賃管士 民法 問5:民法(賃貸借契約の基本)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
Aは、B所有のアパートの一室を賃借している。ある日、雨漏りが発生したため、AはBに修繕の必要性を通知した。その後、Bは修繕を開始しなかった。以下の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- aBが修繕を開始しない限り、Aは自ら修繕を行う権限を持たない。
- bAがBに通知した後、相当の期間内にBが必要な修繕をしない場合、Aは自ら修繕することができ、その費用をBに請求できる。正答
- cAがBに通知したとしても、修繕の費用はすべてAが負担しなければならない。
- d急迫の事情がある場合でも、Aは必ずBに通知してから修繕する必要がある。
- eBが修繕を行わない場合、Aの唯一の救済手段は賃料減額請求のみである。
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正答はbです。
令和2年4月施行の改正民法で新設された607条の2により、賃借人Aは「通知後に賃貸人Bが相当の期間内に修繕しない」場合、自ら修繕を行うことができます。そしてその費用(必要費)は賃貸人Bに直ちに請求できます(608条1項)。
各選択肢の誤りの核心:
- a:自ら修繕する権限が法律で認められている(誤)
- c:費用はBに請求できる(誤)
- d:急迫の事情があれば通知なしで修繕可(誤)
- e:修繕権や損害賠償請求など複数の救済手段がある(誤)
民法607条の2(R2新設)の適用場面別整理:
| 場面 | 要件 | 賃借人の修繕権 | 費用負担 |
|---|---|---|---|
| 通常型 | ①修繕必要、②賃貸人が認識/通知済、③相当期間内に修繕なし | あり(1号) | 必要費→賃貸人に直ちに請求(608条1項) |
| 緊急型 | 急迫の事情(水道管破裂・ガス漏れ等) | あり(2号・通知不要) | 同上 |
| 賃借人の責に帰す場合 | 賃借人の故意・過失による損傷 | 修繕義務は賃借人負担(606条1項但書) | 賃借人負担 |
各選択肢の詳細:
- a(誤): 607条の2により、賃借人は要件を満たせば修繕権を有する。「権限を持たない」は誤り。
- b(正): 607条の2第1号の規定通り。「相当の期間」経過後は賃借人Aに修繕権が発生し、費用は608条1項の必要費として賃貸人Bに請求可能。
- c(誤): 607条の2に基づく適法な修繕の費用は必要費(608条1項)として賃貸人負担。
- d(誤): 急迫の事情(607条の2第2号)がある場合は、通知なしで修繕可能。「必ず通知」は誤り。
- e(誤): 賃借人の救済手段は賃料減額請求(611条)だけでなく、①自己修繕権(607条の2)、②損害賠償請求(415条)、③場合によっては解除(611条2項)等がある。
「相当の期間」の具体的な目安(実務):
条文上「相当の期間」の日数は定められていないため、修繕の性質・緊急性・業者手配の困難度等から個別判断されます。
- 雨漏り(居住性への重大影響):数日〜1週間程度
- 給水設備の故障(日常生活への重大影響):数日程度
- 外壁のひび(緊急性低):数週間〜1ヶ月程度
【607条の2の新設と賃貸管理実務の変革—サービス水準の法的義務化】
令和2年民法改正で607条の2が新設される以前、「賃借人が賃貸人の同意なく修繕できるか」は判例・学説のみで論じられていました。最高裁レベルの判例は少なく、実務では「修繕は賃貸人の専権」という意識が強く、賃借人は修繕を待つか、自ら費用負担して修繕するかの二択に近い状況でした。
607条の2新設による実務的変革:
1. 賃貸人(オーナー)のリスク増大: 修繕要請を放置すると賃借人が業者を独自に手配し、高額の修繕費用を請求されるリスクが法的に発生。オーナーが管理会社に「修繕は自分で判断する」と言っても、法律上の義務は変わらない。
2. 管理会社の修繕対応速度への法的プレッシャー: 管理受託契約で「一定金額以下の修繕は管理会社が発注可」と定めておかないと、修繕に時間がかかる→賃借人の修繕権発生→費用請求という連鎖が生じうる。
3. 修繕費用の先立替と精算の実務: 賃借人が607条の2に基づいて自ら修繕し費用を賃貸人に請求する場合、賃借人は「証拠(見積書・領収書・修繕前後の写真)」を保存する必要があります。合理的な費用(相見積もりなど)であれば請求可能ですが、不合理に高額な修繕費用は全額請求できない可能性があります。
611条改正(賃料の「当然」減額)との組み合わせ効果:
実務上特に重要なのは607条の2と611条の相互作用です:
シナリオ例:
- 入居者が水道管の亀裂を発見→管理会社に連絡→「来週業者を手配します」→3日後に水が止まった
- この3日間は「一部使用収益不能」→611条により賃料は当然減額(賃借人に有利)
- 管理会社が「来週」と言って1ヶ月放置→607条の2の「相当期間経過」→賃借人が自ら修繕可能に
- 修繕費は608条1項で直ちに請求可能
賃貸住宅管理業法が義務付ける「定期的な賃借人との連絡・状況確認」(業法20条の定期報告の趣旨)は、こうした民法上の修繕リスクを事前に把握・管理するための実務的根拠ともなっています。
保険との連動(管理実務の応用):
賃貸住宅に係る火災保険・家財保険・賠償責任保険では、「修繕費用のうち保険でカバーできる部分」「免責事項」が定められています。水道管の老朽化による破裂(経年劣化)は建物側の保険(火災保険の水濡れ特約等)でカバーされる場合があります。一方、入居者の故意・過失による損傷は入居者の家財保険・借家人賠償責任保険でカバーされます。
管理会社は保険の適用可否を迅速に判断し、修繕対応をスムーズに行う「修繕対応フロー」を整備しておくことが、賃貸住宅管理業者としての専門性を示す重要な要素です。
根拠: 民法606条・607条の2・608条・611条(e-Gov 法令検索)、令和2年4月施行民法改正。確認日2026-06-10。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法607条の2・608条1項(e-Gov 法令検索) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法第64条/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。