社労士 労働者災害補償保険法 問1:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
労働者災害補償保険法における給付基礎日額に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア給付基礎日額は原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額とされており、業務災害や通勤災害で被災した時点における平均賃金を基礎として算定される。
- イ給付基礎日額には年齢階層別の最高限度額および最低限度額が設けられており、被災労働者の年齢に応じて当該限度額の範囲内に調整される場合がある。
- ウスライド制は、賃金水準や物価水準の変動に応じて給付基礎日額を改定する仕組みであり、年金給付(休業補償給付を除く)についてのみ適用される。正答
- エ給付基礎日額が最低保障額(最低限度額)を下回る場合には、最低限度額が給付基礎日額とみなされる。
- オ休業補償給付(休業給付)は、給付基礎日額の100分の60に相当する額が支給されるが、これに加えて社会復帰促進等事業から休業特別支給金として給付基礎日額の100分の20相当額が支給される。
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正答はウ(誤っている記述)です。
スライド制は年金給付だけでなく、休業補償給付を含むすべての保険給付に適用されます(労災保険法第8条の2)。「休業補償給付を除く」という記述が誤りです。
アは正しく、給付基礎日額は被災時点の平均賃金(労基法第12条)が基礎です。イは正しく、年齢階層別の上下限があります。エは正しく、算定額が最低限度額を下回ればその限度額が用いられます。オは正しく、休業補償給付60%+休業特別支給金20%の計80%が実質的な補償となります。
給付基礎日額は長期療養が続く場合に賃金水準の変動を反映させるためスライド改定があり、これを理解することが労災保険の学習の核心です。
給付基礎日額の構造(必須整理):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 平均賃金相当額(労基法第12条)= 直近3か月の賃金総額 ÷ 暦日数 |
| 最低保障 | 算定額が最低限度額を下回る場合→最低限度額を適用 |
| 最高限度 | 年齢階層別最高限度額を超える場合→上限額に調整 |
| スライド(第8条の2) | 賃金・物価変動に応じて改定(全給付に適用) |
| 年齢階層別限度額(第8条の3) | 年齢に応じた上下限あり。毎年厚生労働大臣が告示で定める |
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=令和7年8月1日改定の最低保障額(自動変更対象額)は4,250円(旧4,090円)・厚労省告示第208号で公布、年齢階層別の最低・最高限度額は告示第207号で公布(適用期間: 令和7年8月1日〜令和8年7月31日・令和8年度試験基準日2026-04-10時点で施行済)。本問はスライド制の適用範囲(休業補償給付を含む全給付に適用)を論点とするため、具体値(最高/最低限度額のN円)には依拠しない構成で問題なし。VolatileBoxキー RYOSAI_KYUFU_KISO_NICHIGAKU_MAX/MIN への年齢階層別具体値(5階層)の投入はPL作業として別途エスカレ。一次ソース: 厚労省・https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/topics/tp100723-1.html / PSRネットワーク確認。 -->
各選択肢の解説:
- ア(正): 平均賃金は被災日の直前3か月間の賃金総額を暦日数で割った額(日給・月給等による最低保障あり)。被災時点を基準とする点が重要(発症後の昇給は原則反映されない)。
- イ(正): 年齢階層別の最高・最低限度額は第8条の3に規定。20代・30代・40代・50代・60歳以上で異なる上限が設定されており、高年齢者の給付基礎日額が過大になりすぎないよう調整する機能も持つ。
- ウ(誤・正答): スライド制(第8条の2)は休業補償給付(休業給付)も含む全給付に適用されます。「休業補償給付を除く」は誤り。スライドには①短期スライド(被災から1年経過後・賃金変動対応)②長期スライド(年金給付・物価変動対応)の2種があります。
- エ(正): 最低限度額は厚生労働大臣が告示で定め、毎年改定されます。日雇い労働者や低賃金労働者の給付が著しく低額にならないよう最低水準を保障する機能です。
- オ(正): 休業補償給付60%(労災保険法第14条)+休業特別支給金20%(社会復帰促進等事業)=合計80%。特別支給金は給付ではなく事業(第29条)から支出されるため労基法上の災害補償とは別枠で計算される点が重要。
【給付基礎日額の算定:平均賃金との関係と特殊ケース】
給付基礎日額(労災法第8条)は、原則として労働基準法第12条の平均賃金に相当する額です。しかし「相当する額」であって「同じ額」ではない点に注意が必要です。労災保険法には独自の計算特則があります:
1. 賃金日額の最低保障: 算定した平均賃金が最低限度額を下回る場合は最低限度額を適用(第8条第2項)
2. 年齢階層別限度額: 年齢に応じた上限・下限(第8条の3)
3. 特別給与を除く算定: ボーナス等の特別給与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は通常の平均賃金算定から除外されるが、年金給付ではこれを別途加算する「算定基礎日額」制度がある
【スライド制の二層構造(頻出・難問)】
スライド制は全給付に適用されますが、実質的な働き方が異なります:
①短期スライド(第8条の2第1項):
- 適用対象: 業務上の傷病が被災後1年を経過してもなお療養中の場合の休業補償給付・傷病補償年金・障害補償年金・遺族補償年金等
- 改定タイミング: 毎年8月1日
- 改定根拠: 一般労働者の賃金水準の変動(賃金変動率)
- 目的: 長期療養中に賃金水準が上昇した場合、給付が実質的に目減りしないよう補正
②長期スライド(第8条の2第2項):
- 適用対象: 主に年金給付(長期にわたる障害補償年金・遺族補償年金等)
- 改定根拠: 物価変動指数
- 目的: 物価変動に対応した実質給付額の維持
これらは「被災後1年を境に性質が変わる」「賃金スライドと物価スライドの二段階」という構造を理解することが重要で、特定社会保険労務士試験・上位答案では条文番号と改定タイミングまで正確に記述できることが求められます。
【社会復帰促進等事業の位置づけと特別支給金の法的性質】
休業特別支給金(第29条・社会復帰促進等事業)は、保険給付(第14条の休業補償給付60%)とは別の法的根拠を持ちます。この区別が実務上も重要な理由:
1. 差押禁止の範囲: 保険給付は原則差押禁止(労災法第12条の5)ですが、特別支給金の扱いは若干異なります
2. 過払い返還: 保険給付の過払いは国が返還請求できますが、特別支給金の過払いは別の法律関係で処理
3. 第三者行為災害との調整: 第三者行為災害で被災者が損害賠償を受けた場合の調整は保険給付のみ対象。特別支給金は調整対象外(最高裁判決・昭和62年)
これらの区別は社労士実務・紛争解決手続代理業務でも重要な知識です。
【通勤災害における給付基礎日額の算定】
通勤災害も業務災害と同様の給付基礎日額で計算されます(労災法第22条・第22条の2等)。ただし通勤災害には一部の給付で一部負担金(200円/日)が課されており、この一部負担金の存在が業務災害との差異として試験で問われます。
【上位接続:労基法の災害補償と労災保険の関係】
労基法第75条〜第88条は使用者に対し業務上の災害補償義務を課しています。労災保険はこれを国が代替する強制保険であり、保険給付を受けると使用者は労基法上の補償責任を免責されます(労災法第84条)。ただし民事損害賠償(第三者行為・使用者の安全配慮義務違反)とは別体系で、保険給付との調整(求償・控除)が行われます。この相互関係の理解が社労士実務の核心です。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=スライド制(労災法第8条の2)が休業補償給付を含む全給付に適用される点はe-Gov労災法・厚労省「労災年金給付等に係るスライド率等について」で一次確認済(短期スライド:賃金変動対応/長期スライド:物価変動対応/休業給付は被災後1年6ヶ月経過の傷病補償年金切替前は短期スライドが適用)。ウの「年金給付(休業補償給付を除く)についてのみ適用」は誤りで正答ウ維持。給付基礎日額の最低保障額(令和7年8月改定で4,250円)、年齢階層別最高・最低限度額(厚労省告示207号・適用期間2025-08-01〜2026-07-31)は令和8年度試験基準日時点で施行済み。休業補償給付60%+休業特別支給金20%(社会復帰促進等事業)の二重補償構造、通勤災害の一部負担金200円も確認済。一次ソース: e-Gov労災法・厚労省tp100723-1.html・告示第207号/208号。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第8条(給付基礎日額)・第8条の2(スライド)・第8条の3(年齢階層別最高・最低限度額)・第14条(休業補償給付)・第29条(社会復帰促進等事業)、労働基準法第12条(平均賃金) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。