問題
Aは、B所有のアパートの一室を賃借している。ある日、雨漏りが発生したため、AはBに修繕の必要性を通知した。その後、Bは修繕を開始しなかった。以下の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- a
- b
- c
- d
- e
自信の3択
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解説
正答はbです。
令和2年4月施行の改正民法で新設された607条の2により、賃借人Aは「通知後に賃貸人Bが相当の期間内に修繕しない」場合、自ら修繕を行うことができます。そしてその費用(必要費)は賃貸人Bに直ちに請求できます(608条1項)。
各選択肢の誤りの核心:
- a:自ら修繕する権限が法律で認められている(誤)
- c:費用はBに請求できる(誤)
- d:急迫の事情があれば通知なしで修繕可(誤)
- e:修繕権や損害賠償請求など複数の救済手段がある(誤)
民法607条の2(R2新設)の適用場面別整理:
| 場面 | 要件 | 賃借人の修繕権 | 費用負担 |
|---|---|---|---|
| 通常型 | ①修繕必要、②賃貸人が認識/通知済、③相当期間内に修繕なし | あり(1号) | 必要費→賃貸人に直ちに請求(608条1項) |
| 緊急型 | 急迫の事情(水道管破裂・ガス漏れ等) | あり(2号・通知不要) | 同上 |
| 賃借人の責に帰す場合 | 賃借人の故意・過失による損傷 | 賃貸人は修繕義務を負わない(606条1項ただし書) | 賃借人負担 |
各選択肢の詳細:
- a(誤): 607条の2により、賃借人は要件を満たせば修繕権を有する。「権限を持たない」は誤り。
- b(正): 607条の2第1号の規定通り。「相当の期間」経過後は賃借人Aに修繕権が発生し、費用は608条1項の必要費として賃貸人Bに請求可能。
- c(誤): 607条の2に基づく適法な修繕の費用は必要費(608条1項)として賃貸人負担。
- d(誤): 急迫の事情(607条の2第2号)がある場合は、通知なしで修繕可能。「必ず通知」は誤り。
- e(誤): 賃借人の救済手段は賃料減額請求(611条)だけでなく、①自己修繕権(607条の2)、②損害賠償請求(415条)、③場合によっては解除(611条2項)等がある。
「相当の期間」の具体的な目安(実務):
条文上「相当の期間」の日数は定められていないため、修繕の性質・緊急性・業者手配の困難度等から個別判断されます(以下は法令・判例上の基準ではなく、一般的な目安です)。
- 雨漏り(居住性への重大影響):数日〜1週間程度
- 給水設備の故障(日常生活への重大影響):数日程度
- 外壁のひび(緊急性低):数週間〜1ヶ月程度
【607条の2の新設と賃貸管理実務の変革—サービス水準の法的義務化】
令和2年民法改正で607条の2が新設される以前、「賃借人が賃貸人の同意なく修繕できるか」は判例・学説のみで論じられていました。最高裁レベルの判例は少なく、実務では「修繕は賃貸人の専権」という意識が強く、賃借人は修繕を待つか、自ら費用負担して修繕するかの二択に近い状況でした。
607条の2新設による実務的変革:
1. 賃貸人(オーナー)のリスク増大: 修繕要請を放置すると賃借人が業者を独自に手配し、高額の修繕費用を請求されるリスクが法的に発生。オーナーが管理会社に「修繕は自分で判断する」と言っても、法律上の義務は変わらない。
2. 管理会社の修繕対応速度への法的プレッシャー: 管理受託契約で「一定金額以下の修繕は管理会社が発注可」と定めておかないと、修繕に時間がかかる→賃借人の修繕権発生→費用請求という連鎖が生じうる。
3. 修繕費用の先立替と精算の実務: 賃借人が607条の2に基づいて自ら修繕し費用を賃貸人に請求する場合、賃借人は「証拠(見積書・領収書・修繕前後の写真)」を保存する必要があります。合理的な費用(相見積もりなど)であれば請求可能ですが、不合理に高額な修繕費用は全額請求できない可能性があります。
611条改正(賃料の「当然」減額)との組み合わせ効果:
実務上特に重要なのは607条の2と611条の相互作用です:
シナリオ例:
- 入居者が水道管の亀裂を発見→管理会社に連絡→「来週業者を手配します」→3日後に水が止まった
- この3日間は「一部使用収益不能」→611条により賃料は当然減額(賃借人に有利)
- 管理会社が「来週」と言って1ヶ月放置→607条の2の「相当期間経過」→賃借人が自ら修繕可能に
- 修繕費は608条1項で直ちに請求可能
なお、賃貸住宅管理業法20条は、管理業務の実施状況等を委託者(オーナー)に定期的に報告する義務を定めています(賃借人との連絡を義務付ける規定ではありません)。修繕要請の受付・対応状況をこの定期報告に含めておくと、オーナーが民法上の修繕リスクを把握しやすくなります。
保険との連動(管理実務の応用):
賃貸住宅に係る火災保険・家財保険・賠償責任保険では、「修繕費用のうち保険でカバーできる部分」「免責事項」が定められています。水道管の老朽化による破裂(経年劣化)は建物側の保険(火災保険の水濡れ特約等)でカバーされる場合があります。一方、入居者の故意・過失による損傷は入居者の家財保険・借家人賠償責任保険でカバーされます。
管理会社は保険の適用可否を迅速に判断し、修繕対応をスムーズに行う「修繕対応フロー」を整備しておくことが、賃貸住宅管理業者としての専門性を示す重要な要素です。
根拠: 民法606条・607条の2・608条・611条(e-Gov 法令検索)、令和2年4月施行民法改正。確認日2026-06-10。
- 民法第607条の2・第606条e-Govで原文を読む
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第20条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法607条の2・608条1項(e-Gov 法令検索) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法施行規則第19条第1号/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
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執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

