賃管士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

賃管士 管理実務 問79|退去時の原状回復と敷金——民法621条・622条の2と原状回復特約への消費者契約法10条の適用

問題

賃管士 | 管理実務 | 令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-10-12

賃貸借終了時の原状回復・敷金の精算と原状回復に関する特約に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、賃貸人は事業者、賃借人は消費者であるものとする。

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正解は イ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はイです。

事業者である賃貸人と消費者である賃借人の賃貸借は「消費者契約」(消費者契約法2条3項)であり、その条項には同法10条が適用されます。通常損耗の補修費用まで賃借人に負担させる特約は、民法621条(通常損耗は原状回復の対象外)に比べて賃借人の義務を加重する条項であり、信義則に反して一方的に賃借人の利益を害すると判断されれば無効です。「適用対象外で常に有効」とするイは誤りです。

ア・ウ・オは条文のとおり、エも10条の文言どおりです。

原状回復と敷金の基本(民法):

条文内容
621条受け取った後の損傷を原状に復する義務。通常損耗・経年変化は除く。賃借人の責めに帰することができない損傷も除く
622条の2第1項終了し返還を受けたとき等に、敷金から賃借人の債務の額を控除した残額を返還
622条の2第2項賃貸人は敷金を債務の弁済に充てられるが、賃借人から充当を請求することはできない

消費者契約法10条の2つの要件:

①任意規定(公の秩序に関しない規定)の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であること、②信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであること。両方を満たす条項が無効になります。

各選択肢:

  • イ(誤・正答): 消費者契約の条項である以上10条の適用があり、要件を満たせば無効。
  • ア(正): 621条のとおり。
  • エ・ウ(正): 10条の文言のとおり。
  • オ(正): 622条の2第2項のとおり。

【原状回復特約を条文の組み合わせで判断する】

1. 出発点は民法621条

621条は、賃借人が原状回復義務を負う損傷から「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」を明文で除き、さらに賃借人の責めに帰することができない事由による損傷も除いています。通常損耗・経年変化の補修費用は、特約がなければ賃借人の負担にはなりません。

2. 特約は「任意規定より賃借人に不利な条項」になる

621条は当事者の合意で変えることができる規定(公の秩序に関しない規定)です。通常損耗の補修費用まで賃借人に負担させる特約は、621条を適用した場合に比べて賃借人の義務を加重する条項であり、消費者契約法10条の第一の要件に当たります。

3. 10条の適用範囲

消費者契約法2条3項は、消費者と事業者との間で締結される契約を「消費者契約」とし、10条はその条項一般に適用されます。原状回復に関する特約を適用対象から除く規定はありません。したがって、事業者である賃貸人と消費者である賃借人の賃貸借では、原状回復特約も10条の審査を受け、第二の要件(信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの)に当たれば無効となります。反対に、第二の要件に当たらなければ、特約は有効として扱われます。「一律に有効」でも「一律に無効」でもない点が重要です。

4. 敷金との関係(622条の2)

敷金は、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の金銭債務を担保する目的で交付される金銭です(622条の2第1項)。賃貸人は、賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けたときなどに、敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を返還しなければなりません。賃借人に原状回復義務のある損傷の補修費用は、この控除の対象となり得ますが、無効な特約に基づく費用は控除できません。また、賃貸人は賃借人の不履行の際に敷金を弁済に充てることができますが、賃借人から「敷金から差し引いてほしい」と請求することはできません(同条2項)。

5. 管理業者の実務

管理業者は、特約を設けるときは、負担の対象と金額の目安を具体的に示して契約時に説明し、退去時には入居時・退去時の記録に基づいて、621条により賃借人が負担すべき損傷かどうかを区別して精算書を作成することが求められます。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法621条(賃借人の原状回復義務)・622条の2(敷金)、消費者契約法2条3項(消費者契約の定義)・10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 確認日: 2026-09-30 出典: e-Gov 法令検索 民法 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_621 / 消費者契約法 https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061#Mp-At_10(法令API v2で全文取得・条文照合) 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。

執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

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