社労士 健康保険法 問5:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
健康保険における高額療養費制度に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか(令和8年度試験基準日2026年4月10日時点で施行されている制度を前提とする)。
- ア70歳未満の被保険者の高額療養費の自己負担限度額は、標準報酬月額に応じた5区分に分かれており、その中で最も高い区分(標準報酬月額83万円以上)の限度額は252,600円+(医療費-842,000円)×1%の算式で計算され、多数該当の場合の限度額は93,000円となる。正答
- イ70歳以上の被保険者の高額療養費における「現役並み所得者」の区分は3段階に分かれており、最も高い区分(標準報酬月額83万円以上)にはそれぞれ固有の限度額(252,600円+(医療費-842,000円)×1%)が適用される一方、一般区分の限度額が適用されるわけではない。
- ウ同一の月内に同一の保険医療機関で複数の診療科を受診した場合、診療科にかかわらず合算して自己負担額を計算し、1つの限度額を超えた分が高額療養費として支給される(医科・歯科は別計算)。
- エ高額療養費の世帯合算は、同一の保険者に属する同一の被保険者(および当該被保険者の被扶養者)を1つの「世帯」とし、同一月内に複数の受診(入院・外来)があった場合、それぞれの自己負担額(70歳未満は1レセプト21,000円以上のもののみ)を合算して自己負担限度額を超えた分が支給される。
- オ高額療養費には「多数該当」の規定があり、直近12か月以内に高額療養費の支給を3回以上受けた月がある場合、4回目以降の自己負担限度額は一般区分(標準報酬月額28〜50万円)の場合に月額44,400円に引き下げられる。
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正答はア(誤っている記述)です。
選択肢アの「多数該当の場合の限度額は93,000円」が誤りです。区分アの多数該当限度額は140,100円であり、93,000円は区分イ(標準報酬月額53〜79万円・年収約770〜1,160万円)の多数該当額です(健保法施行令第41条)。区分アの通常限度額の計算式「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」は正しいですが、多数該当額の混同が試験頻出の誤肢パターンです。
イは正しく、70歳以上の現役並み所得者3区分にはそれぞれ固有の限度額が設定され、最高区分は70歳未満の区分アと同じ計算式が適用されます。ウ・エ・オも厚労省告示・施行令の規定通りで正しい記述です。
高額療養費 70歳未満の自己負担限度額(現行5区分・令和8年度試験基準日時点・厚労省告示突合済):
| 区分 | 標準報酬月額 | 通常限度額(月額) | 多数該当限度額 |
|---|---|---|---|
| ア | 83万円以上(年収約1,160万円以上) | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
| イ | 53〜79万円(年収約770〜1,160万円) | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ | 28〜50万円(年収約370〜770万円)【一般】 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
| エ | 26万円以下(年収約370万円未満) | 57,600円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税世帯 | 35,400円 | 24,600円 |
各選択肢の解説:
- ア(誤・正答): 区分アの通常限度額の計算式「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」は正しい数値ですが、多数該当限度額は140,100円であり、設問の「93,000円」は誤りです(93,000円は区分イの多数該当額)。試験では「区分アの多数該当額」「区分イの多数該当額」を混同させる誤肢が頻出します。
- イ(正): 70歳以上の現役並み所得者は3区分(現役並みⅢ:標準報酬月額83万円以上・Ⅱ:53〜79万円・Ⅰ:28〜50万円)に分かれ、それぞれ70歳未満の区分ア・イ・ウと同じ計算式が適用されます。一般区分の限度額(外来18,000円・入院57,600円)が適用されるわけではありません。
- ウ(正): 同一医療機関内では診療科を問わず合算されます(医科・歯科は別計算)。「診療科ごとに自己負担限度額が計算される」は誤りですが、設問ウは「同一医療機関内であれば合算」と最終的に正しい結論を述べているため正しい記述です。なお異なる医療機関(外来と入院が別施設)は別々に計算されます。
- エ(正): 世帯合算は「同一の保険者に属する同一の被保険者を起点とした世帯」(被保険者本人+その被扶養者)が対象。70歳未満は1レセプト21,000円以上のもののみ合算対象(施行令第41条の2)。共働き夫婦のように被保険者が2人いる場合は別世帯として合算不可。
- オ(正): 多数該当とは「直近12か月以内に高額療養費の支給を3回以上受けた月がある場合の4回目以降」に適用される規定。一般区分(区分ウ)の多数該当限度額は44,400円。設問オは正確な記述です。
【高額療養費制度の立法趣旨と「自己負担限度額」の制度設計】
高額療養費(健保法第115条)は、同一月内の医療費が一定額を超えた場合に、その超過分を保険者が給付する制度です。日本の医療保険の「自己負担割合(3割)」だけでは、重大疾病(がん・心疾患・脳卒中等)の長期入院時に1か月で数十万円の負担が生じうるため、上限を設けることで「家計の破滅的な医療費負担を防ぐ」ことが目的です。
制度の核心:「同一の月(暦月)」の計算
高額療養費は「月単位」で計算されます。入院が月をまたぐ場合は、それぞれの月ごとに別計算となります。月末の入院より月初の入院の方が「1か月の限度額を超えやすい」という実務的な知識も試験に絡みます。
70歳未満の区分(現行5区分)と「世帯合算」の実務:
70歳未満で同一世帯に複数の被保険者・被扶養者がいる場合の合算要件は、「同一月に21,000円以上の自己負担が発生したレセプトのみ合算対象」(健康保険法施行令第41条の2)という制限があります。この21,000円ルールは試験頻出の引っかけ問題の素材になります(「全額を合算する」という誤肢が出る)。
多数該当制度の詳細:
| タイミング | 適用要件 | 効果 |
|---|---|---|
| 通常 | 当月 | 通常の自己負担限度額 |
| 多数該当(4回目以降) | 直近12か月に3回以上支給実績あり | 引き下げた限度額が適用(例:一般区分→44,400円) |
「直近12か月に3回以上の支給実績」が要件であり、4回目(通算3回を超えた月)から自動的に低い限度額が適用されます。試験では「4回以上受けた場合の4回目から」のように出題されることがあり、「3回以上の支給実績を持つ月の翌月(すなわち4回目の支給月)から」という時点の確認が重要です。
【2026年8月施行の高額療養費見直し(令和8年度試験対象外)の概要】
KOUGAKU_RYOYOUHI_REVISION_DATE: 2026-08-01施行・valid_for_exam=false。
令和8年度試験(法令基準日2026-04-10)時点では未施行のため出題対象外ですが、令和9年度以降の試験では見直し後の区分が出題対象になります。見直しの方向性(区分の整理・高所得者の負担引上げ等)は、社労士実務としては把握が必要です。
【高額療養費と傷病手当金・各種給付との関係】
高額療養費は医療費の「自己負担分の超過額を後から支給」する給付であり、傷病手当金(休業補償)とは性格が異なります。両方同時に受給することも可能で、医療費が高額で仕事も休んでいる場合には両制度が併用されます。
70歳以上の特例(高齢受給者の取扱い):
70歳以上は現役並み所得者(3段階)と一般・低所得の区分に分かれ、外来の自己負担上限額も設定されます(世帯合算の前に外来上限を適用)。特に「後期高齢者医療制度(75歳以上)」との境界(70〜74歳=高齢受給者証の交付・健保適用のまま)は、上位資格(特定社労士)や社一の論点とも絡む重要ポイントです。
【上位資格への接続:医療費の増大と公的医療保険の持続可能性】
高額療養費制度は日本の公的医療保険の「セーフティネット」として機能していますが、高齢化による医療費増大に伴い、2026年8月以降の区分見直しが予定されています。社労士実務・人事実務では「従業員への医療費高額化の周知義務(健保法の周知義務)」「限度額適用認定証の事前発行(窓口での一時立替を回避)」が重要な業務です。限度額適用認定証の申請手続きを従業員に案内できるかどうかは、実務社労士のスキルとして問われる場面があります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第115条(高額療養費)・健康保険法施行令第41条〜第43条(自己負担限度額の算定) 確認日2026-06-07・令和8年度試験基準日時点の現行区分(厚労省・協会けんぽ公表値で突合済) 高額療養費2026-08見直し: 有効日 2026-08-01・valid_for_exam=false(令和8年度試験は対象外) 出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。