第二種電工 電気の基礎理論 問60:電気の基礎理論
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-12)
平衡三相負荷を Y 結線した三相 4 線式回路において、中性線に流れる電流として正しいものはどれか。
- ア各相の線電流の 3 倍
- イ各相の線電流の √3 倍
- ウ各相の線電流と等しい
- エゼロ(0A)正答
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三相平衡(対称)負荷では 3 相の電流が等しい大きさで 120° ずつ位相がずれている。この 3 つの電流をベクトルで足し合わせると、互いに打ち消し合ってゼロになる。中性線(N 線)は 3 相電流の和が流れるが、平衡時はゼロなので中性線に電流は流れない(正答エ)。これが「三相平衡負荷では中性線電流ゼロ」の原則。逆に不平衡になると(各相の負荷が異なると)中性線に電流が流れる。中性線が断線すると三相の電圧バランスが崩れ機器の損傷につながる危険がある。
三相平衡回路の中性線電流を求める問題。
【三相対称電流の和がゼロになる根拠】
3 相の電流フェーザ(平衡三相):
I_a = I∠0°
I_b = I∠(-120°)
I_c = I∠(-240°) = I∠(120°)
中性線電流:I_N = I_a + I_b + I_c
= I[1∠0° + 1∠(-120°) + 1∠(120°)]
= I[(1) + (-0.5 - j0.866) + (-0.5 + j0.866)]
= I[1 - 0.5 - 0.5 + j(-0.866 + 0.866)]
= I[0 + j0]
= 0(正答エ)
平衡三相では 3 相電流の実部の和・虚部の和がともにゼロ → 中性線電流 = 0A
【不平衡時の中性線電流(参考)】
各相の負荷が異なる不平衡三相の場合:
I_N = I_a + I_b + I_c(ベクトル和、ゼロにならない)
例:I_a = 10A、I_b = 5A(同位相、不平衡)の場合は I_N ≠ 0
【中性線の役割と重要性】
①平衡時:I_N = 0(中性線不要)→ 三相 3 線式(中性線なし)でも問題なし
②不平衡時:I_N ≠ 0(中性線が必要)→ 三相 4 線式で中性線を引く
③単相 3 線式(1φ3W):三相 4 線式の 1 相を取り出したもので中性線が重要(kiso_35 参照)
【選択肢の誤答分析】
ア:3 倍 → 直列接続の電流の足し算を誤解した場合
イ:√3 倍 → Δ 結線の線電流公式と混同
ウ:等しい → 同位相の 3 電流を算術和で計算した誤り(120° 位相差を無視)
エ:ゼロ → 正答(ベクトル和がゼロ)
三相平衡系の中性線電流ゼロは、三相電力系統の設計・高調波電流管理・アースの設計に根本的な影響を与える。その物理的意味と実務応用を体系的に整理する。
【対称三相の数学的完全性】
3 相対称電流の和がゼロになるのは、正三角形の頂点に配置したベクトルの和がゼロになるのと同じ。
I_a + I_b + I_c = I∠0° + I∠(-2π/3) + I∠(-4π/3)
= I × [1 + e^(-j2π/3) + e^(-j4π/3)]
= I × [1 + (-0.5 - j√3/2) + (-0.5 + j√3/2)]
= I × 0 = 0
3 つの単位ベクトル(位相が 120° ずつ等間隔)の和がゼロになるのは、等差数列の和(等比数列の条件 r³=1 でない解)から証明できる。
【3 次高調波と中性線電流(実務上の重要注意点)】
非線形負荷(スイッチング電源・LED 照明・インバータ)が多い建物では、電流波形が歪み高調波が発生する。特に 3 次高調波(150Hz = 50Hz×3)は「零相高調波」と呼ばれ、3 相が全て同位相になる。
3 次高調波電流 I_3rd:
I_3rd_a ≠ -I_3rd_b - I_3rd_c(全て同位相なので打ち消されない)
中性線に 3 相分が重畳:I_N_3rd = I_3rd_a + I_3rd_b + I_3rd_c = 3 × I_3rd(3 倍に増大!)
問題点:スイッチング電源が多いデータセンター・オフィスビルでは、中性線に基本波の 1.5〜2.0 倍の電流が流れることがある。→ 中性線の過熱・電線断線の危険。
対策:
①3 次高調波フィルタ(進相コンデンサ + リアクトルの直列共振型フィルタ)を設置
②中性線の許容電流を増大(太い電線に変更、または中性線 2 本配線)
③能動型電力フィルタ(APF)で高調波を打ち消す電流を注入
④Δ-Y 変圧器:3 次高調波電流が Δ ループ内を循環し中性線に流れない
このため、現代の受変電設備では「中性線電流ゼロ」を前提とせず、高調波測定とフィルタ設計が必須になっている。
【中性線断線の危険(不平衡時)】
単相 3 線式(1φ3W)や三相 4 線式で不平衡負荷がある場合、中性線が断線すると:
①各相の電圧バランスが崩れる(中性点電位移動)
②低電力側の負荷に高電圧が印加 → 絶縁破壊・機器焼損
③高電力側の負荷に低電圧が印加 → 不完全動作
住宅の単相 3 線式(100V/200V)で中性線断線:kiso_01 の論点(1000W と 200W の直列接続化)で詳述。電気設備技術基準では引込線・幹線の中性線には開閉器を設けてはならない(断線保護)と規定している。
【零相電流と地絡検出(漏電遮断器の原理)】
漏電遮断器は「零相変流器(ZCT)」で 3 本(または 2 本)の電線を貫通させ、電流の和(零相電流)を検出する。
正常時:I_a + I_b + I_c(+ I_N)= 0(または平衡時 I_N = 0)
地絡時:一部の電流が大地に流れるため I_a + I_b + I_c ≠ 0 → 零相電流が発生 → 漏電遮断器がトリップ
感度電流:30mA(高感度型・人体感電保護用)または 200〜500mA(中感度型・火災保護用)
三相 3 線式の漏電遮断器:3 本の電線を ZCT に貫通させる。
単相 3 線式:3 本(L1、N、L2)を貫通させる(中性線も含める)。
このように「中性線電流ゼロ」は正常動作の基準であり、この条件からの逸脱(中性線電流 ≠ 0)が異常検出のトリガーになる。
【電験三種への接続】
電験三種「理論」:対称三相の計算(中性点電位・零相電流)、不平衡三相(対称座標法・零相・正相・逆相成分)が高難度問題として出題。「電力」:地絡事故の零相電流・零相電流継電器(64)・漏電遮断器の動作原理。「機械」:三相誘導電動機の不平衡電圧による逆相分電流と減磁トルク(逆相制動)。「法規」:地絡保護協調(漏電遮断器の設置義務)。
第二種電気工事士では「平衡三相の中性線電流 = 0」を確実に覚え、理由(3 電流のベクトル和がゼロ)も理解しておくことが基礎。漏電遮断器の動作原理(零相電流検出)への接続を意識すると実務理解が深まる。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:出典:電気技術者試験センター公表の出題範囲(第二種電気工事士試験)を参照した合格ナビ独自作成 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-06-12)。
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執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。