第二種電工 電気の基礎理論 問65:電気の基礎理論
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-12)
レンツの法則に関する説明として、正しいものはどれか。
- アコイルを貫通する磁束が増加するとき、誘導起電力はその磁束を増加させる向きに発生する
- イコイルに発生する誘導起電力の大きさは、磁束の変化速度に比例する
- ウコイルを貫通する磁束が変化するとき、誘導起電力はその変化を妨げる向きに発生する正答
- エ誘導起電力の大きさは、コイルの巻数に反比例する
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠(電気設備技術基準・内線規程・電気工事士法・電気用品安全法)も明記。
レンツの法則とは「誘導起電力(および誘導電流)は、それを引き起こした磁束変化を妨げる向きに発生する」という法則(正答ウ)。具体的には磁束が増えると「増加を妨げる向き」に、磁束が減ると「減少を妨げる向き」に誘起される。この「変化に逆らう」性質のため、ウは正しい。アは「妨げる」を「増加させる」と逆にした誤りで、もしアが正しければコイルが永久に磁束を作り続けるという矛盾が生じる。イはファラデーの法則(大きさに関する説明)で、方向には触れておらずレンツ法則の説明として不完全。
レンツの法則の正誤判定問題。各選択肢を詳細に分析する。
【レンツの法則の定義】
「電磁誘導によって生じる誘導電流(または起電力)は、それを生じさせた磁束の変化を打ち消す(妨げる)方向に流れる(発生する)」
数式では:e = -N × dΦ/dt(マイナス符号がレンツの法則を表す)
【各選択肢の詳細判定】
ア(磁束を増加させる向き):誤り。
レンツの法則は「妨げる向き」= 磁束増加なら減少させる向き。
アが正しければエネルギー保存則に違反(入力なしで磁束が自己増幅し続ける)。
イ(大きさが変化速度に比例):これは「ファラデーの法則」の説明(e = N×dΦ/dt)。
「向き」については触れていないため、「レンツの法則の説明として正しい」とは言えない。
ファラデー法則(大きさ)とレンツ法則(向き)は別の法則。
ウ(変化を妨げる向き):正答。レンツの法則の定義そのもの。
エ(巻数に反比例):誤り。
ファラデーの法則 e = N×dΦ/dt から、誘導起電力は巻数 N に比例(正比例)する。
反比例(N が大きいほど e が小さい)は間違い。
【レンツの法則の物理的意味】
エネルギー保存則の帰結。もし「変化を助ける向き」(アの場合)に起電力が発生すれば、誘導電流が磁束を増やし、さらに大きな起電力が発生するという「永久機関」になる。これはエネルギー保存則に違反するためありえない。「妨げる向き」はエネルギー保存を保証する唯一の方向。
レンツの法則はエネルギー保存則の帰結として電磁制動・変圧器設計・過渡現象の解析に深く関わる。法則の論理的根拠から実務応用まで体系的に整理する。
【レンツの法則とエネルギー保存則の接続】
コイルを通る磁束 Φ が増加したとき(外部磁石が近づく):
- レンツ:誘導電流は「磁束を減らす向き」に流れる → 外部磁石と反発力が発生
- 反発力を押し切って磁石を動かすには「仕事」が必要
- この仕事がコイルの誘導電流として電気エネルギーに変換される(エネルギー保存)
もしアの「磁束を増加させる向き」なら:
- 誘導電流が磁束を増やす → さらに強い誘導電流 → 無限に増大 → 外部エネルギーなしで電流が流れ続ける
- これはエネルギー保存則違反(第二種永久機関)→ 自然界では実現不可能
レンツの法則は「コイルが変化に抵抗する(慣性のような性質)」とも言い換えられる。これは機械的慣性とのアナロジーで理解できる。
【電磁制動(ブレーキとしての利用)】
レンツの法則の「変化を妨げる」性質を積極的にブレーキとして利用:
①渦電流ブレーキ(エディカレントブレーキ):
銅やアルミの金属板(導体)を磁界中で動かすと、金属板内に渦電流が誘起される。
渦電流はレンツの法則により「動きを妨げる向き」の電磁力を金属板に与える。
→ 速度に比例した制動力(摩擦なし・摩耗なし)
用途:電車のブレーキ・計測器の過振れ防止・落下試験機のブレーキ
②誘導電動機の制動(プラッギング):
三相誘導電動機の 2 線を入れ替え(逆相接続)すると、回転磁界が逆転。
ローターの慣性による正転に対して、逆転磁界が「妨げる方向の力」を発生 → 急制動。
ただし停止後はすぐに電源を切らないと逆転開始してしまう。
③変圧器の漏れリアクタンス:
一次コイルの電流変化による磁束変化を、二次コイルがレンツ法則で妨げる。
この「妨げ」が変圧器の漏れリアクタンス(X_k)として回路モデルに現れ、電圧調整率の原因になる。
【スパイク電圧(コイル切断時)とスナバ回路】
インダクタンス L に電流 I が流れているとき、急にスイッチを切ると:
電流をゼロにしようとすると dI/dt が非常に大きくなる → e = -L × dI/dt が急増
→ 開閉器の端子間に高いサージ電圧が発生(数 kV に達することも)
→ 絶縁破壊・半導体素子の破壊
これもレンツの法則の帰結:「電流変化を妨げる向き」の起電力が発生し、電流をゼロにしようとする変化に抵抗する。
スナバ回路(保護回路):
①フライバックダイオード(転流ダイオード):コイルに逆並列に接続し、サージ電流をダイオードに流してエネルギーを消費
②RC スナバ:抵抗+コンデンサで高周波サージを吸収
③バリスタ(ZnO サージアブソーバ):電圧が設定値を超えたとき電流を流してクランプ
【磁気シールドとレンツの法則】
電気機器の近くに磁性体(鉄板・パーマロイ)を置くと、外部磁界の変化を妨げる渦電流が磁性体内に誘起される。この渦電流が作る磁界が外部磁界を打ち消し「磁気シールド」効果を発揮する。
MRI 室・ビデオ編集スタジオ・精密計測室の磁気シールド設計では、多層の磁性体(高透磁率材料:パーマロイ・スーパーパーマロイ・ポリムメタル)を使い、最大 60dB(100 万分の 1 に減衰)の磁界シールドを実現している。
【電験三種への接続】
電験三種「理論」:ファラデーの法則(誘導起電力の大きさ e = N×dΦ/dt)と レンツの法則(向き)を組み合わせた総合的な電磁誘導の計算問題が出題される。特に過渡現象(RL 回路)ではインダクタンスが「電流変化を妨げる」性質(= レンツの法則の回路版)を利用する。「機械」:発電機・電動機の起電力方向(フレミングの右手則・左手則)もレンツの法則と整合的に理解できる。
第二種電気工事士では「レンツの法則 = 変化を妨げる向き」を確実に覚え、ア(増加させる向き)との対比で記憶することが重要。エネルギー保存との接続(変化を助ければ永久機関になる)を理解すると忘れにくくなる。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:出典:電気技術者試験センター公表の出題範囲(第二種電気工事士試験)を参照した合格ナビ独自作成 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-06-12)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・基準は改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 電気技術者試験センター・経済産業省の公式情報をご確認ください。本サイトは電気技術者試験センターと一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。