賃管士 民法 問3:民法(賃貸借契約の基本)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
賃借人の義務に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**の組み合わせはどれか。 ア. 賃借人は、賃借物について善良な管理者の注意をもって保管する義務(善管注意義務)を負う。 イ. 賃借人が善管注意義務に違反して賃借物に損傷を与えた場合でも、原状回復の責任を負うことはない。 ウ. 賃借人は、賃貸借が終了したときは、賃借物を返還する義務を負い、賃借物を受け取った後に生じた損傷がある場合は原則としてその損傷を原状回復しなければならない。 エ. 賃借人は、賃借物の修繕が必要であることを知った場合、賃貸人にその旨を通知する義務を負わない。 オ. 賃借人の賃料支払義務は、賃貸借契約が成立した時点で当然に発生し、目的物の引渡しを受けていない状態でも支払義務を免れない。
- aアとウ正答
- bアとエ
- cイとオ
- dウとエ
- eイとウ
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正答はa(アとウ)です。
ア(正): 賃借人は賃借物を「善良な管理者の注意」をもって使用・保管しなければなりません(善管注意義務・民法400条)。自分の物を扱う場合より高い注意が求められます。
ウ(正): 賃貸借が終了すれば賃借物を返還し、自分の故意・過失による損傷は直すことが原則です(民法621条)。
イ(誤): 善管注意義務違反の損傷は原状回復の対象です。
エ(誤): 民法615条により、賃借人は修繕が必要な場合は賃貸人に通知する義務があります。
オ(誤): 賃料は使用収益の対価なので、引渡しを受けていない間は通常発生しません。
賃借人の義務の体系(民法400条・601条・615条・621条):
| 義務の種類 | 根拠条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 賃料支払義務 | 601条 | 使用収益の対価として賃料を支払う義務 |
| 善管注意義務 | 400条 | 目的物の保管・使用において善良な管理者の注意を払う義務 |
| 通知義務 | 615条 | 修繕が必要な場合・第三者が権利主張する場合に賃貸人へ通知する義務 |
| 返還・原状回復義務 | 621条 | 終了時に賃借物を返還し、自己の責めに帰すべき損傷を回復する義務 |
| 用法遵守義務 | 616条・594条 | 契約・目的物の性質に応じた用法で使用する義務 |
各選択肢の整理:
- ア(正): 民法400条の善管注意義務。特定物の引渡し債務を負う者は善管注意義務を負う。賃借人は賃借物の返還義務を負うため、その保管においても善管注意義務が適用される。
- イ(誤): 善管注意義務違反による損傷は「賃借人の責めに帰すべき事由」にあたり、原状回復義務の対象(民法621条)。
- ウ(正): 民法621条「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」—ただし通常損耗・経年変化は除外。
- エ(誤): 民法615条「賃借人は、賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない」—通知義務は法定義務。
- オ(誤): 賃料は使用収益の対価であり、目的物の引渡しを受けていない場合は使用収益が発生していないため、特約がない限り賃料支払義務は生じない(同時履行・先履行の問題)。
【善管注意義務の法的性格と原状回復義務との関係】
善管注意義務(善良な管理者の注意義務)は、民法400条に規定される注意基準で「その人の職業・社会的地位から一般的に期待される注意の程度」を意味します。これは自己の財産に対するのと同じ注意(軽過失)よりも高い基準です。
賃借人に善管注意義務が適用される根拠は以下の通りです:賃借人は賃借物の返還義務(引渡債務)を負っており、その間の保管において400条が適用されます。この保管中の善管注意義務違反(例:引っ越し作業でフローリングを傷つけた、ペット飼育禁止特約に違反してペットを飼育した)が生じた場合、その損傷は「賃借人の責めに帰すべき事由」として原状回復義務の対象となります(621条)。
善管注意義務違反と通常損耗の区別(国交省原状回復ガイドラインとの整合):
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)では、賃借人が負担すべき原状回復の範囲を以下のように整理しています:
原状回復の対象(賃借人負担): 善管注意義務違反または通常の使用を超える使用(故意・過失・不注意・用法違反等による汚損・損傷)
原状回復の対象外(賃貸人負担): 通常損耗(日常生活を送るうえで避けられない損耗)および経年変化(時間経過による自然劣化)
この区分はR2改正で民法621条に明文化されました。改正前は解釈・判例に委ねられていましたが、改正後は条文上も「通常損耗・経年変化は除く」と明示されています。
通知義務(615条)の実務的重要性:
賃借人の通知義務は実務上非常に重要です。修繕が必要な箇所を賃借人が知りながら賃貸人に通知せず、修繕をしない結果として損害が拡大した場合、賃借人は拡大した損害分について責任を負う可能性があります。
具体例:
- 水道管の漏水を発見したが放置→床や壁が腐食→賃借人は放置した期間に拡大した損害を負担
- エアコンの排水管詰まりによる水漏れを気づいていたが通知せず→天井・壁の損傷→同様
管理会社は入居者に対して「不具合はすぐに連絡する」よう入居時に案内することで、通知義務の履行を促し、損害拡大リスクを管理することが重要な業務の一つです。
賃料支払時期と目的物引渡しの先後(重要な実務論点):
賃料の支払時期について、民法614条は「月払の場合は毎月末払」を原則としますが、多くの賃貸借では「翌月分を当月末までに前払」とする特約(前払特約)が一般的です。
目的物の引渡し前に賃料が発生するかという問題は、引渡しと賃料支払いの関係(同時履行の抗弁・先履行義務の有無)の問題です。通常は引渡しを条件に賃料が発生すると解釈され、引渡し前の賃料を求める特約がない限り発生しません。ただし「フリーレント期間」後の通常賃料支払いは契約上定められた引渡し日以降に発生します。
根拠: 民法400条・601条・608条・614条・615条・621条(e-Gov 法令検索)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」再改訂版(H23)、令和2年4月施行民法改正。確認日2026-06-10。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法400条・601条・608条・615条・621条(e-Gov 法令検索) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法第64条/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。