問題
健康保険における傷病手当金に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はア(正しい記述)です。
傷病手当金の1日あたりの支給額は、原則「支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3」で計算します(健保法第99条第2項)。報酬を受けられる期間は支給されませんが、報酬が傷病手当金の額より少ないときは差額が支給されます(第108条第1項)。
イは誤りで、通算化が導入されたのは2022年1月1日施行(2021年改正)であり、「2016年」は誤りです。
ウは誤りで、待期は労務に服することができなくなった日から起算して連続した3日間です(第99条第1項)。通算3日では待期は完成しません(公休日・有給休暇の日も3日に含まれます)。エは誤りで、労務不能かどうかは療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます(協会けんぽ)。自己申告だけでは決まりません。オは誤りで、任意継続被保険者の期間は継続1年以上の算定に含まれません(第104条)。
傷病手当金の支給要件・計算まとめ(健保法第99条):
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 支給要件 | 疾病・負傷による労務不能 | 健保法第99条 |
| 待期 | 連続した3日間の労務不能(有給・無給・公休含む) | 同条第1項 |
| 支給開始 | 待期完成の翌日(4日目)から | 同条第1項 |
| 支給額 | 直近の継続した12か月の平均標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3 | 同条第2項 |
| 支給期間 | 支給開始日から通算1年6か月 | 同条第4項(2022年1月改正) |
| 報酬との調整 | 報酬を受けられる期間は不支給。報酬が傷病手当金の額より少ないときは差額支給 | 第108条第1項 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 計算式(直近12か月平均 ÷ 30 × 2/3・第99条第2項)と報酬調整(第108条第1項)の仕組みを記述しています。「支給開始日の属する月以前」の直近の継続した12か月が基準となる点が重要です(支給申請日ではない)。標準報酬月額が定められている月が12か月に満たない場合は別の計算(同項ただし書)になるため、肢は「原則として」と書いています。
- イ(誤): 通算化が導入されたのは2022年1月1日(健康保険法等一部改正・2021年6月成立)。2016年は誤り。改正前は「支給開始日から継続して」1年6か月であり、途中で就労できた期間も消化してしまう問題があった。通算化により療養と就労を繰り返しても支給期間が失われなくなった。
- ウ(誤): 待期は「労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から」支給する(第99条第1項)という規定のとおり、連続した3日間の労務不能が必要です。「通算して3日」「連続している必要はない」は誤り。なお、公休日や報酬を受けた日(有給休暇取得日)も待期の3日に算入される一方、報酬を受けた日は第108条第1項の調整により支給額が差額(またはゼロ)になる点が試験の引っかけポイントです。
- エ(誤): 条文の要件は「療養のため労務に服することができないとき」(第99条第1項)で、その判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して保険者が行います(協会けんぽ公表)。療養担当者の意見を考慮せず自己申告のみで決まるわけではありません。
- オ(誤): 継続給付(資格喪失後)の要件の「継続して1年以上被保険者であったこと」には任意継続被保険者の期間は含まれない(健保法第104条)。任意継続は別途の制度であり、強制加入期間のみがカウントされます。
【傷病手当金の計算式の深掘り:「支給開始日以前の直近12か月」の意味】
計算基準となる期間は支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月です。標準報酬月額が定められている月が12か月に満たない場合は、①直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額の30分の1と、②支給開始日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額の平均額を報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の30分の1のうち、少ないほうの3分の2が使われます(健保法第99条第2項ただし書・各号)。ここでいう標準報酬月額は、被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限られます(同項本文括弧書)。
端数処理も条文に定めがあります。30分の1の額は5円未満切捨て・5円以上10円未満は10円に切上げ、その3分の2の額は50銭未満切捨て・50銭以上1円未満は1円に切上げです(同項)。
実務的なポイント:
1. 支給開始日=4日目であり、申請日・診断書作成日とは異なります。待期は「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」で、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれます(協会けんぽ公表)。有給休暇の日は報酬を受けられる日なので、第108条第1項の調整(報酬が少ないときの差額支給)の対象になります。
2. 直近12か月の平均の計算方法: 資格取得後12か月未満の被保険者は上のただし書で計算します。平均の対象は「支給を始める日の属する月以前」の各月なので、申請時期ではなく支給開始日で対象月が決まります。
【2022年改正の意義:通算化の導入背景と試験への影響】
改正前(〜2021年12月31日):「支給開始日から継続して1年6か月」→ がん等の治療中に就労可能な期間があると、その期間も消化してしまい、再度休業しても支給期間が残っていないという問題が生じていました。
改正後(2022年1月1日〜):「支給開始日から通算1年6か月」→ 治療しながら就労(一部就労・時短勤務等)を繰り返す場合でも、実際に傷病手当金を受給した日数が、支給開始日から起算した1年6か月間の日数に達するまで支給が継続されます。
試験での出題ポイント:
- 「通算」と「継続」の区別(2022年改正の核心)
- 「支給開始日以前12か月の平均」(申請日・休業開始日ではない)
- 待期の3日間に有給休暇・公休日が含まれるか(含まれる)
- 報酬との調整(傷病手当金額 > 報酬の場合のみ差額支給)
【資格喪失後の継続給付と任意継続の関係(社労士実務の重要論点)】
健保法第104条の「資格喪失後の継続給付」要件は以下の通りです:
1. 資格喪失の前日まで継続して1年以上被保険者であったこと
- 任意継続被保険者の期間は算入しない(試験の頻出誤肢)
- 転職等で保険者が変わっても、被保険者期間が途切れずに続いていれば通算される(共済組合の組合員である被保険者の期間は除く)
2. 資格喪失前に傷病手当金を受給していた、または受給できる状態(労務不能・待期完成)であったこと
任意継続被保険者は健保の被保険者ではありますが、第104条は「任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者」の期間を「引き続き1年以上」の算定から除いています。また、任意継続被保険者には傷病手当金そのものが支給されません(第99条第1項括弧書)。
【傷病手当金と業務災害との境界:労災との振り分け】
健康保険は労働者の業務災害(労災保険法第7条第1項第1号)以外の疾病・負傷等に関して保険給付を行います(健保法第1条)。通勤災害などで労災保険法等により相当する給付を受けることができる場合も、傷病手当金は行いません(健保法第55条第1項)。
また、出産手当金を支給する期間は傷病手当金は支給されませんが、出産手当金の額が傷病手当金の額(第99条第2項の額)より少ないときはその差額が支給されます(健保法第103条第1項)。出産手当金を支給すべき場合に傷病手当金が支払われたときは、出産手当金の内払とみなされます(同条第2項)。
【報酬との調整の読み方(第108条第1項)】
条文は「報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しない」と定め、ただし書で「その受けることができる報酬の額が…傷病手当金の額より少ないとき」は差額を支給するとしています。本文だけで「報酬があれば不支給」、ただし書を広げて「報酬があれば必ず差額が出る」と、どちらか一方だけで言い切る肢は誤りになりえます。
- 健康保険法第99条・第104条・第1条・第55条・第103条e-Govで原文を読む
- 労働者災害補償保険法第7条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第99条第1項(待期・支給要件)・第2項(額・ただし書)・第4項(通算1年6月)・第104条(継続給付)・第108条第1項(報酬との調整) 確認日2026-09-30(e-Gov 現行条文)・数値は条文値(1/30・2/3・1年6か月・3日) 通算化の施行: 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)・2022年1月1日施行(e-Gov 改正履歴で確認) 出典: e-Gov 健康保険法 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 / 協会けんぽ 傷病手当金 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

