社労士 労働者災害補償保険法 問5:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
労働者災害補償保険法における障害補償給付および障害給付に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア障害補償給付は、業務上の傷病が治癒(症状固定)した後に残存する障害の程度に応じて支給され、障害等級第1級から第7級までに該当する場合は障害補償年金が、第8級から第14級に該当する場合は障害補償一時金が支給される。
- イ障害補償年金の年金給付基礎日額は、365日に障害等級に応じた給付日数(日額×日数)を乗じて算出されるが、第1級の年金は給付基礎日額の313日分(年額)に相当する額である。
- ウ障害等級の認定においては、同一部位に複数の障害が残った場合は、原則として最も重い等級に認定されるが、一定の条件を満たす場合には繰上げ認定(1〜3級の加重)が行われる。
- エ障害補償年金を受ける権利は、受給権者の死亡により消滅し、未払い分の年金はいかなる場合も遺族に支給されない。正答
- オ障害補償給付を受ける権利の消滅時効期間は5年であり、傷病が治癒した日(症状固定の日)の翌日から起算する。
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正答はエ(誤っている記述)です。
障害補償年金の受給権者が死亡した場合、支給未済の年金額は遺族(配偶者・子・父母等)に対して「障害補償年金差額一時金」または「未払年金」として支給される場合があります(労災法第16条の6等)。「いかなる場合も遺族に支給されない」は誤りです。
アは正しく、1〜7級は年金・8〜14級は一時金です。イは正しく、第1級は313日分です(日額×313日=年額)。ウは正しく、組み合わせ認定・繰上げ認定のルールがあります。オは正しく、障害補償給付の時効は5年(労災法第42条)で、症状固定の翌日起算です。なお同条で療養補償給付・休業補償給付・葬祭料等は時効2年、障害補償給付・遺族補償給付は時効5年と給付種別ごとに区分されています。
<!-- 監修確定 2026-06-07 -->
障害等級と給付形態(必須整理):
| 等級 | 給付形態 | 年金給付日数(日額×N日/年) |
|---|---|---|
| 第1級 | 障害補償年金 | 313日分 |
| 第2級 | 障害補償年金 | 277日分 |
| 第3級 | 障害補償年金 | 245日分 |
| 第4級 | 障害補償年金 | 213日分 |
| 第5級 | 障害補償年金 | 184日分 |
| 第6級 | 障害補償年金 | 156日分 |
| 第7級 | 障害補償年金 | 131日分 |
| 第8級 | 障害補償一時金 | 503日分(一時金) |
| 第9級 | 障害補償一時金 | 391日分 |
| 第10級 | 障害補償一時金 | 302日分 |
| 第11級 | 障害補償一時金 | 223日分 |
| 第12級 | 障害補償一時金 | 156日分 |
| 第13級 | 障害補償一時金 | 101日分 |
| 第14級 | 障害補償一時金 | 56日分 |
障害補償年金の未払年金(差額一時金)の仕組み:
障害補償年金の受給権者が死亡した場合、受け取っていない年金額分を遺族が「差額一時金」として請求できる場合があります(第16条の6)。これはエの「いかなる場合も遺族に支給されない」が誤りである根拠です。
各選択肢の解説:
- ア(正): 等級1〜7=年金、8〜14=一時金という区分は条文通り(第15条第1項・第2項)。
- イ(正): 第1級313日分は施行規則別表で規定。日額×313日が年額となる。
- ウ(正): 複数障害の組み合わせ認定・繰上げ(加重)認定のルールは施行規則第14条等で規定。
- エ(誤・正答): 差額一時金制度(第16条の6)により、一定条件下で遺族に未払分が支給される。
- オ(正): 障害補償給付の時効は労災法第42条で5年(症状固定の翌日起算)。同条で療養補償給付・休業補償給付・葬祭料・介護補償給付は2年、障害補償給付・遺族補償給付は5年と区分される。
【障害等級認定の実務:複数障害の取扱い】
実際の被災事例では、複数の部位・器官に障害が残ることが多く、等級の組み合わせ認定ルールが重要です。
組み合わせ認定の原則(施行規則第14条):
1. 5つ以上の障害が残り、かつそれぞれが第14級以上の場合 → 全体を3級繰上げ
2. 3〜4つの障害が残り、かつそれぞれが第14級以上の場合 → 全体を2級繰上げ
3. 2つの障害が残り、かつそれぞれが第13級以上の場合 → 全体を1級繰上げ
4. 2つの障害が残り、一方が第8〜12級の場合 → 重い方の等級を採用(繰上げなし)
ただし繰上げの結果、認定等級が「最も重い障害の等級」を超えてはならない(最大で第1級)。
【障害補償年金前払一時金の制度】
障害補償年金(1〜7級)を受ける者は、前払一時金(法第15条の2)の請求も可能です。この前払一時金は、年金受給開始後に一括して前払いを受ける制度で、資金ニーズに対応します。
前払一時金の上限(等級別の給付日数の最大額):
- 第1級: 1,340日分
- 第2級: 1,190日分
- 第3級: 1,050日分
- 第4〜7級: それぞれの規定日数(詳細は施行規則別表第1の2)
前払一時金を受けた後は、その金額分に相当する年金額が順次差し引かれる(清算される)仕組みです。
【障害補償年金差額一時金の詳細(エの誤り根拠)】
差額一時金(法第16条の6)は、障害補償年金を受ける権利を持っていた者が死亡した場合に、遺族が請求できる制度です。
支給要件:
1. 障害補償年金の受給権者が死亡したこと
2. 死亡時までに受給した年金の累計額が、その等級の「前払一時金の上限額」に達していないこと(差額がある場合のみ)
遺族の範囲(請求できる順位):
1. 配偶者
2. 子・父母・孫・祖父母
3. 兄弟姉妹
差額一時金の額:
前払一時金の上限額 - 死亡時までに受給した障害補償年金の合計額 = 差額一時金額
例: 第1級(前払上限1,340日分)を受けていた者が、年金累計1,000日分受給後に死亡した場合 → 340日分が差額一時金として遺族に支給。
【時効の区分(法第42条)と起算点】
労災保険の給付請求権の時効は労災法第42条で給付種別ごとに2年と5年に区分されています(監修確定):
- 療養補償給付:2年(療養を要した日ごとの翌日から)
- 休業補償給付:2年(賃金を受けない日ごとの翌日から)
- 葬祭料・介護補償給付・二次健康診断等給付:2年
- 障害補償給付:5年(傷病が治癒した日(症状固定の日)の翌日から)
- 遺族補償給付:5年(被災者死亡の翌日から)
複数事業労働者向け給付(複数業務要因災害給付)も同じ区分で2年・5年が適用される(令和2年改正で追加)。
【上位接続:障害補償年金の社会保険との調整】
障害補償年金と厚生年金保険の障害厚生年金が両方支給される場合、調整減額(法第64条)が行われます。障害補償年金が優先して全額支給され、障害厚生年金(または障害基礎年金)が一定割合で減額される仕組みです(労災保険法施行規則第26条の4等)。この調整は「二重取り防止」の観点から設けられており、特定社会保険労務士が複数制度にまたがる障害認定を扱う際の重要知識です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第15条(障害補償給付)・第15条の2(障害補償年金前払一時金)・第16条の6(障害補償年金差額一時金)・第42条(時効)、労働者災害補償保険法施行規則別表第1(障害等級表) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。