労働一般常識7労務管理その他労働に関する一般常識(労一)

社労士 労働一般常識 問7:労務管理その他労働に関する一般常識(労一)

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08

労働契約法に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

  • 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負う(労働契約法第5条)。この義務は、労働者が使用者の指揮命令下で労働を提供する関係において生じ、下請け先の労働者に対しても元請けが義務を負う場合がある。
  • 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となる(労働契約法第16条)。解雇権濫用法理は、判例法理として確立していたものが2007年の労働契約法制定により明文化されたものである。
  • 有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される(労働契約法第18条)。ただし、通算5年の算定において、有期労働契約が終了した後に空白期間(クーリング期間)が6か月以上(直前の通算契約期間が1年未満の場合は契約期間に応じた段階表で定める短縮期間)続いた場合は、それ以前の契約期間は通算に算入されない。
  • 有期労働契約の「雇止め」は、一定の要件を満たす場合には解雇権濫用法理(労働契約法第17条第2項)が類推適用され、雇止めが無効となる場合がある。具体的には「反復継続して更新されており、実態として無期労働契約と同様の状態」または「更新されると期待することに合理的な理由がある」場合が該当する。正答
  • 労働者及び使用者は、労働契約を締結・変更する際に、就業の実態に応じた均衡を考慮することが求められる(労働契約法第3条第2項・均衡考慮の原則)。この原則は訓示的な規定であり、違反しても直接的な法的効力(無効・損害賠償)は生じない。
正答:有期労働契約の「雇止め」は、一定の要件を満たす場合には解雇権濫用法理(労働契約法第17条第2項)が類推適用され、雇止めが無効となる場合がある。具体的には「反復継続して更新されており、実態として無期労働契約と同様の状態」または「更新されると期待することに合理的な理由がある」場合が該当する。

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正答はエ(誤っている記述)です。

エの記述では「雇止め無効法理が第17条第2項に基づく」としていますが、これは誤りです。雇止め法理(実態として無期と同様の場合・更新に合理的期待がある場合は雇止めが無効となる可能性)は労働契約法第19条が根拠です。第17条第2項は「契約期間中の解雇の制限」(やむを得ない事由がなければ解雇できない)の規定であり、雇止めとは異なる論点です。条文番号の混同が誤りのポイントです。

ア(安全配慮義務・第5条・下請けへの適用も正しい)・イ(解雇権濫用法理の明文化・第16条)・ウ(無期転換5年・クーリング6か月)・オ(均衡考慮原則の訓示的性格)はいずれも正しい記述です。

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労働契約法の主要条文と頻出論点(整理表):

| 条文 | 内容 | 試験頻出度 |

|---|---|---|

| 第5条 | 安全配慮義務(生命・身体等の安全確保) | 高 |

| 第6条 | 労働契約の成立(合意原則) | 中 |

| 第9条 | 就業規則による不利益変更の禁止 | 高 |

| 第10条 | 就業規則の合理的変更(変更が合理的な場合は効力を有する) | 高 |

| 第16条 | 解雇権濫用法理(客観的合理的理由・社会通念上相当) | 高 |

| 第17条 | 有期契約期間中の解雇制限(やむを得ない事由が必要) | 中 |

| 第18条 | 無期転換ルール(5年超で申込みにより無期転換) | 高 |

| 第19条 | 雇止め無効法理(2類型:実質無期状態・更新に合理的期待) | 高 |

| 第20条 | 有期・無期間の不合理な労働条件格差禁止(現在はパート有期法8条に移管) | 中 |

エの誤りの核心(第17条 vs 第19条):

| 条文 | 内容 | 対象 |

|---|---|---|

| 第17条第1項 | 期間中の解雇(やむを得ない事由なしは原則禁止) | 契約期間中の解雇(雇止めとは別) |

| 第17条第2項 | 期間満了による雇止めについての使用者の配慮(訓示規定) | 雇止めの際の努力義務的規定 |

| 第19条 | 雇止め無効法理(2類型に該当する場合は雇止め無効) | 反復更新された有期契約の雇止め |

エは「第17条第2項」に雇止め無効法理の根拠があると記述しているが、第17条第2項は「配慮義務的規定」であり、雇止め無効の法的効力(無効宣言)は第19条が根拠。

無期転換ルールのクーリング期間(ウの根拠・重要):

  • 原則: 空白期間が6か月以上でクーリング成立(それ以前の契約期間は通算リセット)
  • 「同一事業主との通算契約期間が1年未満」の場合は、契約期間に応じた段階表でクーリング期間が比例的に短縮される(厚労省パンフ)

| 直前の通算契約期間 | 必要なクーリング期間 |

|---|---|

| 2か月以下 | 1か月以上 |

| 2か月超〜4か月以下 | 2か月以上 |

| 4か月超〜6か月以下 | 3か月以上 |

| 6か月超〜8か月以下 | 4か月以上 |

| 8か月超〜10か月以下 | 5か月以上 |

| 10か月超〜1年未満 | 6か月以上 |

| 1年以上 | 6か月以上(原則) |

例: 直前の通算契約期間が5か月の場合、空白期間が3か月以上あればクーリング成立(6か月未満でも可)。

安全配慮義務と元請け・下請けの関係(アの根拠):

  • 最高裁判例(最判昭59・4・10「川義事件」)で「安全配慮義務は使用従属関係に基づく信義則上の義務」として確立
  • 下請け先の労働者に対して元請けが安全配慮義務を負う場合: 元請けの「実質的な指揮命令・管理下」にある場合
  • 労働契約法第5条は判例法理の明文化(2007年制定)
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【労働契約法の制定背景と「就業規則法理・判例法理の明文化」の意義】

労働契約法は2007年(平成19年)に制定されました(施行2008年3月)。制定前の日本の労働法制は「労働基準法(最低基準)」と「個別的な判例法理」の二層構造であり、「労働契約の成立・変更・終了のルール」が条文化されていませんでした。

制定の意義:

1. 就業規則の不利益変更法理(第9条・第10条)の明文化: 判例で確立していた「就業規則の不利益変更は合理的な理由がある場合のみ有効」という法理を条文化

2. 解雇権濫用法理(第16条)の明文化: 判例(最判昭50・4・25「日本食塩製造事件」等)で確立していた解雇権濫用法理を条文化

3. 安全配慮義務(第5条)の明文化: 判例(最判昭59・4・10「川義事件」)の安全配慮義務を条文に明記

第18条(無期転換ルール)と第19条(雇止め無効法理)は、2012年(平成24年)の改正で追加されました。有期雇用労働者の「雇用の安定」を図ることを主な目的としています。

【無期転換ルールの「実質的な活用」と2024年改正】

第18条の無期転換ルールは、有期労働者が申込みを行えば「無期転換が成立する」という仕組みですが、実務上は「有期労働者自身が申込みをしないと転換されない」という申込型の仕組みです。

2024年(令和6年)の労働基準法改正に合わせた労働契約法関連指針の改正では:

  • 使用者の「無期転換申込権の説明義務」の強化: 有期契約更新の際に「5年超えによる無期転換申込権」があることを労働者に書面で説明する努力義務
  • 無期転換後の労働条件の明示義務: 無期転換申込みを受けた使用者は、転換後の労働条件(賃金・職種・勤務地等)を書面(または労働者の希望によりメール等)で明示する義務

この改正は「申込権があることを知らないまま期間満了で雇用終了となる」有期労働者を救済するためのものです。

【雇止め無効法理(第19条)の2類型と判断基準】

第19条の2類型:

1. 実質無期型(第19条1号): 有期労働契約が「反復継続して更新されており、その雇用の実態が期間の定めのない雇用と異ならない状態である」場合

2. 更新期待型(第19条2号): 有期労働契約の「更新について合理的な期待があると認められる場合」

判断要素(裁判所が考慮する事情):

  • 更新回数・通算雇用期間(長期間・多数回の更新があると実質無期型と認定されやすい)
  • 更新手続きの実態(形式的な更新のみ → 実質無期型の方向)
  • 使用者が行った発言・書面(「長期雇用のつもり」「定年まで働ける」等の言動 → 更新期待型の方向)
  • 業務の内容・代替性(特殊スキルで代替困難 → 実質無期型の方向)

第17条第2項(配慮義務的規定)vs 第19条(無効法理)の混同は社労士試験の典型的な引っかけポイントです。第19条が「雇止め無効」という法的効果(私法上の無効)をもたらす根拠条文です。

【安全配慮義務と近年の「精神的健康(メンタルヘルス)」への拡張】

第5条の安全配慮義務は「生命・身体等の安全」の確保であり、「等」には精神的健康(メンタルヘルス)も含まれると解釈されています。

近年の裁判例では:

  • 長時間労働によるうつ病・過労死: 使用者が安全配慮義務(適切な労働時間管理・精神的負荷の軽減)を怠ったとして損害賠償を認めた判例多数
  • パワーハラスメントによる精神障害: 使用者の安全配慮義務(ハラスメント防止)違反として使用者の責任を認定
  • セクシュアルハラスメント: 使用者の安全配慮義務違反(適切な措置を怠った)として使用者の不法行為責任・債務不履行責任

社労士実務では「長時間労働・ハラスメントによる精神障害の労災申請」「安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の代理(特定社労士・弁護士との協働)」として労働契約法第5条は中心的な論点となります。

【パート有期法との関係(第20条から移管)】

2020年4月施行のパートタイム・有期雇用労働法改正により、旧労働契約法第20条(有期・無期間の不合理な格差禁止)は「パートタイム・有期雇用労働法第8条」に移管されました。これにより労働契約法からは削除されています。社労士試験では「第20条がパート有期法第8条に一元化された(2020年4月・大企業、2021年4月・中小企業)」という改正の経緯も確認事項です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働契約法第3条(基本原則)・第5条(安全配慮義務)・第16条(解雇)・第17条(有期労働契約の解雇・雇止め)・第18条(無期転換)・第19条(有期労働契約の更新等・雇止め無効法理) 出典: 厚生労働省「労働契約法のあらまし」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

関連論点

労働契約法(安全配慮義務・解雇権濫用・無期転換ルール頻出度A

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