第二種電工 電気の基礎理論 問78:電気の基礎理論
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-12)
熱電形計器に関する記述として、正しいものはどれか。
- ア直流専用であり、交流の測定には整流回路が必要である
- イ永久磁石の磁界中でコイルを回転させる原理を用いており、目盛りは均等である
- ウ波形が歪んだ交流(非正弦波)でも、真の実効値(True-RMS)を正確に指示できる正答
- エ電磁力で鉄片を吸引する原理を用いており、交直両用で実効値を示す
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熱電形計器は「測定電流が流れるヒーター線の発熱を熱電対で検出し、直流起電力に変換して可動コイル形計器で表示する」計器(正答ウ)。発熱量はヒーターに流れる電流の2乗(I²R)に比例するため、交流・直流いずれでも、また波形が歪んでいても「真の実効値(True-RMS)」を正確に指示できる。アは誤り(交直両用)。イは可動コイル形計器の説明で誤り。エは可動鉄片形計器の説明で誤り。PWMインバータ機器や高調波を含む電流を正確に計測できる点が最大の特徴で、高周波電流の測定にも使われる。
熱電形計器の動作原理と特徴を整理する問題。
【熱電形計器の動作原理】
①測定電流 I がヒーター線(抵抗 R_H)を通過 → 発熱 P = I²R_H [W]
②ヒーター線に接続した熱電対(ゼーベック効果)が発熱量に比例した直流起電力 V_te を発生
③直流起電力 V_te を可動コイル形電流計(mA 計)で測定
④目盛りを実効値換算で表示
測定原理のポイント:
発熱量 P = I²R_H ∝ I²(電流の2乗に比例)
発熱は電流の向きに依存しない → 交流でも直流でも同じ熱量
波形の形(正弦波・矩形波・PWM等)によらず、常に I_rms² × R_H の熱を発生
→ 真の実効値(True-RMS)を自然に指示
【各計器との比較】
| 特性 | 可動コイル形 | 可動鉄片形 | 整流形 | 熱電形 |
|---|---|---|---|---|
| 交直 | 直流専用 | 交直両用 | 交流 | 交直両用 |
| 指示値 | 平均値 | 実効値 | 平均値(実効値表示) | 真の実効値 |
| 波形歪み対応 | NG | 対応可 | 誤差大 | 完全対応 |
| 周波数範囲 | DC | DC〜500Hz | 〜数十kHz | DC〜数十MHz |
【各選択肢の判定】
ア:誤り(交直両用・整流不要)
イ:誤り(可動コイル形の説明)
ウ:正答(True-RMS・波形歪み対応)
エ:誤り(可動鉄片形の説明)
【使用場面】
PWMインバータ出力電流の測定・高周波回路の電流・電圧測定・航空・通信など高周波電力の正確な計測。
熱電形計器の精密設計・ゼーベック効果・高周波測定・True-RMS デジタル計器との比較まで体系的に整理する。
【熱電形計器の詳細設計】
①ヒーター線:
材質:ニッケル-クロム合金(ニクロム)または白金合金
特性:抵抗温度係数が小さく、高温でも安定した抵抗値
形状:細線・短い(熱容量が小さいほど応答が速い)
ヒーター電流:数mA〜数A(計器の定格に依存)
②熱電対(ゼーベック効果):
原理:2種の金属(A・B)の接合部の温度差ΔT → 起電力 V_te = α_AB × ΔT(α:ゼーベック係数)
代表的な熱電対:
Cu-Ni(銅-コンスタンタン):α ≒ 40μV/K(測定器用)
Pt-Pt/Rh(K型):工業計測・高温用
ヒーター線温度 T_H に対して:
T_H ≒ T_room + (I²R_H) / (熱コンダクタンス)
V_te ∝ ΔT = T_H - T_room ∝ I²
→ V_te ∝ I_rms²(True-RMS の根拠)
③可動コイル形電流計(mA 計):
熱電対からの直流起電力を可動コイル形で検流(直流計として動作)
目盛りは I² に比例(非線形 → 電流の低い側が密・高い側が広い)
【高周波特性が優れる理由】
熱電形の動作は「電気エネルギー → 熱 → 起電力」の変換であり、電気的な周波数特性に依存しない:
- 可動コイル形:高周波では表皮効果でコイル抵抗増大・インダクタンスによる位相ずれ
- 可動鉄片形:鉄心の渦電流損・ヒステリシス損で数百 Hz〜kHz で誤差増大
- 熱電形:ヒーター線の熱容量が小さければ GHz まで測定可能(高周波電力計として使用)
測定周波数範囲:
一般熱電形電流計:50Hz〜100kHz(業務用途)
高周波専用熱電形(真空管時代から使用):1MHz〜数百MHz(無線機器の出力電力測定)
【True-RMS の実際的意義】
インバータ機器が普及した現代の電気設備では波形歪みが常態化:
- スイッチング電源:矩形波電流(高調波成分 = 3,5,7,9次…)
- PWMインバータ(空調・ポンプ):変調された電流波形
- LED照明・整流回路:半波整流・全波整流波形
整流形計器(正弦波前提)での測定誤差:
PWM電流(クレストファクタ CF = I_peak/I_rms = 2〜5)を整流形で測定
→ 正弦波(CF=1.41)前提の目盛りのため 20〜50% の誤差
熱電形計器(True-RMS)での測定:
CF = 2〜5 の波形でも正確に実効値を指示 → 消費電力の正確な把握
省エネ設備管理:
実効値電流 × 電源電圧 × 力率 = 有効電力 → 正確な省エネ管理に必須
電力会社への料金計算・デマンド監視でも True-RMS 計器が基本
【熱電形計器の欠点と対策】
①応答速度が遅い:熱容量の大きいヒーター線では応答時定数が数秒 → 瞬時値測定には不向き
②熱容量による過渡誤差:サージ電流・突入電流ではヒーター過熱 → 短時間定格に注意
③過電流による断線:ヒーター線は細く過電流で断線 → 保護ヒューズが必須
④感度が低い:熱電対の起電力は数十mV → 精密な可動コイル形が必要
対策:
ヒーター線を薄膜技術で微細化 → 熱容量低減・応答高速化
真空封止(真空中にヒーターを封入)→ 対流による熱損失を排除・感度向上
【現代の True-RMS デジタル計器との比較】
デジタル True-RMS DMM(フルーク・ヒオキ等):
原理:A/D サンプリング → DSP で RMS = sqrt(1/N × Σv[n]²) を演算
長所:クレストファクタ 3〜10 まで対応・周波数特性 100kHz 以上・数値表示で読み取り誤差ゼロ
短所:電池必要・高周波ノイズの影響・A/D 変換精度に依存
熱電形(アナログ)との比較:
周波数特性:熱電形 ◎ デジタル ○(100kHz 以上は熱電形の優位)
波形歪み対応:同等(両者とも True-RMS)
環境耐性:熱電形 ◎(電子回路なし) デジタル △(EMI・高温に弱い場合あり)
可読性:熱電形 △(目盛り読み取り) デジタル ◎(数値表示)
【電験三種への接続】
電験三種「理論」:各種計器の特性・True-RMS 計器の選択基準・熱電形と整流形の誤差比較が出題される。「法規」:省エネ法のエネルギー計測規定(エネルギー管理士試験でも頻出)。
第二種電気工事士では「熱電形 = 交直両用・真の実効値・高周波対応」の3点を押さえることが基礎。整流形との違い(波形歪みへの対応)が最重要で、インバータ設備の多い現場では「整流形ではなく True-RMS 計器(熱電形またはデジタル True-RMS)を使う」という実務判断に直結する知識。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:出典:電気技術者試験センター公表の出題範囲(第二種電気工事士試験)を参照した合格ナビ独自作成 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-06-12)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・基準は改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 電気技術者試験センター・経済産業省の公式情報をご確認ください。本サイトは電気技術者試験センターと一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。