社労士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

社労士 労働一般常識 問7|労働契約法

問題

社労士 | 労働一般常識 | 令和9年度(2027年度)試験対応・数値確認日 2026-10-01

労働契約法に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はエ(誤っている記述)です。

エの記述では「雇止め無効法理が第17条第2項に基づく」としていますが、これは誤りです。雇止め法理(実態として無期と同様の場合・更新に合理的期待がある場合は雇止めが無効となる可能性)は労働契約法第19条が根拠です。第17条は、第1項が「契約期間中の解雇の制限」(やむを得ない事由がなければ解雇できない)、第2項が「必要以上に短い期間を定めて反復更新しないよう配慮する」規定であり、雇止めを無効とする規定ではありません。条文番号の混同が誤りのポイントです。

ア(安全配慮義務・第5条・下請けへの適用も正しい)・イ(解雇権濫用法理の明文化・第16条)・ウ(無期転換5年・クーリング6か月)・オ(均衡考慮原則の訓示的性格)はいずれも正しい記述です。

労働契約法の主要条文と頻出論点(整理表):

条文内容試験頻出度
第5条安全配慮義務(生命・身体等の安全確保)高
第6条労働契約の成立(合意原則)中
第9条就業規則による不利益変更の禁止高
第10条就業規則の合理的変更(変更が合理的な場合は効力を有する)高
第16条解雇権濫用法理(客観的合理的理由・社会通念上相当)高
第17条有期契約期間中の解雇制限(やむを得ない事由が必要)中
第18条無期転換ルール(5年超で申込みにより無期転換)高
第19条雇止め無効法理(2類型:実質無期状態・更新に合理的期待)高
第20条有期・無期間の不合理な労働条件格差禁止(現在はパート有期法8条に移管)中

エの誤りの核心(第17条 vs 第19条):

条文内容対象
第17条第1項期間中の解雇(やむを得ない事由なしは原則禁止)契約期間中の解雇(雇止めとは別)
第17条第2項必要以上に短い期間を定めることにより有期労働契約を反復して更新しないよう配慮契約期間の設定についての配慮規定
第19条雇止め無効法理(2類型に該当する場合は雇止め無効)反復更新された有期契約の雇止め

エは「第17条第2項」に雇止め無効法理の根拠があると記述しているが、第17条第2項は契約期間の設定についての配慮規定であり、雇止め無効の法的効力は第19条が根拠。

無期転換ルールのクーリング期間(ウの根拠・重要):

  • 原則: 空白期間が6か月以上でクーリング成立(それ以前の契約期間は通算リセット)
  • 「同一事業主との通算契約期間が1年未満」の場合は、契約期間に応じた段階表でクーリング期間が比例的に短縮される(厚労省パンフ)
直前の通算契約期間必要なクーリング期間
2か月以下1か月以上
2か月超〜4か月以下2か月以上
4か月超〜6か月以下3か月以上
6か月超〜8か月以下4か月以上
8か月超〜10か月以下5か月以上
10か月超〜1年未満6か月以上
1年以上6か月以上(原則)

例: 直前の通算契約期間が5か月の場合、空白期間が3か月以上あればクーリング成立(6か月未満でも可)。

安全配慮義務と元請け・下請けの関係(アの根拠):

  • 最高裁判例(最判昭59・4・10「川義事件」)で「安全配慮義務は使用従属関係に基づく信義則上の義務」として確立
  • 下請け先の労働者に対して元請けが安全配慮義務を負う場合: 元請けの「実質的な指揮命令・管理下」にある場合
  • 労働契約法第5条は判例法理の明文化(2007年制定)

【労働契約法の制定背景と「就業規則法理・判例法理の明文化」の意義】

労働契約法は2007年(平成19年)に制定されました(施行2008年3月)。制定前の日本の労働法制は「労働基準法(最低基準)」と「個別的な判例法理」の二層構造であり、「労働契約の成立・変更・終了のルール」が条文化されていませんでした。

制定の意義:

1. 就業規則の不利益変更法理(第9条・第10条)の明文化: 判例で確立していた「就業規則の不利益変更は合理的な理由がある場合のみ有効」という法理を条文化

2. 解雇権濫用法理(第16条)の明文化: 判例(最判昭50・4・25「日本食塩製造事件」等)で確立していた解雇権濫用法理を条文化

3. 安全配慮義務(第5条)の明文化: 判例(最判昭59・4・10「川義事件」)の安全配慮義務を条文に明記

第18条(無期転換ルール)と第19条(雇止め無効法理)は、2012年(平成24年)の改正で追加されました。有期雇用労働者の「雇用の安定」を図ることを主な目的としています。

【無期転換ルールの「実質的な活用」と2024年改正】

第18条の無期転換ルールは、有期労働者が申込みを行えば「無期転換が成立する」という仕組みですが、実務上は「有期労働者自身が申込みをしないと転換されない」という申込型の仕組みです。

現行の労働基準法施行規則第5条第5項・第6項は、契約期間内に無期転換申込みをすることができることとなる有期労働契約の締結の場合に、無期転換申込みに関する事項や無期転換後の労働条件を明示することを定めています(労働契約法ではなく、労働基準法第15条の労働条件明示の一部)。

これは「申込権があることを知らないまま期間満了で雇用終了となる」ことを防ぐための仕組みです。

【雇止め無効法理(第19条)の2類型と判断基準】

第19条の2類型:

1. 実質無期型(第19条1号): 有期労働契約が「反復継続して更新されており、その雇用の実態が期間の定めのない雇用と異ならない状態である」場合

2. 更新期待型(第19条2号): 有期労働契約の「更新について合理的な期待があると認められる場合」

判断要素(裁判所が考慮する事情):

  • 更新回数・通算雇用期間(長期間・多数回の更新があると実質無期型と認定されやすい)
  • 更新手続きの実態(形式的な更新のみ → 実質無期型の方向)
  • 使用者が行った発言・書面(「長期雇用のつもり」「定年まで働ける」等の言動 → 更新期待型の方向)
  • 業務の内容・代替性(特殊スキルで代替困難 → 実質無期型の方向)

第17条第2項(契約期間の配慮規定)vs 第19条(雇止め法理)の混同は社労士試験の典型的な引っかけポイントです。第19条が「雇止め無効」という法的効果(私法上の無効)をもたらす根拠条文です。

【安全配慮義務と近年の「精神的健康(メンタルヘルス)」への拡張】

第5条の安全配慮義務は「生命・身体等の安全」の確保であり、「等」には精神的健康(メンタルヘルス)も含まれると解釈されています。

近年の裁判例では:

  • 長時間労働によるうつ病・過労死: 使用者が安全配慮義務(適切な労働時間管理・精神的負荷の軽減)を怠ったとして損害賠償を認めた判例多数
  • パワーハラスメントによる精神障害: 使用者の安全配慮義務(ハラスメント防止)違反として使用者の責任を認定
  • セクシュアルハラスメント: 使用者の安全配慮義務違反(適切な措置を怠った)として使用者の不法行為責任・債務不履行責任

社労士実務では「長時間労働・ハラスメントによる精神障害の労災申請」「安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の代理(特定社労士・弁護士との協働)」として労働契約法第5条は中心的な論点となります。

【パート有期法との関係(第20条から移管)】

2020年4月施行のパートタイム・有期雇用労働法改正により、旧労働契約法第20条(有期・無期間の不合理な格差禁止)は「パートタイム・有期雇用労働法第8条」に移管されました。これにより労働契約法からは削除されています。社労士試験では「第20条がパート有期法第8条に一元化された(2020年4月・大企業、2021年4月・中小企業)」という改正の経緯も確認事項です。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働契約法第3条(基本原則)・第5条(安全配慮義務)・第16条(解雇)・第17条(有期労働契約の解雇・雇止め)・第18条(無期転換)・第19条(有期労働契約の更新等・雇止め無効法理) 出典: 厚生労働省「労働契約法のあらまし」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。