社労士 健康保険法 問6:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
健康保険における任意継続被保険者に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア任意継続被保険者になることができるのは、被保険者資格の喪失日の前日まで継続して2か月以上の被保険者期間があった者であり、資格喪失日から20日以内に申請した場合に限り、任意継続被保険者として加入することができる。
- イ任意継続被保険者の保険料は、被保険者資格喪失時の標準報酬月額(ただし、同一の保険者における全被保険者の平均標準報酬月額を超える場合は、その平均額が用いられる)を基礎として計算され、保険料はすべて本人が全額負担する。
- ウ任意継続被保険者の資格は、被保険者となった日から起算して2年を経過したときに喪失する。これに加え、2022年1月1日以降は「任意継続被保険者が任意脱退を申し出た場合」も喪失事由として追加されており、本人の希望による早期脱退が可能となった。
- エ任意継続被保険者は、在職中の被保険者と同様に、傷病手当金・出産手当金を受給することができる。ただし、資格取得前に傷病手当金の受給を開始していた場合の継続給付は適用される。正答
- オ任意継続被保険者の保険料を所定の納付期日までに納付しなかった場合には、翌日付けで任意継続被保険者の資格を失う。ただし、天災その他保険者が認める正当な理由がある場合は、この限りではない。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「任意継続被保険者は傷病手当金・出産手当金を受給することができる」という部分です。任意継続被保険者は傷病手当金・出産手当金の支給対象外です(健保法第104条の継続給付は除く)。任意継続中に新たに発病しても傷病手当金は支給されません。
ただし、在職中(強制被保険者期間中)から傷病手当金を受給していた場合は、資格喪失後の継続給付として引き続き受給できますが、これは「任意継続被保険者としての権利」ではなく「継続給付(健保法第104条)」として支給されます。
他の選択肢は正しく、要件(2か月以上・20日以内申請)、保険料(全額自己負担)、2022年改正による任意脱退、保険料未納での資格喪失はすべて正確です。
任意継続被保険者の制度まとめ:
| 項目 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 加入要件(被保険者期間) | 資格喪失日の前日まで継続2か月以上 | 健保法第37条 |
| 申請期限 | 資格喪失日から20日以内 | 同条 |
| 保険料算定基礎 | 喪失時の標準報酬月額(平均を超える場合は平均額) | 健保法第47条 |
| 保険料負担 | 全額自己負担(事業主負担なし) | 同条 |
| 加入期間 | 最長2年間 | 健保法第38条第1号 |
| 傷病手当金・出産手当金 | 支給されない(継続給付は別途) | 健保法第104条 |
2022年1月改正で追加された喪失事由:
改正前の喪失事由(任意継続被保険者を途中で離脱する方法)は限られており、就職・保険料未納・死亡・75歳到達等しかありませんでした。2022年1月1日以降、「被保険者が任意継続被保険者でなくなることを申し出た場合(任意脱退)」が喪失事由として追加されました(健保法第38条第5号・2021年法改正)。
各選択肢の解説:
- ア(正): 2か月以上の被保険者期間と、20日以内の申請という2要件は条文通り正確です。「喪失日から」「20日以内」という基準点と期間の把握が重要。
- イ(正): 保険料は「喪失時の標準報酬月額」か「全被保険者の平均標準報酬月額」のうち低い方を用いる(上限は平均額)という仕組み。事業主が保険料を折半していた在職中と異なり、全額本人負担となります(協会けんぽ加入の場合は2倍の負担感)。
- ウ(正): 2022年1月改正で任意脱退(申出による喪失)が可能になりました。これにより、国保や家族の健保に早期に移行したい場合に自由に脱退できるようになり、任意継続の利便性が向上しました。
- エ(誤・正答): 任意継続被保険者は傷病手当金・出産手当金の新規受給はできません。ただし資格喪失前から受給していた場合の継続給付(健保法第104条)は別制度で継続されます。この2つを混同させる誤肢として頻出です。
- オ(正): 保険料の未納は即日(翌日付)での資格喪失につながります(健保法第38条第4号)。天災等の特別な事情は保険者の判断で延長可能ですが、原則は厳格な期限管理です。
【任意継続被保険者制度の位置づけと2022年改正の意義】
任意継続被保険者制度(健保法第37条〜第41条)は、退職後の医療保険のつなぎとして設けられた制度です。退職直後は国民健康保険または任意継続のどちらかを選択できます。制度の選択基準は一般に「保険料の比較」となります。
保険料比較の実務:
| 制度 | 保険料算定基礎 | 事業主負担 | 保険料の特徴 |
|---|---|---|---|
| 任意継続 | 退職時の標準報酬月額(上限あり) | なし(全額自己負担) | 在職中の約2倍・上限で抑えられる場合あり |
| 国民健康保険 | 前年所得・固定資産等 | なし | 高収入者は高負担・市区町村により異なる |
高収入者は任意継続の方が保険料を抑えられる場合がありますが、低収入者(退職直前まで高報酬→低所得に転落)は国保の方が安くなる場合があります。2022年改正前は「一度任意継続に加入すると2年間抜けられない(未納でしか脱退できない)」という不便さがあり、この改正で自由度が増しました。
【任意継続と傷病手当金の関係:継続給付との峻別】
任意継続被保険者が新たに発病した場合の傷病手当金は支給されません。ただし以下の継続給付(健保法第104条)は別扱いです。
継続給付の成立要件(健保法第104条):
1. 資格喪失前に継続して1年以上被保険者であったこと(任意継続期間は算入しない)
2. 資格喪失前に傷病手当金の受給が開始していたこと(または受給できる状態であったこと)
この2要件を満たす場合、資格喪失後も「喪失前からの傷病手当金の残余期間分」(通算1年6か月に達するまで)は継続して受給できます。任意継続に加入していても継続給付を並行受給できますが、任意継続の「被保険者として傷病手当金を受ける」権利はありません。
試験での頻出パターン:
- 「任意継続被保険者は傷病手当金を受給できるか」→ できない(新規受給)
- 「在職中から受給していた傷病手当金は任意継続後も継続されるか」→ 継続給付として受給できる(任意継続の権利ではない)
- この2つを混同させる問題が頻出
【任意継続被保険者の資格喪失事由の全体像(2022年改正後)】
健保法第38条による喪失事由(全5号):
| 号 | 喪失事由 |
|---|---|
| 第1号 | 任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき |
| 第2号 | 保険料を納付期日までに納付しなかったとき(翌日付) |
| 第3号 | 就職等により強制加入被保険者の資格を取得したとき |
| 第4号 | 後期高齢者医療制度の被保険者となったとき(75歳到達) |
| 第5号 | 被保険者が任意継続被保険者でなくなることを申し出たとき(2022年1月追加) |
| — | 死亡したとき |
第5号(任意脱退)の実務的意義: 年途中での国保への切替が自由になり、所得が急減して国保の方が保険料が安い場合(特に任意継続2年目以降)に脱退申出が有効な選択肢となりました。
【高齢者特例:後期高齢者医療制度との境界(社一との接続)】
任意継続被保険者が75歳に到達すると、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に自動的に移行し、任意継続の資格を喪失します(第4号)。70〜74歳の「高齢受給者」期間中も任意継続のまま継続できますが、窓口負担割合が変わります(2割or3割)。この健保→後期高齢者医療への移行は社一の介護保険(65歳以降の保険料徴収変更)とも絡む横断論点です。
【社労士実務:任意継続の手続き代行と離職者支援の実際】
社労士業務では、退職者への任意継続vs国保の選択相談が頻繁に発生します。選択のポイント:
1. 保険料の比較計算(任意継続の上限額と国保の試算)
2. 扶養家族の有無(任意継続なら家族分は扶養で無保険料)
3. 在職中からの傷病手当金・出産手当金の継続給付の有無
4. 再就職見込みの時期(任意継続2年vs就職までの橋渡し期間)
これらを総合的に判断して退職者に助言できる能力が、実務社労士の価値の一つです。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第37条(任意継続被保険者の要件)・第38条(資格喪失)・第100条(給付の制限) 確認日2026-06-07・2022年1月1日施行: 健康保険法等の一部を改正する法律(健保法第38条改正) 出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken11/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。