用管理において総合職の募集・採用の際に合理的理由なく転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

3. 昇進にあたり合理的理由なく転勤経験があることを要件とすること

マタニティハラスメント(マタハラ・エの根拠):

  • 法第11条の3:妊娠・出産等に関するハラスメントの防止措置義務
  • 加害者は上司だけでなく同僚でも対象(職制上の優越性は不要・継続的な業務妨害的言動が該当)
  • 「もうすぐ産休なのに仕事を残す気か」「また妊娠したのか」等の言動が典型例
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【男女雇用機会均等法の変遷と「実質的平等」への深化】

男女雇用機会均等法は1985年(昭和60年)に制定されました(施行は1986年)。制定当初は「採用・昇進等での均等取扱いの努力義務」に過ぎませんでしたが、1997年(平成9年)改正で「均等取扱いの義務化(罰則付き)」「セクハラ対策の法制化」が実現し、2007年(平成19年)改正で「間接差別の禁止」「男性への適用拡大(男性差別禁止)」が加わりました。

2020年(令和2年)改正(令和2年厚生労働省告示)では、セクハラ指針が強化され「顧客・取引先からの嫌がらせ(カスタマーハラスメント)」への対応が追加されました。この改正は、サービス業・接客業・医療介護等で「お客様からの性的ハラスメント」が深刻化していた社会的背景に対応したものです。

【「間接差別」の法理と日本の制限的な規定方式の問題点】

「間接差別(indirect discrimination)」の概念はEU指令(1976年・2006年改正)に起源を持ち、「一見中立な要件が一方の性に実質的に不利な影響を与える場合は差別とみなす」という法理です。日本の均等法第7条は「施行規則第2条で限定列挙された3類型のみを間接差別として禁止」する方式を採用しており、EUの包括的な間接差別概念に比べて極めて狭い範囲です。

学説・実務上の批判:

  • 3類型以外の「身長・体重・体力以外の外見要件」「特定の資格保有要件」「家族構成要件」等は法第7条の対象外
  • 「女性差別的な効果」があっても3類型に当たらなければ均等法での救済が難しい
  • 近年は「採用時の女性排除的なAIスクリーニング」が新たな間接差別問題として浮上している

【セクハラ・マタハラ・パワハラの「3ハラ」と措置義務の比較】

2019年(令和元年)の労働施策総合推進法改正(パワハラ防止法)により、「パワーハラスメント」も事業主の措置義務対象となりました。3種類のハラスメントの措置義務を比較整理することは社労士試験の頻出論点です:

| 種類 | 根拠法 | 措置義務施行年 | 加害者の範囲 | 対象者 |

|---|---|---|---|---|

| セクシュアルハラスメント | 均等法第11条 | 1999年(義務化) | 上司・同僚・取引先・顧客等(社外含む) | 全労働者(男女) |

| マタニティハラスメント | 均等法第11条の3 | 2017年(義務化) | 上司・同僚(職制上の優越性不要) | 妊娠・出産等に関する女性労働者等 |

| パワーハラスメント | 労働施策推進法第30条の2 | 2020年(大企業)・2022年(全事業所) | 主に優越的な関係を背景とした上司等 | 全労働者 |

【「婚姻・妊娠・出産等を理由とした不利益取扱い」(第9条)の保護範囲と管理職への適用(イの根拠)】

均等法第9条は「女性労働者が婚姻・妊娠・出産等を理由とした解雇・退職勧奨・降格・不利益配置転換」を禁止します。この規定は「管理職への昇進後も継続適用」であり(イは正しい記述)、課長以上であっても保護されます。

判例(最判平26・10・23「広島中央保健生協事件」)では、「産前産後休業取得後の降格」について「原則として均等法に違反する」と判示され、管理職であっても産休・育休取得後の降格が「特段の事情なく行われた場合は違法」という判断が示されています。

【社労士実務での均等法対応:就業規則・ハラスメント相談窓口・研修】

社労士が企業の均等法コンプライアンス支援で行う主な実務:

1. 就業規則のハラスメント関連規定の整備: セクハラ・マタハラ・パワハラの定義・禁止行為・相談手続き・懲戒規定を明記(36条書面の記載要件)

2. 相談窓口の設置サポート: 内部窓口(人事部・専任担当者)と外部窓口(社労士・産業カウンセラー)の設計

3. 管理職向けハラスメント研修の実施: 均等法・育介法・労働施策推進法の各ハラスメント防止規定の説明

4. 行政調査対応: 都道府県労働局・均等室からの「事業主への指導・勧告」に対応(均等法第29条〜・是正勧告への対応が社労士の1号業務)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 男女雇用機会均等法第5条・第6条(均等取扱い義務)・第7条(間接差別の禁止)・第9条(婚姻・妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いの禁止)・第11条(セクシュアルハラスメントの措置義務)・第11条の3(妊娠・出産等に関するハラスメントの措置義務) セクハラ指針: 厚生労働省「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第6号) 出典: 厚生労働省 男女雇用機会均等法の概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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