労働者災害補償保険法6労働者災害補償保険法

社労士 労働者災害補償保険法 問6:労働者災害補償保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07

労働者災害補償保険法における第三者行為災害(第三者の行為によって生じた業務災害または通勤災害)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 第三者行為災害において、労働者が先に第三者から損害賠償を受けた場合は、政府は損害賠償と同一の事由の範囲内で保険給付の義務を免れることができ(控除)、損害賠償額の限度において保険給付をしないことができる。正答
  • 第三者行為災害において、政府が保険給付を行った場合、政府は第三者(加害者)に対して求償することができるが、休業特別支給金(給付基礎日額の20%)についても求償の対象となる。
  • 第三者行為災害が交通事故による場合、第三者から受け取った自動車損害賠償保険(自賠責保険)の支払額は、保険給付の控除対象に含まれない。
  • 第三者行為災害においては、保険給付が先に行われた場合でも、政府は第三者に対して求償権を行使することができず、被災者(または遺族)が直接第三者に損害賠償を請求する必要がある。
  • 第三者行為災害の届出は、被災労働者(または遺族)が「第三者行為災害届」を所轄の労働基準監督署長に提出することが義務付けられており、届出なしに労災申請を行うことはできない。
正答:第三者行為災害において、労働者が先に第三者から損害賠償を受けた場合は、政府は損害賠償と同一の事由の範囲内で保険給付の義務を免れることができ(控除)、損害賠償額の限度において保険給付をしないことができる。

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正答はア(正しい記述)です。

第三者行為災害では、被災者が先に第三者から損害賠償を受けた場合、政府は同一の事由(同じ損害項目)の範囲内で保険給付の額を控除できます(労災保険法第12条の4第2項)。これが「控除」の仕組みです。

イは誤りで、休業特別支給金(20%)は求償の対象外です(最高裁昭和62年判決)。ウは誤りで、自賠責保険の支払額も同一事由の損害に対するものであれば控除対象になります。エは誤りで、政府が先に保険給付を行った場合も第三者への求償権を行使できます(法第12条の4第1項)。オは誤りで、届出は「義務付け」というより申告義務に近いもので、届出なしでも申請は行えます(ただし届出は必要)。

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第三者行為災害の調整メカニズム(2つのパターン):

パターン1:保険給付が先の場合(求償)

```

政府が保険給付(保険給付部分のみ)を実施

政府は給付した額の限度で第三者に求償権を取得(法第12条の4第1項)

第三者(加害者)←← 政府が求償

```

パターン2:損害賠償が先の場合(控除)

```

第三者が被災者に損害賠償を支払い

政府は「同一事由の範囲内で」保険給付を控除(法第12条の4第2項)

二重取りを防止(損害賠償と保険給付の合計が実損額を超えない)

```

最重要判例:特別支給金の求償対象外(最判昭和62年3月6日):

| 給付種別 | 第三者への求償対象 | 理由 |

|---|---|---|

| 休業補償給付(60%) | 対象 | 保険給付(法第12条の4) |

| 障害補償給付・遺族補償給付 | 対象 | 保険給付 |

| 療養補償給付 | 対象 | 保険給付 |

| 休業特別支給金(20%) | 対象外 | 社会復帰促進等事業(第29条)= 保険給付ではない |

| 障害特別支給金 | 対象外 | 同上 |

各選択肢の解説:

  • ア(正): 損害賠償が先の場合の「控除」の仕組みは法第12条の4第2項の通り。正しい。
  • イ(誤): 特別支給金(20%部分)は保険給付でなく事業給付のため、求償対象外(最判昭和62年)。
  • ウ(誤): 自賠責保険の受取額も「同一事由」の損害賠償に該当すれば控除対象。保険の種別は問わない。
  • エ(誤): 政府が先に給付した場合も第三者への求償権を持つ(法第12条の4第1項)。
  • オ(誤): 第三者行為災害届(施行規則第22条)は必要だが、届出なしでも申請自体は行えない訳ではない。また届出の提出先は所轄労働基準監督署長だが、「届出なしに申請できない」は条文上必ずしも正確でない。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【第三者行為災害の法的構造:二重取り防止の仕組み】

第三者行為災害とは、業務上または通勤上の災害が、事業主以外の「第三者」(例:交通事故の加害者・同僚の故意行為等)の行為によって生じた場合です。この場合、被災者は次の2つの権利を同時に持ちます:

1. 労災保険給付を受ける権利(労働者として)

2. 民事損害賠償請求権(第三者に対して)

しかしこの二つを全額受け取ると「同一の損害に対して二重補償」を受けることになり、不当利得が生じます。これを防止するため、法第12条の4が「求償・控除」の調整メカニズムを規定しています。

【調整の「同一事由の範囲内」という限定の重要性】

調整(求償・控除)は「同一の事由」の損害に対するものに限定されます。

例えば交通事故の損害賠償では:

  • 積極損害(治療費・入院費等)
  • 逸失利益(失業による収入減少)
  • 慰謝料(精神的苦痛)
  • 将来の後遺障害に対する賠償

このうち労災保険給付と「同一事由」で重なるのは治療費(療養補償給付)・休業損害(休業補償給付)・後遺障害(障害補償給付)等ですが、慰謝料は労災保険ではカバーしない種類の損害であり、同一事由の調整対象から外れます。

実務上、示談交渉や損害賠償額の算定では、労災給付額を前提として「控除分」を計算した上で残りの損害賠償額を決めることが重要です。

【求償権の時効と行使限界】

政府が取得する求償権(法第12条の4第1項)は、保険給付を行った日から2年で時効消滅します(国の権利の消滅時効)。この時効管理は労働局・監督署が行いますが、大規模な交通事故案件では実際に求償訴訟が提起されるケースもあります。

【特別支給金が求償対象外とされた最高裁判決の意義】

昭和62年3月6日の最高裁判決(最判昭62・3・6)は、休業特別支給金が「社会復帰促進等事業」(法第29条)に基づく支給であり、保険給付ではないため、法第12条の4の求償・控除の対象に含まれないと判示しました。

実務上の影響:

1. 交通事故の示談金算定において、特別支給金(20%)は損害賠償から控除する必要がない

2. 被災者側は、労災保険給付60%を控除した残額を第三者に損害賠償として請求しつつ、特別支給金20%は別途受け取れる(実質80%相当の給付+慰謝料等)

3. 加害者の任意保険(対人賠償)との示談交渉では、特別支給金を除いた60%相当分のみが調整対象であることを明示することが重要

この判例は、特定社会保険労務士が交通事故関連の労災申請代行業務を行う際の前提知識であり、損害賠償との調整計算の根幹をなします。

【第三者行為災害届の実務と自賠責優先払い】

第三者行為災害(特に交通事故)の場合、実務上2つの選択肢があります:

① 労災保険優先:

先に労災保険給付を申請し、政府が第三者(加害者・保険会社)に求償する方法。手続きが迅速で、被災者の直接交渉が不要。

② 自賠責優先(第三者行為順序の逆):

先に自賠責保険からの支払いを受け、その後労災保険から控除した上での差額給付を受ける方法。

いずれの方法でも、「第三者行為災害届」(施行規則第22条)を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。届出書には第三者の情報・事故状況・損害賠償請求の有無等を記載します。

社労士実務では、交通事故に遭った労働者(通勤中・外回り中等)のための労災申請代行と、自賠責・任意保険との並行処理が重要業務の一つです。特に示談交渉の前に労災申請を確定させることが、被災者の不利益を防ぐ実務上の鉄則です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第12条の4(第三者行為災害の求償・控除)、昭和62年3月6日 最高裁判所判決(特別支給金の求償対象外)、労働者災害補償保険法施行規則第22条(第三者行為災害届) <!-- 監修確定 2026-06-07 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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