社労士 健康保険法 問4:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
健康保険における出産に関する給付(出産育児一時金・出産手当金)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア出産育児一時金は、被保険者が出産した場合に1児につき50万円が支給される。被扶養者が出産した場合には「家族出産育児一時金」として同額(50万円)が支給されるが、これは被保険者本人の出産育児一時金とは別途の給付として位置づけられる。
- イ出産手当金の支給期間は、出産の日(出産が予定日後である場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日までの期間のうち、労務に服さなかった日について支給される。
- ウ出産手当金の1日あたりの支給額は、支給開始日以前の直近12か月の各標準報酬月額を平均した額を30で除した額の3分の2に相当する額であり、傷病手当金と同じ計算式が適用される。
- エ出産手当金の受給中に被保険者が産前産後休業から復職して一部でも報酬を受けた場合には、出産手当金は支給されない。出産手当金の額が報酬の額を超えている場合は差額が支給される。正答
- オ被保険者が出産のために会社を休んだが、その間に事業主から報酬(給与)が支払われた場合には、その報酬の額が出産手当金の額を下回る限りにおいて、差額分の出産手当金が支給される。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「出産手当金の受給中に一部でも報酬を受けた場合には、出産手当金は支給されない」という部分です。正しくは、報酬が支払われた場合でも出産手当金の額が報酬を超えている場合には差額が支給されます(健保法第103条)。エの後半の「差額が支給される」という記述は正しいのですが、前半の「一部でも報酬を受けると支給されない」が誤りであり、矛盾した記述になっています。
他の選択肢は全て正しい記述です。出産育児一時金は1児50万円(ア)、出産手当金の支給期間は産前42日・産後56日(イ)、計算式は傷病手当金と同じ直近12か月平均÷30×2/3(ウ)です。
出産に関する2つの給付の比較表(必須暗記):
| 項目 | 出産育児一時金 | 出産手当金 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 健保法第101条 | 健保法第102条 |
| 対象 | 被保険者が出産 | 被保険者が労務不能(産休) |
| 支給額 | 1児につき50万円(一時金) | 標準報酬日額 × 2/3(日割り) |
| 支給期間 | — | 産前42日(多胎98日)〜産後56日 |
| 被扶養者版 | 家族出産育児一時金(50万円・健保法第114条) | なし(被扶養者には不支給) |
| 報酬との調整 | なし | 報酬が手当金を超えなければ差額支給 |
| 計算式 | — | 直近12か月平均標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 出産育児一時金50万円(産科医療補償制度に未加入の分娩機関での出産は48.8万円になる場合があるが、原則50万円で出題)。家族出産育児一時金(第114条)も同額が支給され、制度上別立ての給付であることは正しい。
- イ(正): 産前42日(多胎妊娠の場合は98日)・産後56日が支給対象期間。「出産が予定日後である場合は予定日からカウント」という点が試験の頻出ポイント。出産予定日を超えて在胎した場合、産前部分は予定日前42日分が保障される。
- ウ(正): 出産手当金の計算式は傷病手当金(健保法第99条)と同一の「直近12か月平均標準報酬月額÷30×2/3」。試験では両者を混同させる問題が多いが、計算式そのものは同じ。
- エ(誤・正答): 「一部でも報酬を受けると支給されない」は誤り。健保法第103条により、報酬が支払われる場合は出産手当金から差額を支給する。全額報酬が支払われ、かつ報酬額が手当金を上回る場合には差額ゼロ(実質不支給)となるが、「一切支給されない」とは原則的に言えません。
- オ(正): 第103条の報酬調整の具体的説明として正しい。実務でも産前産後休業中に法定以上の給与(例えば標準報酬月額の80%等を独自制度で支給する会社)がある場合の調整計算が重要です。
【出産育児一時金50万円への引上げと直接支払制度の実務的意義】
出産育児一時金は令和5年(2023年)4月1日から42万円→50万円に引き上げられました(健康保険法施行規則改正)。この引上げの背景は分娩費用の上昇(全国平均約50万円超)への対応です。
直接支払制度(健保法第101条第2項・施行規則第96条の2):
出産費用が50万円を超えた場合は差額を被保険者が自己負担しますが、50万円以下の場合は差額が被保険者に払い戻されます。一般的には出産施設が保険者に直接請求する「直接支払制度」が普及しており、被保険者が一時的に大金を立て替える必要がなくなっています。
試験では「直接支払制度を利用しない場合の手続き」や「50万円の内訳(産科医療補償制度加算の有無)」が論点になることがあります。
【産前産後期間の計算(42日・98日・56日)の正確な把握】
| 区分 | 産前 | 産後 |
|---|---|---|
| 単胎妊娠 | 出産日または予定日以前42日(6週間) | 出産日後56日(8週間) |
| 多胎妊娠(双子以上) | 出産日または予定日以前98日(14週間) | 出産日後56日(変わらず) |
試験での引っかけポイント:
1. 「出産が予定日後になった場合」→ 産前の始期は予定日前42日から計算し、実際の出産日まで延長される(超過分も支給対象)
2. 産後56日は出産日を含まず翌日から計算(民法の期間計算原則)
3. 「産後56日」とは、出産後8週間の母体保護期間(労基法第65条第2項とも対応)
【出産手当金と傷病手当金の重複調整(健保法第103条の適用)】
出産前後に疾病(切迫早産・妊娠高血圧症候群等)を発症した場合、傷病手当金と出産手当金が重複する期間(産前42日の産休期間中に疾病も労務不能の原因となる場合)の取扱いが問題になります。
原則: 出産手当金が優先(健保法第103条第3項)。傷病手当金は支給されない(重複は禁止)。
ただし: 出産手当金の額が傷病手当金より低い場合でも、傷病手当金として差額が支給されるわけではありません。出産手当金期間中は傷病手当金は完全に停止します。これは社労士試験の「誤肢の定番」です。
【育児休業給付との接続(雇用保険法との交差点)】
出産手当金は健康保険法の給付(産前産後休業中)、育児休業給付金は雇用保険法の給付(育児休業中)と、制度が異なります。混同しやすい点をまとめます。
| 項目 | 出産手当金(健保) | 育児休業給付金(雇用保険) |
|---|---|---|
| 期間 | 産前42日〜産後56日 | 産後57日〜最大2歳(延長含む) |
| 支給率 | 2/3(直近12か月平均) | 当初6か月は67%、以降50% |
| 根拠法 | 健康保険法第102条 | 雇用保険法第61条の7 |
| 主な管理 | 年金事務所・健保組合 | ハローワーク |
産後パパ育休(出生時育児休業:2022年10月施行)中の給付金(出生時育児休業給付金・雇用保険)が新設されたことにより、産後56日以内の期間に健保の出産手当金と雇用保険の出生時育児休業給付金が交差する場面が生じました。これは令和8年度試験で社一や労一と連動する横断論点として出題可能性があります。
【家族出産育児一時金と組合健保の付加給付】
組合健保(企業健保)では、法定の50万円に加えて付加給付(自社独自の上乗せ)を行う場合があります。協会けんぽには付加給付制度はありません。この違いも保険者(協会けんぽ vs 組合健保)の特徴として問われる論点です。
また、令和5年4月以降の取扱いは、産科医療補償制度の対象となる出産(在胎週数22週以降の出産)については原則50万円(本人支給48.8万円+補償制度の掛金1.2万円)、未加入の分娩機関での出産・妊娠22週未満の早期出産等については48.8万円となります(令和4年1月以降の掛金は1児あたり12,000円)。厚労省保険局公表値・協会けんぽ広報で確認済(2026-06-07)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第101条(出産育児一時金)・第102条(出産手当金)・第103条(報酬との調整)・第114条(家族出産育児一時金) 確認日2026-06-07・出産育児一時金50万円: 令和5年4月1日施行(健康保険法施行規則改正) 出典: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/syussan/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。