問題
健康保険における出産に関する給付(出産育児一時金・出産手当金)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「報酬の額が出産手当金の額より少ないときであっても、出産手当金は一切支給されない」という部分です。健保法第108条第2項は、報酬を受けることができる期間は出産手当金を支給しないとしつつ、ただし書で「その受けることができる報酬の額が、出産手当金の額より少ないときは、その差額を支給する」と定めています。報酬が少なければ差額が支給されます。
他の選択肢は全て正しい記述です。出産育児一時金は産科医療補償制度の対象となる出産で1児50万円(ア)、出産手当金の支給期間は産前42日・産後56日(イ)、計算式は原則として傷病手当金と同じ直近12か月平均÷30×2/3(ウ)、オは第108条第2項ただし書のとおりです。
出産に関する2つの給付の比較表(必須暗記):
| 項目 | 出産育児一時金 | 出産手当金 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 健保法第101条 | 健保法第102条 |
| 対象 | 被保険者が出産 | 被保険者が労務不能(産休) |
| 支給額 | 1児につき50万円(産科医療補償制度の対象となる出産。それ以外は48.8万円) | 標準報酬日額 × 2/3(日割り) |
| 支給期間 | — | 産前42日(多胎98日)〜産後56日 |
| 被扶養者版 | 家族出産育児一時金(同額・健保法第114条) | なし(被扶養者には不支給) |
| 報酬との調整 | なし | 報酬を受けられる期間は不支給。報酬が手当金より少なければ差額支給 |
| 計算式 | — | 原則:直近12か月平均標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 出産育児一時金の額は政令で定める額で(健保法第101条)、施行令第36条は本則を48万8千円とし、産科医療補償の保険契約等の要件を満たす病院等による医学的管理の下の出産と保険者が認めるときは3万円以内で保険者が定める額を加算するとしています。肢は「産科医療補償制度の対象となる出産であれば50万円」と限定しているので正しい。家族出産育児一時金(第114条)も「第百一条の政令で定める金額」を被保険者に支給するもので、制度上別立ての給付であることも正しい。
- イ(正): 産前42日(多胎妊娠の場合は98日)・産後56日が支給対象期間。「出産が予定日後である場合は予定日からカウント」という点が試験の頻出ポイント。出産予定日を超えて在胎した場合、産前部分は予定日前42日分が保障される。
- ウ(正): 出産手当金の額は第99条第2項・第3項を準用する(第102条第2項)ので、傷病手当金と同一の「直近12か月平均標準報酬月額÷30×2/3」。標準報酬月額が定められている月が12か月に満たない場合は第99条第2項ただし書の計算になるため、肢は「原則として」と書いています。
- エ(誤・正答): 第108条第2項は本文で「報酬を受けることができる期間は出産手当金を支給しない」、ただし書で「報酬の額が出産手当金の額より少ないときは、その差額を支給する」と定めます。「少ないときであっても一切支給されない」はただし書に反し誤り。報酬の額が出産手当金の額以上なら、その期間は支給されません。
- オ(正): 第108条第2項ただし書のとおり。産前産後休業中に事業主が給与の一部を支払う場合は、この調整計算になります。
【出産育児一時金50万円への引上げと直接支払制度の実務的意義】
出産育児一時金は令和5年(2023年)4月1日から42万円→50万円に引き上げられました(健康保険法施行令第36条の改正)。背景は分娩費用の上昇への対応です。
直接支払制度(法律の条文ではなく、厚生労働省の通知に基づく支払の仕組み):
出産費用が50万円を超えた場合は差額を被保険者が自己負担しますが、50万円以下の場合は差額が被保険者に払い戻されます。一般的には出産施設が保険者に直接請求する「直接支払制度」が普及しており、被保険者が一時的に大金を立て替える必要がなくなっています。
試験では「直接支払制度を利用しない場合の手続き」や「50万円の内訳(産科医療補償制度加算の有無)」が論点になることがあります。
【産前産後期間の計算(42日・98日・56日)の正確な把握】
| 区分 | 産前 | 産後 |
|---|---|---|
| 単胎妊娠 | 出産日または予定日以前42日(6週間) | 出産日後56日(8週間) |
| 多胎妊娠(双子以上) | 出産日または予定日以前98日(14週間) | 出産日後56日(変わらず) |
試験での引っかけポイント:
1. 「出産が予定日後になった場合」→ 産前の始期は予定日前42日から計算し、実際の出産日まで延長される(超過分も支給対象)
2. 産後56日は出産日を含まず翌日から計算(民法の期間計算原則)
3. 「産後56日」とは、出産後8週間の母体保護期間(労基法第65条第2項とも対応)
【出産手当金と傷病手当金の重複調整(健保法第103条)】
出産前後に疾病(切迫早産・妊娠高血圧症候群等)を発症した場合、傷病手当金と出産手当金が重複する期間の取扱いが問題になります。
原則: 出産手当金を支給する期間は、傷病手当金は支給しない(健保法第103条第1項本文)。
ただし: 出産手当金の額が傷病手当金の額(第99条第2項の額)より少ないときは、その差額が傷病手当金として支給されます(同項ただし書)。また、出産手当金を支給すべき期間に傷病手当金が支払われたときは、出産手当金の内払とみなされます(同条第2項)。「差額も出ない」とする肢は誤りです。
【育児休業給付との接続(雇用保険法との交差点)】
出産手当金は健康保険法の給付(産前産後休業中)、育児休業給付金は雇用保険法の給付(育児休業中)と、制度が異なります。混同しやすい点をまとめます。
| 項目 | 出産手当金(健保) | 育児休業給付金(雇用保険) |
|---|---|---|
| 期間 | 産前42日〜産後56日 | 産後57日〜最大2歳(延長含む) |
| 支給率 | 2/3(直近12か月平均) | 当初6か月は67%、以降50% |
| 根拠法 | 健康保険法第102条 | 雇用保険法第61条の7 |
| 支給する機関 | 全国健康保険協会(支部)・健康保険組合 | ハローワーク |
産後パパ育休(出生時育児休業:2022年10月施行)中の給付金(出生時育児休業給付金・雇用保険)が新設されたことにより、産後56日以内の期間に健保の出産手当金と雇用保険の出生時育児休業給付金が交差する場面が生じました。これは令和8年度試験で社一や労一と連動する横断論点として出題可能性があります。
【家族出産育児一時金と組合健保の付加給付】
組合健保(企業健保)では、法定の50万円に加えて付加給付(自社独自の上乗せ)を行う場合があります。協会けんぽには付加給付制度はありません。この違いも保険者(協会けんぽ vs 組合健保)の特徴として問われる論点です。
また、令和5年4月以降の取扱いは、産科医療補償制度の対象となる出産(在胎週数22週以降の出産)については原則50万円(本人支給48.8万円+補償制度の掛金1.2万円)、未加入の分娩機関での出産・妊娠22週未満の早期出産等については48.8万円となります(令和4年1月以降の掛金は1児あたり12,000円)。厚労省保険局公表値・協会けんぽ広報で確認済(2026-06-07)。
- 健康保険法第108条・第101条・第102条・第114条・第103条e-Govで原文を読む
- 民法e-Govで原文を読む
- 労働基準法第65条e-Govで原文を読む
- 雇用保険法第61条の7e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第101条(出産育児一時金)・第102条(出産手当金)・第108条第2項(報酬との調整)・第103条(傷病手当金との調整)・第114条(家族出産育児一時金)、健康保険法施行令第36条(出産育児一時金の金額=48万8千円+3万円を超えない範囲で保険者が定める加算額) 確認日2026-06-07・出産育児一時金50万円: 令和5年4月1日施行(健康保険法施行令改正) 出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/syussan/index.html e-Gov 健康保険法 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 / 健康保険法施行令第36条 https://laws.e-gov.go.jp/law/215IO0000000243 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

