社労士 労働者災害補償保険法 問2:労働者災害補償保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
労働者災害補償保険法における業務災害の認定に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア業務災害と認定されるためには、「業務遂行性」(労働者が使用者の支配下にある状態)と「業務起因性」(業務と傷病等の間に相当因果関係があること)の両方を満たす必要がある。
- イ事業場内で使用者の管理下にある状態で発生した災害は業務遂行性が認められるため、当該災害は原因を問わず一律に業務災害と認定される。正答
- ウ過労死の認定においては、発症前1か月間に100時間以上、または発症前2〜6か月間の平均で月80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務との関連性が強いと判断される目安とされている。
- エ職場におけるパワーハラスメントを原因とする精神障害については、令和2年(2020年)の認定基準改定により、パワーハラスメントが「業務による心理的負荷評価表」の出来事として追加され、心理的負荷の強度評価に関して「強」と判定される場合がある。
- オ業務起因性の判断においては、天災・地変(地震・台風等)による災害であっても、業務に特有の危険が現実化したと認められる場合には業務起因性が認められる。
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正答はイ(誤っている記述)です。
イは「使用者の管理下=業務遂行性が認められる→一律に業務災害」と短絡している点が誤りです。業務遂行性が認められても、災害の原因が私的行為や、業務に特有でない天災・地変等で業務起因性が否定される場合は、業務災害とは認定されません(業務遂行性と業務起因性は両方とも必要:労災法第7条第1項第1号)。
アが正しく、業務遂行性と業務起因性の二要件が必要です。ウは過労死認定基準(令和3年9月改定)の数値、エはパワハラの精神障害認定基準への追加(令和2年6月改定)、オは天災地変でも業務特有危険の現実化なら業務起因性ありの判例実務通り、すべて正しい記述です。
<!-- 監修確定 2026-06-07 -->
業務災害認定の2要件(必須整理):
| 要件 | 内容 | 認められやすい状態 | 認められない例 |
|---|---|---|---|
| 業務遂行性 | 労働者が使用者の支配下または管理下にある状態 | 所定労働時間中・就業場所内 | 無断離脱・完全な私用中 |
| 業務起因性 | 業務と傷病・死亡の間に相当因果関係がある | 作業行為・付帯行為による負傷 | 私的行為・天変地異(業務特有危険の現実化でない場合) |
業務遂行性は「場所・時間・指揮命令下」で判断され、業務起因性は「その業務に内在・随伴する危険が現実化したか」で判断されます。両要件を満たして初めて業務災害と認定されます。
過労死・精神障害の認定基準(令和3年9月改定):
- 脳・心臓疾患(過労死):
- 発症前1か月:時間外労働100時間超(強い関連性の目安)
- 発症前2〜6か月:月平均80時間超(関連性あり)
- 令和3年改定でパワハラ・睡眠不足も考慮対象に追加
- 精神障害(ストレス評価):
- 令和2年改定:「パワーハラスメント」が独立した出来事として追加
- 令和5年改定:ハラスメントの評価基準をさらに整備
各選択肢の解説:
- ア(正): 業務遂行性と業務起因性の二要件は労災認定の根幹。条文に明示はないが行政実務・判例で確立。
- イ(誤・正答): 業務遂行性が認められても、業務起因性(業務との相当因果関係)が否定される場合(私的行為・業務特有でない天災等)には業務災害にならない。「原因を問わず一律」が誤り。
- ウ(正): 令和3年9月の認定基準改定で明示された時間外労働の目安(100時間・80時間)。
- エ(正): パワーハラスメントが「業務による心理的負荷評価表」の出来事として追加(令和2年6月改正)。
- オ(正): 天災・地変も業務に特有の危険が現実化した場合(例:屋外作業中の落雷)は業務起因性を認める。
【業務起因性の判断構造:「業務に内在する危険の現実化」理論】
業務起因性(ぎょうむきいんせい)の判断は、「業務と傷病等との間に相当因果関係があるか」という問いへの答えです。実務・裁判例では「業務に内在・随伴する危険が現実化したと評価できるか」という基準で判断されます。
危険の現実化が認められやすいケース:
1. 作業行為そのものによる負傷(切削作業中の切り傷・重量物運搬中の腰痛)
2. 作業環境による健康障害(粉じん・有機溶剤・騒音・振動)
3. 長時間労働・心理的負荷の蓄積による脳・心臓疾患・精神障害
4. 通常の作業行為に付帯する行為(トイレへの移動途中の負傷等)
危険の現実化が否定されやすいケース:
1. 純粋な私的行為(作業と無関係の行動中の負傷)
2. 業務と関係のない個人的な基礎疾患の自然増悪
3. 天災地変(ただし業務特有の危険が現実化した場合は別途認定)
【過労死認定基準の変遷と令和3年改定の重要ポイント】
脳・心臓疾患の労災認定基準は昭和62年の通達を皮切りに複数回改定され、令和3年9月の改定が最も重要な近年の改正です。
令和3年改定の主な変更点:
1. 「長期間の過重業務」の評価基準の明確化: 発症前1か月100時間超・発症前2〜6か月月平均80時間超(いずれも法定外時間外)が「業務と発症の関連性が強い」の目安として維持・確認された
2. 「短期間の過重業務」の拡充: 特に過重な業務(拘束時間、業務内容の過重性等)の評価項目を整備
3. 「異常な出来事」への対応強化: 心理的ストレス(パワハラ等)も脳・心臓疾患の業務起因性評価要素として考慮
4. 副業・兼業の労働時間通算: 複数事業場で就労する場合の労働時間・負荷を合算して評価(重要改正)
【精神障害の認定基準と2021年パワハラ追加】
精神障害(うつ病等)の業務起因性は「業務による心理的負荷評価表」に基づいて判断されます。
評価の流れ(3要件):
1. 対象疾病(DSM-IV等)に該当する精神障害を発症していること
2. 発症前おおむね6か月以内に業務による強い心理的負荷があること
3. 業務以外の心理的負荷・個体側要因では発症しないこと
令和2年改定でパワハラが追加された意義:
- 従来の「出来事」区分(セクハラ・暴力等)にパワーハラスメントが明示的に追加
- 「強」判定となりうるパワハラ行為(身体的攻撃・精神的攻撃・過大な要求等)が例示された
- これにより職場のハラスメントを原因とする精神障害の申請・認定が増加
令和5年9月改定の追加ポイント:
- 「顧客等から著しい迷惑行為を受けた(カスタマーハラスメント)」が出来事として追加
- これは社会問題化したカスタハラへの対応であり、令和8年度試験の hot_topic
【上位接続:社労士の業務と労災認定申請代行】
特定社会保険労務士は、労働者(または遺族)が労災認定を申請する際の代理人業務を行います。実務上の重要ポイント:
1. 時効: 療養補償給付・休業補償給付は2年、障害補償給付・遺族補償給付は5年(労災保険法第42条)
2. 不支給決定への不服申立: 労働基準監督署→都道府県労働局(審査請求)→労働保険審査会(再審査請求)→行政訴訟 という3段階
3. 第三者行為災害との調整: 交通事故等で第三者(加害者)から損害賠償を受ける場合、労災保険給付との調整(求償・控除)が行われる(rousai_06で扱う論点)
4. 弁護士との役割分担: 行政不服申立(審査請求)は社労士業務だが、民事訴訟(使用者責任・安全配慮義務違反)は弁護士業務
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第7条(業務災害)、厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準」(令和3年9月改定)、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(令和2年6月改正・令和5年9月改正)、e-Gov 労災保険法 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。