問題
労働者災害補償保険法における通勤災害に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はウ(正しい記述)です。
通勤途中に「日用品の購入」などの日常生活上必要な行為(いわゆる「寄り道」)をした場合、通勤は原則として中断・逸脱した時点で終了しますが、そのやむを得ない事由による最小限度の行為の後、合理的な経路に戻れば、再び通勤とみなされます(労災保険法第7条第3項)。これが「逸脱・中断の特例」です。
アは誤りで、通勤の定義に「業務の性質を有するものを除く」という限定があります(第7条第2項)。イは誤りで、通勤でなくなるのは逸脱・中断の間とその後であり、逸脱前の移動は通勤のままです(第7条第3項)。エは誤りで、単身赴任者の帰省は就業との関連で通勤として認められます。オは誤りで、事業場間の移動は通勤として扱われます。
通勤の定義(労災法第7条第2項)の4類型:
| 類型 | 内容 | 要件 |
|---|---|---|
| ①住居→就業場所 | 就業に関する往路 | 合理的な経路・方法 |
| ②就業場所→住居 | 就業に関する復路 | 合理的な経路・方法 |
| ③就業場所→他の就業場所 | 複数事業主就労の事業場間移動 | 合理的な経路・方法 |
| ④単身赴任者の赴任先住居⇄帰省先住居 | 就業の関係で住居が複数の場合 | 就業の場所における業務終了後・開始前 |
逸脱・中断の原則と特例(第7条第3項):
```
【原則】 通勤途中に逸脱・中断が発生
→ 逸脱・中断の開始時点で「通勤」ではなくなる
→ 逸脱・中断後も(合理的経路に戻っても)通勤とは扱われない(原則)
【特例】 日常生活上必要な行為で厚労省令所定のやむを得ない事由・最小限度の行為
→ その行為の後、合理的な経路に戻った時点から「通勤」が再開する
```
厚生労働省令(施行規則第8条)で定める「日常生活上必要な行為」の具体例:
- 日用品の購入その他これに準ずる行為(1号)
- 職業訓練・学校教育その他これらに準ずる教育訓練で職業能力の開発向上に資するものを受ける行為(2号)
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為(3号)
- 病院・診療所で診察・治療を受けることその他これに準ずる行為(4号)
- 要介護状態にある配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母の介護(継続的又は反復して行われるものに限る。5号)
各選択肢の解説:
- ア(誤): 通勤の定義は「業務の性質を有するものを除く」(第7条第2項)。業務の性質を有するものは業務災害として扱われる。
- イ(誤): 第7条第3項で通勤でなくなるのは「当該逸脱又は中断の間及びその後」であり、逸脱前の移動は通勤のまま。「逸脱前の時点から」が誤り。なお、逸脱後は合理的経路に戻っても原則として通勤とならず(原則)、日常生活上必要な行為の特例に当たる場合だけ戻った後が通勤になる(特例)。
- ウ(正): 特例の要件(やむを得ない事由・最小限度)を満たす行為の後、合理的経路に戻れば通勤が再開する。正しい記述。
- エ(誤): 単身赴任者の赴任先住居⇄帰省先住居の移動は、第7条第2項第3号で明示的に通勤として認められる(就業との関連があるため)。
- オ(誤): 複数事業場間の移動は第7条第2項第2号で通勤として扱われる。業務災害ではなく通勤災害の類型。
【通勤の合理的な経路・方法の解釈】
「合理的な経路」とは必ずしも最短経路だけを指さず、社会通念上合理的と認められる経路(例:交通機関の混雑を避けるための迂回路、複数存在する通常の通勤経路など)も含まれます。「合理的な方法」についても、徒歩・電車・バス・自家用車等の通常の交通手段が該当します。無免許運転などは合理的な方法と認められないことがあります(行政解釈)。
【逸脱・中断の特例の詳細と実務上の注意点】
特例が認められる「日常生活上必要な行為」かどうかは、その行為の生活必要性・習慣性・継続性を総合的に勘案して判断されます。
特例が認められやすいケース:
- コンビニでの日用品(食料品・日用消耗品)購入
- 処方薬の受取(薬局立ち寄り)
- 通院・定期健診
- 保育園への子の送迎(通勤経路上または付近)
- 選挙投票(選挙が実施されている場合)
特例が認められにくいケース:
- 飲食店での飲食(友人と長時間の飲み会等)
- 娯楽施設(パチンコ・映画館等)への立ち寄り
- 観光・買い物ツアー的な大幅な迂回
【単身赴任者の通勤(第7条第2項第3号)】
単身赴任(やむを得ない事情による住居の移転)を余儀なくされた労働者は、赴任先の住居と帰省先(通常の居住地)の住居との間の移動が「通勤」として認められます。この移動は第7条第2項第3号(第1号の往復に先行し、又は後続する住居間の移動)として通勤に含まれます。
認められる要件:
1. 就業場所において業務を終了した後、または業務を開始する前の移動であること
2. やむを得ない事情(単身赴任)によって住居が2か所になっている状態
【複数事業場就労者の事業場間移動(第7条第2項第2号)】
複数の事業主に使用されている労働者(いわゆる副業・兼業労働者)が、一の事業場での業務終了後に他の事業場へ移動する行為も通勤として扱われます。この規定は、副業・兼業が法律上促進される以前から存在していましたが、近年の副業解禁ブームで重要性が増しています。
重要な区別:
- 事業場間移動 → 通勤(第7条第2項第2号)
- 各事業場での業務 → 業務(各事業主の保険で別々に処理)
副業先での業務中の災害については、複数の事業主から保険料が拠出されているという観点から、給付基礎日額の算定に複数事業場の賃金を合算する規定(令和2年改正で導入)も重要論点です。
【通勤災害と業務災害の違い:一部負担金】
通勤災害と業務災害は法的性質が異なり、以下の差異があります:
| 比較項目 | 業務災害 | 通勤災害 |
|---|---|---|
| 療養補償(療養補償給付) | 自己負担なし | 初回のみ一部負担金200円 |
| 給付種別名 | 「療養補償給付」「休業補償給付」等(「補償」が付く) | 「療養給付」「休業給付」等(「補償」が付かない) |
| 使用者責任との関係 | 労基法の補償義務との調整あり | 使用者の補償義務なし |
【上位接続:通勤経路の変更届と保険関係】
実務では、労働者が転居・通勤手段の変更等で通勤経路が変わった場合、社内の手続として事業主に通勤経路の変更を届け出ます(行政機関への届出ではありません)。通勤経路が変更されていた場合に発生した事故について、変更後の経路が「合理的な経路」として認められるかどうかが、通勤災害認定の実務上の争点になることがあります。社会保険労務士は、保険給付の請求や審査請求の代理(社労士法第2条第1項第1号の3)として、経路の合理性を主張する立場になります。
- 労働者災害補償保険法第7条e-Govで原文を読む
- 労働基準法e-Govで原文を読む
- 社会保険労務士法第2条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第7条第1項第3号・第2項・第3項(通勤の定義・逸脱・中断)、労働者災害補償保険法施行規則第8条(日常生活上必要な行為) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

