民法6民法(賃貸借契約の基本)

賃管士 民法 問6:民法(賃貸借契約の基本)

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10

賃借人が賃借物に費用を支出した場合の償還請求に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • a賃借人が賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃借人は賃貸人に対して直ちにその償還を請求することができる。
  • b有益費とは、賃借物の価値を増加させる費用のことをいい、その費用については賃借人は賃貸借終了時に償還を請求することができる。
  • c有益費の償還について賃貸人は、支出した費用の額または賃貸借終了時に現存する増加額のいずれかを選択して償還することができる。
  • d必要費に該当するか有益費に該当するかは、費用の名称ではなく、その費用が目的物の現状維持に必要なものか価値増加のためのものかによって区別される。
  • e有益費の請求について、当事者が特約で「有益費は請求しない」と合意した場合でも、その特約は効力を持たない。正答
正答:e有益費の請求について、当事者が特約で「有益費は請求しない」と合意した場合でも、その特約は効力を持たない。

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正答はeです。

有益費の請求権(償還請求権)は任意規定です。賃貸借の当事者間で「有益費は請求しない」という特約(いわゆる内装造作の放棄特約)を有効に結ぶことができます。飲食店の店舗賃貸などで入居者が内装工事を行う場合に「退去時の造作・設備の撤去義務免除と引き換えに有益費請求権を放棄する」という特約はよく使われています。

有益費の償還は終了時まで待つ必要があること(必要費は「直ちに」)と、賃貸人が費用額または増加額を選択できることは頻出知識です。

標準試験対策の基準レベル

必要費と有益費の比較整理(民法608条):

| 区分 | 定義 | 賃貸人への請求時期 | 額の計算 | 特約での変更 |

|---|---|---|---|---|

| 必要費 | 目的物の現状維持・保存に必要な費用(雨漏り修理、給排水管修繕、鍵の修理等) | 直ちに(即時請求可) | 支出額 | 可(任意規定) |

| 有益費 | 目的物の価値を増加させる費用(設備グレードアップ、エアコン増設、床材の張替え向上等) | 賃貸借終了時(増加が現存する場合) | 支出額 または 現存増加額(賃貸人が選択) | 可(任意規定) |

各選択肢の整理:

  • a(正): 608条1項の通り。必要費は「直ちに」請求可能—修繕後すぐに賃貸人に費用を請求できる。
  • b(正): 608条2項の通り。有益費は終了時に現存増加がある場合に請求可能。
  • c(正): 608条2項「その価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択に従い、その支出した金額または増価額を償還させることができる」—賃貸人が選択権を持つ点が重要。
  • d(正): 費用の性質(現状維持 vs 価値増加)で区別するという解釈は適切。
  • e(誤): 608条は任意規定であり、特約で有益費の請求を放棄することは可能。「特約は効力を持たない」という断定が誤り。消費者契約法が適用される場合でも、有益費放棄特約は消費者に一方的に不利とは必ずしも言えない(賃借人が自発的に価値増加投資をしたうえで請求権を放棄する合意は合理的な場合がある)。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【必要費・有益費の実務論点—店舗賃貸・住宅賃貸での違い】

必要費と有益費の区別は条文上の定義では明確ですが、実務では「これは必要費か有益費か」という判断が難しいケースがあります。

境界事例の判断基準(判例・学説):

| 費用の例 | 分類 | 理由 |

|---|---|---|

| 雨漏り修繕費 | 必要費 | 現状維持(使用不能を防ぐ)が目的 |

| 給水管更新費 | 必要費 | 使用収益確保のために不可欠 |

| 老朽化した畳の張替(通常レベル) | 必要費または修繕費 | 現状維持として必要な範囲 |

| エアコンの新規増設費 | 有益費 | 既存設備なし→新たな価値付加 |

| 既存エアコンの高機能品への交換 | 有益費(差額分) | 価値増加分が有益費 |

| 造作(カウンター・間仕切り等)の設置 | 有益費 | 価値増加目的 |

| 排水管の詰まり修繕 | 必要費 | 現状回復のための費用 |

有益費放棄特約の実務(店舗賃貸での頻出論点):

店舗賃貸(飲食店・美容院・小売店等)では、入居者がスケルトン(躯体のみ)状態から内装工事を行うことが多く、造作費用が数百万〜数千万円に及ぶことがあります。この場合、退去時に有益費(造作費用)を賃貸人に請求できるとなると、オーナーにとって退去時の費用リスクが生じます。

実務的な解決策として採られる特約の類型:

1. 有益費償還請求権の放棄特約: 「本物件の賃借期間中に賃借人が行った内装工事等の有益費については、賃貸借終了時に賃貸人に対して償還請求権を行使しないものとする」—これは有効。

2. 原状回復義務の免除特約(セットで締結): 内装工事で価値が上がった状態を「スケルトンに戻す義務を免除」する代わりに有益費請求権も放棄する。双方にとって合理的な取引。

3. 造作買取請求権(借地借家法33条)との関係: 造作買取請求権は建物賃借人が「賃貸人の同意を得て取り付けた造作」について終了時に買い取りを請求できる権利。特約で排除可能(後述)。

有益費償還と造作買取請求の違い(賃管士の頻出比較論点):

| 比較軸 | 有益費償還(608条) | 造作買取請求(借地借家法33条) |

|---|---|---|

| 根拠 | 民法608条 | 借地借家法33条 |

| 対象 | 建物自体の価値増加費用 | 同意を得て取り付けた造作 |

| 請求時期 | 賃貸借終了時(増価が現存すれば) | 賃貸借終了時 |

| 相手方の選択権 | あり(費用額 or 増価額) | なし(時価での買取義務) |

| 特約で排除 | 可 | 可(借地借家法33条は任意規定)ただし転借人の造作買取請求を排除するには転借人との合意も必要 |

| 賃借人に有利な側面 | 選択権が賃貸人にある→賃借人には不利 | 時価での買取→市場価値がある造作なら有利 |

賃管士として管理受託業務を行う際、契約書の特約欄で「有益費請求権の放棄」「造作買取請求権の排除」が正しく盛り込まれているかの確認は、オーナーの利益保護の観点から重要な実務チェック項目です。

根拠: 民法608条(e-Gov 法令検索)、借地借家法33条(e-Gov 法令検索)。確認日2026-06-10。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法608条(e-Gov 法令検索) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法第64条/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。

執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。

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