問題
健康保険における高額療養費制度に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか(2026年10月1日時点で施行されている制度を前提とする)。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はア(誤っている記述)です。
選択肢アの「多数該当の場合の限度額は93,000円」が誤りです。区分アの多数該当限度額は140,100円であり、93,000円は区分イ(標準報酬月額53〜79万円・年収約770〜1,160万円)の多数該当額です(健保法施行令第42条)。区分アの通常限度額の計算式「270,300円+(医療費-901,000円)×1%」(2026年8月1日改正後)は正しいですが、多数該当額の混同が試験頻出の誤肢パターンです。
イは正しく、70歳以上の現役並み所得者3区分にはそれぞれ固有の限度額が設定され、最高区分は70歳未満の区分アと同じ計算式が適用されます。ウ・エ・オも健保法施行令(第41条・第42条・第43条)の規定通りで正しい記述です。
高額療養費 70歳未満の自己負担限度額(5区分・2026年8月1日改正後・施行令第42条第1項):
| 区分 | 標準報酬月額 | 通常限度額(月額) | 多数該当限度額 |
|---|---|---|---|
| ア | 83万円以上(年収約1,160万円以上) | 270,300円+(医療費-901,000円)×1% | 140,100円 |
| イ | 53〜79万円(年収約770〜1,160万円) | 179,100円+(医療費-597,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ | 28〜50万円(年収約370〜770万円)【一般】 | 85,800円+(医療費-286,000円)×1% | 44,400円 |
| エ | 26万円以下(年収約370万円未満) | 61,500円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税世帯 | 36,900円 | 24,600円 |
※改正前(2026年7月まで)は区分ア252,600円+(医療費-842,000円)×1%・イ167,400円+(医療費-558,000円)×1%・ウ80,100円+(医療費-267,000円)×1%・エ57,600円・オ35,400円。多数該当額は据置き。
各選択肢の解説:
- ア(誤・正答): 区分アの通常限度額の計算式「270,300円+(医療費-901,000円)×1%」は正しい数値ですが、多数該当限度額は140,100円であり、設問の「93,000円」は誤りです(93,000円は区分イの多数該当額)。試験では「区分アの多数該当額」「区分イの多数該当額」を混同させる誤肢が頻出します。
- イ(正): 70歳以上の現役並み所得者は3区分(現役並みⅢ:標準報酬月額83万円以上・Ⅱ:53〜79万円・Ⅰ:28〜50万円)に分かれ、それぞれ70歳未満の区分ア・イ・ウと同じ計算式が適用されます。一般区分の限度額(2026年8月1日から外来〔個人〕22,000円・世帯61,500円)が適用されるわけではありません。
- ウ(正): 高額療養費は「同一の月にそれぞれ一の病院等から受けた療養」を単位に計算するので(施行令第41条第1項)、同一医療機関内であれば診療科を問わず1つにまとめます。ただし、歯科診療とそれ以外の診療を併せ行う保険医療機関は、それぞれ別個の保険医療機関とみなされます(施行令第43条第9項)。入院とそれ以外の療養も別個の保険医療機関から受けたものとみなされます(同条第10項)。
- エ(正): 世帯合算は「同一の保険者に属する同一の被保険者を起点とした世帯」(被保険者本人+その被扶養者)が対象。70歳未満は1レセプト21,000円以上のもののみ合算対象(施行令第41条第1項)。共働き夫婦のように被保険者が2人いる場合は別世帯として合算不可。
- オ(正): 多数該当とは「直近12か月以内に高額療養費の支給を3回以上受けた月がある場合の4回目以降」に適用される規定。一般区分(区分ウ)の多数該当限度額は44,400円。設問オは正確な記述です。
【高額療養費制度の立法趣旨と「自己負担限度額」の制度設計】
高額療養費(健保法第115条)は、同一月内の医療費が一定額を超えた場合に、その超過分を保険者が給付する制度です。日本の医療保険の「自己負担割合(3割)」だけでは、重大疾病(がん・心疾患・脳卒中等)の長期入院時に1か月で数十万円の負担が生じうるため、上限を設けることで「家計の破滅的な医療費負担を防ぐ」ことが目的です。
制度の核心:「同一の月(暦月)」の計算
高額療養費は「月単位」で計算されます。入院が月をまたぐ場合は、それぞれの月ごとに別計算となります。月末の入院より月初の入院の方が「1か月の限度額を超えやすい」という実務的な知識も試験に絡みます。
70歳未満の区分(現行5区分)と「世帯合算」の実務:
70歳未満で同一世帯に複数の被保険者・被扶養者がいる場合の合算要件は、「同一月に21,000円以上の自己負担が発生したレセプトのみ合算対象」(健康保険法施行令第41条第1項)という制限があります。この21,000円ルールは試験頻出の引っかけ問題の素材になります(「全額を合算する」という誤肢が出る)。
多数該当制度の詳細:
| タイミング | 適用要件 | 効果 |
|---|---|---|
| 通常 | 当月 | 通常の自己負担限度額 |
| 多数該当(4回目以降) | 直近12か月に3回以上支給実績あり | 引き下げた限度額が適用(例:一般区分→44,400円) |
「直近12か月に3回以上の支給実績」が要件であり、4回目(通算3回を超えた月)から自動的に低い限度額が適用されます。試験では「4回以上受けた場合の4回目から」のように出題されることがあり、「3回以上の支給実績を持つ月の翌月(すなわち4回目の支給月)から」という時点の確認が重要です。
【2026年8月施行の高額療養費見直しの概要】
高額療養費の自己負担限度額の見直しは、2026年8月1日に施行されました。
令和8年度試験(令和8年4月10日時点の法令が基準)では未施行のため出題対象外でしたが、令和9年度試験では施行済みの制度です。厚生労働省の公表(2026年7月31日更新)では、見直しは令和8年8月と令和9年8月の2段階で実施され、令和8年8月に月額の上限額の見直しと年単位の上限額(年間上限)の新設、令和9年8月に所得区分の細分化と年収200万円未満の課税世帯の多数回該当の額の引下げを行い、それ以外の多数回該当の額は維持するとされています。e-Gov の現行の健保法施行令第42条第1項(2026年9月確認)では、70歳未満の定額部分が区分ア270,300円・区分イ179,100円・区分ウ85,800円・区分エ61,500円・区分オ36,900円に改められ、多数回該当(140,100円・93,000円・44,400円・24,600円)は据え置かれています。本問の選択肢と標準解説の表は、この改正後の額で作っています。
【高額療養費と傷病手当金・各種給付との関係】
高額療養費は医療費の「自己負担分の超過額を後から支給」する給付であり、傷病手当金(休業補償)とは性格が異なります。両方同時に受給することも可能で、医療費が高額で仕事も休んでいる場合には両制度が併用されます。
70歳以上の特例(高齢受給者の取扱い):
70歳以上は現役並み所得者(3段階)と一般・低所得の区分に分かれ、外来の自己負担上限額も設定されます(世帯合算の前に外来上限を適用)。特に「後期高齢者医療制度(75歳以上)」との境界(70〜74歳は健保の被保険者のまま、一部負担金の割合が変わる=健保法第74条第1項第2号・第3号)は、社一の論点とも絡む重要ポイントです。
【上位資格への接続:医療費の増大と公的医療保険の持続可能性】
高額療養費制度は日本の公的医療保険の「セーフティネット」として機能していますが、2026年8月から段階的な見直しが実施されています。実務では、窓口での支払いを限度額までにとどめる方法(マイナ保険証の利用や限度額適用認定証)を従業員に案内する場面があります。
- 健康保険法第115条・第74条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第115条(高額療養費)・健康保険法施行令第41条(支給要件・世帯合算の21,000円要件は同条第1項)・第42条(高額療養費算定基準額)・第43条第9項(医科・歯科を別の保険医療機関とみなす)・第10項(入院とそれ以外を別とみなす) 確認日2026-06-07(改正前の額)・2026-09-30(e-Gov 施行令第42条 2026-08-01施行版で改正後の額) 高額療養費の見直しは2026年8月1日施行(令和8年度試験の範囲外、令和9年度試験では施行済み) 出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

