問題
労働者災害補償保険法における給付基礎日額に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウ(誤っている記述)です。
スライド制は年金給付(第8条の3)だけでなく、休業補償給付(休業給付基礎日額・第8条の2)にも適用されます。「休業補償給付を除く」という記述が誤りです。
アは正しく、給付基礎日額は被災時点の平均賃金(労基法第12条)が基礎です。イは正しく、年齢階層別の上下限があります。エは正しく、平均賃金相当額が自動変更対象額に満たなければ、原則として自動変更対象額が用いられます(施行規則第9条第1項第5号)。オは正しく、休業補償給付60%+休業特別支給金20%の計80%が実質的な補償となります。
給付基礎日額は長期療養が続く場合に賃金水準の変動を反映させるためスライド改定があり、これを理解することが労災保険の学習の核心です。
給付基礎日額の構造(必須整理):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 平均賃金相当額(労基法第12条)= 直近3か月の賃金総額 ÷ 暦日数 |
| 最低保障 | 平均賃金相当額が自動変更対象額に満たない場合→原則として自動変更対象額(施行規則第9条第1項第5号) |
| 最高限度 | 年齢階層別最高限度額を超える場合→上限額に調整 |
| 休業給付のスライド(第8条の2第1項) | 四半期ごとの平均給与額が算定事由発生時の四半期の110%を超え、又は90%を下回った場合に改定 |
| 年金給付のスライド(第8条の3第1項) | 年度ごとの平均給与額の変動に応じて改定(毎年8月から) |
| 年齢階層別限度額(第8条の2第2項〜第4項・第8条の3第2項) | 休業給付は療養開始後1年6か月経過後、年金給付は当初から適用。毎年厚生労働大臣が定める |
各選択肢の解説:
- ア(正): 平均賃金は被災日の直前3か月間の賃金総額を暦日数で割った額(日給・月給等による最低保障あり)。被災時点を基準とする点が重要(発症後の昇給は原則反映されない)。
- イ(正): 年齢階層別の最高・最低限度額は、休業給付基礎日額(療養開始後1年6か月経過後・第8条の2第2項)と年金給付基礎日額(第8条の3第2項による準用)に適用されます。
- ウ(誤・正答): 休業補償給付(休業給付)にも、四半期ごとの平均給与額の変動に応じたスライド(第8条の2第1項)が適用されます。「休業補償給付を除く」は誤り。年金給付は年度ごとの平均給与額の変動に応じたスライド(第8条の3第1項)です。いずれも賃金(平均給与額)の変動に応じた改定で、物価によるものではありません。
- エ(正): 自動変更対象額は施行規則第9条第1項第5号に定められ、年度の平均給与額の変動に応じて翌年度の8月1日以後の額が変更されます(同条第2項)。平均賃金相当額が低くなりすぎる場合に給付の水準を保障する仕組みです。これとは別に、療養開始後1年6か月を経過した休業給付基礎日額と年金給付基礎日額には、年齢階層別の最低・最高限度額があります(イ)。
- オ(正): 休業補償給付60%(労災保険法第14条)+休業特別支給金20%(社会復帰促進等事業)=合計80%。特別支給金は給付ではなく事業(第29条)から支出されるため労基法上の災害補償とは別枠で計算される点が重要。
【給付基礎日額の算定:平均賃金との関係と特殊ケース】
給付基礎日額(労災法第8条)は、原則として労働基準法第12条の平均賃金に相当する額です。しかし「相当する額」であって「同じ額」ではない点に注意が必要です。労災保険法には独自の計算特則があります:
1. 算定の特例と最低保障: 平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが適当でないときは政府が算定する額とし(第8条第2項)、算定額が自動変更対象額に満たない場合は原則として自動変更対象額とする(施行規則第9条第1項第5号)
2. 年齢階層別限度額: 年齢に応じた上限・下限(休業給付は療養開始後1年6か月経過後から・第8条の2第2項、年金給付は第8条の3第2項で準用)
3. 特別給与を除く算定: ボーナス等の特別給与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は平均賃金の算定から除外される。特別給与は、ボーナス特別支給金(特別年金・特別一時金)の算定に用いる「算定基礎日額」に反映される
【スライド制の二つの仕組み(頻出・難問)】
①休業給付基礎日額のスライド(第8条の2第1項):
- 四半期ごとの平均給与額が、算定事由が発生した日の属する四半期の平均給与額の100分の110を超え、又は100分の90を下回った場合に改定
- 改定後の額は、その変動した四半期の翌々四半期の最初の日から適用
- 療養開始後1年6か月を経過すると、年齢階層別の最低・最高限度額も適用(第8条の2第2項)
②年金給付基礎日額のスライド(第8条の3第1項):
- 算定事由発生日の属する年度の翌々年度の8月以降の分から、年度ごとの平均給与額の変動に応じて改定
- 年齢階層別の最低・最高限度額は当初から適用(同条第2項で準用)
いずれも「平均給与額(毎月勤労統計の賃金)」の変動に応じた改定であり、物価による改定ではありません。
【社会復帰促進等事業の位置づけと特別支給金の法的性質】
休業特別支給金(第29条・社会復帰促進等事業)は、保険給付(第14条の休業補償給付60%)とは別の法的根拠を持ちます。この区別が実務上も重要な理由:
1. 譲渡・差押えの禁止: 労災法第12条の5第2項は「保険給付を受ける権利」の譲渡・担保提供・差押えを禁止する規定で、条文の対象は保険給付です
2. 支給制限: 故意の犯罪行為・重大な過失等による支給制限(第12条の2の2)は、特別支給金支給規則第20条で特別支給金にも準用されます(「保険給付でないから制限も無い」わけではない)
3. 第三者行為災害との調整: 第12条の4の求償・控除は「保険給付」を対象とする規定で、特別支給金は含まれません
保険給付か社会復帰促進等事業かで、適用される条文が変わる点を押さえましょう。
【通勤災害における給付基礎日額の算定】
通勤災害も業務災害と同様の給付基礎日額で計算されます(労災法第22条・第22条の2等)。ただし通勤災害の療養給付には一部負担金(原則200円・日雇特例被保険者は100円。第31条第2項・施行規則第44条の2第2項。最初に支給すべき事由の生じた日の休業給付の額から減じられる=第22条の2第3項)が課されており、この一部負担金の存在が業務災害との差異として試験で問われます。
【上位接続:労基法の災害補償と労災保険の関係】
労基法第75条〜第88条は使用者に対し業務上の災害補償義務を課しています。労災保険はこれを国が代替する強制保険であり、労災保険法に基づく給付が行われるべき場合には、使用者は労基法上の補償責任を免れます(労基法第84条第1項)。ただし民事損害賠償(第三者行為・使用者の安全配慮義務違反)とは別体系で、保険給付との調整(求償・控除)が行われます。この相互関係の理解が社労士実務の核心です。
- 労働者災害補償保険法第14条・第8条・第12条の5・第22条e-Govで原文を読む
- 労働基準法第12条・第75条・第84条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第8条(給付基礎日額)・第8条の2(休業給付基礎日額:四半期ごとのスライド・療養開始後1年6か月経過後の年齢階層別限度額)・第8条の3(年金給付基礎日額:年度ごとのスライド・年齢階層別限度額の準用)・第14条(休業補償給付)・第29条(社会復帰促進等事業)、労働者災害補償保険法施行規則第9条第1項第5号・第2項(自動変更対象額)、労働基準法第12条(平均賃金) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

