社労士 労働者災害補償保険法 問4:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
労働者災害補償保険法における休業補償給付(業務災害)および休業給付(通勤災害)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア休業補償給付は、労働者が業務上の傷病による療養のため労働することができず、賃金を受けない日の第1日目から支給される。
- イ待期期間中の3日間(業務上の傷病の場合)は、労働者災害補償保険から補償が行われず、事業主が労働基準法の規定に基づいて休業補償(平均賃金の60%)を支払う義務を負う。
- ウ休業補償給付の額は、給付基礎日額の100分の60に相当する額であり、これに加えて社会復帰促進等事業から休業特別支給金として給付基礎日額の100分の20が支給されるため、合計で給付基礎日額の100分の80に相当する額が補償される。正答
- エ通勤災害による休業給付にも業務災害と同様に3日間の待期が設けられており、その待期期間中は事業主が労働基準法に基づく休業補償を支払う義務を負う。
- オ1日の一部についてのみ働いた場合(部分的就労がある日)は、その日は「労働することができない日」には該当せず、休業補償給付は支給されない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はウ(正しい記述)です。
休業補償給付の額は給付基礎日額の60%(労災保険法第14条)ですが、これとは別に社会復帰促進等事業から休業特別支給金として20%が支給されます(第29条)。合計で給付基礎日額の80%が補償されます。
アは誤りで、業務災害では第4日目から支給されます(最初の3日間は待期)。イは正しい内容を含みますが、待期3日間の事業主補償義務の記述は正確です。エが誤りで、通勤災害の待期期間中は事業主に労基法上の休業補償義務はありません(通勤は業務ではないため)。オは誤りで、一部休業日も「労働することができない日」に準じて一部支給されます(端数計算)。
休業補償給付の支給要件(3要件すべて必要):
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①療養中 | 業務上の傷病により療養中であること |
| ②労働不能 | 療養のため「労働することができない」状態 |
| ③賃金不受領 | 賃金を受けない日であること |
待期3日間の仕組み:
```
【業務災害(休業補償給付)】
↓
被災日・受傷日
1日目 ─┐
2日目 ─┤ 待期期間(3日間)
3日目 ─┘ → 事業主が労基法第76条により平均賃金の60%を補償
4日目〜 → 労災保険から休業補償給付(給付基礎日額の60%)
【通勤災害(休業給付)】
↓
被災日
1日目 ─┐
2日目 ─┤ 待期期間(3日間)
3日目 ─┘ → 事業主補償なし(通勤は業務外のため)
4日目〜 → 労災保険から休業給付(給付基礎日額の60%)
```
待期3日間の「継続」「通算」:
- 待期は「継続して3日間」でなくてもよく、合計3日間の待期で足りる(通算3日)
- ただし「暦日」ではなく「労働者にとっての就業日・休日を問わず暦上の3日間」
各選択肢の解説:
- ア(誤): 第1日目からではなく、第4日目から支給(最初の3日は待期)。
- イ(正確だが不完全): 待期中の事業主補償義務(労基法第76条)は正しい。しかし「第1日目から3日間」が明示されていない。
- ウ(正): 給付60%(法第14条)+特別支給金20%(第29条・社会復帰促進等事業)=実質80%。正しい。
- エ(誤): 通勤災害の待期中は事業主に労基法上の補償義務なし。業務外の通勤に使用者責任はない。
- オ(誤): 一部就労がある日でも、就労できなかった時間分について一部支給の計算が行われる(「一部労働不能」の取扱い)。
【待期3日間の制度趣旨と労基法第76条との関係】
労災保険の待期制度(第14条第1項)が設けられている理由は、①軽微な傷病で保険制度を利用することを防ぐ(モラルハザード抑制)、②保険給付が始まるまでの最初の3日間は事業主が補償する仕組みとすることで「業務上災害に対する使用者の無過失補償責任」(労基法第75〜88条)との整合を保つ、という2つの目的があります。
労基法第76条(休業補償)の適用範囲:
- 事業主は、業務上傷病の療養期間中、平均賃金の100分の60を休業補償として支払う義務がある
- ただし労災保険から休業補償給付を受ける場合(4日目以降)は、事業主の補償義務が免除される(労基法第84条)
- 通勤災害の場合は業務外のため、使用者に労基法上の補償義務なし
【休業特別支給金の法的性質と60%+20%の意味】
休業補償給付(60%)は「労災保険」の保険給付ですが、休業特別支給金(20%)は「社会復帰促進等事業」(法第29条)から支出される別の制度です。
重要な法律上の区別:
| 比較 | 休業補償給付(60%) | 休業特別支給金(20%) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 第14条(保険給付) | 第29条(社会復帰促進等事業) |
| 性質 | 保険給付 | 事業に基づく支給 |
| 差押禁止 | 第12条の5で禁止 | 別途判断(原則禁止だが根拠が別) |
| 損害賠償調整 | 調整対象(第12条の4) | 調整対象外(最判昭和62年・重要判例) |
| 課税 | 非課税 | 非課税 |
損害賠償との調整(求償・控除)において、保険給付60%は調整対象だが特別支給金20%は調整対象外という点は、社労士実務(特定社会保険労務士)において最も重要な判例知識の一つです。第三者行為災害(交通事故等)で被災者が加害者から損害賠償を受けた場合、この20%の部分が実質的に被災者の有利に働きます。
【一部就労日の取扱いと「内払い」の概念】
労働者が傷病の療養中に一部就労(軽作業・リハビリ的就労等)を行った場合、就労できなかった時間分について休業補償給付が支給されます(「一部労働不能」の取扱い)。
計算方法:
```
一部就労日の休業補償給付額
= (給付基礎日額 - 就労した時間に対応する賃金額)× 60%
```
ただし就労した賃金が給付基礎日額を上回る場合は支給なし。
【継続療養とスライド改定の関係(rousai_01との接続)】
休業補償給付(休業給付)が長期間継続する場合、給付基礎日額にスライド制(短期スライド)が適用されます(法第8条の2)。被災後1年を経過してもなお休業補償給付を受けている場合、賃金水準の変動を反映して給付基礎日額が改定されます。
長期休業のフロー:
```
被災日
↓ 1年6か月後(傷病補償年金への移行要件を満たす場合)
傷病補償年金(第18条)→ 療養補償給付+年金形式の給付に切替
↓ 症状固定
障害補償給付(障害年金または一時金)への移行
```
社労士実務では、被災者の長期リハビリ・通院継続の場合にこのフローに沿った給付の種別変更・手続きが発生するため、各フェーズの移行要件と提出書類を正確に把握することが重要です。
【上位接続:傷病補償年金と障害補償給付の選択】
休業が長期化し、傷病の状態が「療養開始後1年6か月以上・一定の重篤な傷病状態」に達した場合、傷病補償年金(第18条)が支給されます。傷病補償年金の受給中は休業補償給付との二重支給はありません。症状が固定(治癒)した時点で障害が残る場合、障害等級に応じた障害補償給付(年金または一時金)に移行します。これら給付間の移行ルールを体系的に把握することが、社労士試験上級者・実務者の必須知識です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第14条(休業補償給付)・第22条の2(休業給付)・第29条(社会復帰促進等事業・特別支給金)、労働基準法第76条(休業補償) <!-- 監修確定 2026-06-07 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。