社労士 健康保険法 問7:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
健康保険における被扶養者の認定に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア被扶養者の年間収入の認定基準は、被保険者と同一世帯に属する者については年間130万円未満(60歳以上または障害者は年間180万円未満)であり、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であることが必要とされている。
- イ被保険者と別居している場合に被扶養者として認定されるためには、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であり、かつその収入が被保険者からの仕送り額を超えないことが必要である。正答
- ウ被保険者の直系尊属(父母・祖父母等)・配偶者(内縁関係を含む)・子・孫・兄弟姉妹は、主として被保険者により生計を維持されていれば、必ずしも同一世帯に属していなくても被扶養者として認定される(兄弟姉妹については平成28年10月の改正で同一世帯要件が撤廃されている)。
- エ健康保険の被保険者となっていない短時間労働者(雇用保険のみ加入する者など)は、年収130万円未満等の基準を満たせば他の家族の健康保険の被扶養者として認定される可能性がある。一方、健康保険の被保険者となっている者は、たとえ収入が低くても他者の被扶養者にはなれない。
- オ年収が130万円未満の基準を満たしていても、「主として被保険者の収入によって生計を維持されていること」という実態要件を保険者が判断するため、同居の親族であっても事実上の扶養実態がなければ被扶養者と認定されない場合がある。また、令和2年4月以降は原則として日本国内に住所を有することも被扶養者認定の要件となっている。
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正答はイ(誤っている記述)です。
イの誤りは別居の場合の収入要件の記述にあります。健保法上の別居被扶養者の認定要件は、年間収入が130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)であり、かつその収入額が被保険者からの仕送り額より少ない(下回る)ことが必要です。設問イでは「仕送り額を超えないこと」(=仕送り額と同額でも可)とありますが、正確には「仕送り額未満」(被保険者の援助額が本人収入を上回ること)が要件であり、援助が生活費の主たる収入源であることを意味します。
なお、ウは正しい記述です。兄弟姉妹の同一世帯要件は平成28年10月の改正で撤廃されており、現行制度では別居でも生計維持関係が認められれば被扶養者となれます。
被扶養者の範囲と同一世帯要件(健保法第3条第7項・平成28年10月以降):
| 続柄区分 | 同一世帯の要否 | 年収要件 |
|---|---|---|
| 直系尊属(父母・祖父母)・配偶者(内縁含む)・子・孫・兄弟姉妹 | 不要(別居可) | 130万円未満(60歳以上・障害者: 180万円未満) |
| 上記以外の三親等内の親族(義父母・甥姪・配偶者の父母等) | 必要(同一世帯) | 同上 |
| 上記以外(友人・同居人等) | 認定不可 | — |
兄弟姉妹はかつて同一世帯要件が必要でしたが、平成28年10月1日施行の改正により撤廃されました。試験では「兄弟姉妹は同居が必要」という古い知識を誤肢として使う問題が要注意です。
各選択肢の解説:
- ア(正): 同一世帯の場合の年収基準(130万円未満・60歳以上または障害者は180万円未満)は条文通り。加えて「被保険者の年間収入の2分の1未満」という比較要件も正確です。
- イ(誤・正答): 別居被扶養者の収入要件は「年収が仕送り額より少ないこと(仕送り額未満であること)」が正確です。設問イの「仕送り額を超えないこと」だと「仕送り額と同額でも可」と読めるため不正確。実務でも被保険者の援助が本人の収入を上回っていることを示す仕送り証明(毎月54,000円以上等の定期送金記録)が要求されます。
- ウ(正): 直系尊属・配偶者(内縁含む)・子・孫・兄弟姉妹は同一世帯不要(別居可)。平成28年10月の改正で兄弟姉妹の同居要件が撤廃されました(保保発0930第5号通知)。内縁の配偶者が「配偶者」に含まれる扱いも正しい。
- エ(正): 健保の被保険者となっていない者(雇用保険加入のみのパート等)が年収要件等を満たせば他者の被扶養者になれることは正しい。健保の強制被保険者・任意継続被保険者はその地位から直接保護されているため他者の扶養に入ることはできません。
- オ(正): 「主として被保険者の収入によって生計を維持」という実態要件は、年収要件と独立して保険者が判断します。同居の親族でも実質的な経済的依存関係がなければ認定されない場合があります(例:同居の親が相当額の年金を受給し独立した生計を営んでいる場合)。令和2年4月以降は原則として日本国内に住所を有することも要件(健保法第3条第7項本文)となりました(一部例外あり:留学生・海外赴任に同行する家族等)。
【被扶養者認定制度の構造:2層の要件(法律上の範囲×収入・扶養実態)】
健保法第3条第7項では、被扶養者の認定は「続柄(第7項各号に掲げる者)」と「生計維持関係」の2層で規定されています。
第1層(続柄要件):
- 第1号: 被保険者の直系尊属・配偶者(届出なし内縁含む)・子・孫・兄弟姉妹で「主として被保険者が生計を維持する者」(同一世帯要件なし)
- 第2号・第3号: 上記以外の三親等内親族で「主として被保険者が生計を維持し、かつ同一世帯に属する者」
第2層(収入・扶養実態):
- 年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)
- 別居の場合は収入が仕送り額未満であること(仕送りが生活費の主たる収入源)
- 被保険者の年収の1/2未満(実務上の参考基準・法令上の明示は内規)
- 原則として日本国内居住要件(令和2年4月施行)
兄弟姉妹の同一世帯要件撤廃(平成28年10月)の背景:
改正前は兄弟姉妹は「同一世帯」要件が課されていましたが、平成28年10月1日施行の改正(保保発0930第5号通知)により、直系尊属・配偶者・子・孫と同じく同一世帯不要のカテゴリに統合されました。背景は、高齢化により兄姉が遠隔地に居住する弟妹を扶養するケース(親亡き後の障害をもつ兄弟姉妹の扶養等)への対応です。試験では「兄弟姉妹は同居が必要」という古い知識が誤肢として頻出します。
【年収の壁対応措置(2023年10月〜)とその影響】
2023年10月、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表し、被扶養者認定に関する以下の特例措置を導入しました:
1. 被扶養者認定の柔軟化: 社会保険の適用拡大により新たに健保の被保険者となった場合でも、「一時的に」収入が130万円を超えた場合(繁忙期の残業等の一時的収入増)は、事業主証明があれば被扶養者の地位を喪失しないとする運用が可能に。
2. 「106万円の壁」との関係: 週20時間以上・月収8.8万円以上等(健保の被保険者となる要件・適用拡大)を満たすと、本人が健保・厚年の被保険者となり被扶養者から外れます(2026年10月に賃金要件撤廃予定・valid_for_exam=false)。
これらの特例措置は令和8年度試験に出題される可能性があり、社一(適用拡大)との横断整理が重要です。
【内縁配偶者の被扶養者認定の実務】
法律上の婚姻届がない内縁の配偶者であっても、健保の被扶養者として認定される条件:
1. 内縁関係の実態があること(同居・生計同一等)
2. 法律婚の障壁がないこと(他に法律上の配偶者がいない等)
3. 年収要件を満たすこと
保険者(協会けんぽ)は内縁関係を示す証明書(住民票の続柄・生計同一申告書等)の提出を求めます。これは社労士業務の「被扶養者認定相談・申請代行」の典型的な業務です。
【被扶養者の収入「130万円」:確認すべき収入の範囲】
試験での「年収130万円」に含まれる収入の範囲は以下の通りです:
- 給与収入(アルバイト・パート含む)
- 雇用保険の基本手当(失業給付)・傷病手当金・出産手当金
- 各種年金(老齢・障害・遺族年金含む)
- 配当所得・不動産所得
実務では失業給付受給中の被扶養者は「130万円換算で日額3,612円(年130万÷360)超の基本手当日額を受給する場合は除外する」という運用基準があります(協会けんぽの内規)。この「日額換算」は社労士実務の手続きでよく問題になります。
【上位資格への接続:年金と健保の被扶養者認定の連動(第3号被保険者問題)】
健保の被扶養者(第3条第7項)と国年の第3号被保険者(国年法第7条第1項第3号)は連動しています。健保の被扶養者に認定されている「20歳以上60歳未満の配偶者」は、国年の第3号被保険者として保険料負担なしで基礎年金を取得できます。この連動関係は社労士試験での横断論点(健保×国年)として非常に重要であり、「年収の壁」問題が社会的に注目される背景の一つでもあります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第3条第7項(被扶養者の定義・国内居住要件)・健康保険法施行規則第37条の2・協会けんぽ被扶養者認定基準 確認日2026-06-07・年収の壁支援対策: 厚労省通達(2023年10月以降の特例措置) 平成28年10月改正: 兄姉の同一世帯要件撤廃(保保発0930第5号通知) 令和2年4月改正: 国内居住要件追加(健康保険法等の一部を改正する法律) 出典: 全国健康保険協会 被扶養者の認定基準 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。